たとえば家の中にラスダンが生えてしまった場合の対処法。   作:埃の山。

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2話 詰み?

 スタンピードと言えば二十一年前、俺が生まれるより前に起きた中国での事故が有名だろう。

 当時はまだダンジョンのこともよくわかっていない黎明期だったせいか、ある高ランクダンジョンでのモンスターの間引きが遅れていたのが原因だった。

 

 死者約3万人、行方不明約11万人。

 加えて重軽傷者約19万人というあまりに悲惨な大災害は、大量のモンスターがダンジョンから放出されたことで発生した。

 それこそがスタンピードという大災害で──この黒い門でもどうやら70時間後に起きるらしい、やばすぎる案件である。

 

『危険度Ex? スタンピードまで残り70時間? それが家の中で? ……はぁ、冷やかしも大概にしてください』

「いやっ、冷やかしでもなんでもなくて──」

『では』

 

 ガチャ、という音と共に通話が切れる。

 ……いや、まぁそりゃ『迷宮鑑定』自体レアスキルだし、ガキの通報じゃ冷やかしにしか思われんだろうけどさ。

 もうちょっとくらい信じてくれてもいいだろ、全く。

 

 ……今しがた連絡したのは、迷宮課の連絡窓口。

 本来であればダンジョンの発見をした場合報告をすべき連絡先であり、というか見ての通り俺もしっかり連絡をしたのだが……結果はご覧の通り。

 一切信じてもらえなかった。

 

「えー、じゃあどうしよ」

 

 先程から既に5分ほど縮んでいるカウントダウンを見ながら愚痴る。

 まぁ? 確かに危険度Exとか見たことも聞いたことも無いし、発見直後でスタンピードまで70時間とかあり得ないし。

 なにより家の中にダンジョンとか、もうそれ創作の域だし。

 信じない気持ちもわからんでもないけど……あーもう覚えとけよマジで。

 

「他の連絡先っていっても、母さんたちはもうダンジョン潜ってるから、繋がるわけないし」

 

『──お掛けになった電話は電波の届かない場所にあるか──』

「あーハイハイ知ってた」

 

 機械音声で定型文を垂れ流す電話を切って、大きくため息。

 俺がどうにかしなきゃいかんやつなのかね、これ。

 そう思いながら、もう一度鑑定結果を見る。

 

【迷宮門・黒

 危険度:Ex

 スタンピードまで:70:48:52

 リセット条件:モンスター討伐 ×1】

 

 まぁ色々ツッコミどころは多い。

 危険度Exだとか、スタンピードまでのカウントダウンだとか。

 でも今回見るのはそこじゃなくてその一個下、リセット条件と書かれた場所だ。

 

「リセット条件ねぇ。これ、もしかして達成したらタイマーが戻ったりする感じ?」

 

 いやわからんけどさ、こんな表記見たことないし。

 でも、わざわざスタンピードまでのカウントダウンの下に置いてあるんだから、そんな気もするけども。

 スタンピードの対策はダンジョンのモンスターを倒すことらしいし、もしかしたらこういうことなのかもな。

 

「つーかExってなんだよExって。なに、Sの上なの? そういうこと?」

 

 だとしたらモンスターを倒すことができればそれでいいのかもしれないが……。

 その場合の問題はダンジョンの難易度なんだよな。

 なんだよExって。何度でも言うぞ俺は。

 

「……いや、まぁどれだけ強くても策さえ通用すればできんことはないけども」

 

 できれば難易度が低ければいいなとは思うが、それはそれとして。

 ただモンスターを倒すだけなら、多分今の俺でも可能だ。

 勿論、剣や魔法でどうにかするみたいなカッコいい方法では全くないけども。

 というか、判定としてOK貰えるかどうかも怪しいが。

 

「ゴーレムとか一部特殊なモンスターでもない限り、基本同士討ちするんだよなモンスターって」

 

 賭けるとするなら、そこ一点。

 モンスターを誘導して、殺し合わせる。

 もし、モンスター討伐というのがただモンスターが死ぬだけでいいなら、これで達成できるはずだしさ。

 そうすれば、俺のレベルが1だろうと関係なく倒せるわけだ。

 経験値とか毛ほども入らないけど。

 

「まぁ俺がやらなくていいならやらないけど、あと70時間なんだよなー」

 

 あと……まぁ、正直ちょっとだけわくわくしてるってのはある。

 だってそうだろ、ダンジョンだぞ初めてのダンジョン、潜りたいだろそんなの。

 

「別に? 不味そうだったら逃げ帰ればいいだけだし? ちょっとくらい……いや不味いか?」

 

 あと、家の中にダンジョンって昔のダンジョン小説でも定番の最強ルートだし。

 ……いやそこまで都合良くはないかなぁ? ないかぁ。

 

「……まぁ、こんなことやってても仕方ないか。一旦飯食うか」

 

 とりあえず、カップ麺でも作って食べて……それから色々考えるか。

 もうモヤのなかで生活するのにも慣れ始めているなー、なんて思いながら立ち上がってカップ麵を探しに行った。

 とりあえず飯だ飯。うん。

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