黒歌が言霊を使い、妹や仲間のために戦う物語。   作:ピック

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完結までよろしくお願いいたします。


第16話 いざ特訓!リアス眷属と仲間達! ②暴獣二狼VS白音

第25章 白音・・・暴獣二狼との10日間

 

オカルト研究部の仲間たちが、それぞれの力を伸ばすために行う10日間の特訓。

 

その最初に黒歌が選んだのは・・・、白音だった。

 

「最初は・・・、白音にゃ。」

 

「・・・私ですか?」

 

名前を呼ばれた白音は、小さく目を見開いた。

 

黒歌は優しく笑う。

 

「そうにゃ。10日間の特訓は、白音から始めるにゃ。」

 

「・・・はい。」

 

白音はいつものように短く返事をした。

 

小柄な身体に白い髪。

 

そして、感情をあまり表に出さない静かな表情。

 

しかし、その内側には誰よりも強い「守りたい」という気持ちがある。

 

仲間が危険にさらされれば、自分が前に出る。

 

攻撃が来れば、自分が受け止める。

 

誰かが傷つきそうになれば、自分の身体を盾にする。

 

それが白音にとっては、ごく自然なことだった。

 

だからこそ・・・。

 

黒歌は、今回の特訓相手を慎重に選んでいた。

 

「白音には、特別な相手を呼ぶにゃ。」

 

「・・・特別な?」

 

「そうにゃ。」

 

黒歌は右手を前へ伸ばした。

 

「言霊」

 

空気が震える。

 

部室とは別に用意された訓練場所の一角に、1人の幻術がいた。

 

その男は、筋骨粒々な体をしており、鋭い眼差しをしている。

 

荒々しい生命力を全身から放つ、屈強な男。

 

髪は特徴的なリーゼント。

 

その姿を見た瞬間、白音はわずかに目を見開いた。

 

「・・・大きいです。」

 

男は白音を見下ろした。

 

そして、口元をニヤリと上げる。

 

「ほう・・・。」

 

低く、年季を感じさせる声だった。

 

「開口一番、そこを見るとはのう。なかなか面白い嬢ちゃんじゃ。」

 

白音は少しだけ頭を下げる。

 

「・・・すみません。」

 

「ガハハハハハ!」

 

男は豪快に笑った。

 

「何を謝っとるんじゃ。別に悪いことをしたわけでもあるまい。」

 

そして、自分の身体を見下ろす。

 

「まぁ、確かにデカいがのう。」

 

再び白音を見る。

 

「じゃが、身体がデカいから強い。小さいから弱い。そんな単純な話ではないぞ。」

 

白音は黙って男を見る。

 

その眼差しには、すでにただ者ではないものがあった。

 

黒歌は白音へ説明する。

 

「この人が、今回の特訓相手にゃ。」

 

白音は男を見る。

 

「・・・誰ですか?」

 

黒歌は静かに答えた。

 

「暴獣・二狼にゃ。」

 

その名前が告げられた瞬間・・・。

 

空気が変わった。

 

二狼。

 

後に「ノッキングマスター・次郎」と呼ばれることになる人物が、まだ「暴獣・二狼」と呼ばれていた頃。

 

圧倒的な力と荒々しい戦闘能力を持ち、その名を轟かせていた時代。

 

黒歌の言霊が再現したのは・・・。

 

まさに、その頃の二狼だった。

 

姿だけではない。

 

その時代までに培われた身体能力。

 

戦闘経験。

 

相手の動きを見抜く感覚。

 

そして、幾多の戦いを潜り抜ける中で身につけた戦闘本能。

 

そのすべてを、黒歌の言霊によって再現した存在だった。

 

「・・・どうして」

 

白音が二狼を見る。

 

「・・・私の相手が、二狼さんなんですか?」

 

黒歌は頷いた。

 

「理由があるにゃ。」

 

白音は黙って聞く。

 

「白音は、守ることが得意にゃ。」

 

「・・・。」

 

「でも、白音は『守る』と『受け止める』を、少し同じものだと思っているにゃ。」

 

白音の表情がわずかに変わる。

 

「・・・。」

 

「敵の攻撃が来たら、自分が受ける。」

 

「・・・はい。」

 

「仲間が危険なら、自分が前に出る。」

 

「・・・はい。」

 

「自分が傷つけば、仲間は傷つかない。」

 

