聖闘士星矢 NEXTDIMENSION 〜終わりの始まり〜 作:くまたいよう
【地上暦1990年】
エリシオンにおいて、神話の時代より幾度となく地上を脅かしたハーデスとの戦いは、ついにハーデスの本来の肉体を消滅させた事により決着を迎えた。
【そうすれば。最早、2度と戦いは起こるまい】
天秤座の童虎がそう言ったように、いかにハーデスでも冥界を再建するには千年単位が必要であろうからだ。
しかし?
「妹よ、帰りなさい・・・・」
月の神殿。
アテナである城戸沙織は姉であるアルテミスに見下されていた。
自分を庇い、ハーデスの剣を受けた星矢はハーデスの怨念として残ったインジブル・ソードにおいて余命は3日しかない。過去に遡る禁忌を犯してまで星矢を救おうとするアテナだが、突き放したアルテミスは悲しげに一言告げ、アテナにとって神として以上に姉としてあるべき形を述べた。
「人間にそこまで執着する愚かさも御しがたい以前に貴女は致命的な間違いを犯しています。星矢なる聖闘士は・・・・いえ、全ての聖闘士は貴女が時空を捻じ曲げ、宇宙崩壊を招く可能性のある大罪を犯すくらいならば自ら死を選ぶでしょう。違いますか?」
同行した瞬も反論不能であった。自分達は聖闘士なのだ。アテナに大罪を負わせてまで助かりたいとは思わない、これこそが致命的なズレ。
「妹よ、聖闘士とはアテナの為に。地上の愛と平和を守る為にある事すら失念しましたか!君臣の交わり淡きこと水の如しと人間の言葉にありますが、それは最低限の一線を守り抜く前提あってこそ。今の貴女にはソレがありません。この上は神話の時代に神であるハーデスに傷を付ける大罪を犯した者でありますが、同時にハーデスとの戦いの度に代々のアテナと地上を守り抜き続けた勇者である天馬星座の聖闘士の最期に寄り添い、彼をアテナとして送り出してあげなさい!」
空間が歪み、神殿の外に二名は放り出された。しかも、無数の道にわかれている。これでは再び神殿に行くまでに時間ぎれになるとしている内にどれだけの時間が過ぎたのか、涙を流しながら進む沙織に瞬が掛けられる言葉はない。
帰り道にたどり着き、見知らぬ少女がいた。
【月の魔女ヘカーテ】
アテナの髪を貰い、若返ったヘカーテは思うところがあったのか事情を聞いて言うべき事を述べた。
「あ、アテナ。最早手遅れ・・・・せめて、せめて星矢の最期を見届けてあげるべきだよ。貴女を守り抜いてくれたんだからさ、それにまだ何か手があるかもしれないし」
「う、うう・・・・」
「沙織さん、ヘカーテさんの言うとおりです。地上に戻って他を探しましょう」
失意のままに帰還したが。沙織は既視感を抱いた。星矢の元に戻ったが、そこには誰もいない。気づいた雑兵が慌てて駆け寄りありのままを告げた。
星矢と、星矢を守っていたシャイナに魔鈴が突如として姿を消してしまい、残った聖闘士は聖域の内外を捜索していると。
へたり込むが、何故とした時にアテナは自分が星矢の手首に巻いた花の鎖の気配を感じた。だが有り得ないとしたが、賭けるしかない。
「瞬、良くお聞きなさい。聖域にこのまま留まるように・・・・宜しいですね?」
【そして、沙織はイタリアに来ていた】
小さな場だった。静かな田舎だが人の気配が無かった。城のようであり洋館のような場があったが、無尽であるが廃館にしては内部から復興が進んでいるとして最上階にある部屋に進んで扉を開いたが、思わぬ光景があった。
「あれ、沙織さん?」
「な、何故・・・・星矢。星、矢・・・・?」
およそイメージには合わない、星矢が自分でもそうは見た事ない穏やかな顔をしてスケッチブックに絵を描いていた。何故このような場で絵などと聞きたいが聞けないし、何故か近づけない。
「星矢、アナタは一体・・・・!」
「違和感は持てても、真相に気付かないなら成功か。ふ、ふ・・・・いや、この身体ならアハハハとやらか、もしくは・・・・こう、かな?」
沙織は目を見開いた。良く覚えているのだ。自分が初めてアテナと明かした際に星矢は自分に皮肉げにこう告げた時の表情。
『アテナってのは、傲慢で我儘。身勝手な事を言うのかよ』
だが、業を煮やしたのか星矢の身体から僅かに立ち昇る小宇宙と星矢に重なる姿で漸く事態を覚った。
「な、何故です・・・・何故、アナタが星矢の身体に宿っているのですか・・・・」
飽くまで斜に構えた時の星矢の表情のままでいるので、遂に沙織はその名を呼んだ。
「・・・・【ハーデス】!!」
「漸く現実を見れたか、愚かなりアテナ!把握しきれてなかったようだな。さてどこから話したものか・・・・キッカケは【ネメシア】の一件よ」
アテナも聞いている。エリシオンから帰る前にネメシアが動き出し、ポセイドンとポセイドンに仕える海闘士が事態を解決した戦い。だが、何故それにとした時、星矢の身体をしたハーデスが自分をアテナと信じなかった時の星矢の笑みで告げた。
地上に死界の蝶に姿を変えた力の残滓を飛ばしポセイドンに依頼した。海闘士達を一時的に蘇らせたのも流石に隕石で地上を破壊されるのは忍びないのでいたからなのも聞いた通りだ。
「その後であったな。余は眠りに着いたハズであったのだ。だが、完全にそうなる前にある事に気づいたのだよ・・・・余の力の残滓が残っておった事に・・・・それに、先日に漸く思い出した存在を見つけ、あろうことかアテナが地上より離れていた事にも気付いた・・・・」
「ま、まさか・・・・」
「その通り。愚かなり・・・・真に愚かなりアテナ!貴女がいない間に余は天馬星座の聖闘士の、余の呪いの力に蝕まれた星矢を見つけ、意識をインジブル・ソードの力に融合させ身体を頂いたのだ。この男とは前の聖戦からこうなる可能性があったのだ。貴女も多少は把握していたのであろう!243年・・・・天馬星座は余の友であった!余を、いや正確には当時の余の依り代であるアローンを救いたい意思が魂に残っていたのだ。それが手伝っての結果よ」
淡々と告げるハーデスに沙織は膝を震わせた。確かに天馬星座とハーデスの縁は自分ですら把握しきれてなかったからだ。そもそもオリンポス12神の一角であるハーデスの本来の肉体に傷を付ける人間等が神の理解を超えていたのだと。
「しかし、この男は瞬とは違う意味で純粋で清らかな小宇宙よな。品行方正であれば良いわけではないのか、どんなに血と泥に塗れても信念を貫き通して余を脅かした男。まるで泥の中において綺麗に咲き誇る蓮華花の如しよ。先に言っておくが星矢の魂は身体の中で眠りに着いておるがインジブル・ソードの呪いは既に消えておる。滑稽よなアテナ、まさか天馬星座の命を救ったのが宿敵である余であったとはな、しかし貴女の浅慮が招いた危機を救い続けて命を使い果たし欠けた男が、此度は不用意に留守にする浅慮がキッカケでこのような結末か、何と哀しいものよ」
「あ、ああ・・・・」
膝から崩れ落ちて涙を流すしかなかった。沙織はアテナとしても普通の人間としても自分の力と思慮の不足で負けてしまったのだ。
ある今、NT○?