第24章 11人の幻影・・・10日間の特訓
オカルト研究部の部室。
いつもなら放課後の穏やかな空気が流れているはずの部屋には、普段とは違う静かな緊張感が漂っていた。
部屋に集まっているのは、リアス、朱乃、木場、ギャスパー、白音、一誠、アーシア。
そして、レイナーレ、カラワーナ、ミッテルト、ドーナシーク。
11人の視線が、部屋の中央に立つ黒歌へ集まっている。
黒歌はいつものように、余裕のある穏やかな笑みを浮かべていた。
しかし、その瞳だけは真剣だった。
「これから、みんなには10日間の特訓をしてもらうにゃ。」
「10日間、ですか?」
アーシアが少し驚いたように尋ねる。
「そうにゃ。」
黒歌は頷いた。
「もうすぐ、みんなには大きな戦いが待っているにゃ。」
その言葉に、一誠の表情が引き締まる。
「レーティングゲーム、か・・・。」
「ええ。」
リアスが静かに頷いた。
「私たちにとって、簡単な戦いにはならないでしょうね。」
部長としての落ち着いた声だった。
けれど、その瞳には仲間たちを思う強い意志が宿っている。
「だからこそ、今のうちにできることをしておきたいわ。」
朱乃が穏やかに続ける。
「ええ。戦いに備えるのであれば、少しでも準備を整えておくに越したことはありませんもの。」
「そうにゃ。」
黒歌は全員を見渡した。
「でも、今回の特訓は、ただ強くなるためだけのものじゃないにゃ。」
一誠が首を傾げる。
「強くなるだけじゃない?」
「そうにゃ。」
黒歌は微笑んだ。
「どれだけ大きな力を持っていても、その力を正しく使えなかったら意味がないにゃ。」
「自分の力を知ること。」
「自分の弱さを知ること。」
「そして、自分が戦いの中で何をするべきなのかを知ること。」
黒歌は、1人1人を見つめた。
「それを、この10日間で学んでほしいにゃ。」
リアスが静かに頷く。
「つまり、全員が同じことをする必要はない、ということね。」
「その通りにゃ。」
黒歌は笑った。
「みんな、それぞれ得意なことも苦手なことも違うにゃ。」
「だから、学ぶことも違うにゃ。」
黒歌は最初に白音へ視線を向ける。
「白音には、相手の攻撃を真正面から受け止めるだけじゃなくて、相手の動きを見て避けることを学んでほしいにゃ。」
白音は黒歌を見る。
「・・・避ける、ですか。」
「そうにゃ。」
黒歌は頷いた。
「強い攻撃だからって、必ずしも正面から止める必要はないにゃ。」
「相手がどう動くのかを見る。」
「どこへ攻撃が来るのかを読む。」
「そして、必要なら最小限の動きでかわすにゃ。」
白音は黙って聞いている。
「それだけじゃないにゃ。」
黒歌は続けた。
「相手の力や勢いを利用して、自分に有利な流れへ変えることも覚えてほしいにゃ。」
白音は少し考えた。
「・・・力で止めるだけが、守ることじゃない。」
「そうにゃ。」
黒歌は嬉しそうに頷いた。
次に、朱乃を見る。
「朱乃には、自分の力をいつ使うのか、どこまで使うのかを判断することを学んでほしいにゃ。」
朱乃は口元に柔らかな笑みを浮かべる。
「あらあら。力を使うことだけではなく、力を抑えることまで、ですのね。」
「そうにゃ。」
「ふふ。確かに、大きな力を持っているからこそ、使いどころを間違えてはいけませんものね。」
朱乃は穏やかに笑う。
「最大の力を出せることと、最大の力を出すべき時を判断できることは、別の話ですもの
。」
「その通りにゃ。」
黒歌は頷いた。
「必要な時に必要なだけ使う。」
「そして、必要がなくなったら止める。」
「その判断を、自分自身でできるようになってほしいにゃ。」
「分かりましたわ。」
朱乃は優雅に微笑んだ。
「私も、そのことを意識してみますわね。」
続いて、木場へ視線を向ける。
「木場には、自分が持っている力の中から、その場に必要な答えを選ぶことを学んでほしいにゃ。」
木場は穏やかに頷いた。
「強いものを選べばいい、というわけではないんですね。」
「そうにゃ。」
「相手や状況によって、必要なものは変わる。」
木場は自分で言葉を続ける。
「なら、その時に何が必要なのかを見極める必要がある。」
「その通りにゃ。」
黒歌は笑う。
「一番強い答えじゃなくて、一番適した答えを選ぶにゃ。」
木場は静かに頷いた。
「分かりました。剣を選ぶことだけではなく、戦場に必要な答えそのものを選ぶ、ということですね。」
