神の都合で全てが変わる世界で主人公探してます 作:ラ メ ル テ オ ン
「本当に……性格の悪い人ですね」
そう呟いた後突き飛ばされた身体に異常はないか確認しながら現状を振り返る。
科学を使った破壊の極致「核兵器」。分子と分子をぶつけて爆発的な破壊力を生み出す核兵器に着想を得て生み出された一ノ瀬家の技術の結晶それが増幅魔法。術式侵食魔法の原型であり私の様に優秀な魔法少女だけに配られているこの魔法を常用兵器とするには幾つか欠点が存在する。
1つ、魔力の増幅が銃身から出た後も繰り返し弾がまっすぐ飛んでいかないせいでコントロールが全くできない事。
2つ、この術式を起動すれば増え続ける魔力に耐えきれず魔法道具が1回の使用で壊れてしまう事。
3つ、術式自体もかなり複雑で使えば1200年と続く魔術家系一ノ瀬家の中でも5本指に入る実力者と言われている私と言えど使えば変身解除に追い込まれるほどに魔力消費も桁違いな事。
しかしその欠点を打ち消すほどの『超高火力』当たればどんな厚さの鉄板もどんな防御魔法もどんな生き物も破壊し尽くす最強の矛。だから魔法少女の中でも選ばれし者だけに渡されるこの兵器は洗脳魔法で操られた人がモルグの周りにいる状態では使うことができない……
私は人よりも恵まれている。美貌や魔法の才能だってある。それを伸ばすために必要な家柄やお金だって持っている。それだけ多くの機会を与えてもらっているんだ……失敗は許されない。私が得るのは完璧な勝利じゃないといけない。
立花さん……正直作戦を聞いても彼を信じるには値しないと思っていた。あの魔王以外誰しも翻弄する人から情報を引き出して作戦を立てた上指を折られるだけの軽傷で済ますなんて……話が出来すぎている。
だから程々に相手して洗脳魔法を使う奴の正体を見抜くつもりだった。モルグの名を語る奴は今までにも何人か居たから今回もそういう類の犯罪者だと思っていた。
でも違った……戦えば戦うほどに私の性質を見抜き取れる選択肢を奪っていく戦闘経験の高さ。今まで戦った人の中でも並べる人はいない程の卓越した思考能力。間違いなくアレは伝説の魔法使いモルグだ。
そしておそらく立花さんの分析も大方あっている。今まで蓄積した魔法の知識から導き出される直感でそう感じる。なら恵まれている者の責務としてこれ以上死者を出さない為に分析力に秀でている立花さんを信じて立ち回ろう。
そう心の中で意気込んだ後、かなりボロボロな身体を起こし銃を持って立ち上がりモルグが見える位置まで歩いて行く。モルグの一撃は本当に凄まじかった……攻撃の瞬間、防御術式に魔力を注ぎ込んでなければ身体に穴が空いていたはず……
あのマントはおそらくかなり昔に作られた物だろう。私の装備と基本的な性能が違いすぎて軽く攻撃されただけでも死にかける。死なない様に立ち回るにはかなりの魔力を防御に回さないといけない。
でも切り札を使う為にもこれ以上防御に魔力を回せない……かなり危険だけど…モルグを殺す為に戦闘服に細工しよう。攻撃に全ての魔力を込めれる様にする…それしか私が勝つ道はない。そうして戦闘服に付いている防御術式に魔力が回らない様に細工をした時、
「ほ〜う生きていたか。案外凄いんじゃの現代の魔法少女というのも」
「お褒めにいただきありがとうございます。ですが……あそこまで隙を晒した私を殺せない人に褒められても嬉しくないですね」
私は再びモルグと相まみえる。モルグは私を突き飛ばした事で少し余裕が出て来てのかニヤニヤしながら私のことを見上げている。
さっきのやりとりでも感じたけど立花さんに言われた通り感情処理と戦闘分析に思考力を回すのは言葉を引き出す上でかなり有効だと思う。行動が嫌がらせに向かうおかげで予測しやすい。だから、
「減らず口じゃの〜お前の手で何人殺させれば黙ってくれるのか今から楽しみじゃ」
「お楽しみの所申し訳ないですが貴方の攻撃手段はもう5分も経たない内に使えなくなります。なので投降をおすすめしますよ」
