黒衣の絡繰師   作:ummt

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組織 其の二

「あのさ、アンタは先輩」

 

 結局、龍絶さんに繋がる物的証拠は見付からず無駄骨になってしまい、そのまま諸伏さんと現地解散した後、うちだけが指示されたミッションに加わる形になった。

「せやで!! うちの方がスナイパーデビューが1年くらい早いからな!!」

 キャンティはうちの弟子っちゅうわけでもないのに、やたらと絡んでくる子や。

「……それに腕もいい、組織の三本指に入る」

 それでいて動体視力がいいのか、遠方にあり静止している標的よりも動いている近中距離の標的の方が確実に仕留められるという珍しいタイプ。

「せやな! なんか知らんけど才能があったみたいやわ!!」

 うちはオリンピックの競技用ライフルによる技術やから、どれか一つに抜きん出ているとか、強みがないんよな……。

「スコッチにもスナイプを教えてるね?」

 そんで、組織にはうちが先に潜入した事情もあって、諸伏さん……スコッチに教える事になり師弟関係になっている。

「せや! 指導役やから!!」

 諸伏さんは指導中は警察学校時代と同じように素直に話を聞いてくれる。

 ……スコッチになると、少しだけ意地悪になるんよな。

 降谷さんもバーボンになると意地悪でちょっとスケベになるし『スタンフォード監獄実験』よろしく、与えられたコードネームのように組織の冷徹な構成員のイメージ然に近づいてしまうんやろか。

「……バーボンと何回した?」

 バーボンとは初めてしてからはいつもミッション前後に……。

「……あ、あ、な、なにも、なにもしてへんよ……」

 あかん、なんてスケベな事を考えとるんや。

 同じ教場だった女性が行方不明になっとるというのに……。

「……メスカル、本当にアタイがいないとダメな子だね……」

 キャンティに顎を指でソワソワと撫でられて飛び上がってしまった。

「キャ!! キャンティ!!」

「……何の話だ」

 振り向くと、ジンが不機嫌そうな顔をして立っていた。

 ……ジンの足音だけは一生聴き取れる自信がない。

 スナイパーとして足音を察知できんと致命的なんに、組織内のコードネーム持ち……というより上層部に近づくにつれ気配を立つのが上手いんよな。

「何歳までサンタクロースを信じていたかって話だよ!!」

 キャンティがクワッと口を開いた形相になりながらうちの頭をグリグリと拳骨で擦った。

 そんな理由がジンに通用するんか? 

「フン……くだらねえ、早く持ち場に戻れ」

 ……そういうことか。

 ジンは組織第一主義やから、恋愛ドラマや少女漫画の話やと『色恋沙汰の隠蔽』として意識に緩み弛みが出たとして処するになる。

 ミッションや標的に関する話やと『指示に黙って従わない不真面目で使えない駒』として処するになって、身内の話やとした場合も『綻びがある、身元の洗い直し』に繋がって処されてしまう。

 ファンシー過ぎて怪しまれすぎず、『馬鹿馬鹿しい、くだらねえ』になるギリギリでベストなワードチョイスやったんやな……。

「キャンティ……ありがとう」

 キャンティに胴を担がれながら顔を見上げた。

 もし、ウォッカがおったらツッコミがあって変な空気になっとったな。

 

「べ、別にアンタのために誤魔化したんじゃないよ!! アタイは粛清に巻き込まれるのはゴメンだからね!!」

 


 

「おいメスカル。このFBIが使った暗号、分かるか?」

 

 キャンティとの脱走した構成員の粛清ミッションを終えるとズカズカとウォッカが近寄ってきた。

 あんまりスナイパー以外の人間にウロチョロされると発見されるリスクがあるから控えて欲しいんやけど。

「見せてみ? ああ……単一字換字法……うーん……一般的なものやないな。『qpqp -ycaskvcq-』か……鍵がないなら円盤……アルベティの円盤か。『toto university』やな。アルベティの円盤はH、J、K、U、W、Yを省略するから」