白音は答えなかった。

 

否定できなかった。

 

黒歌はそんな妹を見つめる。

 

「それは白音の優しさにゃ」

 

そして・・・。

 

「でも、その優しさだけじゃ、いつか白音自身が壊れてしまうにゃ。」

 

白音が顔を上げる。

 

「・・・。」

 

「だから、もっといろんな『守り方』を覚えてほしいにゃ。」

 

黒歌は二狼を見る。

 

「二狼は、それを教えることができるにゃ。」

 

二狼はしばらく白音を見つめていた。

 

やがて、ゆっくりと口を開く。

 

「なるほどのう・・・。」

 

腕を組み、白音をじっと観察する。

 

「嬢ちゃんは、誰かを守るためなら、自分が傷つくことをためらわんタイプじゃな。」

 

「・・・はい。」

 

「そうか。」

 

二狼は小さく笑った。

 

「優しいのう。」

 

白音は少しだけ目を伏せる。

 

だが、二狼の表情から笑みが消える。

 

「じゃがな・・・」

 

声が低くなる。

 

「それだけでは、守れるものにも限界がある。」

 

白音が顔を上げる。

 

「・・・。」

 

「攻撃が来たら受ける。」

 

「・・・。」

 

「仲間が危なくなったら飛び込む。」

 

「・・・。」

 

「自分が傷つけば、仲間は傷つかんと思っとる。」

 

白音は何も答えなかった。

 

二狼は静かに続ける。

 

「それでは、いつか嬢ちゃん自身が先に倒れてしまうぞ。」

 

「・・・。」

 

「守るために戦う者が、先に倒れてどうする?」

 

白音の瞳が揺れる。

 

二狼は拳を握った。

 

「守りたいのなら・・・」

 

拳をゆっくり開く。

 

「避けてもいい。」

 

白音を見る。

 

「受け流してもいい。」

 

さらに続ける。

 

「相手の力を利用してもいい。」

 

「・・・。」

 

「相手を誘導してもいい。」

 

「・・・。」

 

「戦う場所を選んでもいい。」

 

二狼はニヤリと笑った。

 

「何も真正面から受け止める必要なんぞ、ないんじゃよ。」

 

白音は静かに二狼を見る。

 

「・・・でも」

 

「ん?」

 

「・・・避けたら、仲間に攻撃が向くかもしれません。」

 

二狼は笑った。

 

「ほう。」

 

そして、嬉しそうに目を細める。

 

「そこまで考えとるか。」

 

白音は頷く。

 

二狼は満足そうに笑った。

 

「ならば、もう1つ覚えればいい」

 

「・・・?」

 

「敵の攻撃が仲間に向かわんように、敵そのものを動かしてしまえばいいんじゃ」

 

「・・・敵を」

 

「そうじゃ。」

 

二狼は足元を指差す。

 

「戦う場所を選ぶというのは、ただ逃げることではないんじゃ。」

 

そして、地面を軽く踏み鳴らした。

 

「相手を自分の望む場所へ誘導することも、立派な戦い方じゃ。」

 

白音は黙って聞いている。

 

「それから・・・」

 

二狼は白音を見る。

 

「仲間に任せることも覚えるんじゃ。」

 

「・・・仲間に」

 

「そうじゃ。」

 

二狼は頷く。

 

「全部を1人で背負う必要などないんじゃ。」

 

「・・・。」

 

「仲間がおるのなら、仲間を信じればいい。」

 

白音は黙って二狼を見つめる。

 

二狼は続けた。

 

「嬢ちゃんが誰かを守るように、仲間も嬢ちゃんを守る。」

 

「・・・。」

 

「それが仲間というものじゃ」

 

白音の瞳がわずかに揺れた。

 

二狼は豪快に笑う。

 

「ガハハハハハ!」

 

「まぁ、頭で考えても分からんじゃろうな。」

 

肩を回す。

 

「ならば、身体で覚えるまでじゃ。」

 

白音が構える。

 

「・・・お願いします。」

 

「よし。」

 

二狼も構える。

 

その瞬間・・・。

 

先ほどまでの穏やかな老人のような雰囲気が消えた。

 

全身から、凄まじい闘気が立ち上る。

 

白音は息を呑む。

 

目の前にいるのは、ただの師ではない。

 

かつて「暴獣」と呼ばれた男。

 

その片鱗が、今、白音の前に現れていた。

 

二狼は口元を上げる。

 

「さて・・・。」

 

「まずは、簡単なところから始めるかのう。」

 

「・・・?」

 

「ワシの攻撃を避けてみい。」

 

白音が目を見開く。

 

「・・・いきなりですか?」

 

「ガハハハハハ!」

 

二狼は豪快に笑った。

 

「当然じゃろうが!」

 

次の瞬間・・・。

 

ドンッ!!

