時は流れる。
かつて幼かった少女は、いつしか1人の立派な悪魔へと成長していた。
名は、リアス・グレモリー。
名門グレモリー家の令嬢であり、強大な魔力を持つ彼女には、やがて1つの夢が生まれていた。
それは、ただ強い者を集めることではない。
身分や能力に関係なく、互いを信頼し、支え合える仲間を作ること。
どんな危機に陥っても、決して仲間を見捨てない。
誰か1人が傷ついたなら、残りの全員がその人を支える。
リアスが望んでいたのは、そんな仲間だった。
「私は・・・、そんな仲間を作りたい。」
そう決意したリアスが最初に出会ったのは、1人の少女だった。
雷の力を宿し、黒い翼を持つ少女、姫島朱乃。
彼女は優しい笑顔の裏側に、深い苦しみを抱えていた。
それでもリアスは、彼女の強さだけを見たのではない。
誰かを思いやる心を見た。
「朱乃。私と一緒に来てくれない?」
「・・・私で、よろしいのですか?」
「もちろんよ。」
リアスは迷わず答えた。
「私は、あなたと一緒に戦いたいの。」
朱乃は少し驚いたあと、柔らかく微笑んだ。
「・・・はい。喜んで。」
こうして、最初の仲間が生まれた。
次にリアスが出会ったのは、聖剣によって運命を狂わされた少年、木場祐斗だった。
彼は多くの苦しみを経験し、それでも前へ進もうとしていた。
「あなたには、まだやりたいことがあるのでしょう?」
「・・・はい。」
「だったら、その道を私と一緒に歩きましょう。」
木場は静かに頭を下げた。
「ありがとうございます、リアス様。」
さらにリアスは、時間を操る特殊な力を持つ少年、ギャスパー・ヴラディとも出会った。
臆病で、人と接することが苦手だった少年。
だが、リアスは彼を恐れなかった。
「あなたも私の大切な仲間よ。」
「・・・僕でも、いいんですか?」
「ええ。」
リアスは微笑む。
「力があるから仲間にするんじゃない。あなた自身を仲間にしたいの。」
その言葉は、ギャスパーの心に深く残った。
そして、もう1人。
リアスが出会ったのは、1人の猫魈の生き残りの少女だった。
白音。
かつて黒歌が命懸けで守った、妹だった。
白音は最初、リアスの前では緊張していた。
だが、リアスが差し出した手を見つめると、小さな手でそっと握り返した。
「・・・よろしく、お願いします。」
「ええ、こちらこそ。」
こうして少しずつ仲間が増えていった。
リアスは思う。
まだ人数は少ない。
でも、ここには自分が求めていたものがある。
信頼や友情。そして、家族のような絆。
こうして、リアスの最初の眷属たちが集まった。
ある日のことだった。
リアスは学園の廊下を歩いていた。
その時、不意に懐かしい気配を感じた。
その気配は、人間でも、普通の悪魔でもない。
しかし、敵意もない。
リアスは足を止める。
「・・・まさか!」
振り返った先には、1人の女性が立っていた。
黒い髪に猫のような瞳。
そして、昔と変わらない、どこか優しげな笑顔。
「久しぶりにゃ、リアス。」
「あなた・・・!」
リアスの目が大きく見開かれる。
忘れるはずがなかった。
幼い頃、森の中で1度だけ見た少女。
圧倒的な力を持ちながら、その力を誰かを守るために振るった存在、黒歌。
リアスの記憶の中に残り続けていた、不思議な女性だった。
「黒歌・・・なの?」
「そうにゃ。」
黒歌は笑う。
「大きくなったにゃ。昔はこんなに小さかったのに。」
「もう、昔の私じゃないわ。」
「分かってるにゃ。」
黒歌の瞳が、リアスの背後にいる仲間たちへ向けられる。
朱乃。
木場。
ギャスパー。
そして、白音。
黒歌の表情が、わずかに柔らかくなった。
「白音・・・。」
「姉様!」
黒歌は、嬉しそうに駆け寄った妹の頭を優しく撫でる。
「元気そうで安心したにゃ。」
「うん。みんなが助けてくれたから。」
その言葉を聞き、黒歌はリアスを見る。
