たとえば家の中にラスダンが生えてしまった場合の対処法。   作:埃の山。

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3話 ラスダン。

【迷宮門・黒

 危険度:Ex

 スタンピードまで:70:35:44

 リセット条件:モンスター討伐 ×1】

 

「うぇ、まぁ進んでるよなぁ」

 

 適当にカップ麺を作って食べて戻ってくると、大体10分ちょっと。

 カウントダウンが進んでいる以外は特に変わりもないことだし、さてそれじゃあ考えようか。

 ……まぁ、ぶっちゃけ飯食ってる間に結論出たんだけども。

 

「とはいっても、潜るのはもう確定なんだけど」

 

 俺がちょっと潜ってみたいというのはあるけど、それ以上に色々と情報が足りなさすぎる。

 危険度Ex。ダンジョンがこの世界に現れてから30年経っているのに、未だに確認すらされていない危険度。

 色々可能性を考えることはできるが、結局潜ってみなきゃわからないのは事実。

 ……なによりも、もう一回国に通報するにしたってもう少し詳細の情報があった方がいいだろうし。

 

「ということでナイフと中級回復薬2個だけは用意しましたよと」

 

 全く足りていないし心許ないが、無いよりはマシ。

 そう思いながらナイフを腰に差す。

 ちなみにナイフは父さんが持ち帰ってきたダンジョン産のやつだ。

 特殊な効果は付いていないが、多少は頑丈だしもしかしたら役に立ってくれるかもしれん。

 まぁ、特殊な効果ついてたら保管庫行きだっただろうし、むしろ感謝だ。

 

「回復薬は……できれば上級が良かったけど、流石に見つからなかったしなぁ。仕方ない」

 

 上級ともなれば四肢欠損もギリギリ治せなくはないレベルの高級品だ。

 まぁ父さんも母さんも最上位の探索者。持っていないわけがないのだけど、流石に日常的に使える範囲には置いてなかった。

 中級は指先程度の欠損までが限界だし、よくわからないダンジョンに潜るとなるとやっぱり足りない気はする。

 ……いや、日用品に中級回復薬が混じっているのはなかなかにすごいけどな。普通にこれも高級品だし。

 なんにせよ手に入らないのなら仕方ない、諦めよう。

 

「ナイフよし、回復薬よし。全部腰に付けたし……よし。潜るか」

 

 黒いモヤでひんやりとした空気を吸い込んで、吐く。

 そうやって何回か深呼吸を繰り返し、心を落ち着かせてからダンジョンの扉に手を伸ばす。

 グッと力を入れてみれば、音もなく扉が開いていった。

 

「……事実上の初ダンジョン、いくかー」

 

 ぶわっと吹き寄せる冷えた空気に身震いしながら、ダンジョンへと足を踏み入れる。

 

【ラストダンジョン へ ようこそ

 攻略推奨ランク:SS 攻略者ランク:E

 危険度:Ex

         ※警告※

 あなたは攻略推奨ランクを大幅に下回っています】

 

 視界のふちで鑑定結果の文字が変わったことに、微塵も気が付かないまま。

 

   *

 

「……あれ、案外普通……なのか?」

 

 凄まじい量の真っ黒なモヤが出てきたから、てっきり中はあんな感じの真っ黒空間なのかとも思ったが、そんなことはなく。

 Ex、というから何かしら特別なのかとも思ったが、案外そんなこともないらしい。

 

 広がっているのは、ただひたすらに広いだけの洞窟。

 天井までは……どれくらいあるのだろうか、かなり高めだ。天井が遠すぎて見えん。

 

「……あれ、ってことはそれだけ巨大なモンスターが出るってことじゃ?」

 

 ……考えないようにしよう。

 とにかく、どんなモンスターがいるのか隠れながら見る。

 そして同士討ちを狙えそうならやってもらう。

 それだけで十分なんだから。

 いやまぁ、生存優先だからヤバそうならまず逃げるのが優先だけどな。

 あんまり入り口から離れないようにしよう。

 嫌な予感もするしな。

 

 いくらか……それこそ30歩ほど進んでみるが、モンスターには出会わない。

 まぁ当たり前か、流石に入り口近くでモンスターを見つけようなんて無理があったよな。

 

「んー、流石に戻るかー。ってかここにいるの怖すぎる」

 

 さっきから嫌な予感がずっとしているし、この洞窟の広さを活かすようなデカブツと出会ったら逃げることすらできなさそうだし。

 そんなことをぼやきながら、ふと振り向いて。

 

 通路の中央にいつの間にか突っ立っていた、小さな牛骨がこちらを見つめてい──

 

 そよ風のように、なにかが横切るような感触。

 

「──え?」

 

 なにが、起きた?

 なにか凄まじい衝撃を受けて、後方──入り口とは真逆の方へと吹き飛ばされる。

 バランスを取ろうとして両腕を広げようとして。

 

 左腕の感覚が、どこにもない。

 

「は? なん、え」

 

 なにか、とんでもなく不味い気がする。

 あまりに遅い警鐘が脳裏でけたたましく鳴り響く。

 だって、今、入り口がとんでもなく遠くに。

 

 まさか、逃げられないように遠ざけられた?

 

 そこまで理解して、ようやく。

 血が噴き出た左肩の激痛が、思考に追いつく。

 

「──っ!!!!!」

 

 静かな洞窟に、声のない叫びが微かに響き渡った。

 

 そうして、冒頭(1話)に戻る。

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