プリキュア歴三年、過去に飛ばされました。 作:村正 ブレード
ビルが並ぶ街の一角に、桜とハイビスカスの花吹雪が舞い散る。
花吹雪にによる劣悪な視認性の中、一つの影がビルの谷間を縫う様に駆ける。影の正体―――キュアオーロラは、己の背後から迫り来る追跡者に視線を投げて呟いた。
「怪盗を名乗るだけあって身軽ね」
「生身での
二人は遮る物など一つもないとばかりに超人的な速さで疾走しながらも、ピクニックをしているかの様な穏やかさで会話を交わしている。
「はぁ!? じゃあなんでアゲ達が追い付けないんだっつの! チョベリバ!」
「何で奴はこの中でも平気で移動出来る……!?」
「後ろで何か言ってるわね」
「小鳥の囀り、小悪党の喚きであるな」
彼女達の余裕そのものといった態度を受け、その背を追っていたアゲセーヌとゴウエモンが憤るが気にも止められていない。
(だが……!)
「2秒後に鎧兜と接敵、左のビル!」
「了解」
その一言からきっかり2秒後、オーロラの左前方にあるビルが突き破られた。コンクリートを砕いて現れたハンニンダーの姿を形容するのならば、全身に甲冑を纏った
かつては武家に代々受け継がれてきた由緒ある甲冑であったそれも、ファントムの手に奪われウソノワールの力により歪められてしまった。
「ハンニンダー!」
オーロラは優れた視力により、ビルの壁を這い回り己と並走する
「ハン!」
「おっと危ない」
オーロラは攻撃を察知し、踵で地面を叩いて大きく跳躍する。瞬き程の時間の後、その先のビルは膾斬りという憂き目に遭ってしまう。
「大した威力……」
「もらった!」
その威力に感嘆している彼女の隙を付き、ゴウエモンが体格に見合わない速度で以て一気に距離を詰める。桜色のエネルギーを纏った扇子が横薙ぎに振るわれるも、その一撃はセイバーによって受け止められた。
「やるじゃねぇか…! だが、その余裕もいつまで続くか…!」
「OK、じゃあもう少し真面目にやるわ」
オーロラはその一言と共にセイバーに赤い光を纏わせ、ゴウエモンを弾き飛ばす。
「うおおおおっ!?」
「ちょっ―――あっぶなぁ!?」
追撃しようとその後ろで構えていたアゲセーヌだったが、吹き飛ばされてきた大きな背中を見て慌てて体を捻る。受け止められることもなく横を通り過ぎていったゴウエモンを横目に、彼女は掌から無数の蔓を放った。
「これでも喰らえっての!」
「そんな単純な攻撃……ッ!」
オーロラは自機狙いに伸ばされた蔓を切り払わんとセイバーを構えるが、間合いの僅か手前で蔓の軌道が変わる。囲む様に広がった蔓はあっという間に彼女を包み込んだ。
「小賢しいわね!」
蔓の檻に囚われたかと思われたオーロラだったが、苛立ち混じりに放った剣閃によって拘束を逃れた。彼女はその勢いのまま残った蔓に足を付け、セイバーを振り上げてアゲセーヌを狙う。
「この程度で私をやれるとでも……」
「でも足止めたっしょ?」
アゲセーヌは危機を前にしても不敵に笑う。
その顔つきに不審感を抱く暇もなく、飛来した一発の銃弾がオーロラの手からセイバーを弾き飛ばした。
「チョベリグゥ! ハンニンダー!」
オーロラ達の戦場から遠く離れたビルの屋上で、ガンマンを模したハンニンダーがコッキングレバーを引く。正確な射撃で標的の武器を撃ち抜いた
西部開拓時代のアメリカで治安官と共に人々を守っていたカウボーイハットも、嘘に覆われた事で心を持たない暗殺の道具となってしまった。
「チッ……!」
「させないっしょ!」
落下していくセイバーを追い掛けるオーロラを嘲笑う様に、アゲセーヌが産み出した植物がそれを飲み込み天高く伸び上がった。
「ハッ! これでアンタは丸腰ぃ!」
「…インファイトがお望みかしら」
好戦的な笑みで両の爪を伸ばすアゲセーヌとは対照的に、オーロラは冷静に構えを取った。
「しゃあっ!」
先手を取ったアゲセーヌが、ナイフの如き鋭い爪で連続して貫手を繰り出す。対するオーロラはその連撃を躱し、いなし、弾き、受け止めて反撃に拳を放った。
当たる直前に飛び退かれた事で反撃の一手は不発に終わるも、次の飛び蹴りはアゲセーヌの胴体を捉えた。
「がっ…! こんの!」
「はぁっ!」
体勢を立て直し突き出されるアゲセーヌの爪をオーロラの拳が迎え撃ち、衝撃波を撒き散らす。そこから無数の打ち合いが始まり拳と爪が幾度も交わる。
「シィッ!」
「ふっ!」
「…狙撃警戒! 3カウント! 3、2、1…」
目まぐるしく変わる攻防の中で一際響くネオンの声をオーロラが拾った。共有された視界でトリガーを引くGハンニンダーの姿を捉え、攻撃を受け流すのに合わせて立ち位置を調整する。
「ゼロ!」
その瞬間、オーロラは咄嗟に宙返りして背後からの射撃を紙一重で回避し、弾丸の対処を正面にいたアゲセーヌに引き受けさせた。
「ッ!」
ハンニンダーとの交信が取れない事を利用した同士討ちの作戦はしかし、アゲセーヌの爪であえなく切り落とされる事となった。
アゲセーヌは跳躍により反撃の手が緩んだ一瞬の間を逃さず、五月雨の如く爪撃を振るう。その矛先は全てオーロラの頭部に向けられていた。
「貴女っ、さっきからっ、顔っ狙いすぎじゃない!?」
