黒衣の絡繰師   作:ummt

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警察学校 其の六

 

「逮捕術とは日本古来の武道をベースに被疑者及び現行犯を逮捕拘束するために練り上げられた技術である!!」

 

 そんで有効打撃が顎、肩、胴、小手なんよな? 

「一本!! それまで!!」

 伊達班長が相手の胴に足蹴りで一発食らわせると判定が上がった。

「すっごい!! 流石伊達班長やわ!!」

 組織として働いている頃、うちがスナイパー専門やったこともあって近接戦闘を目にする機会はあんまりなかった。

 それでも伊達班長の圧倒的な制圧力には冷や汗が出てしまう。

「お疲れ〜」

 大学生活中にバイジウから一通りの暗殺術と戦闘技術は教わったけど、人を殺す為の技と人を生かして拘束する為の技ではまるっきり違うと思い知らされたようで……。

「くっそ……班長鬼強じゃねぇか……」

 面を脱いだ松田さんが汗をダラダラ流して胡座をかいた。

「ホンマやね!! 強くてカッコええわ……」

 警察学校同期組っちゅう有能なんやけどクセが強い5人がバラバラにならんよう引っ張っているだけのことはあるわ。

「……ただの殴り合いなら負けねえのによ……」

 ムスッとした松田さんに同調するように萩原さんも続けた。

「俺も女と車の扱いなら負けねーぜ……。あ! マズイ。ごめん龍絶ちゃんのいる前でこんな話……」

 萩原さんが慌てて訂正しようと手でごめんなさいのポーズを取った。

「気にせんといて!! 女の子扱いされて距離置かれるよりよっぽどマシやから!! それに萩原さんは色男なんやから取り巻きを上手く扱えるのも納得やし、扱いが上手いっちゅうことは『女の子を泣かせない』って事やろ? 凄いやん!!」

 原作の萩原さんの描写は少ないけど、女遊びで女の子を泣かしたなんて描いてなかったし、おじいさんをおんぶしたり探し物を手伝ってるって合コンの話で見たからな。

「なんだよ龍絶……いやに萩の肩を持つなぁ。……お前、萩に惚れてんのか?」

 そらベタ惚れや!! 

 萩原さんと松田さんは推しなんやから、大好きやもん!! 

 ……でもそんな事言えんからな。

「べ、別にそういうんとちゃうわ!! 素直な感想!!」

 慌ててそっぽを向くと諸伏さんが微笑みかけた。

「班長は彼女いるって、龍絶さんは知ってた?」

 あ、降谷さんと伊達班長の絡みが、うち絡みに変わったことで伊達班長に彼女がいる話をしたのか分からず終いになるとこやった。

 合コンの時に言ったんか? 

 そうすると時系列がややこしくなる……。

 

「伊達班長みたいな男前に彼女おらんほうがおかしいから、居るんやろうなって思っとったよ!!」

 


 

「龍絶……お前なぁ!!」

 

 松田さんに肩を引っ張られた。

「何!? うちなんか変なこと言った!?」

 ぐいっと肩に腕を回されて囁かれた。

「夜に何処をほっつき歩いていたか、聞いてねえから」

 またその話!? 

 組織に所属する義兄バイジウに頼まれてジンに書類を渡すために公衆電話まで行った……なんて言えるわけないやん!! 

「あ、あの……実はアメリカに居る家族に『家にある書類をポストに入れて来て』って頼まれて慌てて家に戻ったんよ」

 嘘は言ってないからセーフやろ、セーフ。

「へえ、龍絶ちゃんのご両親は海外に住んでるんだ」

 あかん、どないしよ……嘘を付いたら収拾つかんくなりそうや……。

「親は居なくて……兄貴が一人いるんです。ま、義理の兄なんやけど」

 するとまた身体を引き寄せられた。

「義理ぃ!? その兄貴幾つだよ!? 何処で働いてんだ!?」

 なんでバイジウに食いつくんよ!? 

