神の都合で全てが変わる世界で主人公探してます 作:ラ メ ル テ オ ン
モルグが翔の方に向かった後、私は身体強化の術式すら使う魔力すらない自分を恨みながらショッピングモールを飛び出す。モルグは残虐だ私が1秒遅く一ノ瀬家の連中を呼ぶのが遅れれば翔は殺されてしまうかもしれない。だから1秒も時間を無駄にできないのに……
「痛い……痛いよ……誰か助けて…」
「……采花?」
なんで……モルグに弄ばれた人の前で…潰れた足で歩き続けている人を見て立ち止まってしまっているんだろう。
今までだってこんな酷い目にあっている人は何人もいた。そんな人達を私は自分の為に…呪いの情報の為に何人も見捨ててきた。
なのに……翔とめるると過ごした1週間と言うとても短い時間が、お母さんを看取ってから初めて色づいた記憶がこの人を見捨てる事を拒んでいる。
「ふっ……随分と虫の良い女よね」
幸せを思い出してしまったから人を見捨てるなんて残酷な事をやりたくないなんて……9人も殺した自分がそんな事を思うなんて…ましてやそんな自分の変化が心地いいと思うなんて…自分の為に人殺しをした私に許される訳がない……
「……めるるは采花がやりたい事をやれば良いと思うめる!」
魂で繋がっているせいか私の思っていた事が伝わってしまっためるるが声を上げる。私のやりたい事……
初めて人を殺して証拠隠滅に必要だから呪いを刻んで…証拠が無くても捕まえられると知って必要だから見えないナイフで脅し人からお金を奪って故郷のスラムから逃げて…いつの間にか曖昧になってしまった生きる為のひとつの指針。
だからこそ一刻を争う状況では頼るべきじゃない。
「私がやりたいことなんてどうでも…」
「そんな事ないめる!」
そんな経験からこぼした言葉をめるるは否定した。
「魔法は元々やりたい事を実現するための力める!魔法少女の采花がやりたい事を我慢するなんて絶対ダメめる!」
めるるはモルグに弄ばれた人が私たちに気付くくらいに声を張り上げて思いを伝えてくる。
「魔法少女と一心同体のめるるは魔法少女のやりたい事を実現する為に作られてるめる!だから采花!命令して欲しいめる!めるるはどんなお願いでも叶えてみせるめる!」
めるるは久しぶりに希望を感じた時と同じ様に私の助けになると宣言する。懐かしいな……モルグから逃げ出した時もこうやって背中を押されたんだっけ…
それから最低限必要な罪を犯してこの街に来て…翔に出会った。翔と過ごした1週間はとても楽しくて…この出会いが間違いだったなんて口が裂けても言えない。
ならモルグから逃げ出した時と同じ事をしよう。
「私は……あの人も助けて翔も助けたい…だから力を貸してめるる!」
「任せてめる!変身させてあげられない分めるるが頑張るめるよ!」
私はめるるを信じる。信じてこれ以上後悔しない選択を選ぼう。
モルグに弄ばれた人は私達に気付いてから真っ直ぐに歩いて来たのか気付いた時にはぐちゃぐちゃの足を動かしたまま私に縋り付いて、
「お願いします……助けてください……まだ死にたくないんです…!」
助けを求めてくる。だから私は、
「わかった。でもその代わり…伝言を預かってもらうから!」
やりたい事を全部やる為に魔法少女らしくない等価交換を押し付ける。
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モルグをぶっ殺す為に大見得を切った5分後…
「本当に……口だけじゃの〜まだ逃げ始めて5分しか経っておらんのに〜そんなに腕を千切られたかったのかの?」
「ぜぇ……そんな……奴…いる訳ねえだろ……」
俺は無様にもモルグに捕まりマントで縛り上げられていた。
クソ……こいつに操られている奴らまじでやばい……モルグの命令以外は文字通り頭にないのか酸素不足で倒れるまで俺のことを追いかけて動けるだけの酸素を補給し終わったらまた走り出すとか言うイカれている追跡方法を繰り返してきやがったせいで俺の体力が5分くらいしか持たなかった……
「はは!腕を千切られる寸前まで口が回るとは……その減らず口がいつまで聞けるのか楽しみじゃの〜」
酸素が足りない……この状況を覆す為に何か策を考えないといけないのに…頭も口もこれ以上ないくらいに回らない……だからこそ俺は呼吸を整える。腕を失ったとしても生き残れる様に……
「さてさてさ〜て!お楽しみの四肢欠損タイムじゃよ〜!奴隷共……盛り上がれ!」
「「「イェーイ!!!」」」
モルグは俺の苦しむ姿が余程楽しみなのか元々イカれてるテンションのギアをもう1段階上げている。
「ワシが作ったこのマントはすごくての〜人の手足くらいスパスパと切れるんじゃが……お前にはすごくムカついておるからの……じっくりと捻じ切ってやる」
「ぐあああああ!?」
モルグの言葉と共にマントが俺の右腕を捻り取ろうと力を込める。
身体が伝えてくる筋肉の軋みが、関節の捻じ切れる感覚が、魂を再び恐怖の沼に引き摺り込もうとしているのを感じる。当たり前だ…痛いし怖いし客観的に見ても頭がおかしくなる状況だ…だから俺は、
「だあああ!!クッッソモルグ!!絶対にぶっ殺してやるからなああああ!!」
身体が感じる痛みを恐怖を魂で感じる怒りで上書きする。
「ぶははは!やっぱりお前は面白いの〜!ほれ!もっと感情を爆発させるんじゃ!!」
そんな俺にモルグは手を叩いてよろこんでいる。
耐えるんだ……もう一度恐怖に飲まれたら絶対逃げる気すら起きない…モルグに情けなく土下座して命乞いをして…それを見て満足したモルグに殺されるだろう……だから声を上げろ…!怒りを忘れるな………
なんて…できる訳ねえだろ!もう無理!腕取られたら流石に心折れる!てかそもそも痛すぎる!早く来て下さい一ノ瀬さん!そんな俺の心と腕が折れかけた時、
「……あ?」
モルグと俺の顔の間に光を放つ筒状の何かが現れた。それは現れて1秒も経たずに破裂してキーンと言う甲高い音を鳴り響かせ、
「お、おえええ!?なんじゃこれ!?気持ち悪い!!」
俺を縛っていたマントとその主人であるモルグがその場でもがき苦しみ始める。そして、
「捕まって下さい!」
「ちょ!?」
戦闘服を身に付けた一ノ瀬が困惑していた俺を担いで颯爽とこの場を後にした。