世界樹と星空の女神 ~無自覚美少女は最強魔法剣士。彼女の愛が重すぎるが、それでも俺は冒険者!~   作:Soularti

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[COORDINATE 0077] Tea Party at the High Class Inn

# The_Divine_Blade_Hoshikiri:

 

 王国の冬は、やはり教国のそれとは違った。

 寒さは穏やかで、部屋の中に人が増えると暑いくらいだった。

 

 俺は窓を見てから、ルナリアに視線を向けた。

 彼女は察しているだろうに、座ったまま赤い瞳を俺に向け、笑みを浮かべた。

 

「ルナリア、少し窓を開けてくれ。暑い」

「うん、分かった」

 

 ルナリアは、窓の留め金を外し、ほんの少しだけ窓を開けた。

 彼女の肩より少し長い金糸の髪が、風にふわりと揺れた。

 外気が流れ込み、ひんやりとした心地良い風が俺の頬を優しく撫でる。

 

 旅をしていたのは十ヶ月ほどだろうか。

 積もる話は、山ほどあった。

 

 だが、まず初めにこれを伝えておくべきだろう。

 俺は木杯を手に持ったまま、となりで茶を飲んでいるユーリに顔を向けた。

 

「ユーリ、お前に貰ったこの星切だが、この刀は何度も俺の命を救ってくれた。ありがとう」

 

「本当ですか。それは嬉しいですね。ぜひ、どんな戦いだったか聞かせてください!」

 

 ユーリはぱっと顔を輝かせ、椅子から身を乗り出してきた。

 俺は彼に笑みを返し、茶に口をつけながら思案した。

 

 いくつか思い浮かぶ戦いの中から、印象深いものを選んで話し始めた。

 

「色々あるぞ。そうだな、まず初めてフェリスと潜った迷宮で、主を相手に窮地に陥ったんだ。そのとき、この星切のおかげで突破口を切り開けた。まさしく銘刀だったぞ」

 

 茶を飲んでいたフェリスが、それを聞いて目元を細めた。

 懐かしむように、彼女は俺の話を補足した。

 

「……懐かしいな。お前が、主の脚を斬って動きを止めたときか。あれは、格好良かった。少年、アルスは第二級迷宮……ええと、Bランク級迷宮の主へ単身、斬り掛かったのだ」

 

「まあ、俺がやったのは脚を斬っただけで、主を倒したのはフェリスだけどな。それでも握っていたのが星切じゃなければ、俺の剣技じゃ刃は通らなかっただろう」

 

 ユーリはそれを聞いて目を輝かせた。

 だが、何か引っかかったらしく小さく首を傾げた。

 

「Bランク級の主というと、中級魔物の中でも最上位の存在ですよね。さすが先生ですけど……先生なら中級魔物くらい倒せるでしょう? 星切は関係ないのではないですか?」

 

 それを聞いて、俺は口をつけていた茶にむせた。

 ユーリに視線を向け、苦笑を浮かべた。

 

「お前の中で俺はどうなってるんだよ。俺は支援魔法しか使えないし、正面からの戦いじゃ下級魔物くらいにしか通用しない」

 

 ルナリアが頬張っていた茶菓子を飲み込んでから口を開いた。

 

「ねえ、アルス。無茶してほしくないから黙ってたけど、あの赤いスケルトンは中級下位くらいの強さだったよ。きみは自分で思ってるより、強くなってるんじゃないかな」

 

「うーん。いや、あの迷宮の魔物は攻撃が安直だった。普通の魔物を相手にしたら、中級以上はやっぱり厳しいだろうな」

 

 金糸の髪を揺らしながら、ルナリアは思案するように右手の人差し指を唇に添えた。

 薬指にはめた指輪のルビーが、かすかに陽光を返していた。

 

「そうだったかな。うーん、そうかも?」

「……アルス、ルナリアには相手が弱すぎて分からない。だが、お前の見立ては正しい」

 

 俺たちのやり取りを見ていたユーリが納得したように頷いた。

 

