バトルスピリッツ ソウルライダーズ   作:バナナ 

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第1話「出陣、仮面ライダー鎧武」

 

 

 

バトルスピリッツ。

 

それは、カードとコアを使い、スピリットと言う名のモンスター達と共に戦う、大人気カードバトル。

 

バトルスピリッツプレイヤーの総称「カードバトラー」達は、自分のカードにコアと魂を乗せ、今日もどこかで、熱いバトルを繰り広げている。

 

 

******

 

 

ここは、バトルスピリッツが盛んな日本の都市の1つ「龍皇市(りゅうおうし)」……

 

その中でも、比較的田舎寄りの区域。

いつ人や車が通過しようとしてもおかしくないと言うにもかかわらず、通せんぼするように道を阻み、バトルスピリッツを行っていたカードバトラーが2人。

 

それも、一般的なテーブルでやるバトルスピリッツではない。流行りの、「Bパッド」と言う専用の端末を腕に装着し、立体映像としてスピリットを実際に召喚して戦う最先端技術を駆使したバトルだ。

 

 

「オマエのライフは残り1。どうやらオレの勝ちは決まったようだな!!」

 

 

2人のカードバトラーは、いずれも10代前半程度の少年。

 

その内の1人、ハリセンボンのような見た目のスピリットを自軍に3体揃えている坊主頭の少年が、もう1人の赤キャップと、それをずらす程に大きく跳ねた黒髪の少年に向かって、そう言った。

 

確かに、赤キャップの少年の残りライフは1つな上に、スピリットを1体も従えていない。坊主頭の少年が勝ったと自負するだけの状況にはなっている。

 

 

「へへ」

 

 

しかし。絶体絶命の状況の中、赤キャップの少年は、鼻下を指で擦りながら笑みを浮かべた。

 

 

「な、何笑ってやがる」

 

 

坊主頭の少年が、やや動揺を見せながら、赤キャップの少年に訊いた。

 

今にも敗北してしまうかもしれないと言う間際だ。抱いて当然の疑問だろう。

 

 

「別になんでもねぇよ。ただ来ただけさ、オレの流れが」

 

 

すると、赤キャップの少年は、一発逆転を狙うべく、ある1枚のカードを手札から引き抜き、それを左腕に装着したバトル専用端末Bパッドへと叩きつける。

 

 

「召喚。仮面ライダー鎧武(がいむ)!!」

 

 

赤キャップの少年の場に呼び出されたのは、短刀と刀を持つ二刀流の侍。頑強な橙色の鎧は、紛れもない強者の証。

 

 

「行くぜ、アタックステップ。鎧武でアタック!!…そして、フラッシュタイミング。マジックカードを使って、逆転だ!!」

「な、なに!?」

 

 

走り出す鎧武。その間、道を阻もうとしたハリセンボンのようなスピリット達は、どこからともなく放たれた火炎弾に焼き尽くされる。

 

これは、赤キャップの少年が手札に溜め込んでいた一発逆転のカード。ここぞと言う時のために手札に温存していたのだ。

 

その戦術が功を奏し、鎧武は坊主頭の少年の眼前へと辿り着く。

 

 

「いっけぇぇぇ!!…鎧武!!」

「あぁそんな。ら、ライフで受ける」

 

 

最早なす術はなく、坊主頭の少年は攻撃を受け入れる。

 

鎧武は手に持つ蜜柑の断面を模した短刀で、彼の前方に展開された半透明のバリア、ライフバリアを両断。赤キャップの少年に、このバトルの勝利を齎した。

 

 

「よっしゃァァァァ!!……オレの勝ちだぜ」

 

 

己の勝利に腕を曲げ、サムズアップする赤キャップの少年。役目を終えた鎧武は、短刀の逆刃を肩に当てると、この場からゆっくりと消滅して行った。

 

 

「クソォまた負けた。今度こそは勝てると思ったのになぁ。相変わらず強ぇ」

「でも、スリリングでスッゲェ楽しかったぜ。またやろうな!」

 

 

バトルに負けた悔しさから首を垂れる坊主頭の少年に、赤キャップの少年は、屈託のない笑顔を見せながら手を差し伸べる。

 

 

「もちろんさ、次は負けないぞ」

 

 

坊主頭の少年は、悔しさを超え、清々しい表情を浮かべると、赤キャップの少年に差し出された手を取った。

 

 

「おう、いつでも相手になってやるぜ。あっ!!」

 

 

握手を交わしながら語らう2人。すると、赤キャップの少年が、何かを思い出したかのように、声を荒げる。

 

 

「ビビった。どうしたんだよ急にデケェ声なんか出して」

「今何時?」

「え、11時だけど」

「やばい、完全に遅刻だ。悪り、オレ行かなきゃ、そんじゃあな!!」

 

