ユグドラシルメシア   作:仮面ピコ

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初めましての方は初めまして!
久し振りの人はお久し振りです!

携帯の機種変更も無事に終わり、書いていた小説も全て投稿をし終えて安心しきってます。

今日からようやく新しく話が更新できますので改めてよろしくお願いします!


第114話 再会

ナノシャインを託されシャティエルと別れ、アイリは一人ブレイザブリク宮殿を飛行する。

 

いつもならば純白に輝く、正しく光の宮殿と呼ぶに相応しい厳浄な雰囲気があったが、闇に覆われた現在は神々しい光は喪失してしまっている。

実際に染まっているわけではないが、純白の壁や天井は塗りたくられたかのように暗赤色に染まっており、この場にいるだけで陰鬱な気分になってしまいそうだ。

 

アイリ「酷い…まるで地獄みたい。これがなかったらまともに動けてなかったかもしれない」

 

リョウの申請でアイリを強化するために作成された実戦兵器、ナノシャインの闇の耐性を高める防護効果により、カイの闇の影響を受けずに万全の状態でいられる。

ナノシャインがなければ、今頃闇の影響を諸に食らい、その場から動くことすら叶わなかっただろう。

最悪、闇に体も心も侵食され意識もなく暴れ狂う獣と化すか、死んでいただろう。

 

アイリ「全身ドリルみたいなバグ装備じゃないのは安心したところだけど、皆さん大丈夫ですか!?」

 

長い廊下を飛行していると、数人の天使兵が床に倒れ伏しているのが目に映った。

野放しにはできず一旦床に降り立ち天使兵の一人に声を掛ける。

しかし返事はない。

意識を失っているだけのようだが、悪夢に魘されているかのように苦しんでおり、脂汗が滲み出ている。

一人ではなく、何人もの天使が同様の症状を見せており、嫌でも呻吟が耳に張り付いてくる。

 

アイリ「カイ君を止めるしかないよね…」

 

この場にいても自分にできることは何一つない。

介抱したところで良くなることはない。

解決方法はただ一つ。カイを止めること。

 

再度翼を広げ足早に飛び立ち、先程よりも速度を上げ飛行する。

何人もの苦悶の表情を浮かべる天使達を看過することに痛切に感じながらもカイの気配を辿り急行する。

 

アイリ「あ、ガブリエルさん!」

 

荘厳な巨大な扉の前に、四大天使の一人であるガブリエルが倒れていた。

他の天使達とは違い意識は覚醒しているようで、四大天使とは思えぬ弱々しい姿で、体を震わせながらもなんとか立ち上がろうと奮闘している。

 

ガブリエル「うぅ…アイリ、さん。何故、ここに…?」

 

アイリ「この闇を生み出している元凶を止めるためです。あたし一人だけですけど、必ず解決してみせます!」

 

ガブリエル「頼もしい、限りです。私は闇の影響もあり、無様ですけど、まともに動くことはできません。この膨大な闇の中でも動けるあなたは…特別な存在、なのかもしれませんね」

 

アイリ「そりゃあたしは特別な存在ですからね(ヴェル○ースオリジナル)」

 

ガブリエル「ふふ…相変わらず、ですね。元凶は、この扉の向こうの、大広間にいます。申し訳、ありませんが、元凶の殲滅を、お願いしてもらって構いませんか?」

 

アイリ「っ…あたしに、任せてください。ガブリエルさんはここで休んでてください」

 

殲滅という言葉に一瞬息を詰まらせた。

 

カイがどのような状況下にあるのか定かではないが、実力行使になるのはほぼ確定だ。

可能であれば、説得を試みて平和的解決が最善なのだが、簡潔に物事が動くとも限らない。

最悪の場合、カイを自らの手で葬らなければならない展開も有り得なくはない。

 

幼少期の頃の記憶はなくとも、カイが大切な存在には変わりはない。

天使として転生し、一つ屋根の下で過ごしてきた日々はかけがえのない有意義なもの。

過去の記憶は無くとも、カイは家族のような存在。

そんな大切な存在を、自らの手で殺めてしまうという酷すぎる手段を、果たして実行できるのか。

 

アイリ「…あたしが、やらないと」

 

最悪の展開を想像し、現実から目を逸らしたいからか、自然と首を横に振り、気を張り直すために両頬を叩く。

ガブリエルを幇助したい気持ちを押し殺し、為すべきことを為すため前を向く。

 

闇に覆われても尚、神秘的な雰囲気を放つ巨大な扉を押し室内へと入る。

これまでとは比にならない闇が押し寄せ、無意識に顔を顰め一歩下がってしまう。

この膨大な闇だけでか弱い生物ならば発狂するか死に至るのではないだろうか。

 

