黒歌が言霊を使い、妹や仲間のために戦う物語。   作:ピック

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完結までよろしくお願いいたします。


第17話 いざ特訓!リアス眷属! ③全王VS姫島朱乃

第26章 姫島朱乃・・・全王との10日間

 

11体の幻影が、それぞれの相手の前へと進んでいく。

 

その中で、朱乃の前に現れたのは、全王だった。

 

しかし、その姿は恐ろしい怪物でも、巨大な神でもない。

 

小さな身体に楕円形の頭。

 

子供のような愛らしい姿に無邪気な笑顔。

 

その外見とはあまりにもかけ離れた力を持っている。

 

全王は、そんな姿で朱乃を見上げていた。

 

「私の相手が、全王様?」

 

朱乃は少し驚いたように目を見開く。

 

黒歌は頷いた。

 

「そうにゃ。」

 

全王は朱乃を見ながら、にこっと笑う。

 

「ぼくと特訓するのね。」

 

その口調は、まるで遊びに誘う子供のようだった。

 

だが、朱乃は知っている。

 

この小さな身体に秘められている力が、決して普通のものではないことを。

 

黒歌が静かに口を開く。

 

「朱乃は強いにゃ。」

 

「ふふ。ありがとうございます。」

 

「雷撃。」

 

朱乃の周囲に、青白い電撃が走る。

 

「光。」

 

雷とともに、強大な魔力が集まる。

 

「そして、広範囲の魔力。」

 

朱乃は、広い範囲を1度に制圧できる力を持っている。

 

だからこそ、黒歌は続けた。

 

「朱乃に必要なのは、どこまで撃てるかじゃないにゃ。」

 

朱乃は黒歌を見る。

 

「どこで、どれだけ撃つか・・・、ですね。」

 

「そうにゃ。」

 

黒歌は頷いた。

 

「強い力を持っているからこそ、使う場所と使う量を自分で選ぶ必要があるにゃ。」

 

全王が、楽しそうに笑った。

 

「じゃあ、やってみようか。」

 

こうして・・・。

 

朱乃と全王による、10日間の特訓が始まった。

 

1日目

 

訓練場に立つ朱乃。

 

向かい側には全王がいる。

 

しかし・・・。

 

全王は何もしなかった。

 

朱乃は少し首を傾げる。

 

「・・・攻撃してこないのですか?」

 

「ん~?」

 

全王は首を傾げる。

 

「まだ攻撃する必要ないのね。」

 

「必要がない・・・?」

 

朱乃は周囲を見る。

 

敵も味方もいない。

 

ただ、広い訓練場があるだけ。

 

「では、何をすれば?」

 

全王は笑う。

 

「見てみるのね。」

 

朱乃は言われた通り、周囲を見渡した。

 

相手の位置や味方の位置、逃げ道や守る場所。

 

そして、もしここで戦闘が始まった場合、どこへ敵を誘導すれば安全なのか。

 

朱乃は少しずつ考え始める。

 

やがて・・・。

 

「攻撃しなくても、戦場は動く・・・。」

 

全王が嬉しそうに笑った。

 

「そうなのね。」

 

朱乃は理解する。

 

戦いとは、攻撃を当てることだけではない。

 

戦場そのものを見る。

 

それが、最初の課題だった。

 

2日目

 

今度は実際に雷撃を使う。

 

「いきますわ。」

 

朱乃が手を掲げる。

 

巨大な雷が生まれる。

 

しかし、全王が尋ねた。

 

「そこに味方がいたら、どうするの?」

 

朱乃の手が止まる。

 

「・・・。」

 

朱乃は雷撃を見つめる。

 

確かに、このまま撃てば敵だけではなく味方まで巻き込んでしまう。

 

朱乃は魔力を調整する。

 

広がっていた雷が、少しずつ一点へ収束していく。

 

やがて・・・。

 

一筋の雷撃が走った。

 

敵だけを狙い、周囲にはほとんど影響を与えない。

 

「味方を巻き込まない。」

 

全王が笑う。

 

「うん。」

 

朱乃は自分の手を見る。

 

力を弱くしたわけではない。

 

必要な場所へ、必要なだけ力を集中させたのだ。

 

それもまた、力を扱うということだった。

 

3日目

 

朱乃の前には、逃げようとする敵がいる。

 

朱乃は雷撃を放とうとする。

 

しかし、全王が言った。

 

「倒さなくてもいいのね。」

 