 

赤キャップの少年は慌てた様子で走り去って行く。その様子を見た坊主頭の少年は、「そそっかしい奴だな」と笑った。

 

 

******

 

 

赤キャップの少年の名は「花道(はなみち)ナガレ」。バトルスピリッツが大好きな、至って普通の中学1年生だ。

 

バトルスピリッツのチャンピオンを目指す彼は、今日も親友「原田(はらだ)マサル」と、バトルの特訓に励む。

 

はずだった。

 

いつも集合場所にしている河川敷で、そのマサルが傷だらけになって倒れているのを目にするまでは。

 

 

「なッ……ま、マサル!?…どうしたんだよ、おい、しっかりしろ、マサル!!」

 

 

ナガレは、目に映った瞬間に、傷つき横たわる、たらこ唇が特徴的な少年、マサルの元へ駆け寄る。

 

 

「な、ナガレ。今すぐここから逃げろ」

「逃げろ……?」

「いいから、早くアイツから逃げるんだ……!」

 

 

弱り切ったマサルが振り絞った言葉。それを聞いたナガレは、ようやく、もう1人の存在がこの場にいることに気がついた。

 

 

「なんだオマエ、たらこ君のダチか?」

「マサルをやったのはオマエか……!!」

「質問を質問で返すなよ。あぁそうさ。そいつは、バトルスピリッツのカードバトルでオレに挑み、負けた」

「ッ……それは、マサルのデッキ!?」

 

 

バンダナが印象的な小太りの少年は、マサルのデッキを見せつけながら、ナガレに告げた。

 

 

「なんでオマエがマサルのデッキを持ってんだ」

「あぁ、この『紙束』のことか?…これならもうオレのもんだぜ」

 

 

親友マサルの魂を込めて作ったデッキのことを「紙束」と馬鹿にされたことで、ナガレは眉間に皺を寄せる。

 

 

「敗者は勝者にカードを捧げる。それが『プレイキラーズ』の掟だからな」

「プレイキラーズ……??」

「人から無理矢理カードを奪う、不良集団だ」

 

 

「プレイキラーズ」と言う単語に首を傾げたナガレに、マサルが簡潔に説明する。

 

その途端に気が大きくなったのか、小太りの少年は、何かを大きく主張するかのように、腕を大きく広げて。

 

 

「そう。オレはそのメンバーの1人、『毒島(ぶすじま)トミオ』。オレと出会っちまったのが、そいつの運の尽きよ。ガハハハ!!」

 

 

プレイキラーズの一味、毒島トミオは、マサルのデッキを手に高笑い。彼の見下した態度、そしてその卑劣な行いに、ナガレは苛立ちを覚える。

 

 

「何が運の尽きだ。このデブ野郎!!」

「誰がデブだ!!」

「オマエ、どうかしてるぜ。オレ達カードバトラーにとって、カードは一緒に戦ってくれる仲間だ、友達だ。それを奪うなんて」

 

 

ナガレは、今にも毒島に向かって殴り掛かって行きそうな勢いのまま、そう言い放った。

 

しかし、毒島には何も響いていないのか、彼はその口角を上げて。

 

 

「ガハハハ!!!……馬鹿か。カードはバトルをするための道具。使えるカードはデッキに入れて、使えないカードは捨てる。それだけだ。仲間だの友達だの。とんだお笑いだぜ」

「なにぃ!!」

「どうしてもコイツを奪い返したいなら、バトルでオレに勝つんだな。ただし、負けたらオマエのデッキもオレの物だ」

 

 

毒島は、マサルのデッキをズボンのポケットに仕舞い、代わりに自分のデッキであろうカードの束を取り出し、それをナガレに突き付ける。

 

バトルスピリッツの戦いの誘いだ。勝てばマサルのデッキを取り戻せると聞いて、熱血漢のナガレが、それを断るわけがない。

 

 

「上等だ。やってやんよ!!」

「待てナガレ。アイツは強い、いくらオマエでも」

 

 

勢いのままに、自分のデッキとBパッドを取り出したナガレを、マサルは咄嗟に言葉で制止させる。

 

 

「へへ。大丈夫だってマサル。オマエのデッキは、必ず取り返して見せる」

「ナガレ……」

 

 

しかし、こうなったナガレは、もう誰にも止められない。ナガレはマサルの制止を振り切り、毒島とバトルスピリッツを行うべく、数歩程前へ出る。

 

 

「さっきの言葉、忘れんなよ。マサルのデッキは返して貰うぜ」

「ボケが。それはオマエが勝てたらの話だ。プレイキラーズに楯突いたことをたっぷり後悔させてやる」

 

 

互いにBパッドの電源をオンにし、腕に添えると、自動的にアームロックが腕に巻き付き、スライド式でバトルに使うプレート部分が展開。最後にデッキを溝部に装填し、バトルの準備を完全に完了させる。

 

 

「行くぞ赤帽子」

「おう!!」

 

 

……ゲートオープン、界放!!