「そういえば、先生は支援魔法の使い手でしたね。しばらく会ってなかったので、つい先生なら何でも出来るんじゃないかと」

「……む。少年、いいことを言うな。お前は、見どころがある」

 

 フェリスは優しげに目元を細め、ユーリを褒めていた。

 ルナリアはそんな二人のやり取りを眺め、上品な仕草で茶に口をつけながら、くすりと笑っていた。

 

 それから俺は、先ほど話題に出た赤いスケルトンとの戦いや、リッチの魔法を受け止めたことなどを、身振り手振りを交えて話した。

 

 ユーリは綺麗な黒い瞳をきらきらと輝かせ、聞き入っていた。

 それとは対照的に、向かいに座っているルナリアとフェリスは、じとっとした目で俺を見ていた。

 赤い瞳と瑠璃色の瞳に、同じ種類の呆れが宿っている。

 

「……お前は、ちょっと一人になるとすぐそういう戦い方をする」

 

「やっぱり、そういう感じだったんだ。これからも、常に見張っておかないとだね」

 

 あの時は仕方なかっただろう。

 俺だって必死だったんだ。

 

 ふと、壁際に控えていたカタリナさんが横から口を挟んだ。

 

「歓談中にすまない。少し、いいだろうか。貴殿は先ほど、魔物の狙いを読み切り、星切が業物であった故に魔法を凌げたと、そう言っていた。だが、どんな業物を使おうとリッチの魔法を防ぎ切るなど、普通の剣士には不可能だ。生半可な剣術では武器が保たないだろう。私は、やはり貴殿は優れた剣士だと思うのだが」

 

 久しぶりに会うカタリナさんは、相変わらず実直な雰囲気を漂わせた美人女騎士だった。

 好みのどまんなかである彼女に、そう真正面から褒められて、俺は少しだらしない笑みを漏らした。

 だが、本当に俺がやったのは刀を正面に据えただけだ。

 

「いえ、そんなことはないですよ。実は星切は、なんと銘刀から神器になったんです。その力で強度が上がってたお陰ですね。なあ、格好良くないか、ユーリ。神刀星切だぞ」

 

「ええ!? そうなのですか。僕の贈った刀が先生の神器になるなんて、感動しますね」

 

 俺はユーリに自慢したかったことをようやく伝えられて、笑みを浮かべながら頷いた。

 それから窓際に立てかけた星切に、視線を向けて言った。

 

「ああ、浪漫あるよな。それに、これまで神器がないことを誤魔化すのが大変だったから助かったよ」

 

 それを聞いたユーリが、苦笑を浮かべて俺に言った。

 

「……先生、やっぱり神器がなくても魔法が使えたんですね」

 

 フェリスが大きく息を吐いて俺に視線を向けた。

 

「……はぁ。お前は本当に雑だ。養成学校時代は魔法を隠していたのだったか? 本当に隠し通せていたのか」

「…………多分。え、どうなんだ、ルナリア」

 

「うん? あはは」

 

 ルナリアは、笑って誤魔化した。

 そのやり取りを聞いていたカタリナさんが口を開いた。

 

「神器がなくともアルス殿が魔法を行使できるというのは予測していた。そのうえで箝口令も敷いている。心配はいらない」

 

 カタリナさんが俺へ向ける瞳に、少し尊敬が浮かんでいる気がした。

 彼女は口元に柔らかな笑みを浮かべて続けた。

 

 ルナリアとフェリスが、ほんのり警戒した空気を漂わせているのを感じる。

 

「しかし……では、貴殿は本当に剣技に秀でているわけではないのか。グラディオから殿下を守りきったのも、戦術と勇気によるものだと。私には、むしろそのほうが驚きだ。素晴らしいな。……こほん。……ルナリア殿、フェリス殿、これは戦士として褒めているだけだ。男性としてどうこうではない」

 

 カタリナさんは、最後の方は苦笑しながら言っていた。ルナリアとフェリスは恥ずかしそうに視線を逸らした。

 

