ミチなるセカイへ!   作:もーめんど

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第一章 episode④ 《ゴリ押し》

 

 

レムナードが情報収集を中断し空腹の腹を抑えながら宿屋に向かっていた一方、勇者ヤマダとランの二人は宿屋の1階にある食堂で朝の”腹ごしらえ”をしていた。

 

「おおっ美味ッ!このコシ!この勇者ヤマ…ごほん、一般旅行客娘として星3をあげようッ!少年ッ!」

 

「yes…このソーメン、ンまい」

 

「ありがとうございます!ランさん、ディータちゃん!お父さんも喜びます」

 

食堂に置かれた長ーい机に向かい合ってソーメンの味に舌鼓を打っているのは宿屋の跡取り息子【メル】、そして宿泊客の魔道人形ランと勇者ヤマダが変装した【ディータ】である。

 

食堂の奥の厨房で宿屋の親父が満面の笑みでディータに向けて手を振ると、ディータが真っ白な歯を見せて親指を立てた。

 

「ラン…やはりオレの変装は完璧だな…!」

 

「humm…yes、主人のオモワク通り勇者には関わりのない少女に見える、事件の調査もバレてない」

 

「むぅッ…少女ではないぞッ!【美少女】だッ!」

 

二人は【潜入捜査】がバレないようにこっそりと会話を交わす。

 

勇者ヤマダの変装は時々、普段のような”勇者的な口調”が出かかるものの、

【辺境都市テイラ】に観光に来た少女の姿に擬態できていた。

 

「ランッ…この調子で少年から何かの情報を引き出すぞ…と言うか引き出せなければレムナードに合わせる顔がないぞッ…!?」

 

「arr…市場で事件に関係しそうな情報を聞けなかったから焦ってる?」

 

「あ、焦ってないに決まってるだろうッ!?この勇者ヤマダがぁーッ!?」

 

メルが皿を下げるため席を開けた瞬間小さな声で言い争う二人だったが、

壁側に座るテレビのリモコンを持った中年の男性が二人に声をかけた。

 

「ソッチノお客サン、テレビ違う番組ニ変えてイイ?」

 

「問題ないッ!」

 

「ok…ワタシは見てないからイイよ」

 

左隅の小高いクローゼットの上に置かれたブラウン管テレビの放送が王国テレビに切り替わると、お馴染みのドギツイピンク色の風体の貞淑な仕草の女性が映し出される。

 

 

「勇者特集【勇者ヤマダ】をご覧の皆様、次は勇者ヤマダができることを紹介しま~す。勇者ヤマダはたくさんの特技を持っているんですよ~。1、鼻からスパゲッティを食べれる、2、どこからともなく光り輝く剣を出せる、3、男性女性中性に囚われない”勇者的性別”を自称できる、4、眠りながら剣を振れてクイズに答えられる、5うるさくて6強くて7すごくて8愉快で9サボリで~、全部で108くらいあるんですけどね~今回はこの特技を深掘りしていきま~す!」

 

「勇者ヤマダかぁ、僕はあんまり好きじゃないなぁ、毎日テレビでゴリ押しされてて…あれじゃ勇者というよりゴリ押しのヤマダだよね」

 

皿を下げた後、机の上を拭いていたメルがため息交じりに声を漏らすと、先程の中年男性が陽気に手を叩いた。

 

「オ、気が合うネ!オジサンモそう思ってたヨ、というかドコでもミンナ言ってるネ!ゴリ押し、ゴリ押し、ゴリ押しだっテ!」

 

「あっ、お客さんもそう思います!?いやぁそうなんですよねっ!あのヒトあんまり好きじゃなくて…最近いつも【勇者ヤマダ】の勇者特集の再放送で【翼の勇者アルバトロス】、ジョージスト・メリカの勇者特集が見れないから…」

 

「何ィッ!?少年はこのオレ勇者ヤマダ、ゲフン!勇者ヤマダが好きではないのかァーッ!?」

 