 

二狼の巨体が地面を蹴った。

 

凄まじい速度だった。

 

白音の目の前に、一瞬で拳が迫る。

 

「・・・!」

 

白音は反射的に身体を捻った。

 

拳が頬をかすめる。

 

そのまま二狼の拳が背後の地面へと突き刺さった。

 

ドゴォン!!

 

地面が大きく砕ける。

 

白音は距離を取った。

 

「・・・速い。」

 

二狼は拳を引き抜きながら笑う。

 

「ほう!」

 

「今のを避けたか!」

 

白音を見る目が、わずかに変わる。

 

「やるではないか、嬢ちゃん。」

 

「・・・。」

 

「じゃが・・・」

 

二狼は構え直す。

 

「今のは、まだ挨拶じゃぞ

。」

 

白音の表情が引き締まる。

 

「・・・!」

 

「さあ、もう1度じゃ。」

 

二狼の笑みが深くなる。

 

「次は、どう守る?」

 

こうして・・・。

 

白音と暴獣二狼による、10日間の特訓が始まった。

 

1日目

 

朝。

 

まだ太陽が昇りきっていない荒野に、白音は立っていた。

 

周囲には巨大な岩。

 

高く伸びた木々。

 

そして、少し離れた場所には・・・。

 

浅黒い肌の男が立っている。

 

暴獣・二狼。

 

圧倒的な存在感。

 

ただ立っているだけなのに、周囲の空気が重く感じられる。

 

白音は二狼を見つめた。

 

「・・・今日から10日間、よろしくお願いします。」

 

二狼は豪快に笑った。

 

「ガハハハハハ! こちらこそじゃ、嬢ちゃん!」

 

二狼は腕を組む。

 

「さて・・・、嬢ちゃんは、何のためにここへ来た?」

 

「・・・強くなるためです」

 

「違うのう。」

 

「・・・?」

 

「黒歌から聞いとるぞ。」

 

二狼は白音を見る。

 

「嬢ちゃんは、大切なもんを守りたいんじゃろう?」

 

「・・・はい。」

 

「ならば、ワシが教えるのは『強く殴る方法』ではない。」

 

二狼は拳を握る。

 

「『守るための戦い方』じゃ。」

 

白音は静かに頷いた。

 

「・・・分かりました。」

 

「では、始めるぞ。」

 

二狼は白音の前に立った。

 

「嬢ちゃん。ワシを攻撃してみい。」

 

「・・・はい。」

 

白音が地面を蹴る。

 

一気に距離を詰める。

 

拳を放つ。

 

しかし・・・。

 

二狼は僅かに身体を傾けただけで避けた。

 

「・・・!」

 

白音はすぐに2撃目、3撃目、4撃目と攻撃する。

 

だが、1度も当たらない。

 

「どうしたんじゃ?」

 

二狼が笑う。

 

「もっと来い!」

 

白音は速度を上げる。

 

それでも・・・。

 

当たらない。

 

やがて二狼が1歩踏み込んだ。

 

「今度はワシからじゃ。」

 

拳が飛んでくる。

 

白音は反射的に腕を交差させた。

 

ドンッ!

 

「・・・っ!」

 

身体が吹き飛ぶ。

 

白音は地面を転がり、立ち上がる。

 

「・・・今のは」

 

二狼は笑った。

 

「嬢ちゃん、拳を見とったじゃろう?」

 

「・・・はい。」

 

「それじゃ、遅い。」

 

二狼は肩を指差す。

 

「拳が動く前に、肩が動く」

 

次に腰。

 

「腰も動く。」

 

足。

 

「足も動く。」

 

「・・・。」

 

「攻撃を見るのではない。」

 

二狼の目が鋭くなる。

 

「攻撃が生まれる前を見るんじゃ。」

 

昼を過ぎても、修行は続いた。

 

白音は何度も攻撃を受けた。

 

拳に蹴り、そして突進。

 

