冥界の一角。
黒歌は、堕天使総督アザゼルと並んで座っていた。
「いやぁ・・・まさか猫魈のお前が、こんな面白い力を持ってるとはな。」
アザゼルは興味深そうに黒歌を見る。
黒歌は苦笑した。
「色々な世界を旅しただけにゃ。でも、力はむやみに使わないって決めてるにゃ。」
アザゼルは笑った。
「その考え方があるなら安心だ。」
二人は異世界の話、神器の話、悪魔や堕天使の未来について談笑していた。
そして・・・。
「そういえば、連絡手段がないと不便だな。」
アザゼルが、懐から見慣れないデザインの携帯端末を取り出し、黒歌に放り投げた。
「それをやるよ。俺が作った特製品だ。三界のどこにいても傍受されず、足もつかない。」
黒歌は受け取った端末を見て、目を丸くした。
「魔王級の堕天使総督から、裏ルートの携帯を貰っちゃうなんて、・・・なんか変な感じにゃ。」
「細かい事は気にするな。これでいつでも俺を呼び出せるぜ。」
二人が通信登録を済ませた瞬間・・・。
黒歌の表情が変わった。
「・・・っ。」
アザゼルが気付く。
「どうした?」
黒歌は遠くを見る。
ユーハバッハから教わった「未来予知」の力。
それにより、頭の中に流れ込んできたのは・・・。
まだ出会っていない仲間たち。
リアスの眷属となる者たち。
その幼き頃の危機。
「・・・白音だけじゃない。」
「この世界には、守らなきゃいけない子がいる。」
黒歌は立ち上がった。
「朱乃・・・。」
「祐斗・・・。」
「ギャスパー・・・。」
「一誠・・・。」
「アーシア・・・。」
「ゼノヴィア・・・。」
まだ幼い彼らが、追手に襲われていた。
しかし黒歌は一人では間に合わない。
そこで、
「言霊。」
黒歌の周囲に六体の影が現れる。
それは黒歌自身の姿をした幻術であった。
「あなた達に行ってもらうにゃ。」
六体の幻術は、それぞれ別の方向へ飛んでいった。
アザゼルは驚く。
「・・・分身じゃない、幻術か。」
黒歌は頷いた。
「私は約束したにゃ。守るべき人がいるなら、力を使うって。」
そして未来を変える戦いが始まった。
山奥のある場所で、幼い姫島朱乃は追手に追い詰められていた。
母・朱璃は既に倒れ、まだ力も十分ではない朱乃に刃が迫る。
「いや、嫌・・・! お母様・・・!」
追手が残忍な笑みを浮かべ、朱乃にトドメを刺そうとしたその時、空間が揺れた。
現れたのは、ユーハバッハから教わった「未来予知」によって朱乃の危機を知った彼女が飛ばした幻術(1人目)だった。
「間に合ったにゃ。」
追手は笑う。
「一人増えただけか。邪魔をするなら、お前も一緒にあの世行きだ!」
しかし、幻影の黒歌は静かに言った。
「『生かすも殺すも気分次第』」と。
その瞬間、空間が爆ぜるような錯覚と共に姿が変わった。現れたのは、楕円形の頭部に灰色の筒状の耳、紫と青色の顔。そして『全』の字を上下対称にした模様が描かれた服を纏う――すべての宇宙の頂点に立つ存在、「全王」の姿そのものだった。
しかし、その小さな身体には「強いとか弱いとかそういった括りで話す事自体が間違い」だと確信するほどの力が宿っている。
追手は本能的に震えた。
「な、なんだ・・・、この力は・・・。」
黒歌は全王の姿のまま、真面目な顔で追手を睨んだ。
「こ、この存在に勝てるわけがない!」
それだけで、追手は一目散に逃げていった。
黒歌は元に戻り、朱乃と朱璃の元へ歩み寄る。
「もう大丈夫にゃ。」
朱乃は涙を流した。
「・・・あなたは・・・誰ですか?」
黒歌は微笑む。
「私とは、未来で会う事になるにゃ。」
「あなたはその時、とても強くて優しい悪魔になっているにゃ。」
幻影は消える。
しかし朱乃の心には、その姿が残った。
未来。
彼女がリアス・グレモリーの女王(クイーン)となり、大切な仲間たちと共に戦う時、彼女の脳裏にはいつも、自分たちを救ってくれた、理不尽なまでに優しく無敵だった「神」の光が、未来を照らす希望として残り続けるのだった。
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次回「闇の料理人、幼き魔剣使いを助ける」
黒歌が色々な世界に行き、強者から姿と力を(言霊として)借りる展開を書こうと思います。どちらで見たいですか?
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前日譚
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倒れた後に、目覚めた小猫(白音)に話す