【One Piece.アーカイブ】ホロライブ青春短編集2 ワンサマー  Libera me from AI 文体は文学多め。【実験途中報告】スーパーイマゴ・デイ・ゴッドの創造に成功。     作:夏目陽光

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コーヒーとルビー

東京の夏は、まるで沸騰した泥の底を歩いているかのように、容赦なく人間の体力を削り取っていく。銀座の目抜き通りを一本折れ、さらに細い路地へと迷い込むと、並び立つビルの隙間から吐き出される室外機の熱風が、アスファルトの照り返しと混ざり合って、目眩がするほどの陽炎を作っていた。すぐ隣にあるコインパーキングの自動販売機が、うだるような暑さの中でブーンと不快な重低音を響かせている。その機械的な唸り声すら、この狭い路地の奥までは明瞭には届かない。ハコス・ベールズは、その突き当たりにぽつんと佇む、塗装のすっかり剥げかけた木造の引き戸の前に立ち止まっていた。

 

「……ここが、日本の『名店』ねえ。ちょっと怪しいんじゃないの?」

 

少し鼻にかかった高めの声で、誰に聞かせるでもなく小さく呟く。じっとりとした湿気が、首筋の赤い髪を肌に張り付かせている。彼女の顔には、クリアスモークグレーの伊達メガネが掛けられていた。クラウンパント型の少しエッジの効いたフレームは、彼女のシャープな赤眉と、好奇心に揺れる琥珀色の瞳をきれいに縁取っている。普段の配信で見せるような、画面いっぱいに騒ぎ回る子供っぽさはそこにはなく、どこか生意気で、自分の審美眼に絶対の自信を持つインテリジェンスな雰囲気を醸し出していた。

 

今日の服装は、東京の狂気じみた夏をサバイブするために彼女自身が選んだ、こだわりのストリートスタイルだ。鮮やかな赤のハーフジップ・アノラックは、あえて胸元のジッパーを大きく下げ、インナーのタイトな黒のキャミソールを覗かせている。少しオーバーサイズ気味のシルエットが、彼女の華奢な肩のラインを強調していた。ボトムスはアシンメトリーなカッティングが施された黒のカーゴミニスカート。そこから伸びる健康的な細い足元には、ベルトの締め付けが頼もしい厚底のスポーツサンダルを履いている。

 

引き戸のノブに手をかける。真鍮製の、何十年も人の手に握られて丸くなったそのレバーは、直射日光を遮られた場所にあるせいか、驚くほど冷やりとしていた。指先から伝わるその冷たさに少しだけ身構えながら、横へ戸を引く。古い木造の引き戸がガタガタと鈍く軋み、頭上の鴨居に取り付けられた小さな真鍮の鈴が、チリンと一度だけ、硬く短い音を立てて震えた。

 

店内に一歩足を踏みした瞬間、ベールズは鼻腔の奥を強烈に突く匂いに、思わず眉間に深い皺を寄せた。

 

「うわっ……何これ、煙くさっ……! これじゃコーヒーの匂いじゃなくて、ただの炭焼き小屋じゃん!」

 

それは彼女がこれまでの人生で慣れ親しみ、そして愛してきたコーヒーの香りとは、根本からかけ離れたものだった。ベールズが生まれ育ち、そのカルチャーの最先端を肌で感じてきたオーストラリア・メルボルン。あの街は、世界中のどこよりもコーヒーに対してシビアで、ミニチュアルな違いにも進歩的であるという自負が街全体に満ちている。浅煎りに仕上げたエチオピアやコロンビアの厳選されたシングルオリジン。豆が本来持っている、まるで完熟したベリーやシトラスのような爽やかな酸味を極限まで引き出し、きめ細かく泡立てたオーツミルクで滑らかに仕上げるフラットホワイト。それが彼女にとっての「本物のコーヒー」であり、洗練の極みだった。

 

