冥界の一角。
黒歌は、堕天使総督アザゼルと並んで座っていた。
「いやぁ・・・、まさか猫魈のお前が、こんな面白い力を持ってるとはなぁ。」
アザゼルは興味深そうに黒歌を見る。
黒歌は苦笑した。
「色々な世界を旅しただけにゃ。でも、力はむやみに使わないって決めてるにゃ。」
アザゼルは笑った。
「その考え方があるなら安心だ。」
二人は異世界の話、神器の話、悪魔や堕天使の未来について談笑していた。
そして・・・。
「そういえば、連絡手段がないと不便だな。」
アザゼルが懐から見慣れないデザインの携帯端末を取り出し、黒歌に放り投げた。
「それをやるよ。俺が作った特製品だ。三界のどこにいても通信できる。しかも傍受対策も完璧だ。」
黒歌は受け取った端末を見て、目を丸くした。
「三大勢力の一角を担う堕天使総督から、裏ルートの携帯を貰っちゃうなんて・・・、なんか変な感じにゃ。」
「細かいことは気にするな。これでいつでも俺を呼び出せるぜ。」
「ありがとにゃ、アザゼル。」
二人が通信登録を済ませた、その時だった。
アザゼルがふと思い出したように口を開く。
「そういや、お前。サーゼクスやミカエルとは連絡先を交換してないのか?」
アザゼルがそう言った直後、少し離れた場所から穏やかな声が聞こえてきた。
どうやらサーゼクスとミカエルも、別件の話し合いを終えたところだったらしい。
アザゼルは笑う。
「ちょうどいいじゃねえか。三界のトップクラスが揃ってるんだ。今のうちに交換しちまえ。」
サーゼクスは微笑みながら、自分の通信端末を取り出した。
「黒歌さん。今後、あなたがオカルト研究部の協力者として活動するなら、私とも直接連絡が取れるようにしておいた方がいいでしょう。」
黒歌は少し驚きながらも、端末を取り出す。
「サーゼクスから直接連絡が来るなんて、なんだか大変なことになってきたにゃ。」
「何かあった時だけで構いません。あなたが守ろうとしている方々に危険が迫った時は、遠慮なく連絡してください。」
その言葉に、黒歌は穏やかに微笑んだ。
「分かったにゃ。」
2人の端末が接続される。
通信登録完了。
「これで私の連絡先は登録されました」
「ありがとにゃ、サーゼクス。」
続いてミカエルが一歩前に出る。
「では、私とも交換しましょう。」
「ミカエルとも?」
「はい。三大勢力が争うのではなく、協力できる未来を作るためにも、直接連絡できる手段は必要です。」
黒歌はミカエルを見る。
その表情に敵意はない。
むしろ、未来を見据えた穏やかな決意があった。
「・・・そういうことなら、ぜひお願いするにゃ。」
ミカエルも端末を取り出す。
「登録しますね。」
ミカエルの端末も接続される。
通信登録完了。
これで黒歌の端末には、アザゼル、サーゼクス、ミカエルという三大勢力を代表する3人の連絡先が登録された。
黒歌は画面を見つめ、思わず苦笑する。
「・・・私の携帯、すごいことになってきたにゃ。」
アザゼルが豪快に笑った。
「ははは!そりゃそうだ。魔王と大天使と堕天使総督の連絡先が入ってるんだからな!」
サーゼクスも微笑む。
「ですが、それだけではありません。」
「?」
「黒歌さん。あなたはこれから、多くの人たちと関わっていくでしょう。その中には、あなたの力を必要とする者もいるはずです。」
ミカエルが続ける。
「だからこそ、連絡先という小さな繋がりを大切にしてください。それが、三界の新しい関係を作るきっかけになるかもしれません。」
黒歌は3人を見つめる。
そして、優しく笑った。
「・・・分かったにゃ。」
「私が望むのは、誰かを支配する未来じゃないにゃ。」
「白音や、リアスたち、オカルト研究部のみんなが、自分たちの未来を自分たちで選べること。」
「そのために必要な時だけ、私は力を使うにゃ。」