アイリ「カイ、君?」

 

何百人という人数が入れるであろう大広間の一番奥にある祭壇の上に、成人した状態のカイが座っていた。

俯いており表情は一切見えない。

何を思い考えているか全く不明だが、対応してくれるだろうと淡い期待を抱きつつ、アイリは接近を試みる。

赤色の薄い絨毯が轢かれた床を一歩、また一歩と慎重に足を進める。

足音が室内に響いているので、アイリに気付いている筈なのだろうが、カイは一向に此方に顔を向ける気配がない。

 

アイリ「カイ君。あたしのこと…」

 

初めて見る姿だが何処か懐かしさを感じる不思議な感覚に浸り、緊張しながらも声を掛けた。

刹那、後方から槍と化した闇がアイリの体を貫いた。

 

気配すら感じない一瞬の攻撃。

遅れて痛みが傷口から全身に染み渡り、大量の鮮血が体から溢れ出る。

 

カイ「気安く話し掛けてんじゃねぇよ」

 

気だるそうな態度とは裏腹に、声色は殺意に満ち溢れており、言葉だけで人一人を殺せる凄味がある。

 

カイ「誰だか知らねぇけど、俺に絡もうとする時点で敵ってことでいいんだよな?」

 

立ち上がり悠然とした足取りで、自らの血溜まりの上に倒れ伏すアイリへと近寄る。

老若男女関係なく殺める殺意を剥き出しのまま、アイリの髪を鷲掴みにし、自分に接近してきた相手のご尊顔を拝もうと強引に上に向かせる。

 

カイ「………は?」

 

思わず間抜けな声が漏れた。

顔を見れば誰でも疑問符が頭に浮かぶことだろう。

眉目秀麗な顔は消え失せ、描かれていたのは、へのへのもへじ。

誰がどう見ても偽物だと理解した時には既に遅く、床を大きく削る勢いの爆発が起き、カイは爆風により吹き飛ばされ先程いた祭壇に激突した。

 

アイリ「ふぅ〜、念のために『カワリミ』しといて正解だった。ピシガシグッグッできると思ったけど、やっぱり甘かったかな」

 

入室した扉から顔を覗かせるアイリは『カワリミ』の爆発を見ていた。

突然襲われることを考慮していたアイリは予め『カワリミ』を発動させていたのだ。

的確な判断により致命傷を免れたアイリはガーンデーヴァを手にカイの元へと歩み寄っていく。

 

アイリ「カイ君、だよね?あたしのこと分かる?」

 

カイ「いってーなこの野郎!何処の誰だか知らねぇが巫山戯た真似しやがって!」

 

至近距離からの爆発は流石にダメージを負ったようで、怒り心頭になったカイは怒号を飛ばす。

 

アイリ「あたしのこと見覚えない?アイリだよ」

 

カイ「アイリ?…いや、まさか、そんなことある筈ない」

 

アイリ「あたしのこと覚えてるの?」

 

カイ「お前のことは知らない。俺が知ってる愛莉はもっと幼い。お前みたいな天使じゃない、ただの人間だ」

 

アイリ「あたしも元は人間だったよ。色々あって天使になっちゃったし、幼少期の頃の記憶もない。教えてほしいの。カイ君の知ってる愛莉の存在を」

 

幼少期の頃の出来事はリョウから話を聞いただけで、何一つ覚えてはいない。

カイの口から直接過去を語ってもらえれば、消去された記憶が呼び覚まされるかもしれないという一縷の望みに掛けてみたかった。

 

カイ「…何処の誰かも分からねぇ天使のお前に話すことなんて何もない。それに、俺はもう人間を許すことはできない」

 

アイリ「え、どうして…どういうことなのか話してよ!」

 

カイ「何度も言わせるな。話すことなんて何一つない!『荒禍魔幻』!」

 

一切聞く耳を持たぬカイは暗赤色の闇を操り、巨大な鉄槌を数個創造しアイリに攻撃を仕掛ける。

アイリは腰に装着された『スラストホバージェット』の火を吹かせ、床を滑り踊るように鉄槌を回避していく。

 

アイリ「カイ君!お願い話を聞いてよ!」

 

カイ「聞くつもりも話すつもりもねえ!人間だろうと天使だろうと…もう何も信じられねえ!!」

 

ガーンデーヴァを構え『ファイブストレートアロー』を連射し、宙に漂う闇を相殺しながら説得を試みるも、カイは怒号を飛ばし更に闇を放出する。

我武者羅にも近い、感情任せな怒涛の勢いの猛撃。

単純だがどの攻撃も威力が高く、直撃を受ければ致命傷に成りかねない。

 