 

 

龍皇市の河川敷にて、デッキを賭けた、花道ナガレと、プレイキラーズの一味、毒島トミオによるバトルスピリッツが、「ゲートオープン、界放」のコールと共に幕を開ける。

 

先攻はナガレだ。親友マサルのために、ターンを進めて行く。

 

 

[ターン01]花道ナガレ

 

 

「メインステップ。オレは、仮面ライダー鎧武 オレンジアームズをLV1で召喚!!」

 

 

ー【仮面ライダー鎧武 オレンジアームズ】LV1(1)BP1000

 

 

手札にある1枚のカードを、Bパッドのプレートへと叩きつけるナガレ。

 

すると、彼の側のフィールドに、橙色の甲冑を纏う、1人の侍が出現する。

 

 

「赤属性のライダーデッキか。結構良い物持ってんじゃねぇか、そいつもオレがいただくぜ」

「バカ言いやがれ!!…オレンジアームズの召喚時効果発揮。オレのデッキを上から3枚オープンして、その中にある対象となるカード1枚を手札に加えて、残りをデッキの下に戻す」

 

 

このバトルのスピリット第1号、鎧武の特殊効果が発揮。ナガレはデッキから「龍玄 (りゅうげん)ブドウアームズ」のカードを手札に加えた。

 

 

「ターンエンド。さぁオマエのターンだぜデカブツ!!」

手札:5

場:【仮面ライダー鎧武 オレンジアームズ】LV1

 

 

感情的には直ぐにでも攻撃に転じたかったナガレ。しかし、第1ターン目のみアタックステップが行えないルールがあるため、ここは潔くターンエンドを宣言。

 

次は毒島のターンとなる。

 

 

[ターン02]毒島トミオ

 

 

「メインステップ。いきなり良いカードが来たぜ。ブギールガーをLV1で召喚!!」

 

 

ー【ブギールガー】LV1(1S)BP5000

 

 

毒島もまた、手札のカード1枚をBパッドのプレートへと叩きつけると、鬼と獣を混合させたような異形の怪物が姿を見せる。

 

 

「オレもアイツにやられたんだ。気をつけろナガレ!!」

 

 

バトルを見守るマサルが、ナガレに向かってそう叫んだ直後、毒島は野太い声で「アタックステップ!!」と強く宣言して。

 

 

「ブギールガー、やっちまいな!!」

 

 

棍棒を強く握り締め、ブギールガーが雄叫びを上げながら、ナガレの元へと迫る。

 

 

「ライフで受ける!!」

 

 

〈ライフ5→4〉花道ナガレ

 

 

「くっ……」

 

 

棍棒をナガレに向かって振り下ろすブギールガー。

 

すると、ナガレの前方に五重に重なった半透明のバリアが出現し、それ受け止める。そしてその内の1枚が割れ、ナガレを守った。

 

これは、ライフバリア。バトルスピリッツのルールである5つのライフを表す五重の結晶。それらが全て破壊された瞬間、そのカードバトラーは敗北となるのだ。

 

 

「ガハハハ!!……オレはこれでターンエンドだ」

手札:4

場:【ブギールガー】LV1

 

 

ナガレから先制点を奪い、勢いづく毒島。高笑いしながら、そのターンをエンドとする。

 

これにより、バトルは2周目を迎え、ナガレの二度目のターンが始まる。

 

 

[ターン03]花道ナガレ

 

 

「メインステップ。今度はコイツ、仮面ライダー龍玄 ブドウアームズを召喚」

 

 

ー【仮面ライダー龍玄 ブドウアームズ】LV1(1)BP3000

 

 

ナガレの2体目となるスピリットがフィールドに出現。

 

ブドウの名に違わない紫色の甲冑と、ブドウ房を模したショットガンを装備したライダー、龍玄だ。

 

 

「さらに行くぜ、ソウルコア、セットオン!!…龍玄にソウルコアを置き、龍玄の【真界放】を発揮!!」

 

 

ー【仮面ライダー龍玄 ブドウアームズ】真界放(2S)BP5000

 

 

ナガレは多くあるコアの中でも、一際大きくて赤色のコアを、龍玄のカードの上に置く。すると龍玄は赤いオーラを纏い、明らかなパワーアップを果たす。

 

 

「チッ…ソウルコア1つでLV2相当の力を得ることができる【真界放】か」

「あぁ、これで龍玄のBPはブギールガーと並んだぜ」

 

 

ソウルコア。

 

