黒衣の絡繰師   作:ummt

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おまけ3

 

「高明さん、それこそ仮初の婚約、偽装結婚でもよかったのでは? 本当に男女の仲になり、七泊もする必要ははたしてあったのでしょうか」

 

 あろうことか、龍絶さんが『長野に行ってくる』と言ってから八日目に高明さんが彼女を『婚約者』として紹介しに警視庁まで訪れた。

「藍を心ゆくまで愛したかったからですが、何か問題でもありますか? ……降谷さん」

 高明さんは悪びれる様子もなく、淡々と話した。

 彼女は22歳の新人警察官であって、性知識を著しく欠いていると把握しておきながら、騙し討ちで毒牙に掛けるとは……。

 言語道断な行いだ。

「恥ずかしいです……コウメイさん……」

 七日間の間に、すっかり籠絡されてしまった彼女は頬を染めて高明さんの後ろで顔を隠している。

 僕の前ではあんなに泣いて……拒絶したのに……。

 

「そうですね。深い話を第三者にするのは不適切でした」

 

 、、、

 

「なんで諸伏の兄貴の嫁になってんだよ!! 罠に嵌められたんじゃねえのか!?」

 

 松田の言う通りだ。

 彼は彼女が置かれている立場、暗殺者であり爆処勤務、公安の協力者で組織のナンバー3の嫁という難しい状況を利用しただけだ。

「コウメイさん……次に会うのは1ヶ月後かぁ……お泊りできるかな……」

 あれだけ性行為に忌避感覚を抱いていた彼女から発する言葉とは思えない。

 やはり、七日間で全てを教え込まれたのか……。

「藍ちゃん!? 俺達も心配なわけ、急に恋愛レース中ポッと出の男に取って食われたとあっちゃ……心配で心配で……」

 萩原の不安視する通りだ。

 刑事という役職の者が新人警察官にお手付きするなどあってはならない。

「コウメイさん……どんな服が好みなんやろ……」

 彼女は衣服に対して無沈着だった。

 着飾ったり化粧っ気の無いのが彼女の素朴さだったのに、彼の隣にいる時や公の場ではきちんとした身なりをするようになってしまった。

「龍絶さん!! 騙されたりしてない!? 兄さんとはいえ……。オレが東都にいる間、君を守るから……」

 ヒロの懸念通りだ。

 彼は長野にいるままで、彼女を呼び寄せようともしない。

「コウメイさん……お泊りしたいって言ったら、はしたないって思うやろか……」

 ……そんな事

「思わないよ」

 七日間愛し合った事実を恥ずかしげもなく察せられる状況にするような男だ。

 喜んで君を抱くだろう。

「本当!? コウメイさん……うちのこと見てくれとんねん……社会人としての立ち振る舞いとか……」

 それは僕達だってしていた事じゃないか……。

「上下関係のイロハと……男女の仲について……きゃあ!! スケベ!!」

 龍絶さんに肩をバシンと叩かれて、苦笑いが溢れた。

「降谷……。……後で飯おごってやるよ」

 僕達じゃ、駄目だったのかい? 

 

「ありがとう……伊達班長……」

 


 

『ハニートラップのお返し、してくれへん? もちろんラブホで……』

 

 数日も経たないうちに、龍絶さんからお誘いの電話が入った。

「……いいよ。君がその気になってくれたのなら……。僕は不貞ぐらい働くさ……」

 ようやく、彼女と結ばれることが出来る。

 僕は彼女を、愛しているんだ。

 

 、、、

 

「でな? コウメイさんのキス、すっごくて……身体がピーになってピーになってしまうんよ、普通なんかなあ……」

 

 ベッドの上、お互いにガウン姿で……。

「……大好きなんだね、コウメイさんのことが」

 なぜ、惚気と下の話をされなければならないんだ。

「うん……大好き……それでな? ピーがピーで……すっごくピーで……」

 彼女は性知識が無く、避妊具すら知らなかったのに……。

「そうか……すごいね。コウメイさん……」

 そして、アダルトビデオを観たショックで心を閉ざして居たはずで……。

「誰にも話せんやんこんなスケベな悩み。ハニートラップの練習に付きあった降谷さんにしか話せんから……」

 ……僕が

「……そうだね、僕以外にはしちゃいけないね……」

 僕が彼女の初めての相手になり、生涯の相手になるはずだった……。

「降谷さんにも感謝やな……ハニートラップの練習の一件があったから……コウメイさんの愛が本物やってわかったんや……」

 ……僕は

「……そうか……それは……光栄だね」

 間違いを犯したのか……。

 

