またソロ攻略ですか? ――アインズ様の作戦だけが失敗するようです――   作:ブンチョウ

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第4話 善意の利用価値

 

 デミウルゴスは、敵の正体を断定していなかった。

 

 断定できないものを、断定したかのように扱うのは危険である。

 

 だが、仮説は立てられる。

 

 仮説を立て、検証し、不要なものを捨て、残ったものを利用する。

 

 それが知性ある者の仕事だった。

 

 作戦室の長卓には、これまでの報告書が並べられていた。

 

 対象村落焼却作戦の未達成報告。

 水車小屋周辺の調査記録。

 折れた羽ペンの解析結果。

 アルベドが遭遇した黒い板の記録。

 

 ただし、そこに記されていないものもあった。

 

 モモンガ。

 

 観客。

 

 変更者。

 

 その三つの言葉は、ナザリックの正式記録から外されていた。

 

 デミウルゴスは、その空白にも気づいていた。

 

 気づいていたが、問わなかった。

 

 問うべき時ではない。

 

 アインズ・ウール・ゴウンが記録しないと判断されたのならば、それは記録しないことに意味がある。

 

 それ以上は、分析対象ではない。

 

 デミウルゴスは眼鏡の位置を直した。

 

「現時点で確認できるのは、敵が我々に対し、直接的な破壊行動を取っていないという点です」

 

 作戦室には、アインズ、アルベド、シャルティアがいる。

 

 コキュートスは別任務に就いているため、遠隔で報告を受ける手配になっていた。

 

 アインズは長卓の上座に座り、黙っている。

 

 その姿は、いつも通り絶対者そのものだった。

 

 少なくとも、そう見えた。

 

「村落焼却作戦では、部隊は無傷で帰還しました。水車小屋調査では、記録と観測に干渉がありましたが、調査班に損害はありません。アルベドの遭遇した現象も同様です」

 

 アルベドの眉がわずかに動いた。

 

 それが不快によるものなのか、自分の独断行動が議題に含まれたことによるものなのか、デミウルゴスは判断しなかった。

 

 判断する必要がなかった。

 

「敵は、我々を殺すことを目的としていない。あるいは、殺せない。少なくとも、現段階ではそのように振る舞っております」

 

「殺せないのではなく、殺さないだけかもしれないでありんす」

 

 シャルティアが、やや不満そうに言う。

 

 デミウルゴスは頷いた。

 

「その可能性もあります。ですが、重要なのは結果です。敵は、我々の戦力を削っていません。削っているのは、我々の行動選択です」

 

 アインズの指が、長卓の上で一度だけ動いた。

 

 デミウルゴスはそれを見た。

 

 だが、何も言わない。

 

「敵には制限があるものと思われます」

 

「制限?」

 

 アインズが言った。

 

「はい」

 

 デミウルゴスは、地図の一点を指した。

 

 焼かれるはずだった村。

 

 いまだ焼かれていない村。

 

「まず、敵は対象村落を保護しました。次に、我々の調査を妨害しました。しかし、村落そのものを移動も隠蔽もしていません。こちらに見せたままです」

 

「誘っている、と?」

 

「その可能性はございます。ただし、もう一つの見方があります」

 

 デミウルゴスの声は、静かだった。

 

「敵は、村落の保全を優先している」

 

 作戦室に、わずかな沈黙が落ちた。

 

 その言葉だけならば、敵の目的を分析しているだけに聞こえる。

 

 だが、デミウルゴスの口から出ると、意味が変わる。

 

「であれば、利用可能です」

 

 アインズは黙っていた。

 

 鈴木悟は、その言葉の先を聞く前から嫌な予感を覚えていた。

 

 デミウルゴスが「優先順位」を見つけた時、彼はそれを尊重しない。

 

 そこに指をかける。

 

 引けば動くか、押せば止まるかを試す。

 

「続けろ」

 

 アインズは言った。

 

