第36章 リアス・・・兵主部一兵衛と麒麟寺天示郎との20日間
これまで、オカルト研究部とその仲間たちは、それぞれの師から教えを受けてきた。
白音は、仲間を守るために動くことを。
朱乃は圧倒的な力を制御することを。
木場は自分自身の判断で戦うことを。
ギャスパーは能力を恐れず仲間のために使うことを。
一誠は最後まで立ち続けることを。
アーシアは癒やすだけでなく仲間を守るために動くことを。
レイナーレは相手を見極めることを。
カラワーナは強大な力に呑まれないことを。
ミッテルトは速さと力を使い分けることを。
ドーナシークは相手を観察して自ら答えを選ぶことを。
そして、最後に残ったのはリアス・グレモリーだった。
「次は、リアスの番にゃ。」
黒歌に言われたリアスは、静かに頷いた。
「ええ。私も、自分の課題を克服したいわ。」
「リアスの課題は、滅びの魔力をいつ、どれだけ使うか。そして、長い戦いでも指揮を続けられるよう、自分の状態を管理するか。この2つにゃ。」
リアスは自分の魔力が強力な武器であると理解していた。
しかし、大きな攻撃を放てることと、状況に応じて力を使い分けられることは違う。
自分が倒れれば、仲間たちを危険にさらしてしまう。
「前半は一兵衛さん、後半は天示郎さんに10日間ずつ教えてもらうにゃ。一兵衛さんからは力の制御を、天示郎さんからは回復と休息を含めた戦い方を学ぶにゃ。」
「霊王を守る零番隊のお二人から学べるなんて、貴重な経験になりそうね。」
「今回も『裏のチャンネル』を使うにゃ。」
「これは、トリコの世界にある、時間の流れが現実とは異なる空間にゃ。」
「その空間で、2人の姿と教え方を再現した幻術にそれぞれ学ぶにゃ。」
「つまり、ご本人を連れてくるわけではないのね?」
「そうにゃ。でも、特訓は本気でいくにゃ。2人の教えを再現する以上、手加減は期待しないにゃ。」
「分かったわ。よろしくお願いするわ、黒歌さん。」
黒歌の言霊が響き、リアスの姿は光に包まれた。
前半・・・一兵衛との10日間
1日目
訓練場でリアスを迎えたのは、坊主頭に長い顎髭を蓄えた巨漢だった。
死覇装を基調とした装束をまとい、堂々と立つ姿には威厳がある。
零番隊の長として霊王を守る兵主部一兵衛。
その姿と力を再現した幻術は、リアスを見据えた。
「おんしがリアスか。さて、力とは何じゃ?」
「敵を倒し、仲間を守るためのものです。」
「では、最大の力を放てば、必ず仲間を守れるかのう?」
一兵衛が出現させたのは、敵と味方を模した人形だった。
リアスは広範囲への攻撃をためらい、標的の配置を確認する。
角度と威力を調整し、味方を傷つけず敵だけを破壊した。
「よいか? 力は大きければよいのではない。何のために使い、どのような結果を生むのかを考えることが重要なんじゃ。」
リアスは、主として戦場全体を見なければならないと理解した。
2日目
この日、一兵衛は攻撃を禁じ、魔力を集め、広げ、圧縮し、静かに解く訓練を命じた。
リアスは魔力を広げすぎたり、逆に押さえ込みすぎたりして失敗した。
攻撃の威力ばかりを意識していたため、自分の魔力がどのように変化するのか、十分に理解していなかったのだ。
「自分の状態を知らぬ者が、戦場を正しく見極められると思うか?」
「いいえ、まず自分の力を知らなければいけません。」
「その通りじゃ。己を知らずして、己の力を自在に扱うことなどできぬ。」
繰り返し練習するうち、リアスは魔力の集中と解放を細かく調整できるようになった。
3日目
この日、形も硬さも異なる標的が並べられた。
「どこを壊せば、最小の力で目的を果たせるか。よく見るのじゃ。」
リアスは中心や接合部を狙ったが、3つ目の標的では力を込めすぎ、周囲まで破壊してしまった。
「なぜ失敗したのかを考えてみるのじゃ。」
「壊すことに意識が向きすぎて、どこまで壊す必要があるかを考えていませんでした。」
