黒衣の絡繰師   作:ummt

13 / 14
警察学校 其の十二

 

「そんなところで何をしている三爆処トリオ!!」

 

 猫の捕獲に失敗して、中庭で猫に引っ掻かれて傷だらけの松田さんと萩原さんと談笑していると、鬼塚教官がズカズカと走り寄ってきて一喝した。

「ご、ごめんなさい鬼塚教官……」

 花畑の上で足を組み直して正座をして頭を下げた。

「龍絶が謝る必要はない!! 松田!! お前なあ、また碌でもないことに龍絶を巻き込むんじゃない!! まだ病み上がりなんだぞ!? 萩原も松田をしっかり止めろ!! まったく……他の3人含めて6人で私の部屋に来るように!!」

 え……教官に呼び出しされるって……。

「俺達、何かしちゃったかなぁ……」

 萩原さんが苦笑いを零すと、松田さんが腰に手を当てて宣言をした。

「へっ!! 心当たりしかねーぜ!!」

 ドヤ顔で堂々と言うもんやから、うちも笑ってしまった。

「自信満々で言う事ちゃうって!! ……ホンマに松田さんてば……ヤンチャやわ」

 するとさっき迄の顔つきが嘘のようにムッとした顔になった松田さんにデコピンをされた。

 

「なっ……龍絶テメー!! 俺を子供扱いすんじゃねーよ!! ……子供扱いしてると、いつか痛い目みるからな。……覚悟しとけ」

 

 、、、

 

「で、あるからして、貴様ら6人には毎日風呂掃除をしてもらうことにした!!」

 

「お、鬼塚教官……」

「それは幾らなんでも……」

 諸伏さんと降谷さんが引き気味な驚きの声を上げると、鬼塚教官はふんぞり返って事の次第を説明をし終えた。

「なあに、貴様らがやらかした悪行三昧を償うチャンスを与えてやろうと言っているんだ。一週間風呂場と脱衣場の掃除を命ずる!! そうそう、龍絶は監督していればいいので、何かあったら報告するように」

 悪行三昧……どのことやろうか、見当がつかへん。

「なんで龍絶だけ仕事させないんですか!? 病み上がりでもやることやらせましょうや!!」

 松田さんの言う通り、ズバリその通りや。

「うちも仕事をします!! 女子の風呂場を掃除させて下さい!!」

 鬼塚教官は腕を組みながらうんうんと唸った。

「当の本人に其処まで言われてしまってはな……。よし、龍絶も他の教場の女子と協力して風呂掃除をしなさい。ただし、無理をして倒れることの無いようにすること。自己の体調管理を怠るんじゃないぞ。……それでは以上だ、早速今から取り掛かれよ!!」

 オーケーを貰えて思わずガッツポーズをすると、諸伏さんがフニャッとした笑みを向けた。

「龍絶さんは努力家なんだね。それともお掃除好きなのかな? 卒業したあとの話なんだけど……新生活でドタバタするだろうし、僕の部屋の掃除を手伝ってくれたら助かるなぁ」

 掃除は暗殺稼業でも家事でも得意分野や!! 

「うん!! 部屋の片付けなら任せてや!!」

 腕捲くりをしてみせると、盛大なツッコミが入った。

 

「「「諸伏!! どさくさに紛れて部屋に連れ込もうとするな!!」」」

 


 

「ごめんなさい、うちと一緒に風呂掃除をしてもらえへんかな?」

 

 初めてマトモに話した他教場の女子達は、寮室が近い事もあって二つ返事で掃除を一緒にすることを了承してくれた。

「ありがとう!! これでお掃除が捗るわ!! えーっと、先ずはデッキブラシを……」

 掃除用具入れに頭を突っ込んでガサガサと目当てのものを探そうとするとしていると、暗い影が5人分落ちてくる。

「ねぇ……龍絶さんって……あの5人と仲、良いんだよね?」

 もしかして……これって少女漫画でよく見る『イケメンに取り入ってて生意気!! 懲らしめてやる!!』っていう虐めに発展するパターンなんじゃ……。

 ゴクリと生唾を飲み込んで、恐る恐る振り返って目を開けた。

「う、うん……まあ、仲はいい方やと思う……」

 デッキブラシを握りしめて後退りすると、肩を掴まれた。

「だよねだよね!? 仲いいよね!? ねえ、降谷くんって素ではどんな感じ? 意外に俺様だったりするの!?」

 ……え? 