しかし、この薄暗い、壁のあちこちが数十年の煙草のヤニでねっとりと薄茶色に染まった日本の「純喫茶」に立ち込めているのは、もっと重く、油じみていて、ほとんど炭そのものに近い、逃げ場のない焦げ臭さだった。ベールズの目には、この空間すべてがひどく前時代的で、せっかくの豆の個性を熱で徹底的に破壊している、悪趣味な場所のようにしか思えなかった。

 

「いらっしゃいませ」

 

カウンターの奥の暗がりから、低く、湿り気を帯びた声が響いた。白髪が半分以上混じった短髪の店主は、首元が少し伸びきった灰色のポロシャツの上に、何千回と洗濯されて毛羽立った黒い帆布のエプロンを硬く締めている。いらっしゃいませ、という言葉を口にはしたものの、その男の視線はベールズの顔をまともに捉えてはいなかった。手元に置かれた、古い真鍮製の計量器。その目盛りを、老眼鏡の傷ついたレンズの奥にある細い目で、ただじっと睨みつけるように見つめている。

 

歓迎されていない。あからさまに漂うその頑固な空気を肌で感じながらも、ベールズは引き下がるのを嫌い、店の最も奥、中庭のくすんだモミジの木がガラス越しに見える、二人掛けの小さな木製テーブル席へと歩いた。サンダルが床の、擦り切れた古いリノリウムを擦る音が、やけに大きく店内に響き渡る。隣の椅子に、使い込んだバックパックをドサリと放り投げ、彼女は伊達メガネのブリッジを、人差し指の第二関節を使って少し乱暴に押し上げた。

 

内心、彼女はこの古臭い空間を、そして日本の頑なな「深煎り文化」を、完全にナメてかかっていた。

 

「日本のオールドスタイルってやつはこれだから困るんだよ。豆の品質が悪いのを誤魔化すために、炭になるまで深く焙煎して、ただ苦いだけの焦げ茶色の水をありがたがって飲んでるんだ。メルボルンのバリスタが見たら、豆に対する虐待だって怒り出すよ。コーヒーってのはね、豆が持つ本来のフルーティーな酸味と、青リンゴやベリーのような華やかな香りを味わうものなんだ。それをこんなに真っ黒に焦がしちゃって……これじゃあ、どれを飲んでもただの苦い汁じゃん!」

 

彼女の頭の中は、メルボルンという世界最高のコーヒーの街で培った知識とプライドで満ち満ちていた。卓上に置かれた、手触りのガサガサした和紙のメニューを開くと、そこには太い筆文字で「ブラジル」「コロンビア」「ケニア」とだけぶっきらぼうに書かれている。値段はどれも、街で見かける一般的なチェーン店の倍以上、下手をすれば三倍近い。指先でサイドの赤い髪をくるくると弄りながら、ベールズは挑発するように唇の端を少しだけ吊り上げた。

 

「すいません」

 

声をかけると、店主は一切の無駄を省いたゆっくりとした動作で、水が入った厚手のガラスコップを古びたトレイに乗せてやってきた。その手元が見える。店主の指先や爪の隙間は、長年の作業のせいで珈琲の渋が完全に染み込み、黒ずんでいた。

 

「ケニア。これをホットで」

 

「ケニアのフルシティになりますが、よろしいですか」

 

店主の声には、客の機嫌を伺うような響きが微塵もなかった。フルシティ――すなわち、中深煎り、あるいは深煎りの入り口だ。ケニアの豆が持つ本来の、あの突き抜けるようなブラックカラントの力強い酸味や、グレープフルーツのような爽やかさを、わざわざ焙煎機の強力な熱で焼き尽くそうというのだ。

 

「ええ、それで。ネルで淹れてもらえるんですよね?」

 

ベールズが確信犯的にそう問いかけると、店主は一瞬だけ動きを止め、老眼鏡の奥の目をわずかに細めた。小生意気な外国の小娘が、一丁前にネルドリップを指定してきたことに対する、値踏みするような、あるいは少し意外なものを見るような目だった。しかし、店主はすぐに「わかりました」とだけ低く言い残し、背を向けてカウンターの奥へと戻っていった。