「えーっと……24歳で、ATFっちゅう」

「ATF!? アルコール・タバコ・火器及び爆発物取締局のことかい!? なら採用には勤務経験が必要だから複数回飛び級をしたことになる……」

 諸伏さんはぶつぶつと唱え始めた。

「へぇ、そんなに凄いお兄さんがいたなら、家庭教師要らずだったんじゃないか?」

 バイジウの事ばっかり褒められると、なんか……。

「なんだよ!! ズルじゃねぇかチートだチート!!」

 ズル……チート……? 

「うち『原作知識で見たところや!』って手柄横取りとか『最強の能力で解決!』とかやってへんもん……」

 ……そうはいっても、うちも原作知識を持っていて、実際に未来の細部が捻れてきてるのは事実。

「はあ? なんだその例え」

 松田さんが呆れたようにほっぺたをつまんできた。

「ほっぺたいらい……チートやない……」

 だって、ここはうちが愛読していたコナンの世界やから……。

 組織のメスカルでも、原作で名前が出てきてないならモブキャラのはずや。

 キーキャラクターに憑依して意識を乗っ取ったわけでも転生したわけでもない。

「龍絶さんは『模造ゼミで見た問題だ!』みたいな人生の答えをカンニングをしていないって言いたいんだよ、松田。確かに優秀な兄が居たとしても彼女は自分の力でここに立っている。ね? 龍絶さん」

 降谷さんの優しい声掛けに少し涙声が混じってしまった。

「うちはズルしてへんもん……」

 嗚咽が混じると鬼塚教官の声が響いた。

 ズルなんてしてへんよな……? 

 やましいことをしてないから、悪いことなんて……もう起こらんよな? 

 うちは自分の力で5人を助けられるんよな……? 

 

「そこ!! ワチャワチャするな!! 次は降谷だ!! 来い!!」

 


 

「凶悪犯に情けは通用しねえ。こっちが弱さを見せたら最後、とことんそこに付け込まれて……待っているのは親父のような最悪な結末だけ」

 

 降谷さんと伊達班長との一戦は、原作通り伊達班長が勝ち残った。

「誰よりも強くなけりゃ正義は遂行できねえんだよ。俺は何か間違ったことを言っているか?」 

 言ってない。

 伊達班長は正しいことを言っとる。

 強くなければ萩原さんと松田さんの二人を爆発事故から救い出せん。

 だから必死に勉強して爆発物処理の知識を学んで、対爆弾魔のために武術を学んだ。

 伊達班長を交通事故から救い、諸伏さん……スコッチを死なせない為には警察と組織、同軸で立ち回らんと展開が変わってきている以上、命を取りこぼすことになりかねない。

 それだけは絶対に嫌や。

 萩原さん、松田さん、諸伏さん、伊達班長、降谷さんの5人には絶対に死んでほしくない。

「次!! 龍絶!!」

 5人が幸せに生き残る世界を……。

「龍絶!! 何ボーッとしてるんだ!!」

 いきなり鬼塚教官に名指しで大声を出されて目をパチクリしてしまった。

「うち!? うちですか!?」

 あ、せやった。

 同じ教場やから訓練の相手になる可能性をすっかり忘れとった。

「龍絶の腕前、見せてもらおうか」

 面を着けて立ち上がり、伊達班長と対面するとやっぱり背が高いのと底知れぬ威圧感でプレッシャーが凄い。

「始め!!」

 鬼塚教官が開始の合図をしても、伊達班長は動かない。

 ……多分体格差が大人と子供くらい離れているから、ワザと隙を見せて出方を伺っているんだ。

 そういう『絶対に勝つ場面』と思い込んでる相手には……。

「どうしたんだ龍絶の奴、下を向いて……」

「なるほど、そういうやり口なわけか」

 膝をつきそうなくらい屈んで懐に入り込んで胴を取る!! 

「へ……?」

 胴を取ったと思った瞬間に目線と身体がが宙を舞った。

 

「小さいなりの戦い方だろうが、放り投げられる前に踏むべきだった。ただ、後少しだったのは褒めてやるよ、龍絶」

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