アザゼルは満足そうに頷く。
「それでいい。」
その瞬間・・・。
黒歌の表情が変わった。
「・・・っ」
サーゼクスが気付く。
「どうしました?」
黒歌は遠くを見る。
ユーハバッハから授かった「未来視」の力。
それにより、頭の中に流れ込んできたのは・・・。
まだ幼い彼女たちや、未来の仲間が追手に襲われる未来であった。
「・・・白音だけじゃない。」
黒歌は静かに呟く。
「この世界には、守らなきゃいけない子がいる。」
黒歌は立ち上がった。
「朱乃・・・。」
「祐斗・・・。」
「ギャスパー・・・。」
「一誠・・・。」
「アーシア・・・。」
「ゼノヴィア・・・。」
「ロスヴァイセ・・・。」
しかし、黒歌1人では間に合わない。
そこで・・・。
黒歌は言霊を使った。
黒歌の周囲に、7体の幻術が現れる。
これらは、単なる分身ではない。
それぞれが黒歌の言霊によって異世界の強者の姿と力を宿した、独立した幻術だった。
「あなたたちに行ってもらうにゃ。」
7体の幻術。
それぞれが、黒歌が救うと決めた7人のもとへ向かっていく。
アザゼルは驚いた。
「・・・分身じゃない。幻術か。」
黒歌は頷く。
「私は約束したにゃ。」
「守るべき人がいるなら、力を使うって。」
そして・・・。
未来を変える戦いが始まった。
山奥のある場所。
幼い姫島朱乃は、追手に追い詰められていた。
母・朱璃はすでに倒れ、まだ力も十分ではない朱乃に危機が迫る。
「いや・・・、嫌・・・! お母様・・・!」
追手が朱乃へ迫った、その時・・・。
空間が揺れた。
現れたのは、ユーハバッハから授かった「未来視」によって朱乃の危機を知った黒歌が飛ばした幻術(1人目)だった。
「間に合ったにゃ。」
追手は笑う。
「1人増えただけか。邪魔をするなら、お前も一緒に倒してやる!」
しかし、幻術の黒歌は静かに言った。
「『ぼくが消せば、それで終わり』」
その瞬間・・・、世界が一瞬だけ静まり返った。
幻術の黒歌の姿は、いつの間にか全王そのものへと変わっていた。
その小さな身体から放たれる気配は、「強い」「弱い」などという言葉では到底測れない。
そこに立っているだけで、世界そのものが彼女の存在を当然のものとして受け入れているかのようだった。
追手は理解した。
戦ってはいけない。
本能がそう告げている。
「な、なんだ・・・、この力は・・・。」
幻術の黒歌は全王の姿のまま、真っ直ぐに追手を見つめる。
追手は武器を投げ捨てた。
「こ、この存在に勝てるわけがない!」
そして、一目散に逃げていった。
幻術の黒歌は元の姿に戻り、朱乃のもとへ歩み寄る。
「もう大丈夫にゃ。」
朱乃は涙を流しながら尋ねた。
「あなたは・・・、誰ですか?」
黒歌は優しく微笑む。
「あなたとはきっと、未来でまた会うにゃ。」
「その時は、とても強くて、優しい悪魔になってるにゃ。」
幻術は消えていく。
しかし・・・。
朱乃の心には、その姿が残った。
未来。
彼女がリアス・グレモリーの女王となり、大切な仲間たちと共に戦う時。
彼女の脳裏にはいつも、自分を救ってくれた存在の姿が残っていた。
理不尽なほど強く。
それなのに、とても優しかった存在。
その姿は、長い年月を経ても消えることなく、彼女の未来を照らす小さな希望として、残り続けるのだった。
感想や、誤字脱字の報告などお待ちしています!
次回「闇の料理人、幼き魔剣使いを助ける」
※黒歌はユーハバッハから授かった「未来視」で、未来を見られますが、未来は常に無数に分岐しているため、すべての未来を完全に把握できるわけではありません。
黒歌が色々な世界に行き、強者から姿と力を(言霊として)借りる展開を書こうと思います。どちらで見たいですか?
-
前日譚
-
倒れた後に、目覚めた小猫(白音)に話す