「萩原く〜ん!! 次の休みの合コン、イケメン確保よろしくね〜!!」
あ……これ見たイベントや……。
5人揃って合コン行くんよな……。
べ、別にフラグは立っとらんかったし、気にする程では……。
「合コンねぇ……龍絶、お前は来るのか?」
あ、アカン!! 未来が変わっとるんやった!!
「い、行けんよ。女の子ら別の教場やし……」
コミュ力には自信あるから、なんとか入り込めるやろうけど……。
正直な話、5人が女子と仲良う会話しとるの見とうない……。
「あっそ。なら俺は行かねー」
良かったわ、変な虫が付かなくて……。
やないわ!!
今は未来を下手に変えられへん!!
原作にあったエピソードは全部が重要回。
改変をなるべくしないようにせんと、幾らうちが原作を知ってても『5人全員五体満足で警察学校卒業』が達成されんと元も子もない。
それまでは絶対に取り持たないとアカン!!
「うち、それなら」
「なんだよ陣平ちゃん、かまってちゃんかぁ? 珍しい〜!!」
ナイスアシストや萩原さん!!
「ちげぇよ!! 誘わねぇとどうせ拗ねて泣き出すだろうなっつう配慮だ配慮!!」
あ、ヤバ。
推しが生きている尊さに泣きすぎて泣き虫キャラに定着しとるやん。
「それくらいで泣くわけないやろが!! アホちゃう!?」
ここでそっぽを向いて腕を組めば、高飛車な優等生キャラになれるわな。
うちは優等生として同期組に入らなアカンから。
「ああ!? せっかく誘ってやったのに……覚悟しとけよ」
上等や、こちとら5人の命を背負う覚悟なんやから!!
「松田さんはうちに喧嘩を売る前に拳銃マトモに撃てるようになった方がええんちゃうか?」
キッパリと言い切ると萩原さんが笑った。
「そう言いつつさぁ、実は陣平ちゃんと相性バッチリなんじゃない? 龍絶ちゃん」
……え? 待って? え?
今、推しの萩原さんにちゃん付けで呼ばれた!?
幸せ過ぎて気ぃ失いそう……。
あれ……なんだか目が回ってきたな……。
「龍絶さん!? 大丈夫? もしかして寝不足なの? 医務室に行く?」
ダメや、今の諸伏さんに心労をかけてはアカン……。
「気にせんといて!! うちはバリバリに元気やから!!」
「オイ、龍絶!! お前見た目からしてペラペラなんだろ? 英語教えろよ!!」
……最悪や、唯でさえ運命論だのなんだので寝れんかったんに、長い座学で頭が回らんくなっとる。
食堂での食事中くらい、ゆっくりさせてえな。
「ハァ!? アンタも警察目指してるんやから自分で勉強しろやカス!! 教えを請うときの態度くらいしいや!!」
つい組織のメスカルのテンションで怒鳴ってしまった。
「龍絶〜お前本当に口悪ぃなぁ……そんなんじゃ嫁の貰い手見つかんねぇからな?」
なんで松田さんまで煽るん!?
「なら陣平ちゃんが嫁に貰えば?」
はぁ!?
そんなん嬉しいに決まっとるやないの!!
萩原さんにもっと言ってほしいけど、今言われたらうちは詰むんや。
「龍絶さんに絡むなよ……何かあったら言ってね? 龍絶さん」
諸伏さんはオカンモードになっとるやないか!!
違うやろ!! 諸伏さんはもっとこう……。
闇を抱え……。
やない!!
アカン……今……『諸伏さんはご両親の因縁が解決していないから闇を抱えているキャラやないと解釈違い』って思ってしもうた……。
現実として、目の前に存在している人に対して……。
「チッ、流石赤毛の外国人!! サークルの姫気取ってブラックジョークでも言って越に浸ってろよ!!」
流石に頭に来て椅子から立ち上がると伊達班長がモブの首根っこを引っ張って激昂していた。
「人を人種で判断するな!!」
やっぱり男気がある人やなぁ……。
そらみんな付いていくわ。
「爪楊枝なんて咥えて粋がってんじゃねぇぞ!!」
……これ、もしかして降谷さんを庇った時のセリフ?