 そんな二人を見ていたカタリナさんは、はっとしたようにこちらへ視線を戻した。

 それから、少し慌てたように言葉を継いだ。

 

「む。……そ、そうか。神器を手に入れたという話からすると、賢者の迷宮関連だな。その話は、この席では――」

 

 カタリナさんの言葉を遮るようにユーリが俺に言った。

 

「神器を手に入れたということは、賢者の迷宮を踏破したのですか? おそらく共和国のものですよね」

 

「ふふふ。それどころか、教国の迷宮も発見して踏破したぞ。あとは王国の迷宮だけだ。教国の迷宮なんて、自力で見つけたんだぞ。凄いだろ」

 

 ユーリは目を丸くして身を乗り出した。

 興奮のせいか、その顔はほんのり上気していた。

 

「えええ! もうふたつ踏破しちゃったんですか!」

 

 ユーリの様子を見て、カタリナさんが頭を抱えて言った。

 

「ああ……まさか、教国のものまで踏破しているとは……。先に言い含めておくべきだった……」

 

 ふと、俺は教国の迷宮は発見から踏破まで、無許可だったことを思い出した。

 あまり公言しないでおこう。

 

 

# Conditions_for_Joining_the_Labyrinth_Quest:

 

 俺はカタリナさんに手招きされ、彼女のところへ歩み寄った。

 ユーリとルナリアたちは、賢者の迷宮での戦いについて話し始めていた。

 初めは、王家に含むところのある様子だったフェリスも、ユーリとの会話を楽しんでいるようだった。

 

 その様子を見て、ひと安心した俺はカタリナさんの方へ向き直った。

 赤みを帯びた髪が照明を受け、騎士とは思えないほど艶やかな光沢を放っていた。

 思案するように少し伏せた目元は、長いまつげに半分ほど隠されていた。

 

 ううむ。本当に美人だなあ。

 

「ユリウス殿下は、本気で貴殿のパーティーに加わろうと考えておられる」

 

「はい」

 

 カタリナさんは、目を伏せたまま話を続けた。

 

「殿下の王位継承権は第三位だ。そして、貴殿はいずれ本物の英雄となる人物だと私は思っている。それらを踏まえると、王子殿下ではあるが、貴殿の仲間として冒険に加わることも不可能ではないだろう。私は殿下の夢を応援したい」

 

「はい」

 

 カタリナさんは俺の短い返事に顔を上げ、訝しげな視線を向けた。

 聞いているのかと不安になったのかもしれない。

 俺が真剣に聞いているのを見て、小さく息を吐いてから口を開いた。

 

「だが、まだ貴殿らと共に戦うには早い。殿下はまだ幼いからな。不敬であるが、事実だ。それなのにご本人は、賢者の迷宮攻略へ自分も同行できないかと考えていた」

 

「ユーリ、結構無茶しますもんね」

 

 俺の答えに頷いたカタリナさんが、続けた。

 

「そうなのだ。殿下のその無鉄砲さを心配なさった国王陛下が、迷宮について伏せておられた情報をお伝えになった。かの迷宮は、三か所すべてを踏破しなければ世界樹には至れないそうだな?」

 

「詳細を聞いたわけじゃないですけど、おそらくは」

 

 カタリナさんは、苦笑を浮かべて続けた。

 

「Sランク級の迷宮だ。普通に考えれば、ひとつ踏破するだけでも年単位を要する。さらには、他国にある迷宮だ。陛下は、貴殿たちが情報を集める時間も含めれば数年はかかるはずだとのお考えだった。その間に、殿下も立派に成長なされるだろう、という話だ」

 

 ユーリとルナリアたちの方から笑い声が聞こえた。

 なにか話が盛り上がっているらしい。

 

「それを一年もかけず、見知らぬ他国でふたつ見つけて、さらに攻略してくるなどアルス殿たちのほうこそ無茶苦茶だ。はぁ……まだまだ私はアルス殿たちを見くびっていた。昨夜のうちにでも、先に伝えに来ておくべきだった。いや、無理だな。どうせ殿下に見つかっていた」