アイリ「信じられなくなったのは、お母さん、リサを敵視する社会が嫌いだったからでしょ!」

 

カイ「あいつの名前を、軽々しく呼ぶんじゃねぇ!」

 

闇で生成された無数の鎌が空中を覆い尽くす。

全て撃ち落とすために、数で勝負を挑むため『レインアロー』を放つ。

更にナノシャインの力を行使し、周囲に魔法陣を展開され『多連装多目的誘導ミサイル』を放つ。

矢とミサイルが闇に直撃し、空中で爆発が連発、広間の神聖な雰囲気を醸し出していたステンドグラスは粉々に割れ散っていく。

 

アイリ「リサはあたしの母親なの!」

 

爆風の無視する勢いで爆炎から飛び出し『スラストホバージェット』の推進力を得て速度を上げた状態で『光弓三日月斬』を繰り出し、大剣と化したガーンデーヴァを振り下ろす。

 

カイ「んな都合のいい話があるわけねぇだろうが!」

 

闇を纏った拳、『狂凶打』一発で『光弓三日月斬』を弾き返され、ガーンデーヴァは虚しく宙を舞う。

片方の拳で『狂凶打』を振るおうとしたカイの胸部に、肩に装備された『ソニックプラズマ』を放ち牽制攻撃を加え怯ませた隙に手放したガーンデーヴァを空中で掴み取る。

 

アイリ「あたしは正真正銘、リサの娘だよ!」

 

カイ「証拠もねぇくせに偉そうに言ってんじゃねぇ!」

 

アイリ「証拠はないかもね!でも、過ごしてきた時間と絆は、嘘や偽りなんかじゃないでしょ!」

 

再度ナノシャインの力を行使し、『拘束電流装置』をカイの左右に召喚する。

強力な電流が全身を走り、筋肉を硬直させ、カイの動きが静止した。

 

カイ「ぐっ…リサの封印術みたいなことしやがって…」

 

アイリ「封印術って、封眼って呼んでた眼の力のことだよね?翡翠色の左目に六芒星のハイライトがある眼だよね」

 

カイ「そこまで、知ってるのか。リョウの知り合いか誰かか?」

 

アイリ「だからあたしはアイリなんだって!あたしは覚えてないけど、虫取りしたりお祭りに行ったりもしてたんでしょ?」

 

カイ「そんなことまで………お前が、あの愛莉なのか?」

 

アイリ「そうだって言ってるじゃん!あんまりしつこいとアンパンチするよ!」

 

叱るように、何処か巫山戯たような雰囲気と態度には見覚えがあった。

何処までもお人好しで、芯の強い一人の女性、リサと面影が重なってしまう。

顔立ちも似ており、言われてみれば似通った点があまりにも多い。

 

カイ「だ、だが、俺が知ってるのは、幼い頃だ。時間があまりにも経過しすぎてることになるだろ」

 

アイリ「カイ君はお母さんの封印術の影響で、幼い状態になってたんだよ。記憶はない?」

 

カイ「幼かった?いや、その記憶はない。リサは…最後、俺に封眼の力を使ってた。俺の闇を、封じるために。俺の幸せを願ってた。そして…愛理を、託された」

 

リサとの最後の情景が脳裏に浮かび上がる。

自身が放った一撃により致命傷を負った悲惨な場面。

思い出したくなくても、鮮明に脳裏に刻まれている。

 

カイ「俺が、この手で、リサを殺してしまった。俺は自分自身を許すことはできねぇ。そして…リサを追い込んだ人間達も。もう、誰も許すことなんてできねぇ!」

 

アイリ「カイ君…」

 

リサという恩人を殺めてしまった自身を自恕することなど到底できない。

同時に、訳も知らずリサを蔑み忌避し続けた人間達も許すことはできなかった。

 

敵視する前に、対話していればリサは苦しまずに済んでいたかもしれない。

人知れず山奥で苦労せず愛莉とより良い生活を送れていただろう。

 

自分のように人を喰らうわけでもなく、為している事柄は逆に人々を守るためだった。

異能力を持っているだけで、必然的にピシャーチャと相対する現場にいただけなのに、何故世界から敵視されなければならなかったのか。

 

手前勝手な人間達を許すことなど、到底無理な話だ。

 

カイ「お前があの愛莉だったとしても、もうどうでもいい。と言うより、ハッタリの可能性だってあるんだからな」

 

アイリ「そんな、本当なんだってば!」

 

カイ「俺は、リサと愛莉が幸福に暮らせなかった原因となった人間を、世界を、許せない。そんなもん、全部ぶっ壊す!いや、種族も関係ねぇな…結局考えることはどいつもこいつも同じなんだからな!」