「それに、見た目だけなら僕の方がよほど英語ペラペラにみえるんじゃない? マンツーマンで教えようか」
降谷さんと伊達班長に詰め寄られるとモブは大人しくなった。
ええな、降谷さんにマンツーマンで教えてもらえたら幾らでも勉強出来そうや。
「で、龍絶……お前、英語出来んの? 出来んなら後で教えろよ!」
……え!? 顔近っ!!
肩に腕回されとるの!?
……ホンマに色男やな……眼が……。
「……松田、龍絶さんは女性だ。弁えろよ」
ピシャリと降谷さんの小さい雷が落ちると、腕は離れるどころか肩を引き寄せられた。
「あ〜? なんだよ、お前……龍絶に惚れたのかぁ?」
こんなん少女漫画の『私を巡る恋のトライアングル』みたいで胸がキュンキュンする……。
けども!!
「もう!! 離れてえな鬱陶しい!! 此処は警察学校や!! 恋愛ドラマしてる場合ちゃうわ!!」
肩から腕を無理やり外して体勢を立て直した。
先ずはどうやって誰も死なせずに二人を救うか考えんと……。
未来が変わっとるから迂闊にラブコメ展開に期待できへん。
うちは二人を助けるために此処にいるんやから!!
そんでもって5人をまとめて救うんや!!
「……ふーん、そーかよ。……ま、勉強だけは教えろよ? 龍絶」
「あのさぁ、普通は自習室とか資料室とかあんだろ!! なんで踊り場で自主勉しなきゃなんねぇんだよ……」
当たり前やろ!!
男女二人きりは教官たちに見られたら詰むやんか。
「松田さん、ちゃんと勉強する気あんの? 言っとくけど、うち、鬼教師やから」
踊り場に教科書を広げて高らかに宣言するとおでこを指でつつかれた。
「なーにが鬼教師だよ。……なら俺に手取り足取り個人指導してくれるんですか? 龍絶センセ?」
え、え、近っ、近い……距離が近い……。
ヤバい、心臓が保たへん。
「やっ……それは」
アカンて息がかかるのは無理……。
悪ふざけなのは分かってても頭が真っ白になってしまう。
「……なーに目え瞑ってキス待ちしてんだ。……バーカ」
おでことおでこがぶつかった音がして目を開けるでニカッと笑う松田さんの顔があった。
「はあ!? バカはそっちやん!! 学生みたいなノリ出すなや!!」
教科書で顔と顔の間を防いでしまった。
「わかりやすいなぁ、お前……」
なんで急に声色が優しくなるんや、反則やろこんなん……。
声が近く、小さくなってる……。
ダメや、うち……もう。
「……なにしてるの? 龍絶さん」
バッと顔を向けると降谷さんが笑顔で階段から降りてきていた。
「び、びっくりした……いつの間に居たん!?」
足音に全然気づけんかった……。
うちは腐っても組織の人間なんに……。
大学生活してる間も訓練しとったし、その間組織の仕事は受けへんかったけど腕が鈍る程やない……よな?
もし鈍っとるなら、この先に起こるトラブルに対処出来ないかもしれん緊急事態や。
「いつからいたと思う?」
どないしよ……まったく分からへん……。
「なんだぁ覗きか? 今は俺との個人指導中なんだよな? 龍絶センセ?」
降谷さんは……組織に入ったバーボンはスコッチを、自らの足音で……。
だから、5人を救う役目を負ったうちが足音を聞き逃してはいけないんや。
「……降谷さん、悪いんやけど……もう一回同じように歩いて来てくれへん?」
次は絶対に聞き逃さへん。
「はあ?」
「え、いいけど……」
階段を昇る降谷さんの足音に耳を立てた。
……ちゃんと聞こえる。
うちが舞い上がっていたから聞き逃したん?
でも、いつ如何なる時でも不審な動きには対応せんとあかん。
「すまん、降谷さん……もう一回歩いくれへん?」
今は集中しとらん、しとらんはず。
ここで気を抜いたら、命が奪われてしまうんやから。
「もしかして足音を聞くために訓練してるの? ……龍絶さんって、変わってるね」