神の都合で全てが変わる世界で主人公探してます 作:謎謎おじさん
これから不定期にはなりますが更新していきます!
11話 騒がしい1日の終わり
西園とめるるを家に連れ2人に食事を提供し風呂に案内した後、命の危機が遠ざかったことを確信して冷静になった俺はリビングのテーブルで頭を悩ませていた。俺を悩ませる題材は『結局この物語の主人公は一体誰だ?』という事。今回始まった物語は状況的にも魔法少女モノで確定だ。
一ノ瀬は自分のことを魔法少女と名乗っていたし西園も可愛いマスコットを連れている。ただ……戦闘方法も情報を聞き出す手段も不安を解消する方法も、どれを取っても俺が知ってる魔法少女とはかけ離れている。
普通魔法少女ってみんなの応援を力に変えて戦う様な純粋で可愛い女の子だろ?今の所ナイフで脅されたり解剖をダシに情報を出せと脅されたり……全体的にバイオレンスすぎるんだよ!西園も一ノ瀬も俺が想像する魔法少女像とかけ離れすぎて全然主人公に思えねえ…
あと獣人の存在は本当になんなんだよ!別にこの世界に種族追加しなくても別世界から攻めてくる敵として出せばいいだろ!ネットで調べても『獣人はホモサピエンスの他に唯一残ったヒト属』としか出てこねえし!物語に無駄な要素あると物語の流れを考察して動こうとしてる俺が大変になるだけなんですけど!
俺はそんな事を西園達に配慮して心の中で叫んだ。あいつらがいなければ心置きなく叫べたのに……
はあ…もう今日は考えるのをやめよう…今確認できてる情報だけじゃ物語を予測なんてできたもんじゃない。とりあえずしばらくは一緒に住む事になった西園から情報を聞き出そう。
俺が改めて方針を決めた時、
「ね〜奴隷〜やって欲しいことがあるんだけど」
風呂上がりの西園が貸してやったジャージと何故か脅しに使ったナイフをを身につけてリビングに入ってきた。なんでこいつは家なのにナイフを腰にぶら下げてるんだよ……想定よりやりにくくなってしまったが……俺は西園に、
「…奴隷になる事はいいんだけどせめて名前で呼んでくれない?」
身分に相応しくない要求を始める。
「呼び方なんてどうでもいいでしょ?」
そんな西園の配慮に欠ける発言に俺は、
「良くねえよ!俺には親からもらった大事な名前があるんだよ!お前に従うとしてもちゃんと名前で呼んでくれないと嫌だ!」
声を荒げて西園の俺に対するスタンスを探ってみる。
スーパーで買い物をしている時、高いシャンプーを眺めていたのに俺の方を見た後少し安い物をカゴに入れたり高いお菓子を大量にカゴに入れためるるを嗜めてお菓子の半分くらいを戻し砂糖1キロをカゴに追加したりと……なんか奴隷とか言ってる割に経済面では優しいんだよな……それが他のことでも反映されるのか試してみたくなった。結構な賭けではあるが美味い飯も食わせて風呂にも入れてやったんだ……俺を生かす事で得られる飴は十分見せた…最悪の場合でも死ぬことはないだろう…
西園は少し考え込んだ後、
「……それはそうね」
俺の意見に同意してくれる。
同意すんのかい……ここは立場をわからせるために少し怖い目に遭わせるところじゃねえの…?まあそんな事されたくないからいいんだけどさあ……
そんなやられた事と配慮してくれる部分のバランスがよくわからなくなっている俺に、
「じゃあ翔も私のこと名前で呼びなさい」
西園は得意げに命令してくる。
「いや別に苗字で呼んでくれればいいんだけど……」
「何?文句あるの?」
西園は譲歩しているのに更なる要求をしている俺を睨んでくる。これ以上は無理だな…色々問題あるけど取り敢えず名前で呼ぶか……
「…わかったよ采花」
「采花様でしょ?」
「は?」
「私は貴方のご主人様なんだから様付けで呼ぶのは当たり前」
采花は奴隷が要求してきた事にムカついていたのかそんな事を勝ち誇った顔で伝えてくる。
「……わかりました采花様」
「ふふ、よろしい」
「で、やって欲しい事ってなんだ?」
「私の尻尾をブラッシングして欲しいの。いつもはめるるがやってくれてるんだけど砂糖の取りすぎで寝ちゃったから」
まあ…そうだろうな…あいつ家にあった備蓄含めて3キロくらいの砂糖摂取するしてたからな死んでないだけすごいよ。てか…ブラッシングするのは良いけどこいつ転校の挨拶の時に尻尾に触るなとか言ってなかったっけ?