「気のせいっでしょ!」
「…もしかして嫉妬してるの? 私に?」
「あぁ゛っ!? ―――う゛っ!」
目を丸くして告げたオーロラの一言に、アゲセーヌが青筋を浮かべる。彼女は労せずして出来た隙にこれ幸いと、無防備な鳩尾に肘鉄を食らわせた。
「はい、油断」
「がっ!?」
迫り上がる痛みと胃酸を堪えようと前傾姿勢となったアゲセーヌの顎をオーロラは続け様に蹴り上げ、それから巨大植物の方へと視線を向けた。
「…ふっ!」
オーロラは揺れ動く植物を赤い光を纏う拳で殴る。コンパクトながら強烈な一撃は標的のダメージ許容量を一瞬で超過し、破砕された。
セイバーを取り戻したオーロラは、口端から血を流すアゲセーヌを見て口を開く。
「序でに…こっちも返して貰ったわ」
「アンタ、乙女の顔を蹴るのに抵抗とか無い訳…!?」
「……貴女が先に狙って来たんでしょ…?」
信じられないものを見る目で見られた事に対してオーロラが困惑していると、腰のネオンが囁く。
「9時方向から鎧兜、ビルを突き破ってくるぞ」
「オッケー」
報告に頷いたオーロラが一息にその場を離脱したのと同時、ネオンの言う通りにMハンニンダーがゴウエモンを背に乗せてビルを突き破った。
「ハンニンダー!」
「アゲセーヌ! 無事か!」
「戻ってくるのが遅いし…!」
「すまねぇ! オマエも早く乗れ!」
ゴウエモンはそう言うなりアゲセーヌを抱え上げ、突き進むハンニンダーの背に乗せた。
「直ぐにキュアオーロラを追うぞ!」
「あ~もう、メイクが崩れてる! チョベリバ!」
「あ、アゲセーヌ…オマエなぁ…」
少なくないダメージを負っているはずのアゲセーヌが化粧を直し始めたのを見て、心配していたゴウエモンも肩透かしを食らった。
「まあいい、行くぞ! ハンニンダー!」
「ハンニンダー!」
彼は変わらぬ調子の仲間に口角を上げて気を取り直し、ハンニンダーに追跡を命じた。
なぜネオンは花吹雪の中、姿の見えない敵の位置や行動、銃弾の到達時間までをあれ程正確に察知出来るのか。その秘密は、ネオンの持つ力にある。
ネオン達“光の妖精”は人の世界にいる妖精とは異なり単一の種族である。その為、“
「気配が三手に別れた」
「挟み撃ち……いえ、この動き方は囲い込むつもりかしらね」
「どちらにせよ、警戒は厳にするのである」
光の妖精は例外なく生まれつき異なる固有能力を宿している。発火、雷電、氷結、空間転移、読心、未来予知、精神操作―――その種類は正に千差万別と呼ぶのに相応しい。
その中でも、ネオンが持つ能力は……。
「来たぞ、前にゴウエモン、後ろにアゲセーヌ!」
(……またコイツ…! アゲ達の居場所を!)
(厄介だな、キュアオーロラのオトモ妖精の力!)
―――千里眼。
ネオンの視覚と感知力は他の妖精とは一線を画し、その範囲は通常時で半径20km、変身時には
この能力があったからこそ、彼女達は
「おらぁ!」
「せぇいっ!」
「………っ!」
花吹雪に紛れて放たれた扇子と蔓の鞭による奇襲攻撃を、オーロラは巧みな剣術で切り払う。しかしその直後、息吐く暇もなく彼女の頭上に影が掛かった。
「頭上に鎧兜!」
「了解!」
「ハンニンダー!」
オーロラは落下攻撃に反応し飛び退き、敵の巻き起こした土煙に紛れて逃走を図る。それをファントムがみすみす見逃す筈もなく、ハンニンダーを先頭に彼女を追いかけた。
以前述べた通り、ネオンが捉えた視界と探知情報の全ては一切の遅滞無くオーロラへと共有されている。故に、本来であれば逐一声を掛ける必要はない。
それでも敢えて言葉を交わすのは、膨大な情報の取捨選択に要する時間を削り思考を並列化させる事で、ほんの一瞬の判断速度を引き上げるためである。
彼女等は、戦いにおいてその刹那の差が生死を分ける事をその身で理解していた。
「ハンニンダーと怪盗達を分断する!」
「次の狙撃と同時にハンニンダーのみ通す壁を形成! 5カウント!」
「良し! 543210!」
「ハンニンダー…!」
カウントと寸分の狂いも無く飛来した銃弾が、足元のコンクリートを砕く。その瞬間にオーロラがセイバーから斬撃を飛ばして橙色の軌跡を地面に描くと、その軌跡に沿う形で天高く聳え立つ壁が形成される。
「はぁ!? 邪魔なんだけど!」
「さっさとぶっ壊すぞ!」
オーロラは壁の向こう側で破壊を試みている二人を他所に、剣を振るった勢いのままMハンニンダーに斬り掛かった。
「ハンニンダー!」
「ふっ!」
疾風迅雷の如き速さで金属音が鳴り響く。文字通り手数で劣るオーロラは青い光を纏う事で補い、引き伸ばされた時間の中で百足ハンニンダーと剣戟を重ねる。十数度の応酬の後、彼女は橙色の壁に亀裂が走り始めるのを視認した途端に飛び退き、壁が破壊される前にビルを駆け上がりその場を離脱した。
「待ちやがれ!」
「ハンニンダー!」
「逃がさないっての!」
遥か空中のオーロラを追って跳躍した二人と一体を、虹の輝きが迎え撃つ。
「【オーロラレイン】!」
「しまっ…!?」
「いぃっ…!?」
「ハン!?」
オーロラの放った無数の斬撃が、雨霰となって眼下へ降り注ぐ。乱雑に見えて、その実すべてが緻密に計算された剣閃は目眩ましとなって敵の視界を覆い隠し、同時に敵の身体へ確かな傷を刻み込む。