 

一人テーブルに残されたベールズは、ポケットからスマートフォンを取り出した。画面の表面には、さっきまで外のギラギラした炎天下を歩いていたときについた、指の脂の跡が白くぼやけて残っている。指先でそれを無造作に拭い、画面のメモアプリを開いた。いつもなら、次の配信の斬新なアイデアや、お前らへの容赦ないツッコミの言葉をマシンガントークさながらに画面へ打ち込んでいくところだが、なぜか画面を見つめたまま、彼女の指は動かなかった。

 

店の奥から、カリカリ、カリカリ、と、手動のミルが豆を挽く、低く規則正しい音が響き始めていたからだ。

 

その音は、驚くほど一定のテンポを保っていた。電動グラインダーが激しい金属音とともに一瞬にして豆を粉砕するのとはわけが違う。一粒一粒の豆が、均一な力で、摩擦熱による香りの揮発を極限まで防がれながら、慎重に、優しく壊されていくような音。やがてカリカリという音が止まり、静寂が戻る。しばらくの沈黙の後、カウンターの向こう側から、それまで店内に充満していたあの不快だった炭の匂いを完全に圧殺するような、まったく別の芳香が静かに立ち上がってきた。

ベールズは思わず、開いていたスマートフォンの画面をパタンと机に伏せた。

 

「……待って。何、この匂い!?」

 

ベールズは小さく息を呑んだ。それは彼女が固く信じ込んでいたような、単なる焦げた豆の悪臭では断じてなかった。カシスやダークチェリーを砂糖と一緒に銅鍋でじっくりと、時間をかけて煮詰めたときのような、驚くほど濃厚で、果実の生命力が詰まった甘い香りが、薄暗い部屋の隅々にまでじわりと染み渡っていく。さらにその香りの奥底には、上質なビターチョコレート、あるいはカカオパウダーを多く含んだトリュフのような、重厚で高級感のあるニュアンスが、どっしりと腰を据えて隠れていた。

 

え、待って。うちが世界一だと思ってたメルボルンのカルチャーって、もしかしてコーヒーのほんの一面でしかなかったわけ……?

 

「おかしいじゃん……! 深煎りっていうのは、豆の成分が熱で徹底的に破壊されて、ただの炭素の苦味しか残らないはずだよ!? なんでこんなに生命力のある、果実の甘い匂いが立ち上ってくるわけ!?」

 

店主の無駄のない動きを、ベールズは伊達メガネの奥の目を凝らして見つめた。

店主は、長年の使用によって起毛がすっかり寝てしまい、コーヒーの油分を吸って鈍い光を放つフランネルの布フィルターを、左手でじっと固定している。右手には、細く長い注ぎ口を持つ、使い古された銅製のポット。そこから落とされる湯は、信じられないほど細かった。それは湯を注んでいるというよりは、一本の細く透明な絹の糸を、上空から静かに垂らしているかのようだった。その細い糸が、漆黒の粉の中心へと、音もなく、波紋も立てずに吸い込まれていく。

 

湯が触れた瞬間、粉は安直なサードウェーブの豆のように、エクスプロージョンみたいに爆発的に膨らむことはなかった。かといって、古い豆のように完全に死んで陥没していくわけでもない。ただ、じわり、じわりと、内側に抱え込んだ炭酸ガスをゆっくりと吐き出しながら、重々しく、生き物のように盛り上がっていく。店主の手元は、一ミリのブレもなかった。湯の温度を徹底的に下げているのだ。熱による余計な苦味や渋みを取り出さないよう、湯の自重だけで、豆の内部にある真に美味いエキスだけを、サイドの雑味が出る前に一本ずつ削り出すように抽出しているのだ。

 

