勇者をプロデュース!〜無名の田舎娘が、神さまイチ推しの勇者になるまで〜   作:朴月イチロ

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1-2:その幕開けは誰のために

 なぜ、ヴァルドはこのような役回りを引き受けることになったのか。

 

『神々の退屈を殺すため、あなたには魔王討伐の運命を負ってもらいます』

(なんて本当のことを言ったら、さらにどんな顔をするかね……)

 

 目の前で慌てふためくアリシアを、ヴァルドはただ黙って静観していた。

 ここに来る前の、神々との対話内容が脳裏をよぎる。

 

 

 ◆◆◆

 

 

 この宇宙の神々は、常に“物語”を娯楽にしている。

 

 日常の裏で魔法少女が戦う町、デスゲームが行われている学校、宇宙からの侵略者と戦う国。

 人が命を懸けて選び、抗い、それでも立ち上がる——その姿が、何より面白いのだという。

 

 その物語を仕込み、演出する役目を担う者――星綾士(ステラリスト)

 ヴァルドも、その一人だった。

 

『今回の《運命(シナリオ)》は、《戦闘未経験の田舎娘が救国の勇者として魔王を倒す》だよ』

 

「ただの田舎娘が世界を救う、ね……随分あざとい設定を持ってきますね」

 

 神々からの依頼内容が仕込まれた封筒――《神託(しんたく)》に目を通しながら、ヴァルドは率直な感想をこぼした。

 封筒を指で弾くと、無数の文字が宙に浮かび、物語の設計図となって組み上がっていく。

 

『今ある箱庭の中でも、その世界にはなかなかの素材があってさ。面白くなると思うんだよね。仕掛けがいがあるっていう点でも、君にぴったりだと思うよー』

 

(胡散臭い……)

 

 神々とは音声のみの対話なので、その表情はわからない。だがその声色は弾んで聞こえるので、それなりの期待はかけているのだろう。

 

 ただヴァルドは過去の経験から、こういう時の神々は大体『ロクでもないこと』を考えていることが多いのを知っている。

 

 若干警戒しつつも、目を伏せて《神託(しんたく)》からの情報インプットに集中する。

 

(魔王が現れた影響で、増加した魔物の脅威に晒される世界……魔法技術はあるが衰退している……もらった情報範囲上、設定に不審な所は見当たらない、か……)

 

「あー……戦闘が必要となると、魔法少女みたいにある程度“戦える力”がいるな……不安定になりがちな序盤は、ある程度俺がカバーするとして……」

 

 ブツブツと一人、その場でプランを立て始めるヴァルドを眺めつつ、神々は感慨深く呟く。

 

『変わらず仕事熱心で、安心したよ。“あんな事”があって以降、君はずっと“壊れた”ままだったからさ。もうダメかなーって思ってたけど、なんとか立ち直ってくれて、僕はとても嬉しいよー』

 

 神々の言葉に、一瞬思考が止まる。

 

 思い出すのは、ある物語の主人公の死。

 冷たくなっていく身体。

 懺悔の言葉。

 星綾士(ステラリスト)としての、最大の汚点。

 

「おかげ様で……もう忘れられたものかと思っていましたから、汚名返上の機会をいただけて、嬉しい限りですよ」

 

 精一杯虚勢を張ってはいるが、あの時の後悔は、まだ完全に消えたわけじゃない。

 そんなヴァルドの心情を知ってか知らずか。神々の声色は柔らかいまま、しっかりとした釘を刺す。

 

『君の紡ぐ物語は好きだったからさ。言われるまでもないと思うけど、わかってるよね? “二度目”はないから』

 

「わかってますよ……もうあんな“バカな真似”はしません」

 

 自分はただ、見届けるだけ。

 それだけの仕事。

 

 そう言い聞かせて、ヴァルドはこの“箱庭世界”に降りた。

 

 ――だが。

 

 「神さま!? 本当に!?」

 「すっごくかっこいい人だね〜」

 

 気づけばヴァルドは、村の集会場の上座に座らされていた。

 

 外からは黄色い声。

 隣では、まだ事情を理解していない田舎娘がきょとんとしている。

 

 (……あれ? どういう状況だ、コレ)

 

 早速、誘導をミスったかもしれない。

 冷静を装いつつも、ヴァルドは内心冷や汗をかいていた。

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