「・・・倒さなくても?」

 

朱乃は考える。

 

そして・・・。

 

敵の進行方向へ雷撃を落とした。

 

地面が弾ける。

 

敵は進路を変える。

 

朱乃はさらに別の方向へ雷を落とす。

 

敵はまた進路を変える。

 

やがて敵は、戦場の端へと追い込まれていった。

 

朱乃は微笑む。

 

「倒さなくても、戦場から外すことはできる。」

 

「そうなのね。」

 

全王が楽しそうに頷く。

 

敵を倒すことだけが、戦いではない。

 

敵の動きを制限する。

 

時間を稼ぐ。

 

味方の進路を作る。

 

それだけでも戦況は変えられる。

 

4日目

 

朱乃は、簡単に敵を倒せる状況にいた。

 

敵はすでに動きを止めている。

 

あと1撃。

 

それだけで勝負は終わる。

 

朱乃は雷を集めた。

 

しかし・・・。

 

ふと手を止める。

 

「・・・本当に必要?」

 

それは、誰かに向けた言葉ではない。

 

自分自身への問いだった。

 

勝つだけなら攻撃すればいい。

 

だが、周囲には味方がいる。

 

この先にも戦いが続く。

 

魔力を使えば、その分だけ後の選択肢は減る。

 

朱乃はゆっくりと手を下ろした。

 

「・・・今は、必要ありませんわ。」

 

全王は何も言わない。

 

ただ、にこにこと笑っている。

 

朱乃は初めて理解した。

 

攻撃できることと、攻撃するべきことは同じではない。

 

5日目

 

この日の課題は、魔力を温存することだった。

 

朱乃は強力な技を使うことができる。

 

だからこそ、強い技を使える場面では使ってしまいがちだった。

 

「強い技を使えるから、使う。」

 

全王が言う。

 

「それだけじゃないのね。」

 

「ええ。」

 

朱乃は頷く。

 

小さな魔力で済むなら、小さな力を使う。

 

大きな力が必要になった時には、そのための魔力を残しておく。

 

「力を温存することも、戦い方の一つ・・・。」

 

「そうなのね。」

 

全王は笑った。

 

朱乃は、自分の魔力を細かく配分していく。

 

6日目

 

今度は、仲間がいる状況での訓練だった。

 

敵が3方向から迫ってくる。

 

朱乃なら、すべてを自分の雷撃で倒すこともできる。

 

「私が全部片付けますわ。」

 

朱乃が言う。

 

しかし、全王は首を傾げた。

 

「どうして?」

 

「え?」

 

「みんなも戦えるのね。」

 

朱乃は仲間を見る。

 

確かに、自分がすべてを倒してしまえば安全だ。

 

だが・・・。

 

それでは仲間が自分の役割を果たす必要がなくなる。

 

朱乃は1人の敵を仲間へ任せる。

 

自分は別の敵の進路を雷撃で制限する。

 

すると、戦場に余裕が生まれた。

 

「・・・仲間に任せることも、戦うことの一つなのですね。」

 

全王は嬉しそうに笑った。

 

「そうなのね。」

 

7日目

 

朱乃は、最小限の雷撃だけで敵の動きを止める訓練を行った。

 

敵の足元や武器、そして進行方向。

 

必要な場所へ、必要なだけ雷を落とす。

 

大規模な攻撃は必要ない。

 

「以前の私なら、もっと大きな雷撃を使っていましたわ。」

 

朱乃が呟く。

 

「でも、今は違います。」

 

雷撃を一点へ収束させる。

 

敵の足が止まった。

 

「力を弱くしたわけではありません。」

 

朱乃は微笑む。

 

「力を細かく扱えるようになっただけです。」

 

全王は楽しそうに笑った。

 

「それでいいのね。」

 

8日目

 

朱乃は訓練場全体を見渡していた。

 

敵や味方、地形や逃げ道。

 

そして、仲間が動こうとしている方向。

 

「私が敵を倒すのではなく・・・。」

 

朱乃は雷撃を地面へ落とした。

 

敵の進路が変わる。

 

その先には、木場が待っている。

 

木場が敵を迎え撃つ。

 

別の敵が動く。

 

朱乃は雷撃でその動きを止める。

 

そこへ別の仲間が入る。

 

「みんなが動きやすい場所を作る。」

 

朱乃は静かに呟いた。

 

自分がすべての敵を倒す必要はない。

 