それは、カードの真の力を解放するために必要な、特別なコア。その重要性と、どんなカードバトラーであっても1つしか持つことを許されないことから、「カードバトラーの魂その物」と称されることもある。

 

 

「アタックステップ。龍玄でアタックだ!!」

 

 

そのソウルコアの力で【真界放】を発揮させた龍玄の攻撃。ショットガンから紫色のエネルギー弾を放つ。

 

 

「ライフで受けてやるぜ」

 

 

〈ライフ5→4〉毒島トミオ

 

 

前のターンにアタックに参加したスピリットは、基本的にブロックはできない。毒島は疲労状態となっているブギールガーを横目に、龍玄のアタックをライフで受ける宣言。

 

龍玄の放った紫色のエネルギー弾は、毒島のライフバリアに直撃し、その1枚目を破壊した。

 

 

「メインステップ2。オレは残ったコアを1つ、鎧武に追加して、ターンエンドだ」

手札:5

場:【仮面ライダー鎧武 オレンジアームズ】LV1

【仮面ライダー龍玄 ブドウアームズ】真界放

 

 

LVは上昇しないが、ナガレは鎧武にコアを1つ追加したのちに、そのターンをエンドとする。

 

 

[ターン04]毒島トミオ

 

 

「メインステップ。オレはもう1体ブギールガーを召喚。LV2だ」

 

 

ー【ブギールガー】LV2(3)BP8000

 

 

「BP8000……!?」

「ガハハハ!!…【真界放】がなんだってんだ。ブギールガーのパワーには遠く及ばねぇよ!!」

 

 

毒島は2体目のブギールガーを召喚。

 

そのステータスは、LV2でBP8000。この場にいるどのスピリットよりも強い。

 

バトルスピリッツは、ライフを奪い合うゲームだが、それ故にスピリットの質も要求される。BPの高いスピリットを従えている毒島は、この時点で、優位に立っていると言っても過言ではない。

 

 

「アタックステップ。LV2のブギールガーでアタック」

 

 

早速動き出したLV2のブギールガー。ナガレは鎧武でブロックすることも可能だが、無闇にそうして仕舞えば、スピリットの頭数を失うこととなる。

 

 

「ライフで受ける!!」

 

 

〈ライフ4→3〉花道ナガレ

 

 

故にここはライフで受ける宣言。ブギールガーは、棍棒の先端部を、ナガレのライフバリアへと打ち付け、それをまた1つ粉々にした。

 

 

「どうした、ビビって手も足も出やしねぇか!!…それ、LV1のブギールガーでもアタックだ」

 

 

ライフダメージによる反動で仰反るナガレを目に映すなり、毒島は残ったLV1のブギールガーで追撃の宣言。

 

その途端、ナガレの口元が上がる。

 

 

「油断したなデカブツ」

「なに」

「そのアタックは、鎧武でブロック!!」

 

 

ブギールガーの棍棒による一撃を、鎧武が短剣と刀を用いて受け止める。

 

そのBPは僅か1000。5000もあるブギールガーには遠く及ばないが………

 

 

「血迷ったか。ブギールガー、捻り潰してしまえ!!」

 

 

邪魔者の息の根を止めようと、ブギールガーが鎧武に向かって再び棍棒を振り下ろす。

 

 

「フラッシュタイミング。龍玄の効果を発揮。鎧武に自身のソウルコア以外のコア1つを移動させ、ターン中、そのBPを+3000する」

「!」

「そして、コアの移動により、鎧武はLV2へ。鎧武のLV2のBPは3000。そこに龍玄の+3000が加わって」

「合計BP6000だと!?」

「ご明察、ブギールガーを返り討ちにしてやれ、鎧武!!」

 

 

ここでナガレが発揮させたのは、龍玄の効果。龍玄のカード上にあるコア1つが鎧武のカード上へと移動することで、その力を大きく上昇させる。

 

フィールドでは、淡い赤色のオーラを纏ってパワーアップを果たした鎧武が、ブギールガーの棍棒による一撃を短剣で押し返し、そのまま刀で棍棒ごとブギールガーを一刀両断。

 

ブギールガーはそのまま爆散、このバトル初のBP比べは、鎧武の勝利で幕を下ろす。

 

 

「ば、馬鹿な。オレのブギールガーが、あんな弱小スピリットに」

 

 

BP1000のスピリットを6000にした凄技に、毒島は信じられないと言った表情。

 

 

「うおぉ!!…ナガレ、スゲェェェ!!」

「おうよ、このままサクッとオマエのデッキを取り返してやるぜ」

 

 

強敵相手に親友が披露した神プレイに興奮するマサル。内心で、これならば勝てるかもしれないと言う希望を抱き始める。

 

 

「つーことでだ。さっさとターンエンドしやがれデカブツ」

「くっ……調子に乗りやがって。ターンエンド」

手札:4

場:【ブギールガー】LV2

 