どれも速く、重い。

 

そして何より・・・、無駄がない。

 

白音は必死に観察する。

 

肩や、腰、そして足。

 

しかし、うまくいかない。

 

「・・・!」

 

また吹き飛ばされる。

 

「ガハハハ!」

 

二狼は笑う。

 

「まだまだじゃのう!」

 

「・・・もう一度。」

 

白音は立ち上がる。

 

「ほう。」

 

「・・・もう一度お願いします。」

 

「いい目じゃ。」

 

再び二狼が動く。

 

白音は拳を見ない。

 

肩を見る。

 

右肩が動いた。

 

「右・・・!」

 

白音が左へ跳ぶ。

 

拳が空を切った。

 

二狼が笑う。

 

「そうじゃ!」

 

白音は息を整える。

 

「・・・見えた。」

 

「まだ1つじゃ。」

 

二狼が再び構える。

 

「次は腰じゃ。」

 

白音は頷いた。

 

夕方。

 

修行を終えた白音は、荒野の端に座っていた。

 

疲れている。

 

身体中が痛い。

 

そこへ二狼がやって来る。

 

「疲れたか?」

 

「・・・少し。」

 

「ガハハハ!正直でいいのぅ!」

 

二狼は隣に腰を下ろした。

 

「今日覚えたことは何じゃ?」

 

白音は考える。

 

「・・・拳を見ない。」

 

「そうじゃ。」

 

「肩、腰、足を見る。」

 

「うむ。」

 

「攻撃が来てからではなく、攻撃が生まれる前を見る。」

 

二狼は満足そうに頷いた。

 

「よく覚えとる。」

 

白音は空を見上げる。

 

「・・・明日は、もっとできるようになります。」

 

「その意気じゃ。」

 

二狼は笑った。

 

「じゃが、焦る必要はない。」

 

「・・・?」

 

「10日間ある。」

 

「・・・はい。」

 

夜、白音は焚き火の前で黒歌と話していた。

 

「どうだったにゃ?」

 

「・・・難しかったです。」

 

「二狼さんは厳しいにゃ?」

 

「・・・はい。」

 

白音は少し考える。

 

「でも・・・、分かりやすいです。」

 

黒歌は微笑んだ。

 

「それなら安心にゃ。」

 

「姉様。」

 

「何にゃ?」

 

「私・・・、強くなれるでしょうか?」

 

黒歌は白音の頭を撫でる。

 

「もう強くなり始めてるにゃ。」

 

白音は静かに目を閉じた。

 

そして、1日目が終わった。

 

2日目

 

白音が目を覚ますと、二狼はすでに修行場に立っていた。

 

「おはようございます。」

 

「おう、嬢ちゃん!」

 

二狼は笑う。

 

「今日は昨日の続きじゃ!」

 

二狼が大きな岩を持ち上げる。

 

「これを受け止めてみい。」

 

「・・・はい。」

 

岩が投げられる。

 

白音は両腕で受け止めた。

 

ズドンッ!

 

「・・・っ!」

 

身体が後ろへ滑り、足元の土が削れる。

 

「止めようとするな!」

 

二狼が叫ぶ。

 

「・・・!」

 

「昨日教えたじゃろう!」

 

白音は必死に耐える。

 

しかし・・・、力負けした。

 

岩を横へ弾き飛ばされる。

 

白音も地面に倒れる。

 

「・・・っ」

 

「嬢ちゃん。」

 

二狼が近づく。

 

「今のは何じゃ?」

 

「・・・止めました。」

 

「そうじゃ。」

 

二狼は笑う。

 

「ならば次は・・・、流せ」

 

「・・・流す。」

 

「そうじゃ。」

 

午前中。

 

何度も岩が飛んでくる。

 

白音は受ける。

 

失敗する。

 

受ける。

 

また失敗する。

 

「違う!」

 

二狼が叫ぶ。

 

「力と力をぶつけるな!」

 

「・・・!」

 

「相手の力を受けたら、そのまま横へ逃がせ!」

 

白音は何度も試す。

 

だが、うまくいかない。

 

「・・・!」

 

また吹き飛ばされる。

 

「難しいです・・・。」

 

二狼は笑った。

 

「当たり前じゃ!」

 

「・・・。」

 

「今までずっと『受ける』ことを覚えてきたんじゃろう?」

 