「ぐ、おおおっ!? ……ちぃっ、消えやがった!」
「ああもうっ! ウザい〜!」
「……ハンニンダー!!」
斬撃の雨が止む頃には、その場には切り傷だらけの二人と一体だけが残っていた。
怪盗団の面々を鮮やかに出し抜いたオーロラは、自らを捜索する彼らの足元にあるビルへと身を潜める。座り込んだ状態で意識を遠方へと巡らせ、仲間達の気配を探り始めた。
「……どうやら彼方も戦闘を開始した様であるな」
「みたいね。苦戦しているみたいだけど……二人ならきっと、やれる筈よ」
「救援に向かう為にも手早く片付けたい所であるが……やはり幹部級を含めた四体一は一筋縄では行かぬな」
「ゴウエモンとアゲセーヌが邪魔ね…ハンニンダーだけ誘い出せれば良いけど……」
拡大された二人の視界には敵の一団が映し出されている。奇襲を警戒しているのか、付かず離れずの距離を保ちながらもビルの屋上を縫う様に移動している。
これでは誘い出すどころか、下手に動けばGハンニンダーに発見されるのは火を見るより明らかだ。
「……ふむ、ではこういうのはどうであるか?」
「……うん、それで行きましょう。布石も打ってあるし」
オーロラは脳内に提示された相棒の打開策に静かに頷くと、そのまま立ち上がって行動を開始した。
「アイツ、一体何処に隠れてるワケ……!?」
「落ち着けアゲセーヌ、奴はハンニンダーを倒す為に必ず現れる! そうなればこっちの
「ハンニンダー!」
血気盛んなアゲセーヌを宥めながら、ゴウエモンは静かに背後へと視線を流した。その先では、狙撃体勢を崩さぬままGハンニンダーが銃口を遠方へ向けている。あの配下はスナイパーであると同時に敵の居場所を自分達に伝える“目”―――スポッターでもある。
「ハンニンダー……」
「キュアオーロラが現れればアイツが即座に狙撃し、オレ達に位置を知らせてくれる。そこを袋叩きにすりゃぁ、オレ達の勝利は確実だ!」
「……まっ、アゲ達が有利なのは変わらないってワケか……」
その時、乾いた銃声が談笑の空気を切り裂く。
頼れる配下が放った一発は一直線に標的へと迫る――だが甲高い金属音と共に、その銃弾は標的の手にした得物によって鮮やかに弾き落とされた。
「来やがったか!」
「……何あれ?」
ファントムが捉えたのは、紛れもなくオーロラの姿。だが、その手に握られていたのは見慣れたガラスの剣ではなく、陽光を思わせる黄金色の長柄の武器――まるで戦場に翻る旗印のような得物であった。
黄の光、その性質は変幻自在。使い手のイメージ通りに物体の形状や性質を変化させるその力によって、彼女は己の武器を別の姿へと変化させたのだ。
長物へと変貌した得物を一閃し初弾を弾いた彼女は、続けざまに襲い来る銃弾を回転させた柄で弾き落とす。そして、Gハンニンダーがリロードに入った、そのほんの一瞬の隙にオーロラは武器の先端に掲げられた”戦旗”ののぼりを大きく広げる。
『アゲセーヌの弱虫 田舎者』
「……はぁ? あれで挑発のつもりか…「アイツ、またアゲを馬鹿にして…! お望み通りやってやるし!」おい、アゲセーヌ!」
オーロラの拍子抜けする程幼稚で子供じみた挑発に額に青筋を浮かべたアゲセーヌは、ゴウエモンの制止を聞きもせず飛び出していった。怒りに身を任せ猪突猛進の勢いで迫ってくる彼女を前に、オーロラは不敵な笑みを浮かべて悠然と迎え撃った。
「ぶっ殺してやるし!」
「そら来た、煽り耐性ない奴」
アゲセーヌの振るった鋭い爪を、オーロラは瞬時に戦旗からセイバーに戻して真正面から受け止める。
甲高い衝突音が戦場に響き渡り、そのまま鍔迫り合いになろうかという瞬間、オーロラは巧みな剣捌きで受け流しながら大きく後方へ跳び退く。追い縋るアゲセーヌを誘い込むように後退りし、ゴウエモン達との距離をみるみる引き離していった。
「……不味い! オレ達も行くぞハンニンダー!」
「ハンニンダー!」
オーロラの狙いに気付いたゴウエモンは、孤立していくアゲセーヌをMハンニンダーと共に追いかけた。
アゲセーヌの怒涛の連撃を剣一本で凌ぎ続けつつ、動き始めたゴウエモン達を視界で捉えたオーロラは、大きく跳躍しセイバーを片手で振り上げた。
「これで終わりよ…!」
「チッ……ハンニンダー!」
「ハン…!」
勿論、Gハンニンダーがそんなあからさまな隙を見逃す筈も無い。アゲセーヌの危機に反応して銃口から放たれた一条の閃光は、その狙い通りにオーロラの手から剣を弾き飛ばした。
「しまっ……!?」
焦燥を滲ませたオーロラの表情を目にしたアゲセーヌは、獲物を追い詰めた時の猛獣のように獰猛な笑みを浮かべた。
弓の様に引き絞られた彼女の右腕が、不気味な音を立てて食肉植物のような異形へと変貌した。鋭い牙を幾重にも並べた巨大な捕食器官が大きく口を開き、獲物を喰らわんと一直線に伸びる。
「さっきの言葉、そのまま返すっしょ!」
アゲセーヌが放った緑の刺客が風を切り裂きながら襲いかかる。
大口を開けた食肉植物は抵抗する暇すら与えずにオーロラの全身を一息に飲み込み―――その顎を、容赦なく閉ざした。
(アゲの勝
ザシュ
ち……?)
