黒歌が言霊を使い、妹や仲間のために戦う物語。   作:ピック

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完結までよろしくお願いいたします。


第3話 魔王達の動揺と紅髪の魔王の決断

夜が明け、冥界の最高中枢である魔王宮の一室。

そこには、魔王であるサーゼクス・ルシファーと、セラフォルー・レヴィアタン、そして神の子を見張るもの(グリゴリ)の総督アザゼルが顔を揃えていた。

 

彼らの前に立っているのは、まだ幼さの残るリアスとソーナ。

 

二人は昨夜、木の陰から目撃した「あり得ない光景」を、記憶の限り詳細に報告した。

 

「――それで、その猫魈の少女が言霊を唱えた瞬間、黒髪のリーゼントの浅黒い肌をした男に変身したの。

その男が拳を突き出しただけで、14人が戦闘不能になったの。大地は地平線の彼方まで抉れていたわ」

 

リアスの必死の報告を聞き、いつもは陽気なセラフォルーも、この時ばかりはトレードマークの魔法少女のような笑顔を消し、真剣な表情でソーナを見つめた。

 

「ソーナちゃん。シトリーの分析眼から見て、それは悪魔の秘術や、既存の神器(セイクリッド・ギア)の類だった?」

 

ソーナは静かに首を横に振った。

 

「いいえ、お姉様。神が作ったシステムの枠組みを遥かに超えていました。

あれは魔力でも聖力でもない・・・、自然の気(仙術)とも違う、もっと純粋で暴力的、かつ完璧に統制された『野生の力』です。悪魔の常識では測定できません。あれは、別世界の存在ではないか、と考えた方が自然なくらいです。」

 

それを聞いたアザゼルが言った。

 

「神器でも魔術でもない。本人の魂に刻まれた情報を言霊で再現している・・・。経験そのものを力に変えているのか。」

 

そして、二人の言葉を裏付けるように、手元の魔力モニターに映し出された現場の破壊痕跡のデータを眺め、ふっとため息をついた。

 

「やれやれ、冗談じゃねえな。現地を調査させたが、空間そのものがへし折られたような歪みが残ってやがる。おまけに生き残った一人の悪魔は、完全に恐怖で訳のわからねえ事しか喚かねえ。・・・猫魈の小娘がそんな化け物を身に宿してるってのか?」

 

沈黙が流れる部屋の中で、現冥界の最強たるサーゼクスだけは、穏やかな、しかし全てを見通すような深い瞳で顎を撫でていた。

 

「妹を守るために禁忌を犯し、追手を戦闘不能にしたはぐれ悪魔、黒歌か。リアス、ソーナ。彼女は追手を戦闘不能にした後、先に逃がした妹を追って行ったんだね?」

 

「ええ、お兄様。彼女は追手を戦闘不能にした後、元の少女の姿に戻って・・・とても寂しげに、でも強い決意を持って、妹の白音を迎えに行っていたわ」

 

リアスの言葉に、サーゼクスは優しく微笑んだ。

 

「なら、彼女はただの残虐な人殺しではないということだ。禁忌を犯したのも、おそらくは妹を守るため、あるいは尊厳を汚されたための防衛行動だったんだろう。何より面白いのは、その『変身』の力だ。世界の理(ことわり)の外側にある力を持つ者が、冥界の野心家に利用されず、自らの意志で動いている」

 

サーゼクスは椅子から立ち上がり、リアスとソーナの前に歩み寄ると、二人の目を見つめて意外な言葉を口にした。

 

「リアス、ソーナ。これから君たちは自分自身の眷属を集め、次代の冥界を担う王(キング)として歩んでいくことになる。そこで僕からの助言だ。その黒歌という少女を、敵として討伐するのではなく、『協力者』として君たちの陣営に引き入れてみてはどうだろうか?」

 

「えっ!? 協力者、ですか?」

 

リアスは驚き、ソーナも眼鏡の位置を直しながら絶句した。

 

禁忌を犯した罪人を、自分たちの仲間に引き入れるという提案は、あまりにも破天荒だった。

 

それを聞いたアザゼルが、ニヤニヤと笑いながら口を挟む。

 

「おいおい、サーゼクス。そいつは過激な提案だな。上層部の老いぼれたちが黙っちゃいねえぞ? 主殺しの猫を囲うなんてよ」

 

「彼らには僕から上手く言っておくさ。」

 

サーゼクスは軽く肩をすくめ、再び妹たちに視線を戻した。

 

「彼女の持つ力は、確かにこの冥界のバランスを壊しかねないほど強すぎる。

だけどね、リアス。彼女が本当に『妹を守るため』だけにその力を使うなら、これほど信頼できる者はいない。力に呑まれるのではなく、大切なもののために力を振るう気高さが彼女にはある。

君が将来、本当に強いレーティングゲームのチームを作りたいなら、彼女のような『世界の規格外』と対等な信頼関係を結ぶことは、大きな財産になるはずだ」

 

サーゼクスのその言葉は、幼いリアスとソーナの心に、恐怖とは別の、新たな可能性の火を灯した。

 

「わかりました、お兄様。もしまた彼女に会う機会があったら、彼女の目を見て、その真意を確かめます。

そして、伝えます。」

 

「世界には、あなたの力を恐れる者だけではない」という事を。

 

ソーナもまた、「彼女の力の正体に、私も興味があります」と静かに闘志を燃やす。

 

魔王たちの庇護とサーゼクスの助言により、黒歌は単なる「討伐対象の凶悪なはぐれ悪魔」ではなく、「冥界が注視する特異点」となった。

 

紅髪の魔王の決断。

 

それは、恐怖ではなく信頼を選ぶ決断だった。




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次回「全宇宙の最高神、幼き雷の巫女を助ける」

黒歌が色々な世界に行き、強者から姿と力を(言霊として)借りる展開を書こうと思います。どちらで見たいですか?

  • 前日譚
  • 倒れた後に、目覚めた小猫(白音)に話す
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