リアスは少し緊張しながら口を開いた。
「・・・ずっと探していたわ。」
「私を?」
「ええ。」
リアスはまっすぐ黒歌を見る。
「あなたがどこで何をしているのか、ずっと気になっていたの。」
黒歌は苦笑した。
「私を探して、どうするつもりだったにゃ?」
「決まっているでしょう。」
リアスは1歩前へ出た。
「あなたに、私たちの仲間になってほしいの。」
「・・・。」
黒歌が目を瞬かせる。
「私は危険な力を持っているにゃ。」
「知ってるわ。」
「普通の悪魔とは比べ物にならない力もあるにゃ。」
「それも知っているわ。」
「それでも、私を仲間にするの?」
リアスは頷いた。
「それでも、仲間にしたいのよ。」
そして、ゆっくりと言葉を続ける。
「幼い頃の私は、あなたを見て怖いと思ったわ。」
黒歌は黙って聞いていた。
「でも、同時に思ったの。」
「あなたは、誰かを傷つけるために力を振るっていたんじゃない。」
「誰かを守るために戦っていたんだって。」
リアスは自分の胸に手を当てる。
「私は、あなたのように強くなりたいわけじゃない。」
「私が欲しいのは・・・、強いだけの仲間じゃない。どんな時でも、互いを支えられる仲間よ。」
黒歌は黙ったまま、リアスを見る。
そして、視線を白音へ移した。
白音は微笑んでいる。
「姉様。」
「・・・何にゃ、白音?」
「この人たちなら、大丈夫だと思う。」
「・・・そうかにゃ。」
黒歌は空を見上げた。
青い空。
その向こうに、これまで旅してきた異世界の記憶が浮かぶ。
一龍。
ノッキングマスター次郎。
二狼。
三虎。
全王。
フリーザ。
兵主部一兵衛。
二枚屋王悦。
ユーハバッハ。
リジェ・パロ。
獅子目言彦。
サイタマ。
そして、白面の者。
それぞれ違う世界、それぞれ違う出会い、それぞれ違う力と教え。
それでも、彼らから受け取った言葉には共通するものがあった。
力を持つ者には責任がある。
その力を、自分勝手な欲望のために使うな。
大切な者を守るために使え。
黒歌は静かに目を閉じる。
「・・・みんな、見てるかにゃ。」
そして、目を開ける。
「私は・・・、まだ約束を守れているにゃ。」
黒歌は微笑んだ。
「分かったにゃ。」
リアスの顔が明るくなる。
「本当!?」
「ただし、1つ条件があるにゃ。」
「条件?」
「私は、あなたの眷属にはならない。」
リアスは少し驚いた。
だが黒歌は続ける。
「私は私のやり方で戦いたいにゃ。」
「それに、白音とも約束してるにゃ。もう勝手にどこかへ行ったり、誰にも相談せずに無茶したりしないって。」
「だったら・・・。」
リアスは笑った。
「協力者という形ではどう?」
「協力者?」
「ええ。」
リアスは手を差し出した。
「グレモリー眷属と黒歌。」
「互いに助け合う関係よ。」
黒歌はその手を見つめた。
昔なら、誰かを信じることなど考えなかったかもしれない。
だが、今の黒歌には、守りたい妹がいる。
大切な仲間がいる。
そして、異世界で出会った者たちから託された言葉がある。
黒歌は差し出された手を握った。
「よろしくにゃ、リアス。」
「ええ。こちらこそ、黒歌。」
その光景を、朱乃たちも笑顔で見つめていた。
「これで、また一人・・・、大切な仲間が増えましたね。」
朱乃が微笑む。
「そうですね。」
木場も頷いた。
「黒歌さんが協力者なら、これほど心強いことはありません。」
「・・・お姉ちゃん、強いから。」
白音も嬉しそうだった。
ギャスパーは少し離れた場所から黒歌を見る。
「す、すごく強そうですけど・・・優しそうです。」
黒歌は笑った。
「怖がらなくてもいいにゃ、ギャスパー。」
「は、はい!」
その日。
グレモリー眷属に、黒歌という新たな協力者が加わった。
異世界を旅し、数え切れないほどの強者と出会い、常識では測れない力を身につけた猫魈。
彼女が持つ力の一端すら、リアスたちはまだ知らない。