「そうにゃ。」
次に、ギャスパーを見る。
ギャスパーは少し緊張した様子で黒歌を見返していた。
「ギャスパーには、自分の力を怖がるだけじゃなくて、自分自身の意思で扱うことを学んでほしいにゃ。」
「僕が・・・自分の意思で・・・。」
「そうにゃ。」
黒歌は優しく頷く。
「必要な時に使う。」
「そして、必要がなくなったら自分で終わらせる。」
「自分の力に振り回されるんじゃなくて、自分で力を制御するにゃ。」
ギャスパーは胸元で手を握りしめた。
「・・・はい。」
一度、言葉を詰まらせる。
「怖いって思ってしまうこともありますけど・・・、僕、ちゃんと自分の力と向き合います。」
「それでいいにゃ。」
黒歌は穏やかに笑った。
そして、一誠を見る。
「一誠には、攻撃を受けてから耐えるだけじゃなくて、そもそも攻撃を受けないという考え方を学んでほしいにゃ。」
「攻撃を受けない、ですか?」
一誠が聞き返す。
「そうにゃ。」
黒歌は頷く。
「一誠は、攻撃を受けても耐えて、そこから反撃することを考えがちにゃ。」
「まあ・・・、確かに」
一誠は苦笑した。
「俺、殴られてから殴り返すこと多いですからね・・・。」
「だからこそ、そこを変えてみるにゃ。」
黒歌の言葉に、一誠が真剣な表情になる。
「相手の動きを見る。」
「攻撃の瞬間を読む。」
「そして、攻撃そのものを受けない。」
「強い攻撃に耐えられることだけが強さじゃないにゃ。」
「・・・なるほど。」
一誠は拳を握る。
「分かりました。今までとは違う戦い方も覚えてみます。」
「期待してるにゃ。」
黒歌は次にアーシアを見る。
「アーシアには、誰かを助けることだけじゃなく、自分自身を守ることの大切さを学んでほしいにゃ。」
「私自身を・・・。」
アーシアが驚いたように目を見開く。
「そうにゃ。」
「アーシアが倒れてしまったら、助けられる仲間も少なくなるにゃ。」
黒歌の声は優しかった。
「誰かを守りたいなら、自分自身も守らなきゃいけないにゃ。」
アーシアは胸元で手を重ねる。
「・・・はい。」
「自分を守ることも、みんなを守ることにつながるんですね。」
「そうにゃ。」
アーシアは静かに頷いた。
「分かりました。私も、自分を守ることから逃げないようにします。」
続いて、黒歌はレイナーレを見る。
レイナーレは腕を組み、冷静な表情で黒歌の話を聞いていた。
「レイナーレには、真正面から力をぶつけるだけではなく、相手の行動を読んで戦いそのものを組み立てることを学んでほしいにゃ。」
レイナーレが目を細める。
「戦いそのものを、ね。」
「そうにゃ。」
黒歌は頷いた。
「相手が何をしようとしているのかを考える。」
「相手がどんな選択をするのかを読む。」
「そして、その選択を利用して、自分に有利な状況を作るにゃ。」
レイナーレは薄く笑った。
「力で押し切るのではなく、相手自身に選択させ、その結果を利用する・・・。」
「そうにゃ」
「ふふ・・・。」
レイナーレの口元に、どこか挑戦的な笑みが浮かぶ。
「なるほど、悪くないわね。」
黒歌は次にカラワーナを見る。
「カラワーナには、自分の持っている力を、自分自身で制御することを学んでほしいにゃ。」
カラワーナは腕を組んだまま答える。
「要するに、力に振り回されるなってことか?」
「そうにゃ」
黒歌は頷く。
「どこで使うのか」
「どこまで使うのか」
「本当に最大の力が必要なのか」
「それを自分で判断するにゃ」
カラワーナは少し考えた。
「・・・強い力を持っているなら、なおさら使い方が重要ってわけだな。」
「その通りにゃ」
「分かった、覚えておく。」
続いて、ミッテルトへ視線を向ける。
「ミッテルトには、自分の速さを攻撃だけのために使わないことを学んでほしいにゃ。」
「速さを?」
ミッテルトが首を傾げる。
「そうにゃ。」
「速ければ、誰より先に攻撃できるにゃ。」
「でも、それだけじゃないにゃ。」
黒歌は続ける。
「仲間が危ないなら、誰より早く助けに行ける。」
「仲間が逃げる必要があるなら、誰より早く道を作れる。」
「速さは、攻撃するためだけじゃなく、守るためにも使えるにゃ。」
ミッテルトは少し考えたあと、口元を上げる。
「なるほどっすねぇ。」
「うちの速さを、仲間のためにも使えってことっすか。」