「えっと、降谷さんは素でも降谷さんかなあ……」

 視線を斜め上にしてほっぺたを指で掻いた。

「じゃあさじゃあさ!! 諸伏くんは!? 実は不思議ちゃんだったりして!?」

 諸伏さんは……結構マイペースな人やな。

「……うーん、確かに少し天然なとこあるかも……」

 首を傾げながら指を顎につけて悩むと女子達の質問攻めが始まった。

「なら萩原くんは!? 裏表あったりする!?」

 どうしよ、質問を捌ききれへん……。

 警察学校に来る女子が悪い人なわけなかったわ。

 杞憂で安心したら、腰が抜けそうや。

「う、うーん。ちょっと待ってな。うーん」

 頭を悩ませていると脱衣場の外から声が掛かった。

「龍絶!! 居るか!? ヒロの旦那の用足しに付き合え!!」

 後ろを振り返ると女子達は満面の笑みを零して手を振った。

「いってらっしゃーい!! 三爆処トリオの龍絶ちゃん!! 頑張って!!」

 みんな良い人達や……底抜けに善良な人。

 

「うん!! 行ってきます!!」

 


 

「もし外守さんが娘の死を受け入れられず、オレの父さんが有里ちゃんを攫ったと思い込んでいたら……」

 

 外守クリーニングに向かって走りながら、諸伏さんのご両親が亡くなった経緯やゴブレットのタトゥーの正体の話を聞いた。

「それなら行方不明の女の子を囲ってるのは外守さんかもしれんな……。でもお菓子をコンビニに買いに来てたんなら無事かもしれへん!!」

 クリーニング屋の扉をガラッと開けると、中には誰もいなかった。

「おい!! 外守のオッサン!!」

 松田さんが呼びかけても何の音もしない。

 ……二人とも寝ているか、座っているか……拘束されて動けないか。

「定休日か……?」

 違う、微かに火薬独特の匂いがする。

 コインランドリーに目をやると黒い皮膜ケーブルが開け閉め窓の中からたゆみを持ってぶら下がっている。

 あかん、爆発物や。

 降谷さんが窓の持ち手に触れようとすると松田さんが声を荒げた。

「触んな!! ……これは爆弾だ。他の洗濯機にも連動しているみてえだから、この商店街丸ごと吹っ飛ぶかもしれねえな……」

 素人が用意できる火薬量と箱の重量感を見るに商店街丸ごとは大げさやけど、最大火力はこのあたりの家屋を6軒くらい吹っ飛ばすことが出来る威力やと思っとったほうがええ。

「まあ、この右端の奴が大元みてえだから、コイツを止めりゃあ何とか……」

 いや、駄目や。

 起爆が親基からでなく子基からも起爆可能な場合、親基の信管を止めても連鎖爆発が起きるかもしれん。

「兎に角、松田は爆弾の解体。零と萩原、龍絶は周辺住民の避難誘導。俺と諸伏は外守さんを探す!!」

 待って、松田さんだけじゃ間に合わへん!! 

「待った!! 俺は指がコレだから細かい作業は無理だ!! ……萩原ならオレの代わりに」

 せやった……松田さん、猫と一悶着あって指を怪我しとるんやった。

「任せろ!! ……って言いたいとこだが、実は俺もあの猫に引っ掻かれて……」

 嘘やん!? 

「マジかよ……なら、零。お前がやれ」

 ……なんで。

「松田さん!! うちは反対側の子基から解体するから!! 雷管が火薬に着火しないようにすればいい、それにどれがダミーケーブルか分かったら共有出来るやろ!!」

 うちを頼ってえな!! 

 うちは組織のスナイパー兼爆弾設置担当のメスカルや!! 

 

「……よし。零への解体指示は俺が教える。……何かあったら必ず報連相をしろ。……信じるからな? ……藍」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。