 

雑魚だと思っていたナガレに一杯食わされてしまったことで、怪訝な表情を浮かべる毒島。

 

今直ぐにでもやり返してやりたい気持ちで一杯だっただろうが、それは叶わず。アタックにより疲労状態となった、LV2のブギールガー1体を従えたまま、ターンエンドを宣言する。

 

 

[ターン05]花道ナガレ

 

 

「メインステップ。一気に行くぜ。鎧武をもう1体召喚だ」

 

 

ー【仮面ライダー鎧武 オレンジアームズ】LV1(2)BP1000

 

 

「召喚時効果、デッキから3枚オープンして、その内の1枚を手札に」

 

 

勢いに乗るナガレは、ここで2体目の鎧武を召喚。その効果で「鎧武 ジンバーレモン」のカードを新たに手札へ加えた。

 

 

「1体目の鎧武のLVを1にダウン。取ったコアを、再び龍玄に回す」

 

 

スピリットのコアが調整され、3体のスピリットに2個ずつのコアが置かれる形となった。

 

これで前のターンと同様に、龍玄からコア1つを鎧武に移すことで、鎧武をパワーアップさせることが可能となる。

 

 

「アタックステップ。龍玄でアタック!!」

 

 

まさに攻防一体の完璧な布陣が整った。ナガレはさらにライフを破壊するべく、龍玄へとアタックの指示を送る。

 

しかし、これしきで敗北してしまう程、毒島も甘い敵ではなくて。

 

 

「ガハハハ、待ってたぜ、その単調な攻撃をよぉ」

「!」

「フラッシュタイミング。ソウルマジック、ソウルバイトを使用」

 

 

ここで毒島は、手札にあるカード1枚を引き抜き、それを使う。

 

そのカードは、「マジックカード」と言う、バトルをサポートする定番のカードなのだが、この「ソウルバイト」と呼ばれるカードは、他とは一線を画す力を持っており……

 

 

「ソウルマジックは、ソウルコア1つでコストを賄える特別なマジックカード。よって、オレはこのソウルバイトの効果を、ソウルコア1つのみで使う。その効果でアタック中の龍玄からコアを2つリザーブ送りにする」

「なに!?」

 

 

ソウルコア1つでコストを確保する強力なマジックカード、ソウルマジックが超動。

 

毒島のライフバリアを撃ち抜こうとショットガンを構えた龍玄に、突如紫色のオーラが纏わりつくと、その体内に眠るコア2つが弾け飛び、消滅へと追い込まれてしまう。

 

 

「どうだ、これでもうその侍共はパワーアップできまい」

「くっ……ならアタックだ、鎧武!!」

 

 

苦し紛れのアタック宣言。

 

2体いる鎧武の内1体が、短剣と刀を手に攻撃を仕掛けに行く。

 

 

「それはライフで受けてやる」

 

 

〈ライフ4→3〉毒島トミオ

 

 

毒島にブロックできるスピリットはいない。鎧武は短剣と刀を一度ずつ振い、彼のライフバリア1枚を斬り落とした。

 

 

「……ターンエンド」

手札:6

場:【仮面ライダー鎧武 オレンジアームズ】LV1

【仮面ライダー鎧武 オレンジアームズ】LV1

 

 

鎧武1体をブロッカーとして残し、ナガレはターンエンドを宣言。

 

毒島のライフは破壊できたものの、彼の思わぬカウンターにより、龍玄を失ってしまった損失はかなり大きい。

 

 

[ターン06]毒島トミオ

 

 

「メインステップ。3体目のブギールガー!!」

 

 

ー【ブギールガー】LV1(1)BP5000

 

 

毒島はまたしてもブギールガーだ。あくまでも圧倒的なパワーの差で、ナガレを追い詰めるつもりなのだろう。

 

 

「アタックステップ。LV2のブギールガーでアタック。さらにこのフラッシュタイミングで、2枚目のソウルバイトを使用!!」

「!」

「今度は鎧武のコアをリザーブ送りにしてやるぜ」

 

 

まさかの2枚目のソウルバイト。今度はブロッカーとして残っていた鎧武が、その紫色のオーラの餌食となり、消滅してしまう。

 

 

「これでブロッカーは消えた。ブギールガーの一撃をくらいやがれ」

「くそ、ライフで受ける」

 

 

〈ライフ3→2〉花道ナガレ

 

 

「ぐぁぁあ!?!」

 

 

ブギールガーが棍棒を振り下ろし、三度ナガレのライフバリアを玉砕。

 

これでナガレの残りのライフバリアは僅か2枚。遂に追い詰められてしまう。

 

 