 声は平静だった。

 

「対象村落を焼却する案は、現時点では凍結が妥当です。代わりに、保護下に置きます」

 

「保護、でありんすか?」

 

 シャルティアが眉をひそめる。

 

「はい。食糧、薬、布、工具を支給します。周辺の盗賊、ならびに領主側の不当な圧迫からも守ります。必要であれば、井戸の修繕、道の整備、病人の治療も行いましょう」

 

 アルベドが静かに問う。

 

「それは、施しですか」

 

「いいえ」

 

 デミウルゴスは即答した。

 

「実験です」

 

 その言い方には、ためらいがなかった。

 

「敵が村落の保全を重視するならば、我々が村を保護することで、敵の反応を制御できます。敵が特定の対象を損なわせまいとするなら、その対象は制限条件です。制限条件であれば、利用できます」

 

 保護。

 

 制限条件。

 

 利用。

 

 言葉が、一つの線でつながっていく。

 

 アインズは内心で小さく唸った。

 

 実にデミウルゴスらしい。

 

 この悪魔は、誰かの優しさを見つけて感動することはない。

 

 そこに機構を見る。

 

 条件を見る。

 

 利用できるかどうかを見る。

 

「具体案を示せ」

 

「御意」

 

 デミウルゴスは、地図の横に一枚の羊皮紙を広げた。

 

「まず、支援物資を搬入します。量は村が一月生存できる程度。過剰に与えれば依存が早すぎます。少なすぎれば感謝ではなく不信を招く。適量がよろしいでしょう」

 

 適量。

 

 人の命をつなぐ食糧について語っているはずなのに、その声は薬品の分量を述べるようだった。

 

「次に、村長および主要家族から保護同意を得ます。書面により、ナザリックの保護下に入ることを承認させます」

 

「その村人たちは、書面を理解できるのかしら」

 

 アルベドが問う。

 

「理解できる必要はありません。理解したと認めさせればよいのです」

 

 シャルティアが小さく笑った。

 

 アルベドは笑わなかった。

 

「保護条件として、外部接触の報告、不審な現象の通報、支給物資の移動記録、周辺村落への証言を義務付けます。違反した場合は、保護停止の可能性を明示します」

 

 村を守る。

 

 確かにそう言える。

 

 だが、それは同時に、村をナザリックの観測装置に変えることだった。

 

 村人たちは助けられる。

 

 食糧を受け取り、薬を受け取り、盗賊から守られる。

 

 そして、そのたびに記録される。

 

 何を受け取ったか。

 誰と話したか。

 何を見たか。

 何に怯えたか。

 何に感謝したか。

 

 生きたまま、報告書にされる。

 

「敵が村を守るなら、村をこちらの手で守ればよいのです」

 

 デミウルゴスは穏やかに言った。

 

「そうすれば、敵は村を損なう行動を取りにくくなる。我々が保護に見える行為を行えば、敵はそれを妨害する理由を失う。仮に妨害したなら、敵の優先順位には矛盾が生じます」

 

 アインズは、深く考えているふりをした。

 

 実際には考えていた。

 

 だが、その中身は部下たちが想像するものとは違っていた。

 

 この案なら、村を焼かずに済む。

 

 その考えは、すぐに別の欄へ押し込めた。

 

 この案は合理的だ。

 

 敵の反応を観測できる。

 周辺地域への影響も測れる。

 支配効率の検証にもなる。

 対象村落を残す価値が、より明確になる。

 

 そうだ。

 

 慈悲ではない。

 

 合理性だ。

 

「妥当だ」

 

 アインズは言った。

 

 デミウルゴスが深く頭を下げる。

 

「御意」

 

「ただし、実施前に契約書と支援計画の全文を確認する。敵は記録媒体への干渉を行う。文書管理は厳重にせよ」

 

「すでに複数の記録術式を重ねております」

 

「それでもだ」

 

 アインズは言った。

 

