昼は人々で賑わう人間の里に着くと季節が夏に変わって行くのを示しているように木の陰で横たわって寝ている子供もいれば里の大通りのなか扇子で扇ぎながら楽しそうに会話をしている若者もいた。それを狙うかのようにずらりと並ぶ店の店員らしき人々は汗を滝のように流しながら声を張り上げて客を呼びこぶのに必死になっている。
その呼び込まれた客の中に周りの人たちよりも小さく見覚えのある少女がいた。
「よう、久し振り」
俺が声をかけたのは妖夢だ。妖夢は両手に袋一杯に詰められた買い物袋を持ちながら頬に汗を垂らして何かを買っていた。
「はい、誰です・・・か」
妖夢は俺の顔を見るなりハッとさせてその可愛らしい顔は次第に怒りに変わっていった。
「静次さん!!何処に行っていたんですか!?」
突然意味が分からない事を言われてしまった俺は、は?と心の中で思ったが妖夢は直ぐに口を動かし始めた。
「昨日少しの間珍しく幽ヶ子様から仕事のお休みを頂いたからその、静次さんに会おうと思って神社に言ったのに!!」
それって俺悪くなくないか。と言うと「そうなんですよ・・・」と溜め息を吐き肩を落とした。
「まぁ、許してくれよ。昨日は紅魔館に泊めてもらったんだ」
「そうなんですか」
「つか何で俺なんだ?霊夢に会うためじゃなくて俺に会いたかったのか?」
質問に対して妖夢は言いずらそうにしながらも横目で「そ、そーですよ」と真っ白な頬を若干赤めた。小柄な妖夢の体にふと目がいき、手に持っている荷物に目が止まった。
そう言えば妖夢ずっとこの荷物持ってるのかな?ここは男として持ってあげるか。
「お前重そうだな」
この良心――いや、この言葉使いのせいで自分を傷付けるとも知らずに。
「あ?」
「へ?」
妖夢のドスの効いた声に恐怖を覚え不機嫌な顔の妖夢の目を見るが、殺意に満ちた目をしており、見とれてしまいそうなほど綺麗だった青色の目は光を捨て、闇に染まっていた。
「――静次さん、女性に対してその言葉は言ってはいけないと言うことをその体に教え込んであげます」
「よ、妖夢さん?や、やめっ・・・!!」
俺が最後に見たのは雲のない綺麗な青空だった。
「――知らないてんじょ・・・知ってる顔だ」
目が覚めるとそこには「まいったか」と言う感じの顔をしている妖夢が俺を見下ろしていた。
「何を言っているんですか静次さん」
意味がわからんと呟きながら俺の頭を撫でてきた。・・・え?
今気がついたことだが俺は木の陰の下に寝かされているだけかと思ったが違った。地面にしては柔らかすぎる。しかも枕の様に俺の頭を支えている物は柔らかく良い匂いがした。
「・・・妖夢、何故膝枕?」
まだ俺の頭に手を置いたままにしている妖夢は少し恥ずかしそうにしながらも「地面に寝かされる方が良いですか?」とからかう様に問いかけてきた。
「地面か妖夢の膝かって言われたら勿論膝をとるが」
そこまで言うと今更感あるが妖夢が顔を真っ赤にし、俺に見えないように横を向いた。相変わらず手は頭に乗っているが。
風が吹く。里の大通りではなく周りが田で囲まれたそこはサァ・・・と音が鳴り響いた。それが何だか心地よくて自然と目を瞑ってしまう。
「あの、静次さん。足が痺れてきました・・・」
「んあ?あーごめん」
つい膝枕されていたことを忘れてしまい、もう一度意識を手放そうとしていた。そしてさっきまで感じなかったのだが何だか自分も恥ずかしくなってきてしまう。
「妖夢、これから帰るのか?」
「はい。庭の手入れもしないといけないので」
「そうか・・・」
再度風が吹く。体に透き通る様な風が妖夢の綺麗な髪を揺らしながら過ぎていった。
「何か時間とってしまってすまないな」
「別に気にしないで下さい。それと、女性にあんなことを言ってはいけませんよ?」
少し悲しそうな顔をする彼女。
「そういえば・・・」
思い出した。何故こうなってしまったのか。俺は荷物が重そうだなという意味を込めて言った筈だったのだがきっと妖夢は自分が重いと言われたと取ってしまったのだろう。
「妖夢、違うんだ」
「何がですか?」
「きっとお前は自分が重いって言われたと思ったんだろう?違うぞ?俺はお前が持っていた荷物が重そうだなと・・・」
真実を告げると俺の目を見、その場で土下座をしてきた。
「ちょ、ちょっと妖夢!!」
周りには人は俺と妖夢以外誰も居ないが自分が恥ずかしくなってしまう。
「すいませんでした!!私の勘違いで静次さんを傷つけてしまって!!」
「いやいやいや、俺の言葉使いが悪かっただけだから、な?」
いきなり緩やかな空気に変わったこの場所は俺たちを笑うように草木がサァ・・・と音をたてた。
「それに妖夢も自分で分かってるだろ?」
「何を・・・?」
「妖夢は身長も低いし小柄だし見た目からして重そうに見えないだろ?」
「それは褒めているんですか?それに、これからちゃんと身長も伸びるんですから!!」
身長の事を気にしている様子の妖夢は自分の伸びしろを教えつつ、少し嬉しそうに笑っていた。
「それでは私はこれで帰ります」
少ししてから木の幹の側に置いてあった荷物をヒョイと持ち上げた妖夢は俺に近づき「また会いましょう」とだけ言い、宙に飛び上がった。
「持たなくて大丈夫か?」
「大丈夫ですよ。それに静次さんは冥界に行きたいんですか?」
目を細めて嬉しそうにしている彼女は手を振り飛んでいってしまった。
「帰るか・・・」
「ただいま~」
神社に着くと里とは正反対に静かで無人かと思うくらいの静けさが辺りを支配していた。居間に行くと霊夢が腹を出して眠っており、テーブルには酒が置いてあった。
「全く・・・」
少々呆れながらも毛布をかけ、畳を枕変わりにしていた頭を少し持ち上げ座布団を敷いた。
「俺も少し眠るかな」
霊夢の隣に横になり座布団を折り曲げて枕にし、目を閉じた。
この静な空気に口をだす者は小さな小鳥達の囀ずりだけだった。
今日も投稿。課題をやっている最中に頭に浮かんだので書いてしまった。久々に妖夢の登場。
では次話で。