「まあ…采花様が気にしないならやるよ。くし貸してくれ」
「じゃあお願いね」
采花はそう言うとテーブルから少し離れた地べたに座って俺のブラッシングを待つ。俺はもうこれ以上変な要求をされない様に迅速にブラッシングを開始する。
「……翔ブラッシングに慣れてない?他に獣人の友達でもいたの?」
「いや…昔猫飼ってたからそれで慣れてるだけだよ」
まあ昔というか前世だけど。
「何それ。獣人でもないのにペット飼うなんて変なの〜」
采花はブラッシングが気持ちいのか少し呆けてリラックスしている。
……もしかして采花が呆けてる今なら色々聞き出せるんじゃないか?他にやる事もないから質問しても違和感ないし…
俺はそんな事を考えてこんな状況でも肌身離さずナイフを持っている采花に質問する。
「采花様、聞きたいことがあるんだけど」
「ん〜何?」
「そのナイフ采花様以外に見えないって言ってたけど…」
「これの話は嫌。聞くなら他のことにして」
采花は俺をナイフで脅していた時よりも背筋が凍る様な声色で静かに呟く。
いきなりミスった……やばい…殺される急いで別の話題探さねえと!俺は恐怖に押し殺されそうになりながら死ぬ気で頭を回す。
「……じゃあ采花様は隣町から来たって言ってたけどあれ本当?」
「当たり前だけど嘘ね。私アフリカの都会に近いの場所で生まれてここに来るまではヨーロッパの辺りにいたから」
「え?じゃあなんで学校に通えてるんだ?戸籍とかも無いだろ?」
「そんなのこの国の偉い人に洗脳魔法と記憶改竄魔法使ってなんとかしてもらったに決まってるでしょ」
「お前……何やってんの?やってる事ヤバすぎるだろ……」
「……本当に身分を作ってもらった以外では何もしてないしその影響も限りなく薄いから問題ないわよ」
悪事に対する最低限のラインはあるのか采花はドン引きしている俺にいじけながらそんなことを言ってくる。
こいつにも色々とあるんだろうけど…価値観は平和に暮らしている日本人とは全然違うな。これだと普通に話してくれる奴が居ないって言ってたのが獣人の気質によるものなのか怪しくなってくるぞ……
また考察しづらくなった状況に頭を悩ませていると。
「質問に答えたから次は私の番ね。なんで貴方の親は死んだの?」
采花は見ていて嫌になる笑みを浮かべながら衝撃展開には慣れている俺の手を止める様な事を言い放つ。
「……なんだよそれ。さっきのやり返しって事か?」
「そういう事。辛いなら別に答えなくていいよ〜。私もそうしたから〜」
采花はヘラヘラと笑いながら勝ち誇ってくる。本当に……こいつ性格悪いな。だがこれはチャンスでもある、信頼を得る意味でも采花がどんな人間か測るためにも、
「いや、一応従ってるわけだから最低限だけ話すよ。俺のせいで死んだんだ」
「………。」
俺はこの重苦しい過去を少しだけ話す。流石の采花様も言葉を失っているみたいだ。
「俺ができたはずの事をやらなくてその問題に巻き込まれて死んだんだ」
「そう……それはキツいね」
「別に同情して欲しくて言ったわけじゃないから気を遣わなくていいって」
「……同情じゃない」
采花は小さく呟く。俺が打ち明けた過去により空気は最悪でめるるが人よけ魔法を使ったのかと思うほどに部屋は沈黙で包まれていた……
いくらなんでも気まずすぎる……!こいつなんでそういう所だけしっかりと寄り添ってくれるんだよ!そこは『あんたの命も今日なくなりそうだったわね笑』とか言えよ!お前ナイフで脅してきてるんだからそれくらいしてもおかしく無いキャラじゃん!今の状況だとこんな空気にした俺がめちゃくちゃ申し訳ない気持ちになるだろ!
クッソ……なんか話題を捻り出せ〜そうだ!
