私は、リアス・グレモリー。
あの日、幼馴染みのソーナと一緒に領地近くの森へ散策に来ていたの。
すると、慌ただしい声がしたの。
私達が木の陰から様子を伺っていると、白い髪の妹を連れた黒髪の猫魈の少女が、15人もの追手から逃げていた。
追いつかれそうになった時、少女は、妹を先に逃がし、追手と戦おうとしていたの。
15人を相手に、1人で立ち向かうなんて。
この人数差では、どうしようもない。
そう思った次の瞬間、少女が「『力と技術のハイブリッドモンスター、ここに降臨!』」と呟いたの。
すると、少女の姿が、浅黒い肌と黒髪のリーゼントを持つ筋肉質な若い男へと変わったの。
そして、追手に向かい放った一撃は、私の自慢の「滅びの魔力」さえも霞むほどの、文字通り次元の違う破壊の奔流だったの。
「・・・な、何、今の・・・。」
数キロメートルに及ぶ森が一瞬で消滅し、えぐれた大地が夜の闇の中で不気味に煙を上げていたわ。
ソーナ 「信じられない・・・。あれは、本当に野良猫なの・・・?」
ソーナは、ずり落ちそうになる眼鏡を震える指で押し上げ、冷や汗を流しながら呟いた。
それほどまでに、目の前で起こっている「理不尽」は凄まじいものだった。
二人が何より恐怖し、目を奪われたのは、先ほどまでそこにいた「黒髪リーゼントの浅黒い青年」の存在だった。
悪魔の魔力ではない。
神の光の力でも、堕天使の光力でもない。
ただひたすらに、純粋で、凶暴で、世界そのものを握り潰しかねないほどの圧倒的な『存在感』と『野生の生命力』だった。
それが、ほんの数秒前まで自分たちと年齢の変わらないはずの黒髪の猫魈の少女から放たれていたのだ。
「リアス・・・、あの一撃、あなたならどう防ぐ?」
「・・・無理よ。直撃したら、私どころか上級悪魔の結界だって一瞬で消し飛ぶわ。防ぐとか、避けるとか考える間もなく、ね。」
リアスは悔しそうに拳を握りしめながらも、その視線は元の可憐な姿に戻り、白い髪の妹を追って森の奥へと消えていく猫魈の少女の背中に釘付けになっていた。
リアス「あの少女の一撃・・・、凄まじかったわね。」
「ええ。それに、彼女が変身する直前に紡いだ言葉・・・。まるで、この世界には存在しない何かを背負っているような響きだったわ。」
ソーナの卓越した観察眼は、あの猫魈の少女の後ろに透けて見える「底知れない背景」を察知していた。
主人を手にかけた野良猫――そう片付けるには、彼女の持つ力はあまりにも規格外であり、危険すぎた。
「リアス、このことはすぐに魔王様に報告すべきよ。」
「ええ、分かっているわ、ソーナ」
リアスは深く頷きながらも、どこか胸の高鳴りを抑えきれずにいた。
恐怖と共に刻まれた、あの圧倒的な強さへの憧れ。
そして、妹を守るために世界を敵に回すこともいとわない、あの猫魈の少女の強い眼差しが、幼いリアスの心に強烈な印象を残したのだった。
リアスは森の奥へ消えていく猫魈の少女の背中を見送りながら、静かに言った。
「また、会える気がする。」
ソーナも同じ方向を見つめる。
「私もです。」
「もし再び会うことがあるなら・・・。」
「今度は敵としてではなく、一人の悪魔として話をしてみたいですね。」
2人はもう一度、あの猫魈の少女が消えていった森の奥へ視線を向けた。
彼女の背中は、もう見えない。
だが、その圧倒的な存在感だけは、幼い2人の胸に深く刻み込まれていた。
幼い2人はこの日、1つの大切なことを学んだ。
強さとは、誰かを傷つけるためではなく、守りたいものを守るためにあるのだと。
魔方陣の光が森を包み込み、幼い二人の姿は静かに消えていった。
この日、交わることのなかった三人の運命が、やがて冥界の未来を大きく変えることを、この時の誰も知る由はなかった。
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次回「魔王達の動揺と紅髪の魔王の決断」
黒歌が色々な世界に行き、強者から姿と力を(言霊として)借りる展開を書こうと思います。どちらで見たいですか?
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前日譚
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倒れた後に、目覚めた小猫(白音)に話す