神の都合で全てが変わる世界で主人公探してます 作:ラ メ ル テ オ ン
「チェックメイトです!」
「ギャアアアアアアアアア!?!?」
一ノ瀬が持つ銃から放たれる紅く雷の様に早い光線が大蛇の様に畝りながらモルグを含めた触れた物全てを破壊していく。
銃から出ているであろう耳を劈くような轟音が自壊を伴いながら周りの空気を振るわせ、地面すら揺れてると錯覚してしまうほどに周囲に影響を与えている。そんな1秒経つごとにモルグの体のどこかが消し飛んで行く状況に息を呑むことしかできなかった。
これは……一ノ瀬が出し渋っていたのもわかる。こんなもん人に向かって撃ったらとんでもない事に……いやそもそもこれを天井じゃなく横に打つだけで建物の主柱が軒並み破壊されてこのショッピングモールが半壊しているだろう。魔法がわからない俺にすらそこまで思わせる光景は10秒ほど続き銃から光線が止んでモルグが跡形もなく消えてしまった数秒後、
「ああ…それは予想してなかったですね……」
赤い光線を放つ魔法が残した天井のガラスのヒビは決壊を起こす。バラバラになったガラスたちは重力に従い魔力切れなのか制服姿に変わっている一ノ瀬に向かって襲いかかる。
生身であれは下手すると死ぬぞ!だけどこの距離じゃ……俺の頭が一ノ瀬を助けるにはどう考えても間に合うわけが無いと判断したその瞬間、
「姫乃!伏せて!」
成人男性がが収まってしまうくらいに大きな盾を持った赤毛の魔法少女が目にも止まらぬ速さでやってきた。赤毛の魔法少女は凄まじい勢いで一ノ瀬の元へ駆けつけると身に余る盾を軽々と持ち上げ降り注ぐガラス達から一ノ瀬を守りきる。一ノ瀬が変身していた姿と似た格好をしている赤毛の魔法少女は、
「あっぶな〜……姫乃、怪我はない?」
「……毎回言ってますけど作戦中はコードネームで呼んでください」
「あはは!ごめんごめ〜ん。でもどうせ巻き込まれた人の記憶消すんだからいいじゃん」
「……もし誰にも気づかれてない人がいたら?いつも戦闘前に探知魔法をかけてる訳じゃないんですよ?大体記憶を消すのだって……」
「わかったわかった!明日から気をつけるから説教始めないで!」
「今日から気をつけてください!……まだまだ言いたいことはありますが……とりあえず助けてくれてありがとうございます」
「ふふ、最初からそう言えばいいのに〜」
流れでボロボロになっている一ノ瀬と談笑している。あの……いきなり2人の世界入るのやめてくれません?声かけづらすぎるんですけど……もうこのまま帰ってやりたいところだが、ここで何も言わずに帰ったらあらぬ疑いを持たれて調べられたら芋蔓式に采花の事もバレるよな……
そんな不安もあり俺はできる限り雰囲気を壊さないように糸が切れた様に動かなくなった洗脳された奴らの間を静かに抜けて2人に声をかける。
「その……大丈夫そう?」
「うわ!なにこの不審者!これ拘束した方がいい奴?」
「その人はモルグを倒す為に協力してくれた人です。負傷してるので応急処置をお願いします」
一ノ瀬は俺の格好に驚いている赤毛の魔法少女に説明をしながら立ち上がりスマホを取り出す。
「なんで応急……あ〜例の人?魔法が効かないって言う」
「そうです。その後は適当に服でも見繕ってあげてください。話を聞くにしてもその格好を見続けるのは嫌なので」
「わかった。姫乃はどうするの?」
「私は本部に連絡してモルグが暴れた後の処理を始めます。終わったら私の所に来てください。立花さんも帰りが遅くなることを覚悟してくださいね」
「わ、わかった」
一ノ瀬は色々言った後スマホを耳に当てて電話をしながら離れていく。えっ……勝利を喜んだりしないの?なんかすごい勢いで仕事モードに入ってるけど……モルグって滅茶苦茶すごい奴なんじゃ……
そして一ノ瀬が離れてしばらく経った後、
「とりあえず……応急処置から始めよっか!」
「……お願いします」
赤毛の魔法少女はあまりにも仕事人な一ノ瀬に困惑している俺に笑いかけて来た。
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「へ〜君すごいね!魔法使えないのにモルグに立ち向かうなんて」
「まあ……度胸だけはあるんで」
赤毛の少女に笑いかけられた後、服屋の座れる場所で隠すべき所を隠した事の顛末を説明しながら折れ曲がっている指の応急処置を受けている。