未来を見通す力。
未来を変える力。
言葉によって姿や力を変える力。
異世界の強者たちから託された、数々の力と教え。
そして、世界そのものを揺るがしかねないほどの力。
しかし、黒歌はそれらを誇示することはなかった。
力を見せつける必要などない。
強さとは、誰かを従わせるためにあるものではない。
守るためにある。
それを、彼女は知っていた。
それからの日々。
黒歌はグレモリー眷属の活動を陰から支えた。
戦闘訓練では、必要以上に手を出さない。
リアスが迷った時には、必要な時だけ助言する。
朱乃が無理をしそうになれば止める。
木場には敵の動きを見抜く方法を教える。
ギャスパーには自分の力を恐れすぎないように伝える。
そして白音には、姉としていつもそばにいる。
「姉様。」
「何にゃ?」
「私・・・、強くなれますか?」
ある日、白音が尋ねた。
黒歌は笑った。
「もう十分強いにゃ。」
「でも・・・。」
「強さっていうのは、敵を倒す力だけじゃないにゃ。」
黒歌は白音の頭を撫でる。
「誰かを信じることも、立派な強さにゃ。」
「・・・うん。」
「だから、一人で全部背負おうとしなくていいにゃ。」
その言葉を聞いたリアスは、少し離れた場所で静かに微笑んでいた。
自分が作ろうとしていたもの。
それは、確かにここにある。
誰か一人がすべてを背負うのではなく、互いに支え合う。
それこそが、リアスの望んだ眷属だった。
そして黒歌もまた、その輪の中にいた。
眷属ではない。
しかし、誰よりも頼れる協力者。
やがて彼らは、数々の強敵と出会うことになる。
悪魔同士の争い。
異形の怪物。
神々や魔王すら関わる戦い。
世界の運命を左右するほどの事件。
そのたびに、リアスたちは成長していく。
そして、黒歌は必要な時だけ力を振るう。
未来を見据え。
仲間を守り。
必要ならば、自ら最前線へ立つ。
誰も知らなかった。
目の前にいる一人の黒髪の猫魈が、いくつもの異世界を渡り歩き、想像を絶する強者たちと出会ってきたことを。
そして・・・。
その身に宿る力が、世界の常識を遥かに超えていることを。
それでも、黒歌自身にとって、最も大切なのは力ではなかった。
妹。
仲間。
そして、共に笑える居場所。
「みんな、準備はできた?」
リアスが振り返る。
「もちろんにゃ。」
黒歌が笑う。
「行きましょう。」
朱乃が微笑む。
「はい。」
木場が頷く。
「僕も行きます!」
ギャスパーが拳を握る。
「私も・・・!」
白音が一歩前へ出る。
リアスは仲間たちを見る。
そして、力強く笑った。
「私達は、グレモリー眷属よ。」
「誰1人として、仲間を見捨てない。」
黒歌はその言葉を聞き、嬉しそうに目を細めた。
「いい言葉にゃ。」
そして、全員が歩き出す。
その先に待っているのが、どれほど恐ろしい敵であろうとも。
どれほど絶望的な未来であろうとも。
彼らは決して1人ではない。
仲間がいる。
守りたい家族がいる。
その仲間たちのすぐ隣には、1人の猫魈がいる。
異世界の強者たちから託された、力と教えを持ちながら、それを決して自分のためには振るわない少女、黒歌。
彼女が選んだ道は、ただ1つ。
大切な者たちを守る。
その信念は、これから始まる数々の戦いの中でも、1度たりとも揺らぐことはなかった。
こうして・・・。
グレモリー眷属と、その協力者・黒歌。
強い絆で結ばれた彼らの物語が、今、本当の意味で始まった。
感想や、誤字脱字の報告などお待ちしています!
次回「ついに始まる!一誠とアーシアとの出会い」
※黒歌が幼少期から関わっていたことで、リアスたちの人間関係や眷属形成の時期は、原作とは異なります。
黒歌が色々な世界に行き、強者から姿と力を(言霊として)借りる展開を書こうと思います。どちらで見たいですか?
-
前日譚
-
倒れた後に、目覚めた小猫(白音)に話す