「彼女はどうやらナイトクラブに入った後から行方不明になったようだな。……ナイトクラブは表向きの名目で、実際はハプニングバーだったらしいから。……性に奔放だったんだろう」
うち達と同じ鬼塚教場だった龍絶さんが失踪したのは警察学校を退校してから暫く経った9月の頭の事だったらしい。
「だとしたらヤー公か半グレの可能性だけやなく、ヤリモクで拉致された可能性もあるな……」
せやから芸能人の両親は捜索願を秘密裏にしか出せんかったんやな……。
箱入り娘がハプニングバーで行方不明になったなんて表沙汰になったら名誉に傷がつくとして公の公開捜査には踏み切れなかったんやろう。
両親だけでなく、業界関係者にも飛び火して賠償金の話にすら発展しかねない。
「店を摘発して防犯カメラの映像を確認しようとしたんだけど、プレイルームは律儀に撮影していなかったようだから……」
まあ『性行為してる場を撮影してました』になったら客からも苦情が入り損害賠償を請求されて、次に出所して名義を変えても煙たがれるのやろ。
「……本当に龍絶さんは性に奔放やったんやろか。騙されて連れて行かれたとかはないん?」
龍絶さんは不思議ちゃんなところはあったけど、性に奔放とは……同期6人組の男性陣にやたらとベタベタ触ったり胸を押し付けたり、ドジっ子っちゅうことで抱きついたり……他の同期の男性達に姫扱いされとっただけで……。
それが即ちだらしないにはならへんし、だらしないからといって加害されていいわけがない。
「そうだね……彼女のスマホ、GPSがそこで切れたままで行方が分かっていないんだ。……でも、22歳の警察学校入校生だった女性が小洒落た雰囲気だとして知らない男にホイホイついていくのかな?」
……知らない男。
「待って? 知人男性とか知人女性が関与していて連れていったとかはない? SNSとかで知り合ったとか……」
多分、オフ交友関係は警察が洗い出してはいるはずや。
うちらに連絡が無かったのは警察学校にまだ在校中やったから?
……警察学校の人らに聞き取りや事情聴取なんかしてしまったら大事になってしまうのを恐れてか。
「SNSは洗い出して関係者に聞き取りしたらしい。ダイレクトメッセージをした者とは全てね。それ以外での手掛かりはない」
SNSや無かったら……。
「匿名掲示板とかは? 龍絶さんのスマホに付与されていたIPアドレスから追えへんかったん?」
でも、ネカフェやパソコンがある店で何かやり取りをしていたかも。
「龍絶さん、ふらふらと出歩く癖があったようだから、近隣のネットカフェは既に捜査しているよ」
そうしたら、本当に一人でふらふらとハプニングバーに行ったっちゅうこと?
「納得行かへん……。何か裏があるんやない?」
「うーん。メスカルが深読みしているだけで事件は案外単純なんじゃないか? ただ、生存しているか、何処にいるのかを捜査の焦点にした方がいい。……数年が経過しているから……」
顎に手を置いて目を伏せる降谷さんの横顔をジーッと見た。
降谷さんは同期6人組の中の一人で、同じ公安に所属して組織に潜入捜査中……。
コードネームはバーボンで……うちの……初めての……。
「メスカル……こーら、僕に見惚れたね?」
おでこにデコピンされて顔が真っ赤になってしまった。
「だって……昨日の夜あんなに……って言わせんでよ。う、うちは真面目にやりたいんや……」
ベッドの上でのやり取りを思い出してしまい、急に恥ずかしくなり指を絡ませながら顔を伏せた。
「シーッ、それは内緒でしょ? まったく……後でメスカルにはお仕置きが必要かな?」
公安である以前に、恋人同士だって露見してしまったら組織内でのウィークポイントにされてしまう。
「うぅ……バーボンの意地悪……」
降谷さんの顔が近づいてくる。
目を閉じて唇を前に出すと背後から溜息混じりの呆れ声が響いた。
「……一つ聞きたいんだけど、私みたいな監視が完全にいない時にいちゃつかないと二人とも死ぬわよ? ……死にたいの?」
目をパチリと開けて振り向くと、腕を組んだベルモットさんがうちらを睨み、仁王立ちしていた。
チラッと降谷さんの方を見上げると同じく気配に気付けていなかった様子で、冷や汗を滲ませている。
「いや、いちゃついているとか……そういうことでは無い。ベルモット……」
何かいい逃げ口上がないかを探して、降谷さんは『沈黙は金』を選んだ。
「あなたたちねえ……まったく最近の子ときたら……ジンやピンガ、バイジウに見つかったら殺されるわよ! あのねえ!? 組織の構成員っていうのは……」
ベルモットさんはズカズカと早歩きになりながら『構成員のあるべき姿』について有難い説法を述べてくれた。
すると、ベルモットさんの無線からスナイパー仲間のコルンがボソっと語りかけた。
「……メスカル、初彼。目をつむってほしい」
うち、スナイパー仲間にバーボンが初彼氏やって言うてへんよ!!