訓練されているのか赤毛の少女は俺の折れ曲がった指をテキパキと添木に固定している。折れ曲がっている指を元に戻すのは流石に痛かったが……それ以外は特に痛みを感じることなく一ノ瀬の名前をベラベラ喋っていたほどに適当なこいつですらここまでできる魔法少女の練度の高さに少し怖くなる。
こんなのがこの街に5、6人いるんだよな?敵に回したら滅茶苦茶厄介だろうな……俺が一抹の不安を抱え始めた時、
「はい!これで応急処置終了!次はかっこいい服見繕って姫乃の前に行くよ!」
赤毛の少女は治療が済んだ瞬間に俺の手をほっぽり出して並んでいる服を吟味し始める。
「それはわかったんですけど……なんて呼べばいいのかわからないんでいい加減名前くらい教えて下さいよ」
「えっ?顔見えてるんだよね?ならわかるでしょ?」
「初めて会ったのにわかるわけ無いでしょ……」
赤毛の少女は目を見開いて驚いた後、
「なら自己紹介!私は柊木茜(ひいらぎ あかね)よろしくね!それより私のこと知らないなんて……もしかして立花くんって不登校?」
「毎日登校してるわ!てかそんなセンシティブなこと初対面で聞くのやめてくれません?」
自己紹介と一緒にデリカシーの無い質問もしてくれた。俺が本当に不登校だったらどうするんだよ……
「あはは!ごめんごめん!お詫びにかっこいい洋服見繕ってあげたから着替えてきて!」
柊木は洋服を押し付けて試着室を指差す。
「……似合ってなかったら口聞きませんからね」
「大丈夫!感覚で生きている私のセンスはすごいよ!」
そんな柊木に俺は適当に言葉を返して試着室に入る。なんか凄い人だな……強引だしせっかちだし元気だし見た目はそんなこと無いのに精神性がギャルって感じがする。てか……顔を知らなくて不登校を疑うって事は同じ学校に通ってるんだよな?なら一ノ瀬が近くにいなくてもある程度警戒しないとダメだな……そんな事を考えながら采花の制服を脱いで柊木が用意してくれた服に着替える。
片手が使いにくくなっている俺に配慮してくれたのか全体的にダボっとしていて片手がほとんど使えない状態でも無理なく着る事ができた。着替え終わった後、
「……どうですか似合ってます?」
「うん!凄く似合ってるよ!やっぱり私が選んだだけあるね〜」
柊木は自信満々に頷きながら試着室を出た俺の肩に手を置いてくる。確かに俺の家にある服より似合ってる気がするな……この服は貰えるんだよな?なら結構ありだな…命懸けでやばい奴殺した報酬としてはちょっと少ねえ気がするけど。そんな感じで俺がいつもよりかっこよく鏡に映る自分に見惚れていると、
「じゃあその制服はこっちで処分しとくね」
柊木は采花の制服を持ってゴミ箱に向かって歩いていく。は?それ持って帰らなかったら絶対怒られるんですけど!采花に怒られる現場が想像できてしまったので急いで柊木の腕を掴んで制服が捨てられるのを止める。
「ちょ!?捨てないでください!」
「え?なんで?モルグに着せられたんでしょ?」
あっ……そういやそんな風に伝えてたな…言い訳どうしよう……疲れ過ぎて全然頭回んねえ……俺はしばらく悩んだ後、
「それは……その……女装結構楽しかったからまた着たいな〜って……」
情けない嘘で誤魔化す。そんな俺を見て、
「……っあははは!!君すごいね!将来凄く苦労しそう!じゃあ紙袋に入れてあげるから先に姫乃の所に行ってて!」
柊木は腹を抱えながら笑って紙袋を撮りに行ってしまった。一ノ瀬もそうだったけど魔法少女って特殊性癖保持者に優しいんだ…助かるけど助かんねえ……魔法少女内で俺のイメージがとんでもないことになるのを覚悟しつつ俺は言われた通り一ノ瀬に合流しにいく。
はあ……嫌だな……これから一ノ瀬に疑われない様にある程度情報開示をしながら整合性が取れるような言い訳をモルグから逃げ回った今考えてお出ししなきゃいけないなんてさあ……マジで一回家に帰らせてくれよ……そんな事を思いながら一ノ瀬との約束の場所に向かう俺の足を止めたのは、
「民間人の負傷者が28人だぞ!!中には死者もいる……一ノ瀬家の恥晒しめ!!一体どうやって責任を取るつもりだ!!」
男の怒号だった。嫌な予感がしたので声の主にバレないように身を隠しながら一ノ瀬との約束の場所を覗く。そこには高そうなスーツみ身を包んだ20歳後半入ってそうな男が一ノ瀬の正面に高圧的な態度で立っている。一ノ瀬家の恥晒しって事は兄貴かなんかか?