白音は黙る。

 

「ならば、それを1日や2日で変えられるほど簡単なもんではない。」

 

二狼は拳を握る。

 

「じゃが・・・、できるまでやるぞ。」

 

「・・・はい。」

 

夕方。

 

ようやく白音は、二狼の拳を横へ流すことに成功した。

 

「・・・!」

 

二狼の拳が白音の横を通過する。

 

白音は倒れなかった。

 

二狼も止まる。

 

「・・・できた。」

 

「ガハハハハハ!」

 

二狼が笑う。

「今のじゃ!」

 

白音の顔に、僅かな喜びが浮かんだ。

 

夜。

 

焚き火の前。

 

「今日、分かったことがあります」

 

白音が言う。

 

「何じゃ?」

 

「守るために・・・、全部受け止める必要はない。ということです。」

 

二狼は笑った。

 

「そうじゃ。」

 

「避けてもいい。」

 

「うむ。」

 

「流してもいい。」

 

「その通りじゃ。」

 

白音は火を見つめた。

 

「・・・それなら、もっと守ることができます。」

 

二狼は静かに頷いた。

 

「それを忘れるな、嬢ちゃん。」

 

3日目

 

朝。

 

二狼は森へ白音を連れていった。

 

「今日は鬼ごっこじゃ。」

 

「・・・鬼ごっこ?」

 

「そうじゃ!」

 

二狼は笑う。

 

「ワシを捕まえる必要はない。」

 

「では、どうするんですか?」

 

「ワシから逃げながら、森の木を1本も倒すな。」

 

白音は周囲を見る。

 

「・・・分かりました。」

 

開始。

 

二狼が突進する。

 

白音は避ける。

 

しかし、その先に木がある。

 

「・・・!」

 

急停止。

 

二狼が追い付き、また避ける。

 

また木。

 

「・・・!」

 

何度も失敗する。

 

やがて・・・。

 

ドンッ!

 

二狼の身体が木にぶつかる。

 

木が大きく揺れる。

 

「・・・すみません。」

 

二狼は笑った。

 

「謝る必要はないんじゃ。」

 

「・・・?」

 

「今の失敗から何を学ぶ?」

 

白音は考える。

 

「・・・避けるだけでは駄目です。」

 

「そうじゃ」

 

「相手の動く方向を・・・変えます。」

 

「よう分かってきたのう。」

 

午後。

 

白音は二狼の動きを誘導し始めた。

 

自分が逃げる方向を意図的に変える。

 

二狼が追う。

 

その先には木。

 

二狼が方向を変える。

 

さらに別の方向へ。

 

やがて、二狼自身が木々の間に追い込まれた。

 

「・・・!」

 

白音が立ち止まる。

 

二狼も止まった。

 

「ガハハハハハ!」

 

「・・・?」

 

「嬢ちゃん、今ワシを誘導したじゃろう?」

 

「・・・はい。」

 

「それでいいんじゃ。」

 

二狼は満足そうに笑う。

 

「守るということは、自分が強くなるだけではないんじゃ。」

 

「・・・。」

 

「相手の動きを変えることも、守りにつながるんじゃ。」

 

夜。

 

白音は今日のことを黒歌に話した。

 

「二狼さんを・・・、動かしました。」

 

「すごいにゃ。」

 

「・・・まだ偶然です。」

 

「それでも1歩にゃ。」

 

白音は頷いた。

 

4日目

 

二狼は人形を1体置いた。

 

「今日はこれを守るんじゃ。」

 

白音は人形の前に立つ。

 

「・・・はい。」

 

二狼が襲いかかる。

 

白音は正面から受ける。

 

しかし・・・。

 

二狼は途中で方向を変えた。

 

人形へ向かう。

 

「・・・!」

 

白音が追う。

 

だが間に合わない。

 

人形が倒れた。

 

「・・・失敗しました。」

 

二狼は頷く。

 

「そうじゃ。」

 

「私は・・・、前に立っていました。」

 

「じゃが、それだけでは足りん。」

 

二狼は地面を指差す。

 

「どこに立つ?」

 

「・・・。」

 

「どの距離で守る?」

 

「・・・。」

 

「相手をどこへ誘導する?」

 

「・・・。」

 

白音は周囲を見た。

 

「・・・立つ場所そのものが、守りになります。」

 

「その通りじゃ。」

 

午後。

 