「そうにゃ。」
「へへっ。それなら、うちにもできそうっす。」
黒歌は頷いた。
そして最後から二人目、ドーナシークを見る。
「ドーナシークには、一度決めた戦い方にこだわらないことを学んでほしいにゃ。」
ドーナシークは落ち着いた様子で答える。
「相手や状況に応じて、戦術そのものを変えるということですね。」
「そうにゃ。」
「相手が速ければ、それに合わせる。」
「守りが固ければ、別の方法を考える。」
「最初の作戦が通じなかったなら、別の答えを探す。」
黒歌は頷いた。
「状況が変わったなら、自分も変わるにゃ。」
ドーナシークは静かに頭を下げた。
「承知いたしました。」
そして・・・。
最後に、黒歌はリアスへ視線を向けた。
「リアスには・・・。」
一瞬だけ、黒歌が言葉を止める。
リアスは静かに黒歌を見つめた。
「1人で全部を背負わないことを学んでほしいにゃ」
「私が・・・?」
リアスがわずかに目を見開く。
「そうにゃ。」
黒歌は穏やかに答えた。
「リアスは、仲間を守ろうとする気持ちが強いにゃ。」
「それは、とても大切なことにゃ。」
リアスは黙って聞いている。
「でも、仲間を守ることと、全部を自分1人で背負うことは違うにゃ。」
黒歌は続けた。
「仲間を信じること。」
「仲間に任せること。」
「1人1人が自分の力を発揮できる場所を作ること。」
「それも、リーダーの大切な役割にゃ。」
リアスはしばらく黙っていた。
やがて、ゆっくりと頷く。
「・・・そうね。」
その声には、部長としての落ち着きがあった。
「私自身、仲間を信じているつもりだったけれど・・・。」
リアスは、一人一人の顔を見る。
「私が全部やらなければならない、と考えてしまうことがあったのかもしれないわね。」
黒歌は微笑んだ。
「だから、この10日間で学んでほしいにゃ」
リアスは小さく笑う。
「分かったわ。」
「私も、自分自身の課題と向き合うことにする。」
「それでいいにゃ。」
黒歌は嬉しそうに笑った。
そして、11人全員を見渡した。
「この10日間で、みんなに学んでほしいのは、単純な戦闘力だけじゃないにゃ。」
「自分の力を知ること。」
「自分の弱さを知ること。」
「力を使うべき時と、抑えるべき時を知ること。」
「相手を見て、自分の戦い方を変えること。」
黒歌は一度、言葉を切った。
「そして・・・。」
「仲間を信じて、自分の役割を果たすことにゃ。」
部室の中が静かになる。
11人は、それぞれ違う表情で黒歌の言葉を受け止めていた。
白音は静かに頷く。
朱乃は微笑み、木場は真剣に考えている。
ギャスパーは決意を込めて拳を握り、一誠は真っ直ぐ前を見ている。
アーシアは静かに頷き、レイナーレは興味深そうに目を細める。
カラワーナは腕を組み、ミッテルトは楽しそうに笑う。
ドーナシークは落ち着いた様子で黒歌を見る。
そしてリアスは、仲間たちを見渡した。
「・・・みんな。」
リアスが静かに口を開く。
「この10日間を、決して無駄にしないようにしましょう!」
「はい、部長!」
一誠が力強く答える。
「はい!」
アーシアも続く。
木場も頷いた。
「僕も頑張ります!」
「私もですわ。」
朱乃が微笑む。
白音は短く
「・・・はい。」
と答えた。
ギャスパーも、
「僕も・・・、頑張ります。」
と続ける。
黒歌は満足そうに笑った。
「それでいいにゃ。」
これから始まる10日間。
11人には、それぞれ異なる課題が待っている。
けれど、そのすべては1つの目的へつながっていた。
自分の力を知ること。
自分の弱さを知ること。
そして・・・。
仲間とともに戦うために、自分自身の答えを見つけること。
「じゃあ、始めるにゃ。」
黒歌が静かに告げる。
10日間の特訓。
その第1歩が、今、始まろうとしていた。
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次回「いざ特訓!リアス眷属! ②暴獣二狼VS白音」
リアス眷属とライザー眷属とのレーティングゲームの結果
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リアス眷属の勝利
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ライザー眷属の勝利