お兄ちゃんと妹がパロディギャルゲに転送されるイベントが発生中 作:ヌチャニドロ
これナイトレインである意味ある?(当然の疑問)。
その日の晩。
誰もいない部屋から俺は出発した。
「裏門…」
妹はそこに商人が現れると言った。
商人…商人にはあまりいい思い出はない。
だが現状をなにか、少しでも打開できるきっかけとなるならば、利用しない手は無い。
「到着したが…どこにいる…?」
夜に徘徊するなど、いつぶりか。
久々だったからか、夜目が効かない。この地が比較的田舎だということもあり、灯りもなく、静かな夜の闇だけが広がっている。
「場所を違えたか…」
『選択せよ』
ひゅっと息を呑む。勢いよく振り返り、距離を取る。目を凝らす。
そいつは門扉の横、先ほどは何もなかったはずの暗闇に佇んでいる。
「やはり、お前か」
秤を持ったそいつは、夜を渡るなかで何度も遭遇した『魔』であった。
『………』
何も言わず、こちらを見据えている。選択…
妹は、それに遭遇すればやるべきことは自ずと浮かぶ、等と言っていたが…
そう都合よく頭に浮かんでくるわけがない、そう思っていた。
「武器を望む。この地にて戦ってゆけるだけの、武器を」
俺の口は勝手に開いた。
『……………決まりだ』
魔はそう言い放ち、少しした後に袖の中から何かを取り出し、こちらへ差し出した。
「これは…?」
それはきらきらと黄金の光を放つ
「矢じり…いや、剣先の破片…か?」
一体これはなんなのだろう。俺は武器を望んだはずだ。やはりこの魔はどこかいい加減な所がある、人の真似事をするならば、もう少しまともなものをよこして欲しい。
そう思いながら、この破片について詳細を問おうとするも、顔を上げたときには既に姿を消していた。
「こんなもので、どう戦えと…」
予測できたはずの期待外れ感を抱えながら、その日は部屋に戻り、眠りについた。
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次の日…
グラ子は剣道部の朝練のため、電話だけしてきた。
『アンタホントに大丈夫なの?昨日もかなりアレだったんだし、休んどけば?』
「問題はない、心配は、嬉しいが…」
『そ、じゃあアタシは朝練行ってくるから!また学校でね!』
昔から面倒見の良いグラ子は、こうしてほぼ毎朝電話をかけてくる。
…このような記憶が頭のなかにすでにあるのは、やはり違和感ではあったが受け入れるしかなかった。
見知らぬ歩き慣れた道、見たことのない何時もの景色が過ぎ、学校が見えてくる。
学校に行くなど、初めての経験だ。新鮮さと食傷気味な感覚を同時に感じながら、自分の席に座る。妹曰く、この席は『主人公席』らしい。
「よう」
後方から声をかけられる。振り返るとそこには鋭い目突きの男が立っていた。
はて…こいつは一体何者だったか…。
「お前、噂になっていたぞ。中庭で叫ぶ男がいたとな」
「事情があった。少し冷静ではなかったんだ…。」
「大丈夫だったのか」
「保健室の寝台で休息を取った、問題はない。帰宅は随分と遅くなってしまったが…」
「…おい、それでは昨晩のワールドレスリングは見れなかったのか…?何という勿体のないことを…」
誰だか分からないまま隣の席に座ったそいつと話を続ける。
…正体が分からずとも、違和感なく会話が続くな…友人か…。
「すまないが、そういったものにはもとより興味がなくてな」
「損しているぞ、お前。俺など弓道部の練習を途中できり上げたというのに」
………鉄の目か、コイツ。そう言えばちらと見える奴の顔に面影が似ている。
これがNPC、と言う奴か…。
ワールドレスリングについて饒舌に語る奴の言葉を話半分に聞きながら、なんだか朝から疲れるな、と昨晩受け取った破片をいじりながらため息をつく。
「む…それはなんだ?」
「拾ったんだが…よく分からなくてな、交番にでも届ければ良いのか…」
「……見覚えがあるぞ、その刃の破片」
…なんと、こんなところに縁があるとは…。
妹が頭のなかでイベント発生ね、とウキウキしている様が浮かぶ。
「ふむ、持ち主を知っている。俺から渡しておこう」
鉄の目に破片を渡す。
こういうものは自ら渡すべきなのか?などと少し考えるが、結局渡してしまった。
そうこうしている間にホームルームになり、学校生活が始まる。
授業は正直何を言っているのか全くわからなかった。
歴史は聞いたこともない国の話がほとんどだった。思い出すものとさっぱりなもの、違いはなんだ…?そしてこの数学教師は解雇したほうがいいだろう。あらゆる数値を2000倍にしようとするな。どうかしている…。
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昼休み。俺は昼食を摂るため、中庭へ移動していた。
鉄の目は破片を持ち主へ渡しに行った。