勝利を微塵も疑わず、主へ戦果を報告しようとしたアゲセーヌの身体に、不意に一文字の裂傷が走った。
「―――えっ……?」
遅れて滲み出た鮮血と焼けつくような痛みに、彼女の笑みが凍り付く。その視線の先には、信じ難い光景が広がっていた。
オーロラを噛み砕いた筈の食肉植物の腕が、肘の部分まで鮮やかに断ち切られ、重々しく落下を始める。その断面の向こうには、悠然とセイバーを振り抜いたオーロラの姿。確かに弾き飛ばしたはずの剣をその手に携えたまま、静かにアゲセーヌを見据えていた。
「私、一本しか出せないなんて言った覚え無いけど」
「は―――、ぁ…っ!?」
さらりと言ってのけたオーロラの一言に、アゲセーヌはようやく己が術中に嵌められた事を悟る。彼女は敢えて隙を晒し、捕食される寸前に新たなセイバーをその手に生み出した。そして油断した己を狙い澄まし、内側から斬り裂いたのだ。
目を見開いて愕然とするアゲセーヌに体勢を立て直す猶予を与えまいと、オーロラは振り抜いた刃を反対の手に再生成して袈裟懸けに振り下ろした。
「二回も同じ手を食らった事に、違和感を覚えるべきだったわね」
「―――ッ……!」
答え合わせをする様な口ぶりと共に振るわれた鮮烈な一閃が、遮る物の無いアゲセーヌの身体を深々と切り裂いた。
彼女の意識はその苦痛に耐え切れず、悲鳴すら上げ切れぬまま暗闇へと沈んでいった。
「次」
感情を欠片も滲ませない声色が静かに響く。
オーロラは意識を失ったアゲセーヌを容赦無く踏み台にして、迷う事なく次の標的へと狙いを定めた。次の瞬間に彼女は脚を踏み切り、青い閃光となって宙を翔けた。
「―――アゲセーヌッ!」
落下していく仲間の姿を目にしたゴウエモンは、表情を一変させると同時に悲鳴にも似た叫びを上げた。飛来してくる仇敵に目もくれず、その身を躍らせて一直線にアゲセーヌに向かっていく。
唯一人残されたMハンニンダーは、プログラムされた通りに六手に構えた武具を重ね、防御の姿勢を取った。
「―――はぁっ!」
「―――ハンッ!」
次の瞬間、蒼き閃光が巨躯へと激突する。
轟音と衝撃波が屋上を揺るがし、鋼とガラスの刀身が噛み合って火花を散らす。甲高い金属音が二重、三重と重なり、そのまま両者は鍔迫り合いへ縺れ込んだ。赤と青の光を刃に宿したオーロラが、じわじわと武器諸共百足ハンニンダーを押し込んでいく。
押し切られる―――。そう判断したMハンニンダーは六本の腕に力を込めると、全身の膂力でもって武器を振り抜いた。
「ハンッ!」
「っ、と……!」
凄まじい剛力にオーロラの身体が弾き飛ばされる。その隙を逃すまいと、Mハンニンダーは彼女の足が屋上へ触れるよりも早く巨体を踏み込み、六本の腕を怒涛の速さで振るった。
斬撃、打撃、刺突。
異なる軌道を描く六種の攻撃が、絶え間なくオーロラへと降り注ぐ。
人間には不可能な、多腕生物だからこその圧倒的な手数。だがオーロラもまた、その猛攻に真正面から受けて立った。
右手のセイバーで一撃を受け流したかと思えば、剣が霧散し、次の瞬間には左手へ新たなセイバーが生成され、別方向から迫る一閃を弾き返す。
攻撃に対応して新たなセイバーを瞬時に生成しながら、目まぐるしく持ち替え続けることで六本の腕が織り成す暴風の如き連撃を紙一重で捌き続けた。
「ハン…ニンダァァーー!!」
Mハンニンダーが吼える。
その雄叫びと共に、六本の腕が更に速度を増した。バラバラな軌道で迫り来る猛攻の嵐が、息吐く間もなくオーロラへ襲い掛かる。
腕の数も武器の数も自分の方が上回っているし、更に間隙を縫って飛来するGハンニンダーの援護射撃もある。
今度は此方が押し切る番だ。そう心許無い頭脳で導き出したMハンニンダーは処理能力の限界すら顧みず、連撃の速度を際限無しに引き上げていく。敵を叩き潰すという一念だけを原動力に、六本の腕は間髪入れずに武器を振るい続けた。
一方、その猛攻を真正面から受け止めるオーロラの表情に焦燥の色は微塵もなく、迫り来る刃の軌跡を見極め、必要な場所へ必要な一閃を振るっていた。
セイバーを生成して弾き返し、消してはまた生成して弾く。
その一連の動作は息をする様に行われ続けた。まるで幾度となくやり込んだ音楽ゲームの最高難度譜面を、身体に覚えさせたリズムだけで捌く熟練者の様に、彼女の意識は激戦の只中にありながら驚くほど澄み渡っている。
