神の都合で全てが変わる世界で主人公探してます   作:ラ メ ル テ オ ン

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20話 身体と魂

 

「僕魔法が効かない特殊体質なんですけど!それを知ったモルグ様が俺のことを狙ってると聞かされてこんな状況になってしまいました!」

 

「ほほう……それでそんな格好をしておるわけか。ちなみに服を交換するのは誰が言い出したんじゃ?」

 

「俺です!命助かるついでに女の子が来ていた服を身に纏いたくて言い出しました!」

 

「なるほどのお〜………」

 

モルグは俺の口から出る嘘を吟味しながら相槌を打つ。

 

今の俺の目的は時間を稼ぎながらついでにモルグの事を観察する事。別に嘘がバレても時間さえ稼げればいい……なら1つの真実を嘘で固めて吐き出す。モルグに違和感は与えてしまうかもしれないが…

 

余程の核心がない限り嘘だと言い切れない現状では尋問を続けるのが最適解と判断するだろう……そんな超能力者達との戦いで身につけた俺のその場しのぎの術は、

 

「…それ嘘じゃろ?」

 

モルグには通用しなかった。

 

「正しくいうなら本当のことも混ぜておるが話している内容の半分以上出鱈目を言っておる」

 

「……こんな状況で嘘なんてつくわけないじゃないですか!嘘ついたら殺しますよね?」

 

「そうじゃな。だからこそワシは感心しておるんじゃよ。平和な国の学生の癖に指を2本おってもワシに反抗しようと隠れて牙を研ぐお前にの〜前言撤回じゃ。お前は采花が近くに置きたいと思う人間じゃ」

 

モルグは俺の頭に手を乗せまるで自分の子供を可愛がるかのように優しく撫でてくる。そんな俺が吐いた嘘より歪なモルグの行動に俺はこの物語が始まってから初めて…

 

「『恐怖を感じた』じゃろ?」

 

「……は?」

 

モルグは俺と目線を合わせて俺が魂で感じていた事を言葉にしてくる。

 

こいつマジでやばい……俺は転生者であるが故かこういう危険な目にあった時感覚として身体と魂で別々に感情が発生することがある。

 

身体は大概起きた出来事に対して素直な感情を魂は起きた出来事に対して漫画を見ている読者の様な自分から一歩引いた客観的な感情を伝えてくる。

 

今までこの身体と魂が別々のことを感じる特性を使って情けなくて無害な奴を演じながら魂で冷静に分析を行ってきた……でもモルグは俺が魂で恐怖を感じていない事を見抜いてその事実を突きつける事によって魂にすら恐怖を感じさせてきた……

 

長年生きているからか元々持ち合わせているのかはわからないが魂の機微すら見逃さない俺以上の分析力を持っているという事……これ以上下手に探ると殺される…そう思えるほどの恐怖を魂に植え付けられてしまった……

 

そんなこれまでの経験から身につけた自負心を粉々に破壊する魂を震えさせるほどの恐怖に怯える俺を見てモルグは、

 

「やっと子供が恐怖を取り繕う顔になったの〜お前が何を考えて采花の囮になったのかは知らんが……ワシを舐めている事は充分に伝わってきた。だからお前にはワシがどれだけ凄いのか少し教えてやろう」

 

「ちょ……!?」

 

怒りに満ちた顔で言葉を吐いた後、羽織っているマントをタコの触手のように操り俺を縛り付けている椅子の足を持ち上げて上下逆さまの宙吊り状態で移動し始める。

 

「奴隷共〜ワシがどれだけ素晴らしいか移動中に教えてやれ」

 

「「「かしこまりました!」」」

 

その言葉と共にモルグに操られている10人程の人間が宙吊りの俺を囲んで各々モルグの称賛を始める。

 

「モルグ様はね!異界の力である魔力をこの世界に馴染ませた魔法の始祖とも呼べるお方なんだ!」

 