パンをちぎりながら食べていると、少しあたりの気温が上昇したような感覚に襲われる。
「よっ」
「んぐ…、グラ子か」
「ん~…うん!大丈夫そうね!心配して損したかも」
グラ子は廊下の方にいる友人に軽く手を振ってから、俺の近くに寄り弁当を広げた。
友人たちはくすくすと微笑ましいものを見る目をしている。その様子が、どこか、俺と妹のやりとりを見たファルハドの微笑みに似ていて、久しぶりに草の香りを思い出した。
「少し、疲れていたのだろう」
「ふ~ん…ま、まあ、何か悩んでることとか?あるなら…聞いてやらないことも無いけど?」
そう言う彼女は少し頬が赤らんでいる。
「…いや、これ以上の心配はかけられない。保健室に何度も様子を見に来てくれたと聞いた」
「なッ…!?」
「■■■…いや、保健医からな。部活の合間合間にも顔を見せに来たと」
「何度もっ…て!い、1、2回程度よ…!お、幼馴染なんだから当然でしょ!?」
「そういう…ものか…」
幼馴染、とはそういうものだったか。そうだった気もする。
「そ、それより!これ!!」
彼女は弁当箱の1つをぐいとこちらへ押し付ける。
「これは?」
「アンタいつもそのパンしか食べてないでしょ?だから…その…良いから食え!」
「?」
弁当箱を開く。
中には…ひき肉と豆、それと玉ねぎ?をトマトソースで煮たものが入っている。
「まあ…?アンタの食ってるやつ…ピタパン?っていうんでしょ?そう言うのが合うってネットで見つけたのよ…」
つっけんどんな態度を取りながらも、頬を染めて照れくさそうに腕を組んでいる。
俺はパンをちぎり、弁当箱の中の料理をのせ、食す。
「…うまい」
「ホ、ホント…!?え、えへへ…」
本当に美味かった。肉…いつぶりに食べたか…。
だが、食材ではない。それ以上に何か、温かみのようなものを感じる味だ。
「…作んの簡単だし、次も作ってきてやっても良いけど…?」
「それは…グラ子が良ければ、ぜひ頼みたい」
「しょっ!しょうがないわね!!あー!朝練あるけど、頼まれちゃったから作ってきてあげるわよ!」
グラ子はふふんと鼻を鳴らして実にご機嫌である。
というやり取りをしている途中、突然であった。頭のなかに甲高い音が鳴り響く。
「!?」
「どした…?」
「少し良いか?」
中庭に入ってくる凛とした声。
くすんだ赤毛の長髪に、褐色の肌、まるでこちらを射殺すような視線。これは。
「フルゴール…!!」
「…人違いではないか?」
はっとする。このやりとり、既にした記憶がある。
横からグラ子のジトッとした目線を感じ、目をそらした。
眼前の女は気を取り直した様子で名乗る。
「私は夜光 フル美、君たちと同じ2年だ」
彼女は、妹から伝えられていたヒロインの1人であった。
「そうか、はじめまして、だな?何か用があるようだが…」
「ああ…と言いたいところだが、もしかして邪魔してしまったか?」
夜光はグラ子を見て、苦笑いする。
「別にぃ…?コイツに用があんなら連れてけば?」
グラ子は露骨に不機嫌という態度になっている。相性は良くないか…?
「いや、連れて行く程の用では無いのだが…」
夜光はポケットから何かを取り出し、こちらへ見せる。
「む…それは」
「ああ、あいつから聞いた。君が拾ってくれたのだろう?」
刃の破片…。なるほど、こういうことだったか。
イベント発生…と言ったところか。
「これは私にとってはお守りのようなものなんだ、割れてしまったが…それでも見つかったのはとても嬉しいんだよ」
「そうか、なら、次はなくさぬよう肌身離さず持っていたほうが良いだろう」
「ああ、そうする。今回は礼を言いに来ただけだ、ではな」
夜光は背を向けてさって行く。
その後姿を見ていると、グラ子が話しかけてくる。
「ふぅん、何かいいことしたみたいじゃん」
「たまたま、だがな」
「ま、美人だし?有名人だし?役得だったんじゃないの」
グラ子はしらーっとした態度でパクパクと弁当を口に運んでいる。
しかし有名人…?妹からはとくに情報は聞いていないが…。
俺は不機嫌になるだろうな、と思いつつもグラ子に聞く。
「有名人とは、どういう…?」
「知らないの?あの子、少し前まで弓道部のエースだったのよ。2年だけど実力と雰囲気で、女王とか言われてたみたい。いろんな大会で好成績残したんだって」
「少し前…?今は違うのか?」
「んー…何か、事故にあったんだかで左腕に後遺症が残ったらしいわ。それから弓道部やめちゃったっぽいし、弓はもうやれないとかじゃないかしら。」
あちらのフルゴールも片腕を失い、夜に呑まれていた。
やはりどこか繋がっているのか…。
「ていうかずいぶん気になってるわね…?一目惚れでもしたの?」
「いいや…」
ふん!と怒るグラ子を横目に、そろそろ昼休みが終わる事を察知し、自分もパンとグラ子の作った料理をかき込むのだった。
中途半端なところで終わるという。
続きません。