 

「ルナリアとフェリスが凄いんですよ。俺……いや、僕は普通の冒険者です」

 

 俺は本心からそう言った。

 カタリナさんは俺の返事を聞いて、口元に笑みを浮かべた。

 

「そんなわけがあるか。どんな謙遜だ。まあ、そういった訳でな。残る迷宮がひとつしかないとなれば、殿下は決して諦めないだろう。私自身、あまり止める気もない。だから、申し訳ないんだが、最後の迷宮は二、三年待ってくれないか」

 

 カタリナさんの言葉を聞いて、俺は腕を組んで思案した。

 窓の外へ視線を向けると、少しずつ日が傾いていた。

 

 俺はユーリやカタリナさんのことが好きだ。

 そういうことなら、待ってあげたくはあるのだが……。

 

 悩みつつも、俺はカタリナさんに向き直って答えた。

 

「可能なら待ってあげたいんですが。魔王に、一年以内に世界樹へ来なければ街を破壊していく、と言われているんですよ。……それと、最近大森林の魔物が活発化しているのは知ってますか? 多分、それも魔王に関係しているんじゃないかと思うんです。だから、待つのは厳しいかもしれません」

 

「……は? 魔王?」

 

 そうだよな、いきなり魔王とか言われても、戸惑うだけだろう。

 カタリナさんに、少し考えをまとめる時間がほしいと伝え、俺は思案した。

 

 まず、待つのはどうか。

 魔王がなにをしてくるか予想がつかない以上、それは無理だ。

 レオの村の人たちや、ハンナ孤児院のみんなが、時間を置いたせいで危険に晒されたりしたら、俺は自分を許せない。

 

 もし一緒に行くのであれば、必要な条件はなんだろうか。

 

 高い戦闘技能と、賢者の叡智に耐える精神性だ。

 

 戦闘技能は、ルナリアに頼んできちんと見極めてもらうべきだな。

 俺だってユーリの希望は叶えてやりたいが、力不足なら連れていくわけにはいかない。

 これには、本人も納得するだろう。

 

 俺は楽しそうに会話しているユーリへ視線を向けた。

 リゼット様がなにかしているらしく、俺の同行者は、審判の板による適性判定を無視していた。

 踏破した際には、ひとつ目の叡智に触れることになる。

 

 頑張って踏破した迷宮の最後で手に入れる叡智のせいで、悲しい思いをするのは可哀想だ。

 

 いや……そういえば、ユーリは初めから、神話による王族の権威に懐疑的だった。

 叡智については、いっそここで話してしまうのはどうだろうか。

 別に、案内人に口止めもされていないしな。

 

 考えがまとまった俺は、カタリナさんに顔を向けて言った。

 

「詳しく話します。テーブルへ行きましょう。ユーリも交えて、俺が直接話します。かなり時間がかかると思いますが、大丈夫ですか?」

 

「ううむ。そうか、分かった。貴殿を信用しよう。時間については問題ない。今日は終日、この茶会に時間を取ってある」

 

 俺とカタリナさんは、談笑を続けていた三人のテーブルへ歩み寄った。

 俺は自分の席に腰掛け、カタリナさんはユーリの背後に立った。

 

「お話は終わったのですか? カタリナ! 僕は先生と迷宮に行きますよ!」

 

「ユーリ、まず俺の話を聞け。ええと、カタリナさんも聞くんですよね。ちなみに聞いたら後悔すること間違いなしですよ。大丈夫ですか?」

 

 カタリナさんは、頼もしさすら感じる怜悧な目つきのまま、口元に笑みを浮かべて答えた。

 

「ああ、私にも聞かせてくれ。なに、貴殿らが旅で成長したように、私も王家直臣となって様々な経験をした。どんな衝撃的な話も飲み込もう」

 

 カタリナさんは、なんといっても美人女騎士だ。

 もしかすると、すべてを知っても平然としているかもしれない。

 ユーリは、普通に大丈夫そうだと思った。

 