 ウォッカがスマホに写した写真に指をおいて説明をした。

 うちは技術面に詳しくないけど、ウォッカはこう見えてIT方面に詳しいからな。

 写真は何処かのショーウィンドウで、文字も鏡文字になっていたのを反転させて、ピックアップした画像になっている。

「おう、助かるぜ」

 FBIが暗号交換の消し忘れをするんやろか……。

 もし罠だとしても、組織に打撃を与えられるならええか。

 ……うちも、潜入捜査官をしながら組織に加担しとるから同じ罪を背負い、いつかは償わないといけないんやな。

「……ウォッカ、足元には注意したほうがええで」

 罪の意識からか、ついつい余計な口出しをしてしまう。

「そりゃあ、俺こそお前に言いてえよ。……バーボンと男女の仲にあるって噂、本当の事じゃねえだろうな」

 突然の指摘と肘鉄を喰らって蹌踉めいてしまった。

「な、無いです。違います。うちは組織の人間やで? 恋愛なんてしとったら足元をすくわれる要因になるし、不意に情報を漏らしたりミスをする原因になるやんか。当たり前です」

 真顔で答えるとウォッカはハァと大きな溜息をついた。

「……そうだよな。メスカルに限ってそんな危険な橋を渡るはずがねえ。下の奴らが噂しているのをうっかり聞いちまってよ。もし事実なら『危険分子は排除する』ってんでジンの兄貴が動くからよ。……ま、兄貴はまだ気づいてねえようだから、誤解を生む行動は控えろよ」

 ボスッとウォッカに頭を撫でられて、ようやく理解した。

 

「……ありがとう、ウォッカ」

 


 

「龍絶、お前に言われた通り『梅雨慈善』のIPアドレスを辿ったが、海外からでそれも『ワシントンD.C』からだった。ただし、それより先の詳細な地区についてはプロキシーサーバーを経由したのか不明のままだ」

 

 流石に同期6人組でしょっちゅう顔を合わせるわけにはいかないから、バス停で偶然会ったように見せかけて情報を交換した。

 警察内部で伊達班長だけが順当に交番勤務を経て生活安全課のサイバー犯罪捜査官になっている。

 松田さんと萩原さん達、爆弾解体処理班にサイバー犯罪の捜査をお願いするのは無茶な話やから。

「なら、海外からか……。アメリカの首都から匿名掲示板の他愛も無い書き込みをピックアップして、わざわざ龍絶さんを拉致しに日本に来日したってこと?」

 女性を食い物にするにしたって、匿名掲示板なら女性かどうかも分からないし、SNSから顔を確認したほうが早い。

 SNSで顔を知っていた? 

 それにしたって来日してまですることか? 

 性的なものが目的ではないのなら、金? 

 でも、芸能人の両親に金品や身代金を要求されたという話はなく、あくまで内密な捜索願が失踪した直後に警察内の局所にあり、数年後に警察内部に知れ渡る行方不明者届けになったという話だった。

 金目的だったら当初から誘拐として水面下での捜査が始まっていたはずだ。

「日本だけでなく各国の女性を狙っては拉致をする凶悪犯罪者だったのかもしれねえな。だとしても、組織犯罪対策部の管轄になる。調査した情報は上に上げた。安心しろ」

 伊達班長にバシッと背中を叩かれて、安心感よりも不安が募った。

 そんな凶悪犯罪者がランダムに狙った獲物がたまたま龍絶さんやったっちゅうこと? 

 そもそも、龍絶さんが『ドラゴンたん』として書き込みをして『梅雨慈善』が食い付いたのが日本時間の20:48分。

 つまりワシントンD.Cでは14:21分。

 日中に書き込んどるなら……ダメや、日中に書き込んどるからって職業は絞り込めん。

 休みを取っていた可能性もあるし、夜勤や特殊なシフト制、窓際族か管理職かもしれんし、コソコソ隠れて書き込みをしていたという線もある。

 何かを見落としている……? 

 

「分かった。ありがとう伊達班長。また何かあったらうちからも連絡帳する」

不足分

  • ちょっぴりエッチ♡なドキドキ☆が足りない
  • ほのぼの日常ラブコメが足りない
  • 鬱が足りなすぎる
  • 不足はない
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