勇者をプロデュース!〜無名の田舎娘が、神さまイチ推しの勇者になるまで〜   作:朴月イチロ

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4-16:救国のスタートライン

 『魔の土地』に入る条件。

 それは、傭兵ギルド二級の戦力を含む、四人以上のパーティーであること。

 

 人数面の問題はなくなった。

 あとはギルド階級の課題である。

 

 リュミエールという“二級戦力”を得た今、あとはアリシアの階級を引き上げればいい。

 

 ――そのはずだった。

 

 出立の直前。

 リュミエールは、自身のギルド階級を示す魔石のペンダントを掲げた。

 

 それは百戦錬磨の死線を乗り越えた、二級を示す“真紅”。

 ――ではなく。

 二級ほどには血に塗れていない、三級の“深青”。

 

 無言で見つめるヴァルドとレグナスに対し、リュミエールは気まずそうに視線を逸らす。

 

 先に口火を切ったのはレグナスだった。

 

「……意外でした。てっきり二級は取得済みだと思っていたんですが」

 

「逆になんで取ってると思ったのよ……」

 

 リュミエールは半ば呆れながら、肩をすくめる。

 

「研究費稼ぎに使うなら、三級もあれば十分よ。二級以上なんて、領地全体レベルの危機でもなきゃ、出番はないでしょう?」

 

「ごもっとも」

 

「それに……昇級申請の手続き、地味にめんどくさいし」

 

「それはちょっとわかります」

 

 レグナスが共感するように頷く一方、ヴァルドは淡々と言う。

 

「まあ、条件が一つ増えただけで、本質的には変わらない。最終的には、アリシアと一緒にまとめて申請してしまえばいい」

 

「それが一番手っ取り早いですね」

 

 二人が今後の整理をつけると、話を横で聞いていたアリシアが、勢いよく口を開いた。

 

「私まだ四級ですけど、すぐ追いつきますから! リュミエールさん、一緒に上がりましょうね! 二級!」

 

「むしろ私は、まだアリシアちゃんが四級っていう方が驚きなんだけど」

 

「? 私なんて皆さんと比べたら、まだまだ……」

 

 アリシアは慌てて手のひらを振る。

 

 ――五級から三級までの昇級は、実績の数が重要視される。

 ギルドへの登録から、早々に武勲をあげての昇級は、珍しくない。

 

 登録早々、ユキイタチの女王を討伐した実績は、もう少し誇っていいとリュミエールは思う。

 

 規格外の実力者が二人もそばにいる分、実感しづらいのかもしれない。

 

「ところで――」

 

 ふと、レグナスはリュミエールの頭上の『それ』を指差す。

 

「その白いのも連れて行くんですか?」

 

「え。当然でしょ」

 

『白いのっていうのは、ちょっと失礼じゃないっスかねー』

 

 リュミエールの頭上に鎮座していた、白饅頭と思わしきモコモコ――タマが小さい翼をパタパタ動かして、必死に存在を主張する。

 それを見たアリシアは、相変わらず抱き締めたそうにうずうずしている。

 

「タマちゃんも一緒に来てくれるんですか!?」

 

『今回の遺跡探索では、完全に出番なかったっスけど、姐御のことはやっぱり放っておけないっスー』

 

「こう見えて、色々やれるわよ。この私が作った人工精霊なんだから」

 

 リュミエールが誇らしげに頭上のタマを撫でるのに対し、レグナスは横目でヴァルドを見る。

 

「いいんですか?」

 

「彼女がそういうんだったら、少なくても足手まといにはならんだろう」

 

 変に駄々をこねられてもめんどくさい。

 ――と内心で続いていたのは、内緒。

 

 その言葉を聞いて、アリシアは両手を上げて全身で喜びを表す。

 

 魔の土地に挑む、役者は揃った。

 四人と一羽が、歩み出す。

 

 ここから。

 ――ここから、アリシアを“勇者”に仕立てて、『魔王』を討つ。

 

 当初、ヴァルドが思っていたよりも、奇妙なメンツとなったが。

 ようやく立てた、アリシアの救国までのスタートライン。

 

 たとえこの先。

 アリシアが泣くことになっても。

 ――苦しむような事態になっても。

 

(俺は、彼女の選択を尊重する)

 

 自分ができること。

 彼女が最良の選択ができるよう、道を示すだけ。

 

 ……彼女の《運命(シナリオ)》が歪まないために。

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