「この敵に対して、十分という言葉は使うな」

 

 その場の全員が頭を下げた。

 

 支配者の慎重さ。

 

 そう受け取られた。

 

 アインズ自身も、そうであってほしいと思った。

 

     *

 

 焼かれるはずだった村に、黒い馬車が来た。

 

 夜ではない。

 

 昼だった。

 

 太陽がまだ高く、畑仕事をしていた者たちが顔を上げる時間だった。

 

 村人たちは逃げなかった。

 

 逃げられなかった、と言う方が正しい。

 

 馬車を引くものが馬ではなかったからだ。

 

 馬の形をしている。

 

 だが、生き物の気配がない。

 

 黒い甲冑をまとった兵たちは、村の入口で止まった。

 

 怒鳴らない。

 

 笑わない。

 

 武器を振り上げない。

 

 ただ、荷を下ろす。

 

 穀物の袋。

 

 乾燥肉。

 

 薬草。

 

 布。

 

 工具。

 

 井戸の修繕に使うらしい金具。

 

 村長は、膝をついた。

 

 そうしろと言われたわけではない。

 

 そうしなければならないと分かった。

 

 黒い兵の一人が、羊皮紙を差し出した。

 

 村長は文字を読めなかった。

 

 読めないまま、頷いた。

 

 頷かなければならない書面だということだけは分かった。

 

 村の子どもが、布の束を見て一歩前に出かけた。

 

 母親が、その肩を掴んで引き戻す。

 

 誰も声を出さない。

 

 荷は整然と積まれていく。

 

 施しというより、配置だった。

 

 祈りに対する答えではない。

 

 誰かの指示書に従った作業だった。

 

     *

 

 契約書は、作戦室で最終確認されていた。

 

 デミウルゴスが作成したものだ。

 

 無駄がなかった。

 

 対象村落名。

 支援物資の種類。

 配布量。

 受領者名。

 保護対象範囲。

 外部接触報告義務。

 不審事象通報義務。

 保護停止条件。

 証言協力条項。

 

 すべて整っている。

 

 整いすぎている。

 

 アインズは、その羊皮紙を見ていた。

 

 アルベドは隣に控えている。

 

 シャルティアは少し離れた位置から覗き込み、退屈そうにしていた。

 

 デミウルゴスは、完成した計画を提出する者の落ち着いた顔をしている。

 

「この契約により、村は我々の保護下に入ります。同時に、情報収集拠点として機能します。敵が介入するなら、その条件を絞り込めるでしょう」

 

「ふむ」

 

 アインズは羊皮紙に視線を落とす。

 

 書面としてはよくできている。

 

 村人にとっては、ほとんど理解不能だろう。

 

 だが、理解不能であることも含めて、よくできている。

 

 恐怖。

 

 感謝。

 

 依存。

 

 義務。

 

 観測。

 

 すべてが一枚にまとめられている。

 

 そこへ、文字が一行増えた。

 

 誰も筆を持っていない。

 

 魔力反応はない。

 

 記録術式は、異常を示していない。

 

 それなのに、契約書の中央、支援条項と保護条件の間に、黒い文字が浮かんだ。

 

『救助と取引を同じ欄に書くな』

 

 作戦室の空気が、止まった。

 

 シャルティアが目を細める。

 

 アルベドの手が、わずかに動く。

 

 デミウルゴスは、表情を変えなかった。

 

 ただ、眼鏡の奥の瞳が細くなる。

 

 アインズは、その文字を見ていた。

 

 救助と取引。

 

 同じ欄に書くな。

 

 妙な言葉だった。

 

 命令のようでもある。

 

 注意書きのようでもある。

 

 ただ、そこには、ひどく見覚えのある堅さがあった。

 

 ゲームの中。

 

 まだギルドが賑やかだった頃。

 

 誰かが、初心者狩りをした者に向かって言った。

 

 それは仕様だ。

 ルール上は可能だ。

 罰則はない。

 だから何だ。

 