男は怒り心頭な様でそのまま周りの目も気にせず怒鳴り続ける。
「こんな状況になったのもお前がさっさとモルグから魔法道具を盗んだ奴を捕まえないからだぞ!!」
「……すみません。宿泊施設は全て監視していたんですがあの映像が出回ってから一度もそれらしき未成年の少女は現れていなく……」
「……もういい。そいつを捕まえて魔法道具を取り返せば全部解決だ。上からも今日から俺が指揮を取る様に言われている。お前はそいつを見つけて来い」
「待ってください!魂で繋がるように設計されているものを強制的に引き剥がしたらどんな影響があるか……」
「姫乃……お前の不手際で死人を出したんだぞ?上層部も俺に捜査権を譲ると言っているんだ一ノ瀬の人間なら黙って俺に従え。それにお前はまだあの魔法少女の正体を突き止めていないんだろ?自分の意見を通したければ結果を出してからだ」
「……わかりました」
一ノ瀬は下を向きながら男の命令に頷いている。そんな一ノ瀬が問い詰められている現実を前に俺の頭が今までの情報を元に俺が犯してしまった失敗に気づく。
屋上で一ノ瀬が言っていた事とあのおっさんが言ってる事を合わせて考えると……一ノ瀬は魔王カイザーと戦うための戦力になってもらう為に采花を捕まえようとした。それを上の奴らも承認して動いていたが、今日モルグが大暴れをしたのとそもそも外部の人間を魔法少女にする事に反対している奴が動いたせいでモルグが来ることになったわかりやすい理由であるめるるを奪って逃げた采花が泳がせてもいい存在から一刻も早く捕まえないといけない存在になったって所か……
ちょっと待てこれ……俺が采花を匿ったせいで事態が無茶苦茶ややこしくなってないか?
俺が采花にナイフで脅された日、屋上で一ノ瀬に脅迫された日に采花の事を一ノ瀬に伝えていれば警備が厳重な留置所的な所に采花は囚われていたはずだ……そうなればモルグが襲ったとしても民間人に被害は出る事は無かったはず……
そして今日のモルグの襲来はあまりにも唐突で変身する事ができない今采花とめるるだけなら対処しきれていなかっただろう。こんな序盤で神がわざわざ作った物語の重要人物を殺しにくるとは考えにくい……俺がいない場合の采花の最適解は誰かと協力してモルグを殺す事……
もしかして……今回のモルグの襲来は捕まっている采花と一ノ瀬が仲良くなる為に神が用意したイベントだったんじゃ……そんな俺の思考を、
「あちゃ〜あの人が来てるんだ……立花君が見つかっちゃったらすごく揉めそうだし今日は一旦解散にしようか。後処理に来てる人に止められない様に人よけ魔法の範囲外に出るまで案内するね!」
「……わかった」
遮る柊木の言葉に適当に頷いて帰路に着く。
やばいな……魔法の情報を探る為に采花の好感度をゆっくりあげてる場合じゃねえ。出来るだけ早く2人が協力関係を結べるように動かないと……このまま物語が進んだら最悪めるるを奪われそうになってキレた采花と一ノ瀬が殺し合う事になる……
だいぶ投稿遅れてすみません。今月まで引っ越しとかリアル関係で色々と忙しくて纏まった時間が取れないので死ぬほど更新ペースが遅れます。構成は空き時間に考えたりしてるので続きは気長に待っていただけると助かります!