ポタリ、ポタリと、デカンタの底に漆黒の液体が落ちてしていく。

 

「お待たせいたしました」

 

目の前に静かに置かれたのは、縁の金彩がところどころ剥げかけた、古いイギリス製の磁器カップだった。

 

ベールズは、その器の中に満たされた液体を見た瞬間、背筋に冷たいものが走るのを覚えた。

 

中庭からの光を浴びたそのコーヒーは、カップの縁において、息をのむほど鮮烈な、深い深紅の色を湛えていた。まるで、フランスのブルゴーニュ地方で作られた極上のピノ・ノワールを、限界まで煮詰めて濃縮し、そのままガラスにしたかのような、妖艶で美しいルビー色。商品価値の低い豆をごまかすための深煎りなどではない。これほどの深紅を引き出すには、徹底的にハンドピックを繰り返し、完璧な欠点豆の排除が行われた、最高密度のケニアのAAランクの豆でなければ絶対に不可能だ。そして液面には、ペーパーフィルターではすべて吸い取られてしまう、豆の極上の脂質――コーヒーオイルが、うっすらと鏡のような美しい膜を張り、光を鈍く反射させていた。

 

あっちが光のあたるステージなら、こっちは誰もいない暗闇の奥の奥、みたいな……。

 

香りが、白い柔らかな湯気とともに、ゆっくりと、本当にゆっくりとしたテンポで彼女の顔を包み込んでいく。ベールズは顔を近づけ、そっと目を閉じた。

 

「……くっ、この香りは何だ! メルボルンで毎日のように飲んでいた、あの柑橘系の、弾けるような酸味とは、完全に次元が違う! これは……大地の底で何年も熟成された果実の、地響きのような重みを持った甘香だよ! 苦味の奥に、信じられないほど濃密なフルーツの存在が隠れている!」

 

彼女は、ゆっくりとカップの取っ手に指をかけた。指先に伝わる磁器の熱が、やけに生々しく彼女の感覚を呼び覚ます。カップを唇へと運び、彼女は、静かに、最初の一口を口に含んだ。

 

「――っ!!」

 

苦い、のに、甘い。いや、苦味のベールを剥ぎ取ったら中からどろっとした黒糖みたいな甘みが突き上げてくる、みたいな……。それは上質なカカオの塊をそのまま溶かしたような、深く滑らかなビターだ。その重厚なビターの奥から、濃密で粘り気のある甘みが一気に喉の奥から突き上げてくる。おまけに口当たりが信じられないくらい滑らかで、液体を飲んでいるというより、まるで極上のシルクの布が舌の上をしなやかに滑り降りていくみたいだ。

 

温かい液体をゆっくりと喉へと送り込む。ゴクリと喉が鳴った。

 

喉の奥から、体温で温められた息が鼻へと抜ける。そのたびに、ラムレーズンや熟しきったイチジク、そしてビターチョコレートの芳醇な余韻が、いつまでも、いつまでも口内を完全に支配して離さない。

 

彼女はあまりの衝撃に、机に伏せたスマートフォンを一瞬だけ見つめたが、何を打てばいいか分からず、ただ小さく息を吐いた。

 

「ねえ待って、これ本当に同じ『コーヒー』って呼んでいいわけ!? うちの知ってる概念が、頭の中でぐちゃぐちゃにかき混ぜられてるんだけど……!」

 

二口目、三口目と、彼女はさらにテンポを落として、液体を口に運んだ。不思議なことに、コーヒーの温度が少しずつ下がっていくにつれて、その味わいはさらに変化していった。最初の重厚なビターチョコレートのような印象から、温度が下がるにつれ、かすかにレモンピールのような、爽やかな、しかし落ち着いた酸の輝きが顔を覗かせる。

 

「……完全に、うちの負けじゃん」

 