再挑戦では攻撃範囲を絞り、狙った一点だけを破壊した。滅びの魔力を使いこなすには、破壊する場所だけでなく、破壊する範囲まで選ばなければならなかった。
4日目
この日、一兵衛は巨大な岩を用意し、少しずつ魔力を減らして攻撃するよう命じた。
リアスは力を抑えすぎて岩を砕けなかったり、強すぎて必要以上に破壊したりした。
それでも繰り返し、指定された部分だけを壊すことに成功した。
「強大な力を持つ者ほど、加減を覚えねばならぬ。」
「力を抑えることも、強さの一部なのですね。」
「そうじゃ。力を出すことだけが、力の使い方ではない。」
リアスは敵との距離や味方の配置、戦闘が続く時間まで考えて攻撃を選ぶ必要があると学んだ。
5日目
この日、リアスは大量の魔力を解放し、その状態を維持するよう命じられた。
集中するほど、周囲の変化が目に入らなくなる。
「魔力を保つことに意識を奪われて、周囲を見る余裕がありません。」
「力を扱うのはおんしじゃ。力におんしが動かされてはならぬ。」
リアスは呼吸を整え、魔力を維持しながら敵の位置や動きを確認した。
何度も失敗を繰り返した末、魔力を保つことと戦況を見ることを両立できるようになった。
6日目
この日、一兵衛はリアスに尋ねた。
「リアスよ。なぜ強くなりたい?」
「仲間を守るためです。そして、みんなと一緒に未来へ進みたいからです。」
訓練では、リアス自身を狙う敵と味方を狙う敵が同時に現れた。
彼女は自分への攻撃をかわしながら、仲間に迫る敵を優先して止めた。
「何を守り、何を成し遂げたいのか。それを判断の軸にするのじゃ。」
「はい。私は1人で勝つためではなく、眷属のみんなと勝利をつかむために強くなりたいのです。」
「ならば、その思いを忘れるでないぞ。」
7日目
この日、一兵衛は魔力を使わず、敵の攻撃を避けて状況を変えるよう命じた。
リアスは敵の動きを観察し、障害物を利用して進路を誘導した。
やがて敵は動きにくい位置へ追い込まれた。
「力を持っておるからといって、常に使う必要はない。」
「敵を倒すだけでなく、足止めして仲間が動く時間を作ることもできるのですね。」
「主とは、すべてを1人で解決する者ではない。」
「仲間が力を発揮できる状況を作る者でもある。」
リアスは、攻撃だけが勝利につながるわけではないと理解した。
8日目
この日、複数の敵が異なる方向から迫った。
リアスは正面の敵を牽制し、側面の敵に対処した後、味方を狙う敵へ魔力を集中させた。
しかし、1体を倒すことに集中しすぎ、背後からの攻撃を受けそうになった。
「攻撃の規模を選ぶだけでは足りないのですね。」
「攻撃中も周囲を見続けなければいけませんでした。」
再挑戦では、攻撃するたびに敵と味方の位置を確かめた。
状況を少しずつ有利に変え、危険を減らしながら敵を倒していった。
9日目
この日、素早い敵、頑丈な敵、距離を取る敵が現れた。
味方の人形を傷つけず、魔力を無駄にしないことが条件だった。
リアスは素早い敵を小規模な攻撃で止め、頑丈な敵には弱点を狙って力を集中させた。
最後の敵には誘いをかけ、攻撃の機会を作った。
「力の大きさだけでなく、使う理由と結果まで考えるようになったのう。」
「力はただ使うのではなく、選ぶものです。そして、その選択には責任が伴います。」
一兵衛は満足そうに頷いた。
10日目
この日、複数の敵が異なる方向から迫り、味方の人形も危険な位置に置かれた。
「どうするかは、おんし自身で決めよ。」
リアスは焦らず、味方に迫る敵を牽制し、側面の敵の進路を変え、遠方の敵の攻撃をかわした。
そして、防御を崩す攻撃、動きを止める攻撃、決着をつける一撃を使い分けた。
すべての敵が倒れると、一兵衛は頷いた。
「最初のおんしは、強い力を持つことは知っておった。」
「しかし、今は、その力をいつ、どれだけ使うべきか考えられるようになったのう。」
「一兵衛さん。この十日間、本当にありがとうございました。」
「この特訓で、自分の魔力を理解することや必要な力を選ぶこと、そして力を使う責任を教えていただきました。」
