勇者コールセンター株式会社   作:一宮 千歳

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第4話

『勇者コールセンター株式会社』のオフィスに、本日も山田の、どこか憐れみを帯びた大人の対応の声が響く。

 

今回の相談者は、バチバチの外見に反して意外と真面目な女子勇者、坂口希美(サカグチ・ノゾミ)

 

「困ってる民は助けたい。でも、魔王を倒したら強制イベントで結婚させられそう~。王子の顔面が油田みたいだし、イヤらしい目で見てくるし、なおかつ12歳も年上だし、無理~。助けて~」という胃痛必至の相談だった。

 

「賢者、王族の『婚姻押し付け』は、あっちじゃよくある『やりがい搾取』だろ。突っぱねろって言えばいい」

 

佐藤がコーヒーをすすりながら言うが、山田は頭を抱える。

 

「それがさ、一応あっちの法律(王命)を盾にされててね。下手に突っぱねると『魔王討伐後の報酬支払い拒否』を仕掛けてくる可能性があるんだよ。向こうもカスハラのプロだし」

 

そこで、研修中のエーデルガルドが、ニヤリと不敵な笑みを浮かべた。

 

「おやおや、社長もマネージャーも、頭が固くていらっしゃいますわ。あっちの王族は『面子(メンツ)』を何より重んじる……。ならば、ネットの力で社会的に進めて(・・・)差し上げればよろしいのですわ」

 

「は?」

 

エーデルガルド様が、研修用のPCで『7ちゃんねる』、そして異世界の王族も(情報収集のために)見ている『魔導SNS』の画面を開く。

 

「ルダ、例の『加工魔アプリ』と、その油ギッシュ王子の公式肖像画を用意して」

 

「御意に」

 

ルダが完璧な事務処理スピードで、王子の写真を「超絶美形」に補正した画像と、女子勇者が「王子、とっても素敵です!魔王を倒したら結婚してください(ハート)」と(捏造した)メッセージを作成。

 

それを、エーデルガルド様が匿名掲示板とSNSに爆速で拡散(トレンド入り)させた。

 

「おい、お前それアウトだろ!?」

 

佐藤が止めようとするが、お嬢様のタイピングは止まらない。

 

「いいですか、マネージャー。これを大々的に拡散すれば、王子は『わたくしのような美形が、たかが平民の勇者ごときと結婚してやるのだ』と、周囲にドヤ顔で大ボラを吹きますわ。

 

 そこへ、我が社の『請負窓口』から、こう追撃のメール(念書)を送るのです。

 

 『世界中にこれだけ婚約が周知されました。つきましては、魔王討伐後に婚約、婚姻を破棄された場合、我が国(日本)の法律に基づき、違約金および慰謝料を請求いたします。同意書にハンコください』、と!」

 

「…………」

 

オフィスが凍りつく。

 

「あっちの王子は、女性の勇者を『いつでも捨てられる都合のいいトロフィー』と思ってますのよ。

 

 だけど、もし雑に離婚したら国家が傾くほどの『超巨大な負債(リスク)』に化けると知ったら……あの油ギッシュ、絶対に自分から『この話はなかったことに!』って泣きついてきますわ! おほほ!」

 

「……おい賢者。穴だらけだろ、これ」

 

「うん。結婚しちゃうじゃん。離婚しなかったら問題の女子勇者はどうなるんだい?」

 

「あ」

 

エーデルガルドの声が響いた。

 

オフィスを支配したのは、先ほどまでの「完全勝利のドタバタ感」を急冷却するような、ガチの沈黙である。

 

「お、お嬢様……。もしあの油王子が、国の予算を天秤にかけられてなお『いや、マジでその女子勇者可愛いから結婚する! 離婚もしない!』とゴリ押してきた場合、相談者の女子勇者様は生涯の『確定した地獄』に監禁されるのでは……?」

 

「……詰んでますわ。わたくし、目先の炎上(トレンド入り)に気を取られて、ハッピーエンドの導線を設計し忘れていましたわ」

 