「そ、そんな事よりめるるとはどんな感じに出会ったんだ?一ノ瀬の話じゃ輸送中に襲って奪ったって感じだったけど流石に盛ってるよな?」
「ああ……それは別に盛って無いわよ。襲った奴が私に魔法を教えていた奴って誤解はあるけどね」
「……そいつ強いの?」
「強いに決まってるでしょ…私がわざわざこの街に来てるのも一ノ瀬家のホームグラウンドならそいつが派手に動くことができないって理由なんだから」
「……お前も色々と大変なんだな。てか…そんな奴がわざわざ奪いにくるめるるってなんなんだよ」
「めるるは魔法ができた時に作られた魔法道具なの。だから持ってる魔力自体が凄いの。一ノ瀬の連中が使えもしないのに管理してたくらいにはね」
「魔法についてよくわかってないんだけど魔力が多く含まれてる魔法道具ってそんなに凄いのか?」
「ん〜凄いけど…それ以上に希少価値が高いって感じ?魔法道具って制作時の大気中に含まれる魔力に応じて魔法道具の持つ魔力が決まるから昔の魔道具ってだけで価値があるの。めるる自体魔法ができて間もない頃に作られたから現代の魔法道具なんかとは比べ物にならないくらいの魔力を宿してるの」
「へ〜魔力ってもうあんまり残ってないのか?」
「残ってないと言うか…人間って生きてるだけで大気中の魔力を吸ってるの。今って昔に比べると人が溢れてるでしょ?だから循環はしてるけど大気自体に含まれてる量はすごく減ってるって感じかな」
采花の話で大体今まで起きたことに対する疑問と一ノ瀬が即俺の事を処分しない理由がわかった。一ノ瀬が俺を殺さない理由それは…『割にあってないから』だ。
人は人と触れ合い社会の歯車になる事によって生きている。歯車はひとつだけじゃ動けない他の歯車達と連動して日々を過ごし自分がこの世にいた痕跡を残す。その全てを消そうと思えば触れ合っていた人間達の記憶の改竄、戸籍の改変、死体の処理……パッと考えただけでもかなりの労力を使うことは明らかだ。使える魔力が昔より減っているなら魔力を使う所は選ぶべき…なら魔法少女の存在を知っているだけの俺に使うより知った上で襲ってくるやつに備えていた方がいい。
……少しは心労が減ったな……俺が敵勢力に寝返るくらいのやばい事をしないと命は狙われないだろ。キングも采花のことは裏切り者って言ってたし采花は第三勢力の魔法少女って所だ。こちらから大きく動かなければ何かに巻き込まれることもないだろ。
そんな事を思い俺はようやく胸を撫でおろせた気がした。そんな事を思っている間にも采花の解説は続いていて…
「もう昔みたいにポンポン魔法道具を作れないからこそ一ノ瀬の連中も使ってもなかっためるるを取り戻そうと躍起に……そう言えば翔はどうやってあの女から逃げたの?私遮音魔法だけは解いてあげたけど他は何もしてないわよ?」
「そりゃあ……騒ぎまくって見に来た先生に助けてもらったんだよ」
「それ本当?一ノ瀬の連中この街の色んなところに寄付してるからそれくらいで学校が翔の言うこと信じないと思うんだけど…」
「あ〜多分そん時吐いた嘘が……」
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「あははははははは!!お腹痛い……それ本当に最高!本当に最後まで見ておけば良かった!」
采花は俺が話した屋上での事の顛末に腹を抱えて転がりまわっている。
「……そんなに面白いか?今思い出しても一ノ瀬が怖すぎて全然笑えないんだけど」
「あははは!怯えておいて良くそこまで口が回るわね!ふふふ……これをこのままにするのは勿体無い……」
采花は転がり回るのをやめると今度はいたずらを考えている悪ガキの様な表情を浮かべて笑い始めた…
「おい……何企んでんだよ。顔に出まくってるぞ……」
「それは内緒。明日を楽しみにしてなさい。ふぁ〜笑いすぎて疲れちゃった…じゃあそろそろ寝るから」
散々転げ回って疲れたのか采花はリビングを後にする。俺はそんな采花に、
「はいよ、おやすみ」
家でしばらく使う事のなかった言葉を使った。
「ふふ……おやすみ!」
その言葉を采花は嬉しそうに返してくる。
本当にテンションが上がる所がわかんねえな……できるだけ早く理解しよう俺はまだ死にたくねえ……