「ユーリ。まず、攻略を待てない理由から話す。それから、もし一緒に行くなら知っておいてほしい話と、最低限の条件を伝える」

 

「はい、先生!」

 

 ユーリは表情を引き締めつつも、目に期待を浮かべて俺に答えた。

 

――俺はまず、魔王と邂逅した件を話し、続けて賢者の叡智の内容をゆっくりと伝えた。

 

 魔王ジークフリートの件には、ユーリもカタリナさんもそれほど驚いていなかった。

 どうやら、王国でも魔物の出現が増えつつあるらしい。

 

 だが、賢者の叡智の方はそうはいかなかった。

 ユーリは目を輝かせているだけだが、カタリナさんの顔色はどんどん悪くなっていった。

 

 俺の記憶力は、正直大したことはない。

 ひとつ目とふたつ目を分けて伝えるのは難しかったので、今知っている内容をすべて伝えた。

 フェリスが適切に補足と修正を挟んでくれるおかげで、説明自体は滞りなく進んだ。

 

 好奇心に駆られたユーリが次々に質問してきたが、俺はその半分も答えられなかった。

 だが、フェリスは叡智の内容を完璧に記憶しており、ユーリの疑問を丁寧に解消していった。

 

 カタリナさんが、頭を押さえてぼそっと呟いた。

 

「王家や貴族の後ろ暗い話など、大した話ではなかった。……聞くんじゃなかった……はぁ」

 

 美人女騎士でも無理だったか。

 しかし、カタリナさんは想像していたよりも平気そうだった。

 やはり俺たち王国民は、基本的に大雑把なんだなと思った。

 

 話し終わって茶で喉を潤している俺に、ユーリが言った。

 

「わくわくするお話でした。ありがとうございます! 僕はもともと、王権が女神様から与えられたものだという神話に疑いがあったんですよ。すっきりしました。そうだ、迷宮を踏破すればリゼット様の御身が見られるってことですよね。楽しみです!」

 

「王子が言うのはどうなんだ。まあ、俺も叡智の話については、ユーリは平気だと思っていた」

 

 俺は茶菓子を齧り、木杯に口をつけてからユーリに告げた。

 

「ユーリ、これが本題だ。ルナリアやフェリスは強いが、俺は弱い。迷宮の中で、お前を守ってやる自信がない。戦士として一緒に行くのであれば、最低限の強さを示してほしい」

 

「もちろんです。いっぱい訓練しましたから、自信がありますよ! 実は、魔物もこっそり一人で討伐していました!」

 

 カタリナさんが、ぎょっとした顔でユーリを見た。

 お前は何をしているんだ。

 

 俺は呆れつつも、隣に座るユーリへ笑みを向けて口を開いた。

 

「そうか。俺の言う試験……試験という言い方は嫌だな。これは約束だ。俺が出した条件を達成できたなら、誰が何と言おうとも一緒に行こう。王家が反対しても関係ない」

 

「先生……!」

 

 ユーリは俺の言葉に感動したように声を上げた。

 俺は笑みを消し、表情を正す。

 それから彼にその条件を伝えた。

 

「ルナリアと模擬戦をしてもらう。ルナリアは木剣を使う。当然、魔法も魔法剣も禁止だ。ユーリは神器を握り、持てる力のすべてを振るえ。ルナリアの攻撃に五分間、耐えきることができたら、一緒に行こう」

 

 カタリナさんとユーリは、きょとんとした目で俺を見ていた。

 赤い瞳で俺を見つめるルナリアに俺は言った。

 

「ルナリア、もちろん怪我はさせないようにしてもらわないと困るが、お前はユーリを諦めさせるつもりで剣を振るってくれ。妙な手心は加えるなよ」

 

「え。アルス……で、でも、それはいくらなんでも無茶だよ」

 

 俺は、無茶だろうがなんだろうが、それくらい強くなければユーリを連れて行くつもりはなかった。

 

 

# COORDINATE 0077 END

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