ま、まさか組織内でバレてしまっているたら大変な事になってまう。
人質に使われたり、二人で殺し合いをさせたりとか……。
「ならあなたたちから指導しなさいよ!! カルバドス!! コルン!!」
「それで、メスカルさんはこのラブホテルが怪しいと思ったんだね」
降谷さんの任務を終えて、フリーでいた諸伏さんに声をかけた。
「うん。多分このラブホで合うとるはず……」
龍絶さんの行動範囲を絞れんのやったら、ネットの海で龍絶さんが使こうとったハンドルネームから近い名前での書き込みを探すしかない。
龍絶 藍……竜太刀さん、ドラゴンスレイヤーさん、絶愛さん、流舌さん、劉蘭さん、ドラゴンたんさん……。
その中の一つ、『ドラゴンたん』が『梅雨慈善』というアカウントが個通を開始した後、スレッドが落ちて再開していない事が気にかかった。
ログ倉庫の保存期間ギリギリやったけど、『梅雨慈善』のIPアドレスは伊達班長と公安に追って貰っている。
個通のURLはリンクが切れていて、サーバーを追っても海外の会社が倒産してしまっている。
けど、URLのアドレスの名前から当時何をメインにしていたかは分かった。
あのアドレスは秘匿性のある通信をするプロトコルを有したウェブページに移動し、fusianasanのようにIPアドレスが漏洩してしまうもんだった。
そして、直後に『ドラゴンたん』が別の掲示板で『らぶらぶ♡ドルフィン(*´﹃`*)いてきまチュッ♡跳ねちゃうゾ〜いやん♡』と書き込んどったから、このラブホなはずなんや。
「流石に何か痕跡があるっていうのは望み薄かな。数年経っているし……ん?」
諸伏さんが壁にあるランプの裏から何かを見つけた。
「もしかして盗聴器か!? 嘘やろ……」
手にスッポリと入ったものは端子が付いたカセットテープデッキだった。
アナログで電波を発生させないなら盗聴器発見装置で引っかからんかったんか……。
「再生してみようか……」
コクリと頷いて耳を近づけた。
『あ……バーボン……』
カセットテープを諸伏さんの手から奪い取ろうすると防がれて、その隙に諸伏さんは何処かに電話を掛けた。
「もしもしバーボン? このカセットは」
『ああ、それはメスカルの声に反応して起動する音声認識型だなら安心して。僕が個人的に使うやつだからそのままにして』
腕を伸ばして手を伸ばすと諸伏さんはカセットテープを上に掲げた。
「カセット、ほしい? 欲しかったら取ってみて?」
爪先立ちになると蹌踉めいてしまい、諸伏さんをベッドに押し倒す形になってしまった。
「スコッチ!! 返して!!」
「返してほしかったら……」
『あのさ、いまそんなやりとりしている場合ではないだろ。髪の毛や皮膚片がないか探したらどうかな』
二人で真顔になって床を這いつくばった。
「掃除が行き届いとる……。DNA以外に何か痕跡が見つからんかな……。早く見つけてあげんと……」
不足分
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ちょっぴりエッチ♡なドキドキ☆が足りない
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ほのぼの日常ラブコメが足りない
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鬱が足りなすぎる
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不足はない