「なにやってんだよ……うちが違法スレスレの婚姻を後押ししたって、勇者(フリーランス)たちからの信用がなくなるじゃないか……」

 

頭を抱えて机に突っ伏す山田と、冷や汗を流しながら「おほほ……」と引きつった笑いを浮かべるお嬢様。

 

そんな二人を、佐藤は呆れ果てた死んだ目で見下ろしながら、手元の外線ボタンを迷いなくタップした。インカムの向こうでは、今なお「魔王は倒したい、でも結婚は嫌だ」とシクシク泣いている女子勇者の声が聞こえている。

 

「王族は面子に弱いという着眼点だけは正しい。そこだけ採用する。

 

 おい、ひよっこ。いや、相談者の嬢ちゃん。……聞こえるか」

 

『はい~。あの、ウチの相談、どうなりました~……?』

 

佐藤はよれよれのワイシャツの襟を少し緩め、いつもの気怠げな、しかし最高に頼りがいのあるトーンで告げた。

 

「油王子との強制イベント、お前さんがフリーランス(個人事業主)のままだと、あっちの国の『王命』に押し切られるリスクが残る。……そこで提案だ。お前、そのフリーランス辞めて、うちと直接契約(専属雇用)結ばねえか?」

 

『え……? ウチが、『勇者コールセンター』さんの、社員になる、ってことですか?』

 

「正確には子会社だけどな。我が社の『正社員勇者』になれば、お前さんは日本の労働法、およびうちの会社の就業規則でガチガチに守れる。

 

あっちの国の王子がどれだけ婚姻を迫ってこようが、日本の企業が『我が社の貴重な労働者を、先方の都合で強制的に退職(婚姻)させる行為は、

 

不当な労働介入および人権侵害にあたるため、到底受け入れられません。これ以上の強要は世界間労働機関に通報します』って突っぱねられるようになるんだよ。

 

魔王は普通にうちの『業務』として叩き潰せばいい。結婚の契約書じゃなくて、うちの『雇用契約書』にハンコ押しな。どうする?」

 

インカムの向こうで、女子勇者が息を呑む気配がした。

 

そして、その横では入館証を握りしめた平が、「マネージャーさんが女の子を篭絡してる……!」と、頬を猛烈に膨らませて佐藤を睨みつけている。

 

山田が、アメを噛み砕きながらそっと呟いた。

 

「友よ……。かっこいいけど、人件費《固定費》が増えるよ……」

 

「うるせえ。人手不足で会社潰れるって言ったのはお前だろ、賢者」

 

「欲しいのは請負窓口だよ! 勇者増やしてどうすんの!」

 

----

 

一応、件の女子勇者は雇用する方向で話がまとまった。そして佐藤がインカムを切った瞬間、それまで隣でハラハラしながら見守っていた平が、机をガタッと鳴らして身を乗り出した。

 

「わ、私も! 私もフリーランスやめて、この会社の正社員になります!!」

 

両拳をきゅっと握りしめ、顔を真っ赤にしながらの猛アピールである。

 

「おい平、お前高校生だろ。学業はどうすんだ」

 

「それは、そのー……うちの学校ユルいんで。」

 

そもそも平は学校までサボって会社に出入りしている。採用される(就職実績にカウントされる)なら、途中でやめようが、特に問題はなさそうだった。

 

「ユルすぎない?」

 

「保護者にはなんて説明すんだ」

 

ツッコミが止まらない。

 

「勇者ですけど、今はあくまで学生に対する副業です! だってマネージャーさん、よく考えてみてくださいよ。フリーランスなんて、どれだけ実績を上げたって退職金も出ないし、厚生年金にも入れないじゃないですか!

 

 あっちの国の王様がくれる『褒賞』なんて、その場限りの不確実な臨時収入です。私はもっとこう、正社員になって、人生のポートフォリオを長期的に安定させたいんです!日経平均とかで!