「メインステップ2。2体のブギールガーのコアを移動させ、2体のLVを入れ替える。ターンエンド。ガハハハ!!…少しはやれると思ったが、所詮はこの程度、プレイキラーズの毒島様の足元にも及ばんわ!!」

手札:2

場:【ブギールガー】LV1

【ブギールガー】LV2

 

 

毒島は高笑いしながらターンエンドを宣言。LV2で、BP8000のブギールガーがブロッカーとして構えている。

 

 

「も、もうダメだ。やっぱり無理だったんだ。プレイキラーズに勝つだなんて」

 

 

カード1枚1枚のパワー差が如実に現れ始めた、この数ターン。ナガレの勝利と言う希望を信じていたマサルが絶望を抱くには、あまりに十分過ぎる状況だった。

 

 

「ナガレ、もうやめろ。オマエは十分頑張った。オレのカードなんかのために、これ以上オマエが身体を張る必要なんかない。サレンダーして、逃げてくれ」

 

 

マサルがナガレに告げた。

 

自分のカードと親友のカードが天秤に賭けられているこの状況で、彼は親友のカードを選んだ。

 

 

「オマエは、バトスピチャンピオンになるんだろ!?」

「マサル……」

「ガハハハ!!…そのたらこ君の言う通りだ。今なら見逃してやる、ほら、さっさと尻尾巻いて逃げな」

 

 

ナガレが感じたのは、自分のカードを犠牲にしてでも、友を助けたいと言う、マサルの優しさだった。

 

その温かい気持ちが、ナガレに自然な笑みをこぼれさせる。

 

 

「何言ってんだよマサル。未来のバトスピチャンピオンになる奴が、目の前のバトルから逃げるわけねぇだろ?」

「でも、オマエ、このままじゃ」

「大丈夫だ。だってここからは、オレの流れだからな」

 

 

当然、ナガレははなから逃げるつもりなどない。親友であるマサルが逃げない選択をしたのだから、当たり前である。

 

しかし状況は絶望的。どう見ても勝機が見出せるようには見えないが………

 

 

「ガハハハ!!…赤帽子。オマエは今、最後のチャンスを逃したぞ。せっかくたらこ君がオマエを逃がそうとしてくれたのにな」

「……」

「オレの流れ?…洒落たこと言いやがって。オマエはもう終わりなんだよ」

 

 

自身の勝ちを確信している毒島が、ナガレにそう告げて来た。

 

 

「終わらねぇよ。目の前のバトルからは逃げず、楽しむ。それがオレ、花道ナガレだからなぁ!!」

 

 

バトルスピリッツへの絶え間ないモチベーションを燃やす熱きカードバトラー、花道ナガレ。

 

勝利を目指し、巡って来たターンを、全身全霊で進めて行く。

 

 

[ターン07]花道ナガレ

 

 

「ドローステップ……!!」

 

 

このターンのドローステップ。ナガレはデッキから引いた1枚のカードを目に映すや否や、口角を上げる。

 

 

「ほらやっぱり。オレの流れが来やがった。メインステップ、鎧武から1コア借りて、先ずは2体目の龍玄を召喚。ソウルコア、セットオン。真界放だ」

 

 

ー【仮面ライダー龍玄 ブドウアームズ】真界放(2S)BP5000

 

 

「そして次はコイツ、鎧武 シンバーレモンをLV1で召喚」

 

 

ー【仮面ライダー鎧武 ジンバーレモンアームズ】LV1(2)BP4000

 

 

窮地の中、ナガレが呼び出したスピリットは、2体目の龍玄と、陣羽織のような甲冑を纏う、新たな鎧武、ジンバーレモンアームズ。

 

 

「今さら新手を出しても無駄無駄ぁ!!」

「無駄かどうかはこれからわかるぜ。アタックステップ、ジンバーレモンでアタック!!」

 

 

BP4000のジンバーレモンでアタックを仕掛けるナガレ。BP8000のブギールガーがブロッカーとして立つ中、一見無謀とも取れる選択だが……

 

 

「フラッシュタイミング。龍玄の効果、ジンバーレモンにコア1つを移動させて、BP+3000。ジンバーレモンのLVが2になったことで、合計BPは9000だ」

「BP9000だと!?」

 

 

そう。ジンバーレモンもまた、鎧武の名を持つスピリット。龍玄の効果でBPを上げることが可能なのだ。

 

ナガレはそれを活かし、一時的だが、ジンバーレモンのBPを、9000にまで引き上げる。

 

 

「くっ……だが、こっちのライフはまだ3つも残ってんだ。1つくらい、持って行きやがれ」

 

 

〈ライフ3→2〉毒島トミオ

 

 

「ぐぉっ!?」

 

 

ジンバーレモンは、手に持つ赤いアーチェリーでエネルギー状の矢を放ち、毒島のライフバリア1枚を射抜く。

 