「ほ〜うそれは何故じゃ?」
「私が貴方のマントに術式侵蝕魔法を打ち込んだからです。効果は発動されている術式の魔力を勝手に喰らい対象の魔力が無くなるまで増殖と術式の破壊を繰り返す。術式で動くそのマントは5分も経たないうちにまともに動かせなくなります」
まずは術式の情報を与え分析に思考力を使わせる。
「そうか……それでワシを追い詰めたと思っておるのか……ギャハハ! マントなら換えが山ほどあるわ! 呼び出す呪いを奴隷に刻めば5分もせんうちに同じ状況になるんじゃな〜」
「なら……新しいマントが来る前に貴方を撃ち殺せばいいだけです。徐々に動きが悪くなるマントで私の攻撃をどれほど防げるか見ものですね」
次に感情的にさせて私が嫌がることを考えさせる。モルグは頭が良くて性格が悪い。僅かなやり取りで私が洗脳されている人を気にしていることを見抜き洗脳されてる人ごと攻撃してくるくらいに相手が嫌がる最適解を選び取れる……なら私が一方的に攻撃できるこの状況の最適解は、
「そう来るなら……奴隷共肉盾になれ」
操っている人達に盾になれと命令すること。
「さてさてさ〜て、お前には随分と不快な思いをさせられたからの〜お前が30秒以内にそこから降りてこない場合肉盾君たちを10秒毎に1人ずつ殺して行くぞ〜さあどうするプリンセスシューター!! ワシとお前の戦いに巻き込んで殺すか? それとも見殺しにするか? 好きな方を選べ!!」
モルグは出来る限り私で遊ぶ為に、私に人質を諦めさせない様に餌を撒いている……本当に性格が悪くて吐き気を感じるほどに邪悪な人。でもそのおかげで、
「そうですね。選択肢には含まれてませんが……私は彼を信じます」
彼が求める言葉は引き出した。肉盾という言葉を聞いて彼も物陰から飛び出し大声を上げ、
「我は稀代の爆殺王立花翔!! 怨敵闇の魔法使いモルグ、貴様をこの爆弾でぶっ殺してやるから覚悟せよ!!」
作戦を最終段階へと進める。もう少し言葉は選んで欲しかったけど……でもこれで彼が求める状況になりました。私は彼とモルグの会話を聞きながらマガジンを変えて次の展開に備える。
「お前……逃げたわけじゃないのか。まあ楽しみが増えたから別にいいんじゃが……それよりワシをどうするって?」
「お前を爆殺するんだよ! この半径500mを吹き飛ばす爆弾で! 大和魂って奴を見せてやる」
立花さんの発言に暫しの間呆気に取られた後、
「ギャハハハハハ! お前は本当に馬鹿じゃの〜そんなの誰が信じるんじゃ?」
モルグはお腹を抱えて笑っている。実際彼の発言は間抜けで馬鹿にされても仕方がない……
「そりゃ……頭が働いてないいいなりの奴隷とか?」
「モルグ様を守れ!!!」
「「「おお!!!!」」」
「…は!?」
でも……肉体に刻まれている呪いの仕組みをちゃんと確認してない貴方も間抜けで馬鹿ですよ。立花さんの言葉を聞いてモルグに洗脳されている人たちはモルグを爆発から守る為の緩衝材、正しく肉盾になろうと立花さんに向かって走り出す。作戦通りの状況に、
「舞台は整えたぞ! プリンセスシューター!」
立花さんは笑って作戦の成功を伝えてくる。本当に……すごい人だ。魔法の知識も戦闘能力も一般人と大した違いはないというのに……そんな事を思い私は、
「やはり人の邪魔をする事だけに関しては貴方の右に出るものはいませんね!」
「いいからさっさとそいつぶっ飛ばせ!!」
皮肉混じりの称賛を送った後、2階から飛び降りてモルグ下へと走り出す。
「ちょっとタンマじゃ!! 今近づかれるとまずい!」
モルグは想定していなかった状況に動揺しているのかやってくる事と言えばマントでの攻撃だけ。だけど私だって魔法少女、動揺して動きを点でしか追えてない人が見たら操る魔法道具の挙動くらい訓練と経験から予測できる。私は最小限の動きでマントを躱しつつモルグの股下へと滑り込んだ後、
「チェックメイトです!」
銃身を天井に向けて引き金を引いた。