ヤマダが激しい身振り手振りで”勇者的なポーズ”を取りランを問いつめると、彼は困った顔で頭をかいた。

 

「なんというか…やっぱりテレビのゴリ押しがしつこくて、それにジョージさんにはこの前宿に泊まった時に仲良くしてもらってサインまで頂いたので僕の中では一番好きな勇者なんですよね!」

 

「何だとぉッ!?オレの人気がッ…他のヤツに負け、負けェッ…!ウッグスッ…ウワぁ~ッ!なぜオレの人気がァッ…ゴリ押しなんて言われてッ…!ま、まさか巻き過ぎたロールの姫ッオレが事件を解決するまで何度も勇者ヤマダの再放送を続けてオレの名声を地に落とすつもりなのかぁッ!?超絶美麗最強たる勇者ヤマダの姿が目に焼き付きすぎてもはやゴミ捨て場のゴミのようなありふれたモノへと墜とすために~ッ!巻き過ぎたロールの姫めえ~ッ!グッスゥゥ~ッ!」

 

泣きわめく勇者ヤマダ。

 

彼の悲鳴が食堂中に響き渡ると和気あいあいとした穏やかな雰囲気が一瞬で消え去った。

 

「ア…ソウいえばソコのお嬢チャンの横のヒト…ランさんじゃナイノ、昨日ノ関所ブリダネ!…モシカシテそのお嬢チャン勇者ヤマダの妹サン?ナラ悪いコトしたネ…」

 

「a…まあそんなトコロ、兄の勇者ヤマダがテレビのゴリ押しに胸をイタめて失踪してからこんなに泣き虫になっちゃって…」

 

「そ、そうなんですか?ご、ごめんなさいディータさんっ!」

 

「グスッ…うう~ッ!勇者ヤマダは失踪なんかしてないぞッ!勇者ヤマダはここにいるんだよォッ~!」

 

「yes…そうそう、ディータの兄はいつもココロの中に…マブタを閉じればいつでも会える、だからくじけないで」

 

「すすす、すみません~っ!ごめんなさいっ!ディータちゃんっ!僕にできることがあれば力になりますからっどうか泣かないでくださいっ!」

 

メルは手に持っていた雑巾を放り投げて慌てた様子で勇者ヤマダが変装した姿【ディータ】に抱き着く。

 

彼が抱き着いた瞬間、勇者ヤマダはすかさず叫んだ。

 

「そうかッ!ならこの前この宿に泊まっていたという【翼の勇者アルバトロス】について教えてくれぇッ!」

 

「わ、わかりましたっ!じゃあ…ちょっとこっちに来て下さいっ…」

 

ついさっきのメルたちの話を聞き耳を立てて把握していたヤマダとランの二人は【許可証】を奪い取られた勇者は【翼の勇者アルバトロス】だと推測していた。

 

直後、予期せぬ出来事でヤマダが号泣しながらもランのふるまいが功を奏しどうにか少年から情報を引き出すことに成功したのであった。

 

「humm…主人、綱渡りだった」

 

「綱渡りではないッ!すべてはこのオレによる完全完璧”勇者的な計画的計画”だったのだぁッ!」

 

「no…どちらかというと場当たり的…メル少年が重要そうな情報をニギってたのも、ソレを聞けたのも全部グーゼンだし、主人は泣いてただけだし…人気が無くて」

 

「人気はあるッ!断じて人気はあるぞォッ!ランッ!ただちょっとゴリ押しと言われているだけでぇッ!」

 

「arr…それが致命的」

 

「ぐはぁッ!?……うわァーッ!グッスーゥッ!」

 

「わぁ!?ディータさんごめんなさい許してください泣かないでっ!何でもしますからぁっ!」

 

 

■◆■◆

 

 

☆現在のパーティー

 

勇者:ヤマディータ・ロウデス

 

お供②(魔道人形):ラン・ズルフィクション

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