 

「は、ガハハハ!!……少し驚いたが、結局はライフを1つ奪っただけ、てんで大した事ねぇ、オレの勝ちだ」

「それはどうかな?」

「なに」

「見せてやるぜ。ここからの、オレの流れ」

 

 

ナガレはそこまで告げると、Bパッド上にあるジンバーレモンのカードへと手を添える。

 

 

「メインステップ2。ジンバーレモンの【F(フォーム)チェンジ】の効果を発揮……!!」

「な、【Fチェンジ】だと!?」

 

 

【Fチェンジ】……

 

それは、数多あるバトルスピリッツカードの中でも、ライダーカードにのみ許された力。自身の疲労、即ちアタック後をトリガーに、手札の新たなる姿へと変身することが可能となる効果である。

 

 

「疲労状態のジンバーレモンを手札に戻して、オレはこの運命のドローカードをノーコスト召喚する。来い、鎧武 カチドキアームズ!!」

 

 

ー【仮面ライダー鎧武 カチドキアームズ】LV2(2)BP8000

 

 

ジンバーレモンは、オレンジのような形をした錠前を、腰のライダーベルトにはめ、剣の形をしたスイッチをタップ。すると、上空に異次元へのクラックが開き、そこから橙色の重厚な甲冑が、ジンバーレモンに覆い被さり、それを変身させる。

 

そして、角笛の音と共に、武将然とした出立ちのライダー、鎧武 カチドキアームズが、ここに爆誕した。

 

 

「カチドキアームズのFチェンジ時効果、BP6000以下のスピリット1体を破壊する」

「!」

「LV1のブギールガーを破壊だ」

 

 

カチドキアームズは、まるで火縄銃のような形をした大きな銃型の武装を手に持つと、その銃口から、様々な果実型エネルギーを内包した極彩色の巨大な弾を発射し、毒島のフィールドにいるブギールガーを容易く爆散させる。

 

 

「お、オレのブギールガーが一撃!?」

「龍玄に1コア追加して、ターンエンド。さぁどんと来やがれ!!」

手札:5

場:【仮面ライダー鎧武 カチドキアームズ】LV2

【仮面ライダー鎧武 オレンジアームズ】LV1

【仮面ライダー龍玄 ブドウアームズ】真界放

 

 

強力なライダーカード、カチドキアームズの召喚により、ナガレの流れが来た所で、ターンは一度、毒島へと移る。

 

 

[ターン08]毒島トミオ

 

 

「め、メインステップ。ガルシスをLV2で召喚」

 

 

ー【ガルシス】LV2(3)BP5000

 

 

カチドキアームズと言う驚異的なスペックを持つスピリットの突然の登場により、未だ狼狽える毒島。

 

苦し紛れで、白髪の狼男のスピリット、ガルシスを召喚する。

 

 

「アタックステップ。ガルシスでアタック。その効果で、コスト4以下のスピリットからコア1つをリザーブに置く。鎧武から1コア取り除き、消滅させる」

 

 

軽快且つ俊敏に動き始めるガルシス。その鋭利な爪により、鎧武オレンジアームズは、知らぬ間に自身の鎧を切り刻まれ、消滅へと追い込まれた。

 

 

「カチドキアームズでブロック」

 

 

そんなガルシスを討とうと、再び火縄銃型の武装を手に取るカチドキアームズ。果実型エネルギー弾を、今度は散弾銃の如く四方に散らし、俊敏に動き回るガルシスを撃ち抜き、爆発させる。

 

 

「ッ……ターン、エンド」

手札:2

場:【ブギールガー】LV2

 

 

カチドキアームズのあまりの強さに言葉を詰まらせた毒島は、早々にターンエンドを宣言。

 

再度ナガレのターンへと移行する。

 

 

[ターン09]花道ナガレ

 

 

「メインステップ。ジンバーレモンを、LV2でもう一度召喚」

 

 

ー【仮面ライダー鎧武 ジンバーレモンアームズ】LV2(3)BP6000

 

 

前のターン、【Fチェンジ】の効果によって、ナガレの手札へと戻っていたジンバーレモンが、今一度呼び出される。

 

 

「アタックステップ。カチドキアームズ、いざ出陣!!」

 

 

その後すぐにアタックステップへと突入し、ナガレはいよいよカチドキアームズで毒島のフィールドへと攻め込む。

 

 

「ぶ、ブロックだブギールガー、オレを守れ!!」

 

 

その行手を阻むのは、最後のブギールガー。

 

現時点で、このブギールガーとカチドキアームズのBPは8000と並んでいるが………

 

 

「フラッシュタイミング、龍玄の効果発揮。コア1つをカチドキアームズに移し、BP+3000、合計BPは11000になる……!」

 

 