 弱い相手を踏みつけて、楽しいか。

 

 あの人は、そういうことを言う人だった。

 

 たっち・みー。

 

 その名が、アインズの内側で光のように浮かび、すぐに痛みに変わった。

 

 眩しすぎる。

 

 昔から、そうだった。

 

 得をするわけでもない。

 

 効率が良いわけでもない。

 

 それでも、弱い者を踏みつける遊び方を嫌った。

 

 正義の味方。

 

 その言葉を、冗談にできない人だった。

 

 アインズは、その名を口にしなかった。

 

 口にすれば、また見られる。

 

 誰に。

 

 アルベドに。

 デミウルゴスに。

 それとも、観客に。

 

「解析を」

 

 アルベドが言いかけた。

 

「お待ちください」

 

 デミウルゴスが静かに制した。

 

 彼は羊皮紙に近づき、文字を観察する。

 

「……興味深い」

 

 その声には、怒りよりも知的好奇心があった。

 

「興味深い、でありんすか?」

 

 シャルティアが不機嫌そうに言う。

 

「ええ。敵の制限条件が、一つ明確になりました」

 

 デミウルゴスは、黒い文字を指す。

 

「敵は、救助行為と取引行為の混在を嫌う。つまり、保護対象に対して条件を付与することを、介入条件の一つとしている可能性があります」

 

 デミウルゴスの分析は、正しい。

 

 少なくとも、ナザリックの報告書に記すならば、それで足りる。

 

 たっち・みーの名を、この場に置く必要はない。

 

「であれば」

 

 デミウルゴスは続けた。

 

「保護行為と取引行為を分離して配置すれば、反応の差異を測定できます。支援のみを行った場合、契約のみを提示した場合、支援後に契約を提示した場合。それぞれに対する敵の反応を比較すれば、制限条件をさらに細分化できるでしょう」

 

 アインズは黙っていた。

 

 悪魔の分析としては正しい。

 

 恐ろしいほど正しい。

 

 たっち・みーが何を嫌ったかを、デミウルゴスは知らない。

 

 知らないまま、その嫌悪を実験項目に変換している。

 

 それが、ひどく嫌だった。

 

 嫌悪そのものも、記録に残す必要のないものだった。

 

 これは敵の能力解析である。

 

 個人的な感傷を混ぜるべきではない。

 

「契約条項を一時凍結する」

 

 アインズは言った。

 

 デミウルゴスが顔を上げる。

 

「支援物資の配布は継続。医療、井戸修繕、盗賊排除も実施せよ。ただし、村人に対する強制契約、外部接触の義務報告、証言協力条項、保護停止条件は保留する」

 

 アルベドが、わずかにアインズを見る。

 

 デミウルゴスは、少し考えてから頭を下げた。

 

「理由を伺ってもよろしいでしょうか」

 

「敵の介入条件を絞るためだ」

 

 アインズは即答した。

 

 即答できた。

 

 今回は、理由がある。

 

「支援と取引を同時に行えば、敵がどちらに反応したのか判別できない。まずは支援のみを実施し、敵の反応を測る。契約は後日、別条件として提示する。その方が変数を減らせる」

 

 作戦室に沈黙が落ちる。

 

 デミウルゴスが、ゆっくりと笑みを浮かべた。

 

「なるほど。支援行動単体に対する敵の反応を確認した後、契約行動との比較を行う。段階的検証というわけですね」

 

「そうだ」

 

 デミウルゴスの解釈は、正しい。

 

 少なくとも、ナザリックの報告書に記すならば、それで足りる。

 

「さすがでございます、アインズ様。敵の挑発文を逆に利用し、検証手順をより精密化されるとは」

 

 アインズは、頷いた。

 

 その称賛は、今はありがたくなかった。

 

 だが、ありがたくないと思う理由も、記録できるものではなかった。

 

