勇者をプロデュース!〜無名の田舎娘が、神さまイチ推しの勇者になるまで〜 作:朴月イチロ
『魔の土地』に入る条件。
それは、傭兵ギルド二級の戦力を含む、四人以上のパーティーであること。
人数面の問題はなくなった。
あとはギルド階級の課題である。
リュミエールという“二級戦力”を得た今、あとはアリシアの階級を引き上げればいい。
――そのはずだった。
出立の直前。
リュミエールは、自身のギルド階級を示す魔石のペンダントを掲げた。
それは百戦錬磨の死線を乗り越えた、二級を示す“真紅”。
――ではなく。
二級ほどには血に塗れていない、三級の“深青”。
無言で見つめるヴァルドとレグナスに対し、リュミエールは気まずそうに視線を逸らす。
先に口火を切ったのはレグナスだった。
「……意外でした。てっきり二級は取得済みだと思っていたんですが」
「逆になんで取ってると思ったのよ……」
リュミエールは半ば呆れながら、肩をすくめる。
「研究費稼ぎに使うなら、三級もあれば十分よ。二級以上なんて、領地全体レベルの危機でもなきゃ、出番はないでしょう?」
「ごもっとも」
「それに……昇級申請の手続き、地味にめんどくさいし」
「それはちょっとわかります」
レグナスが共感するように頷く一方、ヴァルドは淡々と言う。
「まあ、条件が一つ増えただけで、本質的には変わらない。最終的には、アリシアと一緒にまとめて申請してしまえばいい」
「それが一番手っ取り早いですね」
二人が今後の整理をつけると、話を横で聞いていたアリシアが、勢いよく口を開いた。
「私まだ四級ですけど、すぐ追いつきますから! リュミエールさん、一緒に上がりましょうね! 二級!」
「むしろ私は、まだアリシアちゃんが四級っていう方が驚きなんだけど」
「? 私なんて皆さんと比べたら、まだまだ……」
アリシアは慌てて手のひらを振る。
――五級から三級までの昇級は、実績の数が重要視される。
ギルドへの登録から、早々に武勲をあげての昇級は、珍しくない。
登録早々、ユキイタチの女王を討伐した実績は、もう少し誇っていいとリュミエールは思う。
規格外の実力者が二人もそばにいる分、実感しづらいのかもしれない。
「ところで――」
ふと、レグナスはリュミエールの頭上の『それ』を指差す。
「その白いのも連れて行くんですか?」
「え。当然でしょ」
『白いのっていうのは、ちょっと失礼じゃないっスかねー』
リュミエールの頭上に鎮座していた、白饅頭と思わしきモコモコ――タマが小さい翼をパタパタ動かして、必死に存在を主張する。
それを見たアリシアは、相変わらず抱き締めたそうにうずうずしている。
「タマちゃんも一緒に来てくれるんですか!?」
『今回の遺跡探索では、完全に出番なかったっスけど、姐御のことはやっぱり放っておけないっスー』
「こう見えて、色々やれるわよ。この私が作った人工精霊なんだから」
リュミエールが誇らしげに頭上のタマを撫でるのに対し、レグナスは横目でヴァルドを見る。
「いいんですか?」
「彼女がそういうんだったら、少なくても足手まといにはならんだろう」
変に駄々をこねられてもめんどくさい。
――と内心で続いていたのは、内緒。
その言葉を聞いて、アリシアは両手を上げて全身で喜びを表す。
魔の土地に挑む、役者は揃った。
四人と一羽が、歩み出す。
ここから。
――ここから、アリシアを“勇者”に仕立てて、『魔王』を討つ。
当初、ヴァルドが思っていたよりも、奇妙なメンツとなったが。
ようやく立てた、アリシアの救国までのスタートライン。
たとえこの先。
アリシアが泣くことになっても。
――苦しむような事態になっても。
(俺は、彼女の選択を尊重する)
自分ができること。
彼女が最良の選択ができるよう、道を示すだけ。
……彼女の《