「学んだことを忘れるでないぞ。力を持つ者は、その力で何を成すのか考え続けねばならぬ。」
リアスは深く頭を下げ、次の10日間へと向かった。
後半・・・天示郎との10日間
1日目
現れた天示郎は、長く突き出したリーゼントに、胸元を開けた死覇装姿の男だった。零番隊の装いをまとい、腰には黄色い腹巻きを巻いている。
「よお、嬢ちゃん。まずは走れ!」
走っては止まり、呼吸を整えてまた走る。リアスは呼吸の乱れや脚の重さ、集中力の低下を意識するようになった。
「戦えるからって、万全とは限らねえ。」
「疲れに気づかず動き続けりゃ、判断を間違えるぜ。」
自分の身体の変化を察知することも、主として必要な技術なのだとリアスは学んだ。
2日目
天示郎は訓練を始めず、「今日は休みだ。」と告げた。
「でも、まだ教えていただくことがあります。」
「だから休むんだ。」
「身体を休ませ、魔力を回復させ、頭を冷やす。」
「それも次に戦うための準備だ。」
リアスは休息を怠けることのように考えていた自分に気づいた。
鍛える時間だけでなく、回復する時間も必要なのだ。
呼吸と魔力の状態を確かめながら、彼女は休むことに集中した。
3日目
リアスは訓練用の敵と戦った。
一兵衛から学んだ魔力の調整を実践したが、戦闘が長引くにつれて呼吸が乱れ、集中力が落ち始めた。
「まだできます!」
「やめろ。疲れてるのに続けりゃ、判断も魔力の調整も鈍るかもしれねえ。」
リアスは悔しさをこらえて休息を取った。倒れるまで戦うことだけが強さではないと理解した。
4日目
四日目、十分に休んでから同じ訓練に挑んだリアスは、昨日よりも落ち着いて敵の動きを見極められた。魔力の調整にも余裕が生まれていた。
「休めば、また戦える。」
「身体が回復すりゃ、頭も働く。」
「休むことは戦いを止めることではなく、次に戦うための準備なのですね、天示郎さん。」
「そういうこった!」
天示郎は豪快に笑った。
5日目
実戦形式の訓練中に疲労を感じたリアスは、敵から距離を取った。
安全を確かめ、呼吸を整えて次の行動に備える。
「倒れてから休むんじゃ遅ぇこともある。
「動けなくなる前に「休む必要がある」と判断するんだ」
リアスは、休息を取るための場所と時間を作ることも戦術の一部だと学んだ。
6日目
天示郎は「今日は俺から休めとは言わねえ」と告げた。
リアスは戦闘を続けるうち、まだ動けるものの、集中力が少しずつ落ちていることに気づいた。
「ここで休みます。」
「今のうちに回復させたほうが、その後も正確に動けると思います」
「正解だ。」
「誰かに言われるまで、自分の限界に気づかねえんじゃ困るからな」
自分の状態を見て、自分で休息のタイミングを決める。それがリアスの新しい課題だった。
7日目
味方を狙う敵を見たリアスは、疲労を顧みず前へ出ようとした。
「私がやらないと・・・!」
「お前が倒れたら、誰が残りの仲間を守るんだ?」
天示郎の問いに、リアスは足を止めた。
仲間を守りたいという思いが強すぎて、自分が倒れないための判断を後回しにしていたのだ。
「必要なら仲間に任せろ。」
「お互いに支え合ってこそ、長い戦いを乗り越えられるんだ。」
リアスは、仲間を信頼して任せることも主の責任だと理解した。
8日目
次々に敵が現れる長時間の訓練が始まった。
リアスは最初から全力を出さず、敵の強さに応じて魔力を調整した。
疲労がたまると障害物を利用して距離を取り、呼吸を整えてから戦線に戻った。
「長い戦いで、最初から最後まで全力を出し続けられる奴なんざ、そうはいねえ。」
「敵の動きを止め、仲間に援護してもらい、休める時間を作ることも必要なのですね。」
休息は戦闘の外にあるものではない。長期戦を勝ち抜くための戦術なのだ。
9日目
厳しい訓練の途中でリアスは膝をついた。
以前なら無理に立ち上がっただろう。
しかし、彼女は呼吸を整え、魔力の残量と身体の状態を確認した。