眼前で荒れ狂い、一度当たれば致命傷となるであろう六器の暴風でさえ一つの”譜面”であるかの様に淡々と処理しながら、オーロラは静かに待ち続けた。限界ギリギリで動き回るその六本の腕が綻びを見せる、その瞬間だけを。
そして遂に、Mハンニンダーの一撃が空を切る時が来た。
「ハン……?」
手応えが消え、更には得物が随分と軽くなっている。Mハンニンダーが怪訝な顔で腕へと視線を落とすと、その手に握られていた刀身は砕け散っていた。
慌てて他の腕に目を走らせると、その一本だけでなく己の武器全てが柄だけを残してその機能を失っているのに気が付いた。
「……ハンニンダァ!?」
「ふぅぅ……―――ッ!」
思わぬ事態に狼狽を隠せないMハンニンダーを見据えたオーロラは、待っていましたと言わんばかりに、手に持つ刃を七色に煌めかせ上段の構えを取った。
「ハン―――!!」
「一つ」
全身を貫く閃光に、Mハンニンダーが弾かれた様に我へ返る。咄嗟に棒切れとなった武器を捨て、白羽取りの為に腕を眼前に翳すが、余りにも遅い対応だった。
―――唐竹割り。
光と見紛う剣閃は幾重もの腕を易々と潜り抜け、頭頂から股下までを一刀の元に切り捨てた。
「ハン…ニン…ダー……」
Mハンニンダーに出来た断面から浄化の光が全身に駆け巡り、その身体をマコトジュエルに回帰させた。排出されたジュエルを掴んだオーロラは、最後の獲物の方へ視線を動かす。
「……ハンニンダー」
相方の消滅を目にしてもGハンニンダーは平静を保ち、狙撃銃の引き金を引こうとし―――その寸前、オーロラの姿が掻き消える。
「ハン!?」
スコープから離した瞳が捉えたのは、縦横無尽にビルを跳び回る敵の姿。残像を散らしながら此方に向かってくるオーロラを目にして、Gハンニンダーは命中精度を捨てる構えを取った。両腕を狙撃銃から機関銃に変形させ、その銃口から火を吹かせる。
「……ニン、ダー!」
両腕合わせて分間2800発の弾丸の奔流がオーロラに向けてばら撒かれた。人間の常識を遥かに超えた密度で張られた弾幕はしかし、彼女に取っては穴の空いた網でしかなかった。
「ダダダダダダ!!!」
Gハンニンダーは、オーロラを間合いまで近づかせまいと必死に連射するも、目の前の敵は平気な顔ですいすいと潜り抜け距離を縮めてくる。そして彼我の距離が僅かビル一棟分にまで迫った次の瞬間、Gハンニンダーの両腕が爆発した。
「ハンニン!?」
何事かと狼狽するGハンニンダーの目に、両腕に突き刺さった二本のセイバーが映る。ウソノワールによって強化されたハンニンダーには痛覚が存在しない。その為、自らの両腕が破壊された事を爆発が収まった後に漸く気が付いたのだ。
Gハンニンダーは自身の作った余りに大きな隙にハッと顔を上げる。しかし前方にオーロラの姿は無く、代わりに背後から溢れ出した虹色の光が視界を掠めた。Gハンニンダーは瞬時に残された頭部をマグナムに変形させると、背後に隠れたであろう敵の方へ振り向いた。
「ハン―――」
「【オーロラレインボーストーム】」
早撃ち勝負の行方は、キュアオーロラに軍配が上がった。
「これにて終曲」
「おい、おい! アゲセーヌ! しっかりしろ!」
「……………」
落下寸前のアゲセーヌを受け止める事に成功したゴウエモンは、身体を揺すって彼女を起こそうとする。しかし、それでオーロラによって刈り取られた意識が回復する事はなかった。
「な、なんてこった……アゲセーヌ…」
「まだ此処に居たのね、ゴウエモン」
「ッ!? キュアオーロラ!」
悲痛に暮れるゴウエモンの後ろから、オーロラが歩いてくる。半ば呆れた表情でゴウエモンを見る彼女は、二つのマコトジュエルを弄びながら話を続ける。
「ハンニンダーはもう始末したわ。ウソノワールに『次は自分で来い』って伝えておいてくれる?」
「……あの一瞬でハンニンダーを全滅させたってのか…!?」
「ええ。義理人情に厚い誰かさんが、仲間を助ける為に持ち場を離れたお陰でね」
「……ッ!」
ゴウエモンはその一言を聞いて完全にしてやられたと感じた。オーロラは己の性格を完全に熟知し、戦況を有利に動かす為に誘導したのだ。
まんまと罠に嵌められた屈辱、そして仲間を殺された事による怒りが、ゴウエモンにドス黒いオーラを纏わせた。
「よくもアゲセーヌをやりやがったな…!」
「……人の大切な物を平気で盗む癖に、仲間の命は惜しむのね」