ぽつりと、掠れた呟きが口から漏れた。彼女はそっとカップをソーサーに戻した。カチリ、という微かな音が、静かな店内に硬く響く。ベールズは、胸元に掛けていた伊達メガネを外し、テーブルの上に置いた。レンズのフィルターを通して世界を見る必要は、もうなかった。今の彼女は、目の前の一杯がもたらした、圧倒的な現実の前に、ただただ脱帽するしかなかった。

 

「はぁ……。こんなの出されたら、もう今までのコーヒーに戻れないじゃん……ずるいよ……」

 

ベールズが一杯の深紅の液体に息を呑んでいるとき、ふと視線を感じて顔を上げる。カウンターの端、薄暗い影の中に、仕立てのいい和服の上に漆黒の外套を羽織った初老の男が座っている。男の前にも、同じケニアのカップがあった。男はベールズの驚愕に満ちた表情と、テーブルに置かれた伊達メガネを一瞥すると、ふっと鼻で笑うように口元を歪めた。

 

「……何さ」

 

ベールズが小さく睨みつけるが、男はそれ以上何も言わず、残りの液体を喉へ流し込み、静かに席を立つ。すれ違いざま、男が店主に「今日も良い湯加減だった」とだけ言い残して去っていく。その背中を見送りながら、ベールズは、あの男が自分の浅はかな偏見をすべて見抜いた上で、この店の常連として何年もこの深淵に通い詰めている『本物』の一人なのだと察し、背筋が寒くなる。

 

「はぁー……すご。何これ、意味分かんない……。うち、本当にまだまだ子供だったんだな……」

 

ベールズは、深く、深く息を吐き出した。バックパックを背負い、彼女はゆっくりと席を立った。お財布を手に、カウンターへと向かう。彼女の足取りは、店に入った時のような、どこか気取った軽快さではなく、しっかりと地面を踏みしめるような、落ち着いたものに変わっていた。

 

カウンターの奥で、店主が静かに彼女を振り返る。ベールズは、店主の目を見つめた。いつもなら、ここで「もー! めちゃくちゃ美味しかったです!」と、自分の知識をすべて詰め込んだマシンガントークを炸裂させるところだった。けれど、彼女はそれを、静かに飲み込んだ。この店主に対して、浅薄な言葉での解説など、何の意味もない。

 

ベールズは、伊達メガネをアノラックの胸元にしっかりと差し込み、背筋を伸ばした。彼女はいつもの配信での誰よりも輝く笑顔ではなく、一人の人間として、深く、静かに頭を下げた。

 

「……ごちそうさまでした。本当に、美味しかったです」

 

その声は、小さかった。けれど、店内の静寂のなかで、まっすぐに店主の耳へと届いた。店主は、彼女の空になったカップへと視線を落とし、それから、もう一度ベールズの、嘘のない、澄んだ琥珀色の瞳を見つめ返した。すべてが、その一瞬の目線の交錯だけで通じ合った。店主の口元が、本当にわずかに、誇らしげに緩んだ。彼は、深く、深く、彼女に対して頭を下げた。

 

「……ありがとうございました。お気をつけて、お帰りください」

 

カランコロン。

 

再びドアベルが鳴り、ベールズは外の世界へと一歩を踏み出した。一瞬で、東京の、うだるような真夏の熱気と、遠くを走る車の喧騒が、彼女の身体を包み込んだ。

 

「——っ、あつ!」

 

彼女は思わず片手で日差しを遮り、小さく笑った。しかし、彼女の足取りは、店に入る前とは劇的に違っていた。彼女の身体の真ん中には、あの深紅の、完璧な秩序を持ったコーヒーの熱が残り続けていた。

 

「よし。今日の夜の配信、アイツらに、baeがちょっとだけ大人になったところ、見せてあげるじゃん」

 

ストリートの風が、彼女の赤い髪をふわりと揺らす。ハコス・ベールズは、心の中に生まれた新しい世界の広がりを噛み締めながら、夏の雑踏の中へと、一歩一歩、確かな足取りで歩み進めていった。

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