「それどころか呪いの扱い関しては現代でもモルグ様が1番優れているんだよ!あのバカな一ノ瀬家は仕組みすらよく理解できてないからね!」

 

「モルグ様が身につけているマントは2000年前に作られたものなんだ!自分で考えて攻撃や防御だってしてくれる現代のAIに匹敵するくらいの技術だよ!2000年前にここまで凄いものを作れるなんて流石モルグ様だよね!」

 

そんな感情がこもってない称賛が飛び交う狂気に満ちた状況に魂と身体の感情が共鳴し感じていた恐怖を何倍にも増幅し始める。

 

クソ……なん何だよこの状況!全部滅茶苦茶で頭がおかしくなる……このクソみたいな状況をなんとかしなくちゃいけないのに…恐怖のせいでガキみたいに涙を堪えることしか出来ない……

 

思考が『怖い』で満たされて情報を咀嚼する事すらまともにできない……きっかけが必要だ…この恐怖が掻き消えるくらいの強い感情が起こるような何かが……

 

恐怖で1時間にも感じられるくらいの時間が経った頃、モルグがショッピングモールを一望できるアトリウムで足を止め俺を優しく地面に下ろし縛り上げている椅子を立てる。そのまま流れるように繰り出される不気味な笑みを浮かべたモルグの質問に、

 

「さて……ワシの凄さは充分に伝わってくれたかの?」

 

「は、はい!モルグ様の偉大さと尊さが充分に伝わってきました!」

 

俺は恐怖に従い命を繋ぐ為に言葉を吐く。そんな俺に満足したのかモルグは、

 

「いい子じゃ〜ご褒美に1つだけ質問に答えてやろう」

 

俺が求めていた物語の考察を深めることのできるご褒美をくれた。聞きたい事は山ほどあった筈なのに恐怖支配されている頭では上手く整理できず、

 

「……そんなに凄いモルグ様が何で采花に人殺しなんてさせてたんですか?モルグ様ならアメリカの大統領でも簡単に殺せますよね?」

 

質問の内容は何となく決めた。頭が回らなかったのもあるがそれ以上に直感があったこの質問の答えで恐怖に抗う何かが貰えると……そんな俺の直感は、

 

「それはの〜……呪いの情報を得る代わりに人を殺した罪悪感を必死に成果で取り繕う采花の顔にたまらなく興奮したからじゃ!」

 

「……。」

 

正しかったらしい。思い出すだけでも愉快なのかモルグは踊り出しそうなくらいにテンションを上げて采花を苦しめていたわけを話す。

 

「あいつはの最初呪いの事を何もわかっておらんかった。だからワシは呪いは解けるんだよ〜ワシが知ってる呪いの情報を教えてあげるよ〜だからこの人を殺してきてね〜と言って取引を持ちかけたんじゃ。

 

あいつは今までワシとの取引で8人も自分のために殺してきた。ワシが殺させてた奴は善良な市民と呼べる様な奴ばかりじゃったからの〜依頼する過程で渡したターゲットの情報でまず表情が曇る!そして殺した後呪いの情報を渡すときに表情が曇る!そして呪いの奥深さに気づいて表情が曇る!一石三鳥と言える最高の遊びじゃった……

 

しかも呪いの情報を渡せば渡すほど呪いは消えないという考察が確証に変わるからの〜時間を戻せるならあの表情を見るためだけに戻ってもいいと思えるくらいには最高じゃった……これが理由じゃ感想は?」

 

モルグは称賛を求めているのか俺に感想を尋ねてくる……ありがとうモルグ。俺に恐怖なんか掻き消えちまうくらいの怒りをくれて。

 

「へえ〜それは悪の魔法使いっぽくて最高ですね!」

 

俺は魂ですら感じる事ができた怒りを原動力に魂の恐怖に反抗してモルグのご機嫌をとる。さて……恐怖も誤魔化せたところで情報収集再開だ、こいつはここでぶっ殺してやる。

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