勇者をプロデュース!〜無名の田舎娘が、神さまイチ推しの勇者になるまで〜   作:朴月イチロ

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第5話:希望の灯火
5-1:祝・パーティー結成……?


 フェルムを出て、三日目の昼過ぎ。

 

 ゴーレム爆破の思わぬ珍事はあれど、その後四人の旅路は順調だった。

 

 道中、大蟷螂や大猿の魔物の群れに遭遇したが、アリシアとヴァルドの二人だった頃とは違い、レグナスとリュミエールが加わった今の戦力であれば、討伐も容易だった。

 

 次なる目的地の街は――「アルセイン」。

 王都にとっては『要の街』とも呼ばれる。

 

「……『要の街』?」

「王都にとって、アルセインは南方側の玄関口なんですよ」

 

 素朴なアリシアの疑問に対し、レグナスが答える。

 

「南方から王都を目指すなら、ほぼ必ずここを通ることになります。旅人も商人も傭兵も、物資も情報も——全部ここを経由するんですよ」

 

「なるほど〜だんだん人通りが増えてきたのは、そういうわけでしたか!」

 

 アリシアがチラチラと周りを見渡す。

 街に近づくにつれて、街道の往来がみるみる増えていった。

 傭兵の街、ローグアナで出会った無骨な傭兵たちとは異なり、荷車が列をなし、荷物を担いだ行商人が行き交う。

 街の入口には石造りの門柱が左右に立ち並び、その先に衛兵の姿が見える。

 

 これまで立ち寄った街とは、明らかに人の厚みが違う。

 

 リュミエールはにやにやしながら、その様子を眺めていた。

 

「アルセインには研究書とか遺物とか、掘り出し物がたまに流れ込んだりしてるから、楽しみね〜ワクワクしちゃう」

 

 そこに目を輝かせたアリシアが続く。

 

「アルセインってどんな食べ物が有名なんですかね〜楽しみですね〜」

 

「お前ら、ここに来た最大の目的を忘れるな」

 

 浮かれる二人に対し、すかさずヴァルドは釘を刺す。

 対してリュミエールは、若干頬を膨らませながら反発した。

 

「わかってるわよ、パーティー登録でしょ?」

 

「ここのギルド支部での登録であれば、王都に入る分の最低限の身元保証として効力はありますし、何よりこの四人の中で身元が怪しい人物も居ませんしね。まあ、手続きはすぐに済むでしょう」

 

 レグナスの言葉に、アリシアは少し心が躍る。

 

 魔の土地に入るのに、最低でも四人組のパーティーを組む必要があると聞かされたときは、どうなるかと思ったが、こんなに早く条件が揃うとは思わなかった。

 

 ここで正式なパーティー登録が済んだら、いよいよ本格的に魔の土地に向かう旅路が始まる。

 次の当面の目標は、アリシアのギルド階級の昇級だ。

 

(……がんばろう)

 

 アリシアは内心、一人決意を新たにした。

 

 だがこの数十分後、さっそく彼女は、最初の壁にぶつかることになる。

 

 

 ◆◆◆

 

 

 村の外にほとんど出たことがなかったアリシアにとって、ギルド支部といえばローグアナのそれが唯一の基準だった。

 だがアルセインの支部は、さらに想像の上をいっていた。

 

 ローグアナが頑丈さ一点張りの石造りであるのに対し、こちらは室内の柱や窓枠の要所要所に彫刻の細工が入り、天井も高い。受付のカウンターは重厚な一枚板で、木材の艶からしてローグアナのものと別物だった。

 

(ギルドの支部って、街によって全然違うんだなぁ)

 

 受付口で待つ間、アリシアは辺りをきょろきょろと見回していた。

 やがてカウンター奥から、受付担当の女性が「お待たせしました!」と書類を片手に戻ってきた。

 

「はい。こちらがギルド所属の新規パーティー登録書類になります! こちらに必要事項をご記入の上、所属するみなさんの階級証の魔石をご提示ください!」

 

「は、はい!」

 

 書類とともに渡された羽根ペンを片手に、アリシアは必要項目を一つずつ記入していく。

 そのうち、ある項目に差しかかった際、手が止まった。

 

「……『代表者』?」

 

 パーティーの、代表者。

 

 アリシアは、背後に控える三人へゆっくりと振り返る。

 

「……あのー、このパーティーの代表者って……」

 

「お前だろ」

「あなたでしょ」

「あなたですよ」

 

 三人の回答はほぼ同時に返ってきた。

 アリシアは思わず「は、はいっ」と背筋を伸ばしてしまう。

 

 そんな反応に、リュミエールは(ひそ)かに笑った。

 

「真面目な話、この旅の発起人(ほっきにん)なんだから、あなたが一番ふさわしいわよ」

 

 その後、軽い口調でレグナスが続く。

 

「そう気負わなくてもいいですよ。困った時は、いつでも頼ってくれれば」

 

「……ありがとうございますっ」

 

 胸の奥が、少し軽くなった。

 アリシアは再び書類に向き合い、続きを書き進める。

 

 ――だが、次の項目が最大の問題だった。

 

「……『パーティー名』?」

 

「パーティーを識別するための登録名です! 基本的にはご自由につけていただけますよ!」

 

 受付嬢がアリシアの疑問を読み取ったかのように、ハキハキした語り口で補足する。

 だが、その回答は完全にアリシアの思考を停止させた。

 

「……すきな、なまえ」

 

 パーティーの名前――。

 

 これからつける名前で、この先、全員がその一括りで呼ばれることになる。

 中途半端な名前はつけられない。

 そもそも自分が勝手に命名していいのか?

 自分がこのパーティーの代表である。

 だからと言って、みんなに相談してから、決めるものではないのか?

 

 ―― 責 任 重 大。

 

 この四文字が、アリシアの肩に重くのしかかった。

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