勇者をプロデュース!〜無名の田舎娘が、神さまイチ推しの勇者になるまで〜 作:朴月イチロ
なぜ、ヴァルドはこのような役回りを引き受けることになったのか。
『神々の退屈を殺すため、あなたには魔王討伐の運命を負ってもらいます』
(なんて本当のことを言ったら、さらにどんな顔をするかね……)
目の前で慌てふためくアリシアを、ヴァルドはただ黙って静観していた。
ここに来る前の、神々との対話内容が脳裏をよぎる。
◆◆◆
この宇宙の神々は、常に“物語”を娯楽にしている。
日常の裏で魔法少女が戦う町、デスゲームが行われている学校、宇宙からの侵略者と戦う国。
人が命を懸けて選び、抗い、それでも立ち上がる——その姿が、何より面白いのだという。
その物語を仕込み、演出する役目を担う者――
ヴァルドも、その一人だった。
『今回の《
「ただの田舎娘が世界を救う、ね……随分あざとい設定を持ってきますね」
神々からの依頼内容が仕込まれた封筒――《
封筒を指で弾くと、無数の文字が宙に浮かび、物語の設計図となって組み上がっていく。
『今ある箱庭の中でも、その世界にはなかなかの素材があってさ。面白くなると思うんだよね。仕掛けがいがあるっていう点でも、君にぴったりだと思うよー』
(胡散臭い……)
神々とは音声のみの対話なので、その表情はわからない。だがその声色は弾んで聞こえるので、それなりの期待はかけているのだろう。
ただヴァルドは過去の経験から、こういう時の神々は大体『ロクでもないこと』を考えていることが多いのを知っている。
若干警戒しつつも、目を伏せて《
(魔王が現れた影響で、増加した魔物の脅威に晒される世界……魔法技術はあるが衰退している……もらった情報範囲上、設定に不審な所は見当たらない、か……)
「あー……戦闘が必要となると、魔法少女みたいにある程度“戦える力”がいるな……不安定になりがちな序盤は、ある程度俺がカバーするとして……」
ブツブツと一人、その場でプランを立て始めるヴァルドを眺めつつ、神々は感慨深く呟く。
『変わらず仕事熱心で、安心したよ。“あんな事”があって以降、君はずっと“壊れた”ままだったからさ。もうダメかなーって思ってたけど、なんとか立ち直ってくれて、僕はとても嬉しいよー』
神々の言葉に、一瞬思考が止まる。
思い出すのは、ある物語の主人公の死。
冷たくなっていく身体。
懺悔の言葉。
「おかげ様で……もう忘れられたものかと思っていましたから、汚名返上の機会をいただけて、嬉しい限りですよ」
精一杯虚勢を張ってはいるが、あの時の後悔は、まだ完全に消えたわけじゃない。
そんなヴァルドの心情を知ってか知らずか。神々の声色は柔らかいまま、しっかりとした釘を刺す。
『君の紡ぐ物語は好きだったからさ。言われるまでもないと思うけど、わかってるよね? “二度目”はないから』
「わかってますよ……もうあんな“バカな真似”はしません」
自分はただ、見届けるだけ。
それだけの仕事。
そう言い聞かせて、ヴァルドはこの“箱庭世界”に降りた。
――だが。
「神さま!? 本当に!?」
「すっごくかっこいい人だね〜」
気づけばヴァルドは、村の集会場の上座に座らされていた。
外からは黄色い声。
隣では、まだ事情を理解していない田舎娘がきょとんとしている。
(……あれ? どういう状況だ、コレ)
早速、誘導をミスったかもしれない。
冷静を装いつつも、ヴァルドは内心冷や汗をかいていた。