何度も位置取りを繰り返す。

 

そして夕方。

 

白音はついに、人形と二狼の間ではなく・・・。

 

二狼の進路そのものを塞ぐ位置へ移動した。

 

二狼が止まる。

 

「ほう。」

 

白音は静かに言う。

 

「・・・ここなら、守れます。」

 

二狼は笑った。

 

「よくなったのう。」

 

夜。

 

「戦う場所を選ぶ・・・。」

 

白音は焚き火を見ながら呟いた。

 

黒歌が頷く。

 

「それも強さにゃ。」

 

5日目

 

「今日は攻撃禁止じゃ。」

 

二狼の言葉に、白音は目を丸くした。

 

「・・・攻撃をしてはいけないんですか?」

 

「そうじゃ。」

 

「どうやって勝つんですか?」

 

「勝つ必要はないんじゃ。」

 

二狼は笑う。

 

「守れれば、それでいいんじゃ。」

 

修行開始。

 

二狼が襲いかかり、白音は避ける。

 

流し、誘導する。

 

しかし・・・。

 

疲労が溜まり、足が止まった。

 

「・・・っ!」

 

二狼の攻撃が迫る。

 

白音は反射的に拳を構えた。

 

「攻撃するな!」

 

「・・・!」

 

白音は拳を止める。

 

二狼の攻撃が肩を掠める。

 

「・・・痛い。」

 

「じゃが、今のは正解じゃ。」

 

「・・・?」

 

「嬢ちゃんは『攻撃しなければ負ける』と思っとる。」

 

「・・・。」

 

「それは、違う。」

 

二狼は言った。

 

「守るためなら、戦わずに終わらせることもある。」

 

白音はその言葉を何度も考えた。

 

夜。

 

「攻撃しないことも・・・、強さ、ですか。」

 

「そうじゃ。」

 

「・・・難しいです。」

 

「だから修行するんじゃよ。」

 

二狼は豪快に笑った。

 

6日目

 

訓練場には複数の障害物。

 

そして1体の人形。

 

「今日はこれを守るんじゃ。」

 

二狼が言う。

 

白音は頷く。

 

開始。

 

二狼が右から来る。

 

白音は右へ。

 

だが二狼は左へ回る。

 

白音も左へ。

 

また右。

 

また左。

 

「・・・速い!」

 

やがて白音は疲れてしまう。

 

その瞬間・・・。

 

二狼が人形へ向かった。

 

「・・・!」

 

人形が倒れる。

 

「失敗じゃ。」

 

二狼は言う。

 

「1人で全部追いかけようとするからじゃ」

 

白音は俯く。

 

「・・・では、どうすればいいんですか?」

 

「相手を追うんじゃない。」

 

「・・・?」

 

「相手が行ける場所を減らすんじゃ。」

 

白音は顔を上げた。

 

障害物や、人形。

 

自分。

 

そして二狼。

 

すべてを見る。

 

「・・・相手の道を限定する。」

 

「そうじゃ!」

 

午後。

 

白音は少しずつ二狼の進路を制御していく。

 

夕方。

 

二狼は人形へ近づけなくなった。

 

「ガハハハ!」

 

「・・・できました。」

 

「そうじゃ!」

 

夜。

 

白音は今日の修行について考えていた。

 

「力で止めなくても・・・、相手の選択肢を減らせば守ることができる。」

 

二狼は頷いた。

 

「それも戦いじゃよ。」

 

7日目

 

二狼は黒歌を呼んだ。

 

「今日は姉ちゃんにも参加してもらうぞぃ。」

 

「私もにゃ?」

 

「そうじゃ。」

 

白音を見る。

 

「今日は二人で守るんじゃ。」

 

白音は頷く。

 

「・・・分かりました。」

 

最初は白音が前に出た。

 

黒歌が後ろから支える。

 

しかし・・・。

 

二狼が二人の間を狙う。

 

「・・・!」

 

白音は慌てて戻ろうとする。

 

黒歌とぶつかる。

 

「・・・すみません。」

 

「大丈夫にゃ。」

 

二狼は笑う。

 

「2人とも、相手を見すぎじゃ!」

 

「・・・。」

 

「仲間を見るんじゃ!」

 

白音は黒歌を見る。

 

黒歌も白音を見る。

 

「・・・姉様。」

 

「任せるにゃ。」

 