焦らずに回復を待ち、再び立ち上がる。
「・・・もう一度、行けます。」
「おう。それが本当の強さだ。」
休み、回復し、また立ち上がる。その繰り返しも強さの一部なのだとリアスは実感した。
10日目
複数の敵が異なる方向から迫り、戦闘は長引いた。
リアスは敵と味方の位置を確認しながら攻撃を使い分け、疲労がたまると自ら距離を取って休息した。
回復を待って再び戦い、最後の敵に対しても、すぐに最大の魔力を放つことはしなかった。
敵の動き、残された魔力、周囲の安全を確かめ、必要な力を集中させる。
最後の一撃が敵を打ち破った。
「よくやったな、嬢ちゃん。必要なときに休み、必要なときに動く。最初の頃とは大違いだぜ」
「この十日間、本当にありがとうございました。」
「身体や魔力の状態を知ること、無理をする前に休むこと、そして仲間を信頼して任せることを教えていただきました。」
「おう。その教えをこれからの戦いで生かしてくれ。」
「主だからって、何でも一人で背負い込むんじゃねえぞ。」
「はい。必ず覚えておきます!」
こうして、リアスの20日間の特訓は終わった。
20日間の特訓を終えて
裏のチャンネルの景色が消え、リアスはオカルト研究部の部室へ戻ってきた。
「おかえり、リアス。」
黒歌に迎えられ、リアスは微笑んだ。
「一兵衛さんからは、自分の力を理解し、必要なときに必要な分だけ使うことを教えてもらったわ。」
「天示郎さんからは、自分の身体や魔力の状態を把握し、休むべきときに休むことを教えてもらったわ。」
リアスは仲間たちを見渡した。
「私は、仲間を守りたいと思うあまり、自分が無理をしてでも前に出なければならないと考えていたのかもしれない。」
「でも、それでは長い戦いを最後まで指揮できない。」
「仲間を信頼して任せることも、主として必要な判断なのね」
一誠が拳を握った。
「部長!これならレーティングゲームでも、もっと頼りになりますね!」
「ありがとう、一誠。」
「でも、私一人が強くなっても意味はないわ。」
「みんながそれぞれの特訓で学んだことを生かして、全員で戦う。それが私たちグレモリー眷属の強さになるはずよ。」
朱乃が微笑み、木場や白音、ギャスパー、アーシアたちも頷いた。
レイナーレ、カラワーナ、ミッテルト、ドーナシークも、それぞれの学びを胸に、リアスの言葉を受け止めた。
リアスは黒歌へ向き直った。
「黒歌さん、2人の師匠を選んでくれて、本当にありがとう。」
「どういたしましてにゃ。」
「あとは、学んだことを実際の戦いで生かすだけにゃ」
リアスは、この20日間で学んだ2つのことを胸に刻んだ。
自分の力を理解し、状況に応じて使い分けること。
そして、自分自身を壊すことなく、最後まで仲間を率いるために休息を含めた判断をすること。
強い力を持つだけでは、主として十分ではない。
力を使う理由を理解し、その結果に責任を持つこと。
そして、1人ですべてを背負おうとせず、仲間を信じて力を合わせること。
それらが揃って初めて、リアスは眷属を最後まで導けるのだ。
「みんな、これからも力を合わせていきましょう。私も、みんなを率いる主として、もっと成長していくわ。」
「はい、部長!」
仲間たちの返事が部室に響いた。
黒歌は満足そうに尻尾を揺らした。
「みんな、準備はできたかにゃ?」
全員が力強く頷く。
「じゃあ、次は実戦にゃ。」
「これまでの特訓で学んだことを、実戦で見せてもらうにゃ。」
長い特訓の日々を経て、グレモリー眷属は次なる戦いへ向かおうとしていた。
感想や、誤字脱字の報告などお待ちしています!
次回「その頃、ライザー眷属は・・・」
リアス眷属とライザー眷属とのレーティングゲームの結果
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リアス眷属の勝利
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ライザー眷属の勝利