 

 お父さんとお母さんは……説得します!」

 

中小企業で安定するのかとか、日経平均は安定してなくないか、というツッコミは野暮だった。

 

少なくとも、異世界のいつ崩壊するか分からない王政国家の財政や、気分で乱高下する王様の「褒賞」に比べれば、まだしも日本の経済指標の方がマシに見えるのだろう。

 

16歳にしてすでにインデックス投資の概念に毒されているマコトの熱弁に、佐藤はペットボトルコーヒーを口に含んだまま、半ば呆れた目を見せる。

 

しかし。ネット弁慶にしてロマンの信徒、エーデルガルドが「なんですって……!?」とガタッとソファから立ち上がった。

 

「マコトさん! 国家を救う英雄のゴールが、にっけいへいきん? と終身雇用だなんて夢がありませんわ! 男なら黙って一獲千金、女なら玉の輿、それがファンタジーの王道のはずですのよ!」

 

「じゃあエーデルガルドさん、油王子と結婚したいですか?」

 

ぐむ、とエーデルガルドが言葉に詰まり、平が続ける。

 

「エーデルガルドさん、今の日本のちょっと上向いてきたとはいえまだまだ怪しい経済状況と少子高齢化の現実、あと元本割れのリスクを舐めないでください!

 

 不祥事さえ起こさなければクビにならず、土日祝日がしっかり休めて、世間の荒波から『国家』という最強の盾で守ってもらえる職――『公務員』こそが、現代日本における最高ランクのチートなんです!」

 

「いつの間にか正社員から公務員に話がすり替わってますの!」

 

「私の夢、公務員なので! ここで働きながら高卒認定を取ります!

 

 勇者業は社会勉強です! ちょっと肉体労働すぎますし、一生やる気はありません!」

 

「一生続ける気がない、その割り切り、最高にビジネスライクで素晴らしいよ」

 

パーテーションの向こうから、山田がパソコンの画面を見つめたまま深く頷いた。

 

「うちとしても、最前線でいつまでも戦い続けられて労災のリスクを定年まで抱え込まれるより、若いうちにガッと稼いでもらって、数年で円満退職してくれた方が、経営上の人件費コントロールとしても非常に健全だ!」

 

「賢者、お前が言うとガチで生々しいからやめろ」

 

佐藤がコーヒーをすすりながら突っ込む。そんなやり取りの最中、山田の手がキーボードの上でピタリと止まり、カッと目を見開いた。眼鏡の奥の目が、かつて古代魔法の記された古文書を解読した時と同じ輝きを放ち始める。

 

「……そうだ。直接雇用だと本体の人数が増えて『常時50人の壁』にぶつかるし、労災リスクが直撃する。だったら、グループ会社として『株式会社勇者派遣』を別法人で立ち上げて、彼女たちをそっちの所属にすればいいんだ!」

 

「急に悪徳コンサルみたいな顔してブツブツ言うな。怖いぞ」

 

「合法的なスキームだよ友よ! 金流を派遣業としてコールセンター側に還流させれば、税務的にもキャッシュフロー的にも圧倒的に軽くなる!

 

よし、平さん、そして相談者の嬢ちゃん、君たちは新会社の『正社員』として雇用し、我が社の請負業務の実働部隊として異世界へ派遣する形をとる!」

 

「え、ええっと……? つまり、私はマネージャーさんの部下になれるんですか?」

 

「ああ、平。実質的な指示は今まで通り俺がやるから安心しろ」

 

「やったぁ……!」

 

胸をなでおろすマコト。そこで、佐藤が登記申請書の『代表取締役』の欄を指差した。

 

「で、その子会社の社長どうすんだ。空欄にはできねえぞ」

 

「えー、じゃあ、ルダさんで」

 

山田は、まるでお茶のおかわりを頼むくらいの軽いトーンで言い放った。

 

「私じゃありませんの!?」

 

ガタアッ!!! と、本日一番の勢いでソファから立ち上がったのは、もちろんエーデルガルドである。金髪を激しく揺らし、信じられないものを見る目で山田を指差している。

 

「わたくし、純人間種にして大貴族、ルステンブルグ家の令嬢ですのよ!? なぜ我が家のメイドのルダが社長で、わたくしが平社員なんですの!?」

 

