黒歌「はぁ・・・。はぁ・・・。」
私は今、妹の白音と一緒に追手から逃げているにゃ。
それは、追手の主の上級悪魔が白音に無理やり「仙術」と呼ばれる術を覚えさせようとしたからにゃ。
この術は「世界に漂う邪気や悪意まで取り込んでしまい、力に呑まれてしまいかねない」危険な術にゃ。
こんな術を白音に覚えさせるわけにはいかない。と思った私は、主の息の根を止めたにゃ。
そのせいで、私はSS級のはぐれ悪魔になっちゃったにゃ。
そうこう言っている内に追手がすぐ後ろまで迫ってきたにゃ。
黒歌 「私はここで追手を食い止めるから、白音は先に行くにゃ!」
白音 「嫌です!一緒にいます!」
黒歌「わがまま言わない!なぁに、何とかして見せるにゃ。」
白音「絶対ですよ!待ってますからね!」
黒歌「さて、白音には先に行ってもらったにゃ。これで思う存分戦えるにゃ。覚悟するにゃ!」
黒歌は、15名もの上級・中級悪魔達を前にして言った。
追手の悪魔「何を!それはお前の方だ!先に逃がした妹に会う事無くこの場所でお陀仏になるのだからな!」
黒歌「そんな事ができるといいけどにゃ。」
追手の悪魔「後悔するなよ、その言葉!」
黒歌は静かに目を閉じ、呟いた。
「この人数なら・・・、まずは二狼のおじいちゃんの力が一番合ってるにゃ。」
そして、言霊を紡ぐ。
「『力と技術のハイブリッドモンスター、ここに降臨!』」
その瞬間、大気が震えた。
凄まじい闘気が森一帯を揺るがす。
黒歌の身体が眩い光に包まれていく。
光が収まると、そこにいたのは黒歌ではなく、黒髪のポンパドールに浅黒く筋肉質な若い男、二狼が静かに立っていた。
追手の悪魔side
口上を口にした瞬間、目の前の相手から悪魔の魔力も妖怪の妖気も感じられなくなった。
気が付けば、その姿は黒髪のポンパドールに浅黒く筋肉質な若い男へと変わっていた。
俺達は、一斉に男へ襲い掛かった。
だが、なぜだ・・・?
目の前にいる相手は1人、こちらは15人。差は歴然。だが・・・。勝てるイメージが全く見えてこない・・・。
そう口にしたのは誰だったろうか。
「お前は、誰なんだ?」と。
二狼の姿となった黒歌は、二狼の口調で静かに告げた。
「ワシの名は、二狼。」
「白音に刃を向ける者は、このワシが相手になろう。」
その言葉が終わるや否や、男が、腰に付けている獣の牙を思わせる七本の巨大な牙が突き出た異形のガントレット「狼王の牙」を右手に装着し、こう言ったんだ。
「ギネスパンチ。」
――男は、一歩も動かなかった。
そして「狼王の牙」を装着した右拳をただ一閃した。
放たれた一撃は、巨大な狼が牙を剥いたような奔流だった。
それは、うねりをあげ、大地を削り取りながら猛然とこちらへ向かってきた。
次の瞬間、仲間達は巨大な狼の奔流に呑まれ、意識を失い、戦闘不能になった。
後ろを振り返ると、森林の木々は数キロメートルに渡って完全に消失し、地面は抉り取られ、巨大なクレーターだけが残されていた。
俺達が相手にしているのは悪魔なんかじゃない。
妹を守るためだけに牙を剥く、一匹の暴獣だった。
二狼「さて、残りはお主一人じゃが・・・、どうするんじゃ?」
「う・・・、う・・・、うわぁぁぁぁぁぁ!!!」
俺は、脇目もふらずその場から逃げていた。
追手を無力化した後、黒歌は元の妖艶な猫魈(ねこしょう)に戻った。
黒歌「さて、先に行かせた白音に追いつくにゃ。もし、心から信頼できる人に出会えるなら、それを見届けるだけにゃ。」
去っていく黒歌は気づかなかった。
幼き紅髪の悪魔と黒髪の少女が、この戦いの一部始終を見届けていた事を。
後に、冥界全土を揺るがす運命の出会いになることを、まだ誰も知らなかった。
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次回「幼き紅髪と黒髪の少女が見た黒猫の真実」
黒歌が色々な世界に行き、強者から姿と力を(言霊として)借りる展開を書こうと思います。どちらで見たいですか?
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前日譚
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倒れた後に、目覚めた小猫(白音)に話す