オーロラはそう言いながらも、ゴウエモンの放つ異様な雰囲気に目を細めた。その剣にほんの僅かに緑光を灯すと、オーロラを睨み付けるゴウエモンの向こう側で、光を浴びたアゲセーヌが息を吹き返した。
「ゲホッ! ゴホッ!」
「ア、アゲセーヌ!」
「致命傷は避けたわ、早く処置すれば助かるかもね。……じゃ、私は行くから」
「な、待ちやがれ! ……くそっ」
殺し合いをしていたとは思えない程あっさりした別れにゴウエモンは呆然となり、無意識の内にアゲセーヌを抱える手に力を入れた。
「HANNINDAAA!!」
「はああぁーーーっ!」
牙と盾がぶつかり合い、余波で風が吹き荒ぶ。
Tハンニンダーは【ミスティックリフレクション】に攻撃を阻まれながらも、ギャリギャリと音を立てて食い付きその向こうにいる敵を噛み砕こうとする。
「ぐ…ぐぐ……っ」
自らの身体を容易に飲み込んでしまえる様な圧倒的体格の差。その相手を一手に引き受けたは良いものの、ミスティックはなんとか持ち堪えるのが精一杯の状況だった。
それでも、彼女は陰で見守る相棒の為に一歩たりとも退くつもりはなかった。ウォッチを硬く握り締め、力一杯に腕を前に押し出す。
「ぬ…ぅああああっ!」
「HA…HAN…!」
渾身の力が込められたリフレクションはじわじわとTハンニンダーの顎を押し返していき、一際大きな輝きと共に弾き飛ばしてみせた。
「な―――」
「いやああああっ!」
思わぬ結果にニジーが驚く暇を与える事なくミスティックはリフレクションを操り、たたらを踏むTハンニンダーの腹部にぶち当てる。流石の耐久力もバランスの取れない状態では上手く受けきれず、大きく後退する事となった。
「HANNINDA!?」
「―――何!?」
「……ハァッ…ハァッ…! どう!?」
二段構えの攻撃という役目を見事果たしたリフレクションを呼び戻し、ミスティックは息を切らせながらも勝ち誇る。しかし、その強がりも無傷の敵を見て霧散した。
「HANNINDAAA!!」
「ふっ…少し驚かされたけれど、ハンニンダーにはその程度の攻撃は通じないよ!」
「く……っ! だったら、もう一度! やあああっ!」
「HANNINDA!」
その雄叫びと共に、再び二人が衝突する。
「……ミスティック…!」
「ポ、ポチ…!」
無謀すぎる戦いを岩陰に隠れて見ているアンサーとポチタンの二人。特にアンサーは飛び出したい気持ちを必死に抑えつけながら、一刻も早く弱点を発見しようと目を凝らしていた。
(弱点…って言っても、そんなの本当にあるの…!?)
遠くで暴れ回るTハンニンダーを幾ら観察しても、見えてくるのは破壊的なまでの強さだけであり、それらしき物は何処にも見当たらない。しかし、そんな弱音を吐いていては、一人体を張ってくれているミスティックに申し訳が立たないと、彼女と同じ様に頬を張って気合いを入れ直す。
「『敵の姿形や動き、得意な戦法、弱点、癖……一挙手一投足に至るまで、その全てを目に焼き付ける』…だよね、包さん…!」
包からの助言を踏まえ、もう一度Tハンニンダーに意識を集中させる。アンサーも相棒と同様、敵の強さは攻防を通じて把握しているつもりだった。だからこそ、今は弱点よりも先に……。
「ハンニンダーの攻撃をよく見て、隙を探すんだ!」
「ポチィ!」
彼女は隙を見つけて、動きを止めるのが先決だという考えに至った。弱点や倒す方法は、その時に考えれば良い。隣にいるポチタンもその考えに同意を示していた。
その間にも、戦いは進んでいく。ミスティックは何か閃いた様に目を見開くと、懐からプリキットライトを取り出して叫んだ。
「オープン! “プリキットライト”! 【足場】!」
「HANNINDA!?」
ミスティックはプリキットライトの物質形成機能を発動し、Tハンニンダーを取り囲む様に空中に足場を作り出す。
「ニジー! 貴方の作戦、使わせてもらうわ!」
「何……? っこれは…! ハンニンダー!」
「HANNINDAA!」
ミスティックの作戦に気付いたニジーが攻撃を命じ、それに応じたTハンニンダーは地面がひび割れる程に強烈な踏み込み、勢いを乗せたテールアタックを繰り出して彼女の足場を破壊しようとする。
「はぁっ!」
その攻撃を呼んでいたミスティックは尻尾が当たる直前に跳躍し、足場を再度展開しつつウォッチを両手で振り上げる。
『プリキットライトみたいに使用者のイメージを実体化するアイテムを使う時には、具体的な物体を思い浮かべるのが良い』
(あの硬い皮膚を削り取る、チェーンソーをイメージ…!)