「いや、だってエーデルガルドさん。君、入社初日からブラウザ最大化で匿名掲示板に迷惑書き込みして土下座したよね? そんなコンプライアンス意識ゼロの人を代表に据えたら、一発で子会社が行政処分受けるよ」

 

「うぐっ……!」

 

「その点、ルダさんは素晴らしい。気配り、洞察力、そして開いた口が塞がらないお嬢様の不祥事を即座に上に報告する徹底した『報・連・相』の精神。リスク管理の塊だ」

 

ルダは、トレイを胸に抱えたまま、一ミリも表情を変えずにペコリと一礼した。

 

「身に余る光栄でございます、山田グループ総帥。ナ氏族の名に懸け、新会社『株式会社勇者派遣』の取締役会を完璧にコントロールし、お嬢様を合法的に馬車馬の如く働かせる所存です」

 

「ルダ――!? あなたいつの間にそんな暗黒組織の幹部みたいな語彙を覚えましたの!? あと、社長就任は出世魚が過ぎますわ!!」

 

「お嬢様、これからはオフィスでは拙のことを『ルダ社長』とお呼びください。さあ、社長命令です。ネットサーフィンの始末書、早く提出してください」

 

「そんなぁぁぁーーーッ!!」

 

「やかましい!!! さっきからガタガタガタガタ、通話が聞こえません!!!」

 

パーテーションの向こうのデスクから、ヘッドセットを片手で押さえた勇者窓口の一般女子社員が、般若のような顔で身を乗り出してきた。

 

「あ、すみません……」

 

「申し訳ありませんわ……」

 

今まさに異世界の勇者からの「オーガに囲まれてて全滅しそうなんですけど!」というガチの悲鳴を受電中だったプロのオペレーターによる大迫力の叱責。

 

その迫力に、大貴族のお嬢様も将来の公務員も、一瞬にして借りてきた猫のように縮こまって頭を下げた。

 

山田は、くだんの女子勇者と平の2名分の『雇用契約書』、そして代表取締役・ルダの判子が押された登記書類をトントンと机に叩いて揃えると、周囲に聞こえないような小声で深くため息をついた。

 

「これで『株式会社勇者派遣』の設立登記は完了だ。さあルダ社長、さっそく記念すべき最初の『業務命令』だ。あの油王子の国に、我が社の正社員に対する労働介入への抗議文を爆速で送りつけてやろう!」

 

「社長もいいなあ……」

 

「平ちゃん、よくないよ。胃痛と友達になるよ?」

 

「いや、胃痛なんかより、とりあえず直近のキャッシュだ」

 

佐藤がよれよれのワイシャツの袖をまくり上げながら、冷徹に現実を突きつける。

 

「賢者。箱《子会社》を作るのはいい。ただ『株式会社勇者派遣』の初期費用と、相談者の嬢ちゃんの給与、平のバイト代はどこから出すんだ」

 

「ふふふ、そこは抜かりないよ友よ」

 

山田は眼鏡をくいと上げ、不敵に笑った。

 

「あっちの油王子の国に送りつけるのは、ただの抗議文じゃない。我が社のリーガル(法務)の全力を結集した『不当労働介入への損害賠償請求および、予定されていた魔王討伐業務のボイコット予告書』だ。

 

向こうは魔王に怯えてるからね。女性勇者さんを確実に動かすための『手付金《前払い金》』として、あっちの国家予算の1%を、まず我が社の口座に即日送金させる。

 

それを新会社の資本金と運転資金に充てるのさ。つまり、実質ゼロ円起業だよ!」

 

「……お前、現役時代は聖属性使えたけど、悪魔と契約して、使えなくなってんじゃねえのか」

 

佐藤のジト目に、山田は「人聞きが悪いな、正当なビジネスだよ」とアメをカラコロと転がした。

 

「ルダ社長。書類の準備を」

 

「さすがに今すぐ作成は無茶ではありませんか!?」

 

「フォーマット、送ったから。」

 

緑色の小さな新社長は、「いったいいつ準備したのか」という驚きを隠せない。

 