そこから2人の動きが変わった。

 

白音が前、黒歌が後ろ。

 

白音が右、黒歌が左。

 

互いの死角を補う。

 

夕方。

 

二狼の攻撃を2人は1度も受けずに終えた。

 

「合格じゃ!」

 

夜。

 

「・・・仲間を信じる。」

 

白音は呟いた。

 

黒歌が笑う。

 

「それが今日の答えにゃ。」

 

白音は頷いた。

 

八日目

 

二狼は白音に告げた。

 

「今日は嬢ちゃんが守られる番じゃ。」

 

「・・・私は、守る側です。」

 

「違う。」

 

二狼の声が低くなる。

 

「守る者も、守られるんじゃ。」

 

白音は黙った。

 

「自分が傷つけばいいと思っとるじゃろう。」

 

「・・・。」

 

「それでは、長く戦えん。」

 

白音は拳を握る。

 

「・・・でも」

 

「でも、じゃない。」

 

二狼は言い切った。

 

「仲間を信じるんじゃ。」

 

修行中・・・。

 

二狼の攻撃が白音へ迫る。

 

黒歌が横から入る。

 

「白音!」

 

白音は一瞬迷った。

 

しかし・・・。

 

「・・・お願いします!」

 

黒歌に身を預けた。

 

攻撃を避ける。

 

白音は無傷だった。

 

二狼は満足そうに笑う。

 

「それでいいんじゃ。」

 

夜。

 

白音は黒歌に言った。

 

「・・・守られるのも、大切なんですね。」

 

「そうにゃ。」

 

黒歌は白音を抱き寄せる。

 

「白音だけが守る必要はないにゃ。」

 

「・・・はい。」

 

9日目

 

二狼は言った。

 

「明日が最後じゃ。」

 

白音は頷く。

 

「だから今日は・・・」

 

二狼が構える。

 

「全部やるぞぃ。」

 

修行開始。

 

肩を見て、避ける。

 

腰を見て、流す。

 

足を見て、誘導する。

 

地形を見て、位置を変える。

 

黒歌を見て、信じる。

 

それでも・・・。

 

「・・・!」

 

白音が一瞬遅れた。

 

二狼の拳が迫る。

 

白音は受ける。

 

ドンッ!

 

吹き飛ばされる。

 

「・・・っ!」

 

二狼は近づく。

 

「今のは何じゃ?」

 

「・・・焦りました。」

 

「そうじゃ。」

 

二狼は頷く。

 

「覚えた技を全部使おうとするんじゃない。」

 

「・・・?」

 

「必要なものを、その瞬間に選ぶんじゃ。」

 

白音は目を見開く。

 

「・・・全部使うんじゃなくて、必要なものを使う。ですか。」

 

「・・・。」

 

「それが本当の『身につける』ということじゃ。」

 

夕方。

 

白音は再び二狼と向き合った。

 

今度は考えすぎない。

 

身体が自然に動く。

 

肩を見て、避ける。

 

腰を見て、流す。

 

地形を見て、誘導する。

 

黒歌を見て、信じる。

 

二狼は笑った。

 

「ガハハハハハ!」

 

夜。

 

白音は焚き火を見つめた。

 

明日で最後。

 

「・・・少し寂しいです。」

 

黒歌が驚く。

 

「二狼さんとの修行が?」

 

「・・・はい。」

 

黒歌は微笑む。

 

「それだけ、一生懸命やったってことにゃ。」

 

10日目

 

朝。

 

白音は一人で訓練場へ向かった。

 

二狼はすでに待っていた。

 

「来たか、嬢ちゃん。」

 

「・・・はい。」

 

「今日が最後じゃ」

 

白音は頷く。

 

二狼は拳を握る。

 

「最後の課題は・・・」

 

一瞬、空気が変わる。

 

「『守るための一撃』じゃ。」

 

「・・・一撃。」

 

「そうじゃ。」

 

二狼は言う。

 

「これまで嬢ちゃんは、避けること、流すこと、誘導することを覚えたのぅ。」

 

「・・・はい。」

 

「じゃが、どうしても止めねばならん時もあるぞぃ。」

 

二狼が構える。

 

「その時の一撃じゃ。」

 

修行開始。

 

二狼が突進し、白音が避ける。

 

次の攻撃。

 

流す。

 

三撃目。

 

誘導する。

 

四撃目。

 

位置を変える。

 

二狼が人形へ向かい、白音は先回りする。

 

しかし・・・、二狼は速度を上げた。

 

「・・・!」

 

白音は反応する。

 

だが間に合わない。

 

人形へ拳が迫る。

 

その瞬間・・・。

 

白音が前へ出た。

 

拳を構える。

 

「・・・っ!」

 

二狼の拳と白音の拳がぶつかる。

 

ドォンッッ!