仲間が力を発揮できる状況を作る。

 

それもまた、戦場を支配する力なのだ。

 

9日目

 

全王は朱乃に尋ねた。

 

「ねぇ。」

 

「はい?」

 

「もし、全部消せるとしたら、どうする?」

 

朱乃の前には、すべてを一瞬で消し去れるほどの力がある。

 

朱乃はしばらく考える。

 

そして・・・。

 

首を横に振った。

 

「必要がないなら、しません。」

 

全王は首を傾げる。

 

「どうして?」

 

朱乃は静かに答えた。

 

「できるからといって、やる必要があるとは限りませんもの。」

 

雷が朱乃の手の中で小さく輝く。

 

「力は、使うことそのものが目的ではありません。」

 

「守るために必要なら使う。」

 

そして・・・。

 

「必要がないなら、使わない。」

 

全王は、にっこりと笑った。

 

「うん。朱乃はちゃんと考えてるのね。」

 

朱乃は微笑んだ。

 

自分の力を恐れているわけではない。

 

力を否定しているわけでもない。

 

ただ・・・。

 

自分で選んでいる。

 

それが、今の朱乃だった。

 

10日目

 

そして、最後の実戦。

 

これまでで最も広い戦場。

 

敵味方が入り乱れる。

 

朱乃は、最初から最大の雷撃を放つことはしなかった。

 

まず戦場を見る。

 

敵の位置や味方の位置、地形に逃げ道。

 

そして・・・。

 

「見つけましたわ。」

 

敵の動きをまとめている指揮役。

 

そこを止めれば、戦場全体の流れが変わる。

 

朱乃は静かに手を掲げる。

 

「雷光よ!」

 

一筋の雷撃が走った。

 

大規模な爆発ではない。

 

しかし、その一撃は正確だった。

 

敵の指揮役の動きを止める。

 

その瞬間・・・。

 

「今よ!」

 

リアスが叫んだ。

 

仲間たちが一斉に前へ出る。

 

戦場の流れが変わった。

 

朱乃は、その光景を見つめながら微笑んだ。

 

「私1人で勝つ必要はありませんもの。」

 

全王は嬉しそうに笑った。

 

「そうなのね。」

 

そして・・・。

 

10日間の特訓が終わった。

 

訓練場から戻った朱乃は、自分の手を見つめていた。

 

雷撃そのものが、以前より圧倒的に強くなったわけではない。

 

しかし・・・。

 

自分の力を、以前より細かく扱える。

 

必要な時には強く、必要でなければ小さく。

 

敵を倒すだけではなく、動きを止める。

 

味方を守り、仲間へ任せる。

 

そして、仲間が動きやすい状況を作る。

 

それらすべてが、朱乃にとって新しい「強さ」になっていた。

 

黒歌が朱乃のもとへ歩いてくる。

 

「どうだったにゃ?」

 

朱乃は少し考えてから、微笑んだ。

 

「力を使わないことが、力を捨てることではないのですね。」

 

「そうにゃ。」

 

黒歌が頷く。

 

「いつ使うのかを、自分で選べる。それも強さにゃ。」

 

朱乃は静かに頷く。

 

「そして・・・、仲間に任せることも。」

 

黒歌は笑った。

 

「そうにゃ。」

 

朱乃は振り返る。

 

そこには、これから一緒に戦う仲間たちがいる。

 

「私がすべてを倒す必要はありませんもの。」

 

そして、静かに微笑んだ。

 

「みんなが自分の力を発揮できるように、私も力を使えばいいのですわ。」

 

この10日間を経て、朱乃はレーティングゲームで、自分の力をどう使うのか、その答えを見つけつつあった。

 

敵の動きを制御し、味方の進路を作る。

 

必要な場所へ、必要なだけ力を届ける。

 

そして、戦場全体を見ながら、自分の力を使うべき瞬間を選ぶ。

 

そんな、戦場全体を支える力を身につけつつあった。

 

それは、単純に力が強くなったということではない。

 

「力を持つ者として、自分自身で使い方を選べるようになった。」

 

そのことこそが、姫島朱乃が、この10日間で手に入れた新しい強さだった。




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次回「いざ特訓!リアス眷属! ④ジョアVS木場祐斗」

黒歌が色々な世界に行き、強者から姿と力を(言霊として)借りる展開を書こうと思います。どちらで見たいですか?

  • 前日譚
  • 倒れた後に、目覚めた小猫(白音)に話す
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