そこには『乙《王家》は甲《株式会社勇者派遣》の所属労働者に対し、婚姻の強要を行ってはならない。違反した場合、即座に勇者を引き揚げ、発生した魔王勢力による甲の被害の全額を乙が賠償するものとする』と、容赦ない文言が並んでいる。

 

「よし。じゃあルダ社長、その書類、あっちの国の一番目立つギルドの掲示板に『公開書簡』として送りつけてやれ。王族は面子に弱い。裏で交渉するより、衆人環視のさらし台に乗せた方が折れるのが早い」

 

「御意にございます」

 

カタカタカタ、とルダの小さな指がキーボードを叩き、異世界へと国際法務の弾道ミサイルが射出された。

 

その様子を、平は「わあ……大人って汚い……」と半分引きながら、半分は尊敬の眼差しで見つめている。

 

「でも、これで私の『人生のポートフォリオ』の第一歩は安泰ですね! 来週からダンジョンの待機時間に、公務員試験の過去問持ってきます!」

 

「だからダンジョンを自習室代わりにするんじゃねえよ」

 

佐藤が突っ込むと、オフィスにまた小さな笑いが起きた。

 

「で、エガちゃんさあ」

 

「エガちゃん!?」

 

パーテーションの向こうから、新しくペットボトルコーヒーのキャップをパキリと開けた佐藤が、いつもの気怠げなトーンでとんでもない略称を放り込んできた。

 

「役に立ってないよね。ルダさんは社長なのに」

 

「……ま、マネージャー? いま、わたくしの高貴なる響きのファーストネームを、現代日本の高名な破天荒芸人のように縮めましたわね? あまつさえ、役に立っていないなどと……!」

 

エーデルガルドがソファーの上でわなわなと震え、金髪を激しく揺らす。

 

「だって事実だろ。ルダ社長は完璧なホウレンソウで、あの油王子の国から資本金を分捕る法務スキームの実行部隊としてバリバリキーボード叩いてる。

 

 (たいら)は現役勇者としてうちの『派遣登録』第一号になって、社会勉強(過去問勉強しながら勤務)に励む。

 

 ほかの社員さんも、コールセンター業務を立派にこなしてる。……お前、何したっけ?」

 

「業務中に掲示板書き込みをして、しかもスレ主に完璧な角度で土下座をなさいました。あとはパソコンのAI研修にガチでレスバしており、窓口業務を任じられる水準にありません。」

 

隣のデスクから、ルダが一切の感情を排した声で補足する。

 

「ルダ――!? 身内の恥をそんな定例報告の議事録みたいに読み上げないでくださいまし! 違いますわマネージャー、わたくしは、その……そう! ネットリテラシーの反面教師としての役割を!」

 

「それ、ただのやらかし社員っていうんだよ」

 

山田の容赦ないツッコミに、エーデルガルドは「ぐぬぬ……」と喉を鳴らして言葉に詰まった。

 

「あ、あの、エーデルガルドさん……。私、余ってる公務員試験の参考書、貸しましょうか? 一緒に勉強すれば、きっと役に立つ事務処理の知識とか身につきますよ!」

 

親切心100%の平のフォローが、大貴族のお嬢様のプライドにトドメを刺す。

 

「た、平さん……! 16歳にマジで心配される成人女性の気持ちを考えたことがありますの!? わかりましたわよ! わたくしだって、ルステンブルグ家の英才教育を受けた身! パソコンの、その、ログが残らないサボり方さえマスターすれば、明日からは完璧な戦力になってみせますわ!」

 

「斜め上の努力をすんな。始末書もう一枚追加すんぞ」

 

「そんなぁぁぁーーーッ!!」

 

「やかましい!!! 通話中だって言ってるでしょうが!!!」

 

パーテーションの向こうから、一般女子社員の般若の顔が飛び出し、オフィスは(通話以外)一瞬で静まり返った。

 

社内のヒエラルキーの最底辺で怒られ続けるエーデルガルド。これが、彼女のコールセンターでの、輝かしい(?)平社員ライフの日常風景となりつつあった。

 




次話の投稿は2026/6/15 11:10です。
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