鎧武の名を持つスピリットを強化できる龍玄の効果。それが強力なカチドキアームズに付与されたことで、そのBPは遂に10000と言う壁を超える。

 

フィールドでは、棍棒を振り回し襲い来るブギールガーに対し、カチドキアームズは、背中にある二振りの旗を手に取り、応戦。

 

その旗の柄の部分で、ブギールガーの棍棒による一撃を難なく受け止めると、そのまま旗に炎を纏わせて、ブギールガーを薙ぎ払う。

 

払われたブギールガーは吹き飛ばされ、呆気なく破裂し、散って行った。

 

 

「オレの、ブギールガー軍団が、全滅……」

「オマエのライフ、確かあと2つだったよな?」

「!」

 

 

3体のブギールガーが全滅してしまったことに動揺し、気を取られていた毒島。

 

彼の知らぬ間に、龍玄がショットガンの銃口を、ジンバーレモンがエネルギー状の矢を引いていて……

 

 

「そんな、プレイキラーズである、このオレが」

「トドメだ。龍玄、ジンバーレモン!!」

 

 

〈ライフ2→1→0〉毒島トミオ

 

 

「ぐぁぁあ!?!」

 

 

放たれたエネルギー弾とエネルギー状の矢が、毒島の残りのライフバリアを全て砕き、射抜く。

 

それに伴い、毒島のBパッドから、彼の敗北を告げるかのように「ピー……」と言う虚しい甲高い機械音が上がる。

 

 

「っしゃぁ!!…オレの勝ちだ!!」

 

 

己の勝利を喜ぶナガレ。残された全てのスピリット達は、役目を終えたことで、身体が粒子化し、この場から消滅した。

 

 

「おぉおぉおぉ!!……ナガレ、オマエって奴は、オマエって奴はァァァァ!!」

「あっはっは!!…どうよマサル、この花道ナガレ様にかかりゃ、この程度朝飯前だぜ」

 

 

強敵を下すと言う偉業を、宣言通り成し遂げて見せたナガレに、親友のマサルは感涙しながら彼に抱き付く。

 

しかしその間、強いバトルダメージにより伏せていた毒島が、立ち上がり、そそくさとこの場を後にしようとしていて。

 

 

「ぐっ……クソが」

「あ、おい毒島。約束破るつもりか!?」

 

 

奪ったマサルのデッキを持ったまま、さり気なくこの場から立ち去ろうとする毒島に気がつくナガレ。

 

彼が毒島の後を追おうと、走る構えを取った、その直後………

 

 

「何をしている、毒島」

「!」

 

 

現れたのは、白いマントを羽織った、藍色のツンツンヘアーが特徴的な少年。

 

彼が一言言い放っただけで、ナガレの勝利によって温まっていた空気が、一瞬にして凍り付く。

 

 

「ジ、ジンさん」

 

 

毒島が、恐怖によって刻まれた声で、目の前の少年の名を呼んだ。

 

これが、のちに宿命のライバル同士となる「花道ナガレ」と「神林(かんばやし)ジン」の最初の出会い。無論、この時の2人は、そんなことはまだ知る由もない。

 

 

 

 

 

 




次回、第2話「覚醒、大将軍」

******


〈キャラクタープロフィール〉
[No.1]
花道(はなみち)ナガレ】
性別:男
年齢:13
身長:149cm
特徴:赤キャップ。跳ねた黒髪。
使用デッキ:【鎧武】
概要:バトスピチャンピオンを夢見る少年。お調子者で無鉄砲なところこそあるが、バトスピへの愛は本物。決して諦めない不屈の精神の持ち主。歳の離れた兄がいる。


******


〈用語設定〉
[No.1]
【Bパッド】
バトルスピリッツ専用端末。普段はタブレット端末に近い形で携帯されていて、電話もできる。要するにバトスピ版デュエルディスク。


******


ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
作者のバナナです。

遂にスタンダード環境の1作目「ソウルライダーズ」が始まりました!!
スタンダードはエターナルとは違い、ゲームスピードが遅い上に、メインステップ2の存在から、かなりテンポが悪くなると予想されます。
ですがその都度、創意工夫を凝らして頑張って行きたいなと思っておりますので、温かい目で見守ってください。感想等もいただけたらとても嬉しいです。

ソウルライダーズの世界観についてですが、スタンダード環境と言うことで、これまでの作品「オーバーエヴォリューションズ」「王者の鉄華」等とは全く違う世界観となっております。
話の内容としましては、以前の作品よりも、よりホビアニ感を強く出したいなと考えてます。
また、これまでの他作品と同様に本作品も、バトルスピリッツのコラボの商品展開によって、話の内容が前後左右します。

色々書きましたが、兎にも角にも、新主人公、花道ナガレの活躍にご期待ください!!
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