 

白音の身体が震える。

 

足が地面へ沈む。

 

しかし・・・、倒れない。

 

「・・・守る!」

 

白音は踏み止まった。

 

二狼の拳を完全に止めたわけではない。

 

その進路を僅かに逸らした。

 

拳は人形を避け、地面へ突き刺さる。

 

静寂。

 

二狼が顔を上げる。

 

「・・・。」

 

そして――。

「ガハハハハハハハハハ!」

 

荒野に豪快な笑い声が響き渡った。

 

「合格じゃ!!」

 

白音は肩で息をする。

 

「・・・合格。」

 

「そうじゃ!」

 

二狼は大きく頷く。

 

「ようやったのう、嬢ちゃん!」

 

白音は自分の拳を見る。

 

10日前とは違う。

 

以前なら、攻撃を真正面から受けていた。

 

今は違う。

 

避け、流し、誘導し、位置を選び、仲間を信じる。

 

必要な時だけ・・・、自分の力を使う。

 

二狼が言う。

 

「嬢ちゃん。」

 

「・・・はい。」

 

「覚えておけ。」

 

「・・・。」

 

「守るとは、全部自分で抱えることじゃない。」

 

白音は頷く。

 

「避けてもいい。」

 

「・・・はい。」

 

「逃げてもいい。」

 

「・・・はい。」

 

「仲間に任せてもいい。」

 

「・・・はい。」

 

「守ってもらってもいい。」

 

白音は少しだけ笑った。

 

「・・・はい。」

 

二狼は満足そうに笑う。

 

「それでいいんじゃ。」

 

夜。

 

最後の夜。

 

白音と黒歌、そして二狼は焚き火を囲んでいた。

 

二狼は酒ではなく、温かい飲み物を手にしている。

 

「10日間、よく頑張ったのう。」

 

「・・・ありがとうございました。」

 

白音が頭を下げる。

 

二狼は笑った。

 

「ワシは何もしておらん。」

 

「・・・そんなことはないです。」

 

「嬢ちゃん自身が頑張ったんじゃ。」

 

白音は黙って二狼を見る。

 

「・・・私は、強くなりましたか?」

 

二狼は少し考えた。

 

そして・・・。

 

「強くなった」

 

はっきりと答えた。

 

「じゃが、力だけではない。」

 

白音は耳を傾ける。

 

「嬢ちゃんは、『守る』ということを覚えた。」

 

「・・・。」

 

「それは、これから先、どれだけ強くなっても忘れるんじゃないぞぃ。」

 

白音は頷く。

 

「・・・はい。」

 

黒歌も微笑む。

 

「白音は、ちゃんと成長したにゃ。」

 

白音は少し照れたように顔を伏せる。

 

「・・・姉様。」

 

二狼が笑う。

 

「ガハハハハ!」

 

「姉妹そろって仲がええのう!」

 

黒歌は笑い、白音の頭を撫でた。

 

「これからも一緒に強くなるにゃ。」

 

「・・・はい。」

 

白音は頷く。

 

そして、10日間の修行が終わった。

 

白音が得たものは、単純な戦闘技術だけではなかった。

 

攻撃を見ること。

 

力を流すこと。

 

相手を誘導すること。

 

戦う場所を選ぶこと。

 

必要なら攻撃すること。

 

仲間を信じること。

 

そして、自分自身も守られていいのだと知ること。

 

それらすべてが1つにつながっていた。

 

「守るための強さ」。

 

それこそが・・・。

 

白音が二狼から受け取った、10日間の修行の答えだった。

 

そして、この10日間で得た経験は・・・。

 

これから始まる、オカルト研究部の仲間たちの特訓にも、確実につながっていくことになる。




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次回「いざ特訓!リアス眷属! ③全王VS姫島朱乃」

リアス眷属とライザー眷属とのレーティングゲームの結果

  • リアス眷属の勝利
  • ライザー眷属の勝利
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