 

不条理な行き場のない怒りが膨れ上がり、闇の力が増す形で露呈していく。

放出された闇が『拘束電流装置』に直撃し、電気を迸りながら火花を上げ故障した。

電流が消えたと同時にカイは駆け出し、鋭い前蹴りでアイリを蹴り飛ばした。

支柱に激突し、瓦礫と共に床に落ち、蹴られた鳩尾を抑えながらカイに視線を戻す。

 

その時に気付いた。

殺気を宿す瞳が僅かに血のように赤く光っていることに。

正気を保っているとは思えぬ、感情任せに暴れ狂う獣と同様に見える。

集中して見ていると、闇とは違う別の力を感じ取ることもできた。

 

アイリ(もしかして、リリスに何かされた?)

 

感情が昂り、思考も過激になるような術を掛けられた可能性もある。

幼少期の頃に戻っていた記憶もないため数年の時が経過していたことは俄には信じられないにしても、アイリ相手に暴力を振るうなど、優しい心を持つカイがするとは考えられない。

 

カイ「もう、何もかもどうでもいい。俺の身がどうなっても…復讐を果たす!」

 

アイリ「お母さんが、それを望むと思ってるの?」

 

カイ「知るか。リサはもういない。俺がこの手で、殺しちまったんだからな!」

 

『荒禍魔幻』を発動させ、槍と化した闇が迫るも、即座に『光粒子ライトブラスター』を召喚し引き金を引く。

光弾と闇が衝突し、空中で爆発が炸裂している内に態勢を整え銃にエネルギーを再装填する。

 

カイ「お前が愛莉って証明は何処にもない。俺の邪魔をするなら、殺させてもらう」

 

アイリ「これは言葉で言ってももうダメなやつだね。感動の再開になる筈だったのに…リリス、絶対に許さないからね」

 

?「お察しがいい元人間ね。頭脳だけは一流ってところね」

 

現在最も会うのを望んでもいて、最も聞きたくない声の主が部屋の支柱の後ろから姿を現した。

蔑むような妖艶な笑みを浮かべる悪魔、リリスだ。

 

アイリ「カイ君に、何をしたの?」

 

リリス「封印を解く序でに、感情を不安定にし見るもの全てを敵と見なす幻術を掛けただけよ。彼は元々怒りっぽいみたいだし、自分の罪を死ぬまで許さず、人間を敵視する思考が根付いていたから尚更感情が昂りやすいみたいだから、思ったより早く術が発動したようね」

 

アイリ「今すぐカイ君を元に戻して!」

 

リリス「戻せと言われて戻すバカはいないわよ、おバカな天使ちゃん。それじゃ、私の目的のために精々感動の再開を楽しみなさい」

 

言いたいことだけ言い終え、支柱の後方に姿を隠すと同時に、逃がすまい『光粒子ライトブラスター』を数発射ち込み支柱を破壊する。

しかしその場には既にリリスの姿はなく、元凶を逃したアイリは思わず苦虫を噛み潰した顔になる。

 

カイ「余所見するとは余裕だな!」

 

リリスに気を取られ、カイの接近を許してしまっていた。

『狂凶打』を紙一重で回避し『スラストホバージェット』で距離を保ちつつ、連撃を阻止するために『多連装レーザーバックル』を召喚し闇の拳を防御しつつ、隙を狙い『光粒子ライトブラスター』の光弾をありったけ撃ちまくる。

数発はカイの体に命中するも、闇を放出し光弾を防ぎながら回転しながら後方へと下がり距離を取った。

 

アイリ「もう、本当に最悪だよ。あの悪魔、次に会ったら四億円の叫びを上げさせてやるんだから。さてと…」

 

『光粒子ライトブラスター』を消し、愛用のガーンデーヴァを持ち、矢を番えながら覚悟が込められた瞳で自暴自棄に近い暴走状態のカイを見据える。

 

アイリ「あたしは、諦めたりしたり屈したりしない。必ず、カイ君を元に戻す。きっと、あたしの知ってるカイ君はこんなこと望んでないだろうから。希望は捨てなければ、何とかなる、よね!」

 

カイ「何をごちゃごちゃと呟いてやがるんだ」

 

アイリ「変だと思うならそれでもいいよ。でも、これがあたしだから。思い出して…いや、分からせてあげる。カイ君の知ってる愛莉はここにいるって。リサの娘である愛莉が立派に育ったってことを!」

 

因縁のある二人の望まぬ戦いが始まろうとしていた。




まだ読んでくれてる人がいるかそっちの方が不安です笑
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