現世に侵略してきた異世界人を撃退して世界を救ったら、世界と異世界から命を狙われるようになりました。   作:佐久間 譲司

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第二十二章 戦いのあと

 翌朝のテレビニュースで、大田山公園の異変について報道されていた。ローカルではなく、全国区としての報道だった。

 

 内容は、原因不明の大破壊。レイラの氷によるものだったが、氷は直斗が全て消滅させてしまったので、残ったのは、崩壊した『旧安西家住宅』や、倒れた木々、抉れた地面であった。まるで爆撃でもされたような有様から、テロリストの仕業とも噂されていた。

 

 直斗は、朝食を取りながら、そのテレビニュースを観ていた。春香は見知った場所がテレビで流れたことに興奮しており、今日が休日なのも手伝って、やたらと見物しに行きたがった。しかし、蛍子の禁止令が発動し、春香の野次馬の希望はあっさりと潰えていた。

 

 朝食を終えた直斗は、自室へ戻り、ベッドへ腰掛けた。そして、少し考える。

 

 ルカはあの後、レイラをどこへ運んで行ったのだろう。『処理』という物々しい表現をしていたが、何をするのか。レイラはまだ生きていた。ジェフリー・ダーマーのように、昏睡状態のまま、人体を解体でもしたのだろうか。

 

 それに、ルカの言葉も気になっていた。ルカは自身が直斗の味方だとアピールしていたが、いまいち信用できない。もしかすると、レイラのように、突如牙を剥くかもしれない。彼も吸血鬼なのだ。

 

 直斗は、ベッドから立ち上がり、クローゼットを開いた。そして服を着替える。

 

 着替えの最中、クローゼットの奥へと意識を向けた。この位置からは、服や衣装ケースに隠れていて見えないが、そこに昨日、ルカから受け取った、レイラのショルダーバッグが置いてあった。

 

 中身は例の変装道具一式だ。記憶装置などの致命的な物品は昨夜消滅させたが、これはまだ残っていた。

 

 ダミーとはいえ、『ロビン・フッド』の証拠になり得る代物だ。当然、同じようにすぐにでも廃棄か消滅させるべきである。しかし、なぜか躊躇いがあった。すぐに消滅させてはまずいような、嫌な予感がするのだ。そのため、今は保留することにした。様子を見て、処分しようと思う。

 

 着替えを済ませ、直斗は部屋を出る。居間でワイドショーを見ていた蛍子に、裕也の家へ遊び行くという、嘘の目的を告げ、家を後にした。

 

 久しぶりに晴れた明るい朝日の中、直斗は昨夜と同じルートを通って、大田山公園を目指す。

 

 大田山公園へ近づくにつれ、テレビ局らしきワゴン車や、中継車が目に付くようになった。

 

 そして、大田山を目前とした国道十六号線を越えた辺りから、にわかに騒然とした雰囲気に包まれ始めた。至る所にパトカーや消防車の車両が停車しており、警察官が忙しそうに駆け回っている。上空は、警察やテレビ局であろう、ヘリコプターが、鳶のように旋回をしていた。

 

 大田山の正面入り口が見える所まで近づいたが、規制線が張られており、今までのように立ち入ることは不可能となっていた。直斗と同じような野次馬も、遠巻きに大田山公園を見上げている。

 

 直斗は、他の入り口を当たっみるものの、正面入り口と同様に、規制線が張られており、侵入はできそうになかった。

 

 大田山の周囲を一周回る形となった直斗は、再び正面入り口まで戻ってきていた。

 

 これからどうしようかと考える。大田山公園に入れない以上、ここにいてもあまり意味はない。そもそも、無理に入る必要もない。

 

 家に帰るか、そのまま遊びに行こうか思い始めた時、肩を叩かれた。

 

 振り向くと、黒のワークキャップを被った小柄な人物がいた。

 

 ルカだった。少女のような、綺麗に整った顔が直斗を見上げている。キャップを被っているのは、白銀の髪を隠すためだろう。

 

 「少しお話しましょう」

 

 ルカはそう告げた。

 

 

 

 

 その後二人は、近くの喫茶店へと赴いた。

 

 開口一番、直斗は、レイラの処遇について質問を行った。しかし、ルカからの答えは曖昧なものだった。

 

 「彼女は夢の世界へ旅立ちました」

 

 それがどういう意味なのか訊いても、要領を得ない回答だったので、直斗はこれ以上の質問を諦めた。

 

 その後、直斗は、いくつか気になっていたことをルカに問い質した。

 

 まず魔法のことだが、ルカの魔法は、レイラを昏倒させた時に見た通り、電気を操るものだった。レイラもそうだったが、相当強力な部類に入るようだ。これも甚大な魔力を宿しやすいという吸血鬼の特性らしい。

 

 次に、昨夜の件により、自身に降りかかる問題について質問をした。

 

 かなりの大事になり、直斗は不安に包まれていた。また、直斗自身に魔の手が迫る恐れがある。

 

 その不安を吐露した。

 

 ルカは、それについて、心配することはない、と断言した。

 

 ルカ曰く、直斗が『ロビン・フッド』だと発覚する証拠になるものは、全てルカ自身が消し去ったというのだ。それのみならず、これから直斗に降りかかりそうな火の粉は全て払うと約束してくれた。

 

 直斗は、なぜそこまで自身のために行動してくれるのかと、訝しみながら質問をした。

 

 すると、ルカは少し恥ずかしそうな表情になった。

 

 「あなたの血が僕も欲しいからです」

 

 ルカは、そう言うと、優しく微笑んだ。

 

 整った薄い唇から、長い八重歯がチラリと見える。

 

 直斗は自分の心が、再び沈み込むのを実感した。

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