「契約書は破棄せず保管する。文字の変化を含め、写しを作れ。ただし、村へは持ち出すな」

 

「御意」

 

「支援は本日中に継続。村人への命令は禁止する。必要最低限の接触に留めよ」

 

 シャルティアが、少し首を傾げた。

 

「それでは、ただ助けるだけでありんす」

 

 室内の空気が、一瞬だけ固まった。

 

 シャルティア自身に悪意はない。

 

 彼女はただ、当然の疑問を口にしただけだった。

 

 ただ助けるだけ。

 

 その言葉が、妙に鋭かった。

 

「ただではない」

 

 アインズは言った。

 

「観測する」

 

 シャルティアは納得したように笑った。

 

「なるほどでありんす」

 

 デミウルゴスも深く頷く。

 

 アルベドだけが、少しだけアインズを見ていた。

 

 その視線に、何が含まれているのか。

 

 アインズは考えなかった。

 

 考えれば、また別の欄が増える。

 

     *

 

 村では、支援物資の配布が続いていた。

 

 契約書は出されなかった。

 

 黒い兵たちは、ただ荷を置いた。

 

 井戸の壊れた滑車を直し、腐りかけた橋板を替え、熱を出した子どもの家に薬を置いた。

 

 礼を言え、とも言わない。

 

 名前を記せ、とも言わない。

 

 従え、とも言わない。

 

 村人たちは、それが何を意味するのか分からなかった。

 

 怖かった。

 

 助かったはずなのに、怖かった。

 

 黒い兵の一人が、空になった木箱を馬車へ戻そうとした時、箱の内側に文字があった。

 

 誰が書いたのかは分からない。

 

 墨でもない。

 

 焼き印でもない。

 

 傷でもない。

 

 ただ、木目の中に浮かぶように、一行だけ。

 

『救助結果欄:対象者の顔を確認せよ』

 

 黒い兵は、その意味を理解しなかった。

 

 記録だけを行った。

 

     *

 

 報告は、夜に上がった。

 

 支援物資配布完了。

 

 医療処置、三件。

 

 井戸修繕、一件。

 

 橋板交換、二箇所。

 

 盗賊の斥候と思われる者、村外で捕縛。

 

 村人への命令、なし。

 

 契約書提示、なし。

 

 敵性反応、限定的。

 

 ただし、空の木箱に文字あり。

 

 アインズは、その報告書を読んだ。

 

 木箱にあった一文も、写し取られていた。

 

『救助結果欄:対象者の顔を確認せよ』

 

 アインズは、その文字を見た。

 

 先の契約書の一文よりも、さらに事務的だった。

 

 だが、逃げにくい。

 

 救助と取引を同じ欄に書くな。

 

 救助結果欄。

 

 対象者の顔。

 

 確認せよ。

 

 どちらも、命令ではない。

 

 どちらも、魔法ではない。

 

 それなのに、命令書より重かった。

 

 アインズは報告書を閉じた。

 

 見る必要はない。

 

 村人の顔など。

 

 ただ、心理状態は統治上の指標になる。

 

 ならば、見る価値はある。

 

 そう処理できる。

 

 そう処理する。

 

 アインズは、机の上で指を組んだ。

 

 しばらく動かなかった。

 

 やがて、短く命じた。

 

「次回の支援時、遠隔映像を接続しろ」

 

 側に控えていたアンデッドが頭を下げる。

 

「御意」

 

「村人の反応を記録する。泣いた者、笑った者、怯えた者、すべてだ。統治資料として保存する」

 

 声は平静だった。

 

 理由もある。

 

 統治資料。

 

 心理傾向の把握。

 

 支配効率の検証。

 

 いくらでも名目は作れる。

 

 アインズは、それで十分だと思った。

 

 十分でなければならなかった。

 

 ナザリックの記録には、対象村落への支援行動、試験的継続、と記された。

 

 契約書は作成された。

 

 ただし、契約欄は空白のままだった。

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