お兄ちゃんと妹がパロディギャルゲに転送されるイベントが発生中 作:ヌチャニドロ
どこでやめようか…
放課後。俺は保健室に立ち寄っていた。
フルゴール…いや、夜光と接点ができたことを妹へ報告するためである。だがそれともう一つ、聞いておかねばならないことがあった。
「そう、そんなことが」
俺の話を聞いた妹は、どこか楽しそうな様子である。
「幼馴染…グラ子から攻略をする、そういう話だったが…夜光の様な別のヒロインはどうする?全員攻略しなければ脱出できないのだろう?1人を攻略した後に次のヒロイン…など、不可能じゃないのか」
「伝えていなかったかしら、振り出しに戻るのよ」
「なに?」
振り出しに…戻る?
「1人攻略した時点で、兄さんが目覚めた日に時は戻るわ」
「それはつまり、7度同じことを繰り返す必要がある、と言うことか?」
妹は微笑む。
「同じことではないわ、それぞれ攻略の道筋は異なるもの…」
「でも、そうね…」
この顔は何か悪戯を思いついた表情だ。
「グラ子さんから攻略すべき、などと思っていたけれど、気が変わったわ」
目を閉じ意を決したように妹は言う。
「兄さん、全員選びましょう」
「最低では?」
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全員選ぶ。それはハーレムルートと呼ばれるものらしい。
ハーレ厶など、俺の人生には一度たりとも縁のない言葉だ。
しかし、その選択で、それで良いのか…?頭にはグラ子の料理が頭によぎる。
…いや、彼女らも所詮この地変の一部に過ぎない。
何より、俺の目的…夜の王の打倒のためには、最も短い道筋が最善だ。迷うべきではない。
考えながら、下駄箱へ向かう。
突然、どん と何かにぶつかる。
「ん?」
壁か。少し注意が散漫になっていた…。
こういうことはいつもの出撃でもよくある。地図に集中しすぎるとついな…。
見上げる…これは、壁、ではない…!?
「ん…だいじょう、ぶ…?」
頭上からの声。なんだ…これは…!?
第六感が発動する。この感じは…!
壁かと見紛う体躯、浅黒い肌、灰色のショートヘア。巌の断崖を前にしているようなこの感覚は。
「フォルティス…か…」
「?」
3度目だ。流石に慣れた。
なるほど、彼女が妹の言う、夜識姉妹…その片割れか。
「ごめん、ね…前、きおつける…」
「いいや、こちらも前を見ていなかった。すまない」
話し方にどことなく隠者殿の雰囲気を感じる。肌も似た色をしているし、重なってしまう。大きさは、比べるべくもないが…。
「ん…きみ…、知ってる…」
「ん?」
ただぶつかっただけだ、それで話は終わると思っていたのだが…。彼女は俺に少し興味を示している…?
「昨日…叫んでた人…」
「見てたのか…」
あの場面を見ていた者は以外に多いようだ。
羞恥心は無いが、またその話か、と少し面倒になって来た。
「あれ…何してた、の…?きになる…」
「人を探していた、そう面白いものではない」
「ん…そう、なんだ…見つかった、の…?」
そう気になるものか。だが隠すようなことでもないので答える。
「ああ、見つかった」
「よかった、ね…」
一応名を聞いておこう。繋がりは持っておいて良い…だろう。
「名を、聞いてもいいか」
「人になをきくときは…じぶんから、かな…?」
「…すまない」
「ふふふん…別に、冗談…だよ…」
彼女は静かに名乗る。
「わたし、は…夜識 フォル…いちねん…きみは…?」
こちらも軽く自己紹介をする。
夜識は俺が2年だということを知ってから、敬語を使ったほうが良いかと顔を覗き込んでくる。その必要はない、と答えるとどこか満足そうに鼻を小さく鳴らした。
「だれ…さがしてた、の…?さがしてた…理由、は?」
ずいぶん聞いてくるな…名乗りあったとはいえ、先ほど知り合っただけの間柄なのだが…。特段答える義理もないし、面白い話でもないので口を閉ざしていると、少し眉を下げて彼女は言う。
「ごめん、ね…?気になったこと…深掘りしたくなっちゃう…」
「そうか…拒絶するつもりはないが、踏み込まれることを嫌う者もいる。気をつけろよ。」
「わかった…せんぱい…」
そう言って校舎から出る。
夜識も同時に出るも、玄関の横で立ち止まる。
誰かを待っているようだ。
本人には言わないが、やはり随分と目立つ。
「待ち人か?」
「ふふふん…今度は、せんぱいがきいてる…」
「……」
…動向を気にしてしまうのはこちらも同じだったか。
思わず口を斜めにしてしまった。
「スター…待ってる」
「スター?…ああ」
なるほど、姉妹か。
この時間まで学校にいるのだ、概ね、部活か何かなのだろう。
「あまり、遅くならないようにな」
「それ…ちょっとじじくさい…ね」
「普通だろう…?まあ、いい…またな」
「うん」
夜識は控えめに手を振り、俺を見送った。
もう一人のヒロイン、夜識 スターも待っていれば出会うことができたのだろう。だが、共に待つ理由もない。
それに、何か嫌な予感がした。第六感が発動したのか…ここまで連続で発動することも珍しい、去るのが吉だ。
俺は振り向くことなく帰路についた。
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夕暮れ時。
帰ってしまったせんぱいの背中を見ながらスターを待つ。
「ふふふん…」
勝手に笑みが溢れてしまう。
昨日、中庭で見た誰かの名前を叫ぶあのせんぱい。
変な人かなあと思っていたが…やはり変な人だった。
話し方とか、発言内容ではない。纏う雰囲気と言うか、オーラ…?ふわっとした表現しかできないが、そういうものが今まで出会ってきた人とは何か根本的に違うような気がした。
まるで別の世界から来たかのような…。
気になる。すごく気になる。あの人の持つ秘密が。
どうにも小さい頃から、気になることを深掘りせずにはいられない性格なのだ。せんぱいは踏み込みすぎるのはやめろと言っていたが、もちろんやめられる気はしてない。
「誰のこと見てたの」
突然、横から抑揚の無い声が聞こえた。
「スター」
「…白い髪、青い耳飾り…誰?あれ」
双子のスターだった。
「待ってなくていいって言ったのに」
「べつに…少しくらい待ってる、よ?それに、新しい知り合い…できたから」
「………」
スターは小さくなるせんぱいの背中を、宝石のような瞳で見つめている。見覚えあったのかな?とか考えたけど、だからどうだと言うこともなく、わたしはしゃがんだ体勢をやめ、立ち上がる。
「かえろ…?」
「うん、そうだね」
なんだか、何時もよりもほんの少しだけ景色が新鮮に見えた。
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1時11分。今晩も裏門へ行き、アイテムを受け取る。
今回受け取ったものは、スイーツ食べ放題の…チケット?
なんとなく誰用のアイテムなのか予想できるな…。
魔は音もなく消える。
こいつは相変わらずだが、しかし代価は…?
こちらが一方的に要求しているようにしか思えない…。
もしくはこちらが気づいていないだけで、何かを奪われている…?
明日、妹にも見解を聞いてみるか。もし好感度というようなものを消費している、なんてことがあれば問題だ。妹が利用しろ、といったもののため、そこまでの代償ではないのだろうが…。
とりあえず明日に備え、部屋に帰宅し、眠りについた。
夜識 フォル 身長190cm 体重100kg 柔道部
続きません。