「うん!! ありがとう!!」

 

 、、、

 

「コウメイ……お前、本当に龍絶を愛しているのか?」

 

 コウメイはとてもじゃないが22歳の世間知らずな若い女を手籠めにして悦に浸るような人間じゃねぇ。

「愛していますよ」

 必ず理由があるはずだ。

 俺は長野県警の捜査とは別に、コウメイが独自にある男を調べている事を知った。

 ヤン・ブルドン。

 プラーミャの爆発事件の際に調査協力依頼をしたATFの職員だ。

 そいつの戸籍は個人情報云々で手出しするのに時間がかかったが、爆発物処理班の人間が『龍絶の義兄』であると話しやがった。

 つまり、コウメイは調査対象の義妹と婚約したことになる。

「……裏があるんじゃねえのか? お前の人生だ」

 コウメイと上原とは長い付き合いだ。

 コイツが泥を被って動いたのには必ずそれ相応の理由が伴うはずだ。

「敢助君。勘繰り過ぎです」

 龍絶を公私の監視下に、さらに身内として置く必要があるんじゃねえのか。

 

「……文のやり取りをするうちに、心が惹かれた。それだけです」

 


 

「灯りが灯っている」

 

 自宅の鍵を婚約者として藍に渡したものの、遠距離であることと『勝手に人の家に入られへん』『会いに行くときは了承を得ます』という事から、家に招き入れた事は一度きりだった。

 念の為玄関の鍵を確認したが、閉まっている。

「藍、ただいま帰りました」

 鍵を開けて玄関の扉を開くと、裸にエプロンを身に纏っただけの、あられもない姿をした藍がチョコレートを湯煎したであろうボウルを片手に立っていた。

「お、お帰りなさい旦那様!! お風呂にしますか? ご飯にしますか? ……それとも、うちにしますか?」

 頬を染めながら上目遣いをして、チョコレートをお玉で掬って鎖骨に流した。

「熱っつ!!」

 あまりの光景に、呆然と立ち尽くしてしまった。

 初めて会ったラブホテルでの作戦会議では、同期の男5人を前にして裸にガウン姿でホワイトボードに向かっていた。

 その時から『性知識に欠いている』『何処までが恥であるか把握していない』ことは重々理解していたつもりだった。

 そしてヤンとの会話から自白剤での性交や性的搾取があり、さらには組織からのスナイパーとして『他組織に捕まった場合にショックで自害させるため』にあえて秘匿されていた事実も把握していた。

「はしたない真似はよしなさい」

 お玉を持つ腕を握ると、藍の表情は曇っていった。

「え……? これがバレンタインデーの婚約者同士のやり取りなんやないの……?」

 ……誰か、若い同期に吹き込まれたか。

「違います。止めなさい」

 藍は大粒の涙を零して懇願を始めた。

「ごめんなさい……うち、馬鹿やから……コウメイさんを失望させた……うち、コウメイさんに相応しい奥さんになりたくて……うち……うち……みっともない事をして嫌な思いをさせてしまって……ごめんなさい……嫌いにならないで……ごめんなさい……」

 ……こんなにも純粋無垢で、自分を思うあまり間違った行動をしてしまう愛おしい女性を……。

「……仕方がありませんね」

 どうして愛さずにいられようか。

 

「コウメイさっ……」

 

 、、、

 

「松田さんのお陰やわ……。バレンタインデー……情熱的で甘くとろけるような夜やったわ……」

 

 藍ちゃんは爆処に顔を出すなり、惚気始めた。

「クソッ!! どうすりゃいいんだよ!!」

 完敗だ完敗。

 負を認めよう。

 

「惚れた弱みだねえ……。ま、これからも同期6人組で仲良くしていこうじゃないか。陣平ちゃん」

不足分

  • ちょっぴりエッチ♡なドキドキ☆が足りない
  • ほのぼの日常ラブコメが足りない
  • 鬱が足りなすぎる
  • 不足はない
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