彼女の頭上に移動したリフレクションは、彼女の意思を反映し高速回転を始める。回転鋸となった自らの盾を手繰る両腕を、彼女は渾身の力で振り下ろした。
「せやあああっ!」
「―――HANNINDA!!?!?」
脳天に回転するリフレクションを叩きつけられたTハンニンダーは、今までにない感触に驚愕の声を上げる。チュイイイン、と火花が散る幻覚すら見える程に食い込んだリフレクションは少しずつ、だが確実にTハンニンダーの皮膚を削ぎ落とし進んでいく。
「凄い、これなら…!」
「はあああぁぁっ!!」
「……HA、HAN…NIN!」
「チィ…! ハンニンダー! その程度の攻撃なんて跳ね飛ばしてしまえ!」
Tハンニンダーが上方から掛けられ続ける圧力を耐えようと、地面を軋ませながら踏ん張っている所にニジーの激が飛んで来る。その声に反応し、彼は全身の力を解放して対抗した。
「DAAAッ!!」
「―――ッ!?」
「ああっ!?」「ポチ!?」
Tハンニンダーの圧倒的な膂力の差によってリフレクションは掻き消され、ミスティックは弾き飛ばされる。彼女はあわや墜落の危機という中でなんとか姿勢を立て直し、足場に着地する事に成功した。それを見て、慌てて飛び出そうとしていた二人も胸を撫で下ろす。
「ほっ……」
「ポチ……」
(あ、危なかった……けど、こうなるのも想定内…それに)
平静を装いながらも内心冷や汗をかいていたミスティックは、眼下の敵に付いた小さな傷を見て口端を上げた。それに気づいていないのか、ニジーはなおも彼女を煽り立てる。
「無駄だと言っているのが分からないのかい、ベイビー! どんなに足掻いた所で、キミ達の敗北は決まっているのさ!」
「(ほんの少しだけど、ダメージを与えられた…! あそこを集中して攻撃すれば、勝てる!)やってみなくちゃわからないでしょ!」
折角作り出した勝利への鍵を無駄にはすまいと、ミスティックは啖呵を切る。徹底抗戦の構えを崩さない彼女の姿に、ニジーは苛立ちを隠せない様子だった。
「キミの諦めの悪さに段々と腹が立ってきたよ…! ハンニンダー、あの邪魔な足場を全て破壊しろ!」
「HAN!」
「ポチタン!」
「ポチ!?」
「―――【ミスティックリフレクション】!」
ニジーの命令を聞き、Tハンニンダーは再び両足を踏み込み、大きく息を吸い込む。アンサーは伝わってきた振動から危険を察知しポチタンを引き寄せ身を隠し、ミスティックもまたリフレクションを再展開して攻撃に備えた。
そして、Tハンニンダーの咆哮が放たれる。
「―――HANNINDAAAAAAA!!!」
「く……っきゃああああっ!?」
「くぅぅ……っ!?」
「ポチィ……!」
広場を襲う爆音と衝撃波は瞬く間に足場を奪い去り、ミスティックの転落を招いた。咄嗟に張ったリフレクションのお陰で直接のダメージこそないものの、彼女は落下と音波の二重の衝撃をその身で味わう事となった。
「……あれ? なんで私…」
アンサーは傷付いた相棒を心配するより先に、敵の攻撃を察知出来た理由について考察し始める。
「えっと……ハンニンダーの攻撃が狂って分かったのは、地面が揺れたからで……地面が揺れたのはハンニンダーの踏み込みの所為で……!
……ピンと来た! 良い、ポチタン……」
「……ポチ!」
判断の訳を一つ一つ振り返り、遂に打開策を閃いたアンサーはポチタンに作戦を説明し、再び岩から顔を出して反撃の機会を窺う。その視線の先には鞭打ちの痺れに身悶えるミスティックの姿もあった。
「うっ、あぁ……」
「HANNINDA……」
「受け身を取り損ねた見たいだね、手間取ったけどコレでお終いさ。……安心して良い、キュアアンサーも直ぐに後を追わせてあげるよ」
「……ま、まだよ…まだ終わってない…! 恐竜の化石を取り返す為にも…!」
上手く動かせない体を必死に持ち上げ、見下してくるニジーを睨む。脂汗を流し苦悶の表情を浮かべる敵の姿に、彼は気を良くしながら指を鳴らす。
「幕を下ろせ、ハンニンダー」
「HANNINDA…!」
ズシン、ズシンと足を踏み鳴らし、Tハンニンダーがミスティックに近付いていく。絶体絶命の状況を前に、彼女は尚も諦めずに立ち上がりウォッチを構えた。
(で、でも…そろそろ限界、かも……)
「ポ、ポチ! ポチ!」
「待ってポチタン……もう少しだけ……」
アンサーは助けに行こうとするポチタンを抑え付け、その時を待つ。
そして、Tハンニンダーがトドメの一撃の為に足を上げた瞬間、岩陰から飛び出した。
「―――今だ!」
「ポチィーーー!!」
彼女はウォッチを繰って紫色の光の矢となり、Tハンニンダーへと一直線に駆けていく。
「奇襲!? …キュアアンサーか!」
「……アンサー!」
(何だあの速さは……!? 時空の妖精の力か…!?)
ニジーが驚愕する程の速度の秘密は、腰に下がって虹光を放つポチタンにあった。空間転移は、未だ完全に力を取り戻していないポチタンには不可能な芸当である。彼はアンサーの思いに応えたい一心から、前方の空間を圧縮させる事で擬似的に再現したのだ。
「(だが、奴の攻撃はハンニンダーには効かない!)無視しろハンニンダー! 先にキュアミスティックを倒せ!」
「HANNINDAAA!!」
「くっ……!」
突然の急襲に驚いたニジーだったが、その硬い皮膚が攻撃を通さないと判断しそのまま攻撃させようとする。
それよりもほんの一瞬速く、アンサーが必殺技を放った。
「【アンサーアタック】!」
彼女が拳を打ちつけたのは、持ち上げられたTハンニンダーの足―――ではなく
アンサーアタックにより地面は砕かれ、空高くまで土煙が立ち込める。
「狙いがお粗末だよ、ベイビー! 薙ぎ払えハンニンダー!」
「HAN!」
アンサーのミスを嘲笑するニジーの命令を実行すべく、Tハンニンダーは踏み込もうと足に力を入れ―――ズルリと、その足が空を切る。
「NIN……!?」
「……そういう事ね! はあぁっ!」
ミスティックは踏み場を誤った事でたちまち体勢を崩しそうになる敵の様子から、相棒の狙いを即座に理解し反対の足を狙ってリフレクションを操る。
掬い上げる様な軌道で叩きつけられたリフレクションによってTハンニンダーは見事に足を払われ、踏ん張ることすら出来ずに横向きに倒れ伏した。
「DAAAA!!?!」
「ハ、ハンニンダー!?」
「やった!」
「ポチィ!」
倒れるTハンニンダーを目にしてニジーは動揺し、アンサーとポチタンはハイタッチしながら喜ぶ。そして、るるかとマシュタンはその奮闘を感心する様に見ていた。
「凄いわね、あの娘達」
「そうね、あのハンニンダーを相手にここまでやるなんて。
でも……」
るるかの諦観混じりの呟きなど露知らず、アンサーはミスティックの方へ駆け寄っていく。
「ごめん! 弱点見つけられなかった!」
「良いわ! お陰で助かったから! あれどうやったの?」
「あのハンニンダー、攻撃の前に踏み込む癖があったから地面に穴を開けてやれば転ぶかもって! そしたら当たってた!」
「凄い、流石名探偵!」
「それを言うならミスティックもでしょ! 一人でハンニンダーと戦ってたんだから!」
「ポッチィ!」
二人は最上に近しい結果を齎した事で気分が若干ハイになりながらも、両手を繋ぎ合わせてお互いの健闘を讃え合う。
微笑ましく見える程にキャッキャとはしゃいでる所で、ニジーが苛立たしく叫んで注目を集めた。
「調子に乗らないで欲しいな、ベイビー達!」
「「……!」」
「まだハンニンダーは傷一つ負っちゃいない! さぁ、早く立ち上がれハンニンダー!」
「HANNINDA……!」
ニジーの一言に顔を引き締めた二人の前で、Tハンニンダーが起きあがろうと藻搔く。その姿を見て予想通りだとアンサーが言い返す。
「そう簡単には立ち上がれないよ!」
「何……?」
「ハンニンダーの後ろ足は立派だけど、前足の方はそうじゃない! そんな短い足じゃ立ち上がる支えにならない!」
「……それに、傷だって付けられてる! 頭をよく見なさい!」
「な、ぁ…!? い、いつの間に……くっ……!」
二人の言う通り、Tハンニンダーは足をバタバタ、尻尾をビタンビタンと動かして起きあがろうとしているが上手く行っていない。しかもその頭部に微かな傷が残っているのを発見し、彼は着実に追い詰められている状況を理解した。
「だ、だけどキミ達がハンニンダーを倒すよりも、ハンニンダーが起き上がる方が早い筈さ!」
「そう…そこが問題。あの娘達の攻撃力では、ハンニンダーの浄化は不可能よ。キュアオーロラがいれば話は別だけど」
「成程……そして彼女はアゲセーヌとゴウエモンが抑えているから、こっちには来ない……って事ね」
ファントムの面々は動揺しながらも、或いは冷静に戦力差を分析し勝利は揺るがないものであると語る。そうして余裕を少し取り戻したニジーは二人に諦めろと吐き捨てた。
「そうとも……
だが彼が幾ら御託を並べた所で、二人の心は燃え上がる一方であった。
「それ位で諦めるわたし達だと思わないでよね!」
「貴方達を倒して、マコトジュエルも…恐竜の化石も取り返して! 絶対、元の時代に帰るんだ!」
アンサーが高揚のままに口にした最後の一言に、ニジーとるるかは揃って驚愕の表情を浮かべた。
「元の時代…だと…!? なんだそれは、まるで……!」
「……違う時代から来たプリキュア。
「ねぇ、ミスティック。今なら出来るかな?」
目を見開くニジーを他所に、アンサーはミラールーペを取り出して言う。ミスティックもまた同じ物を見せ、口角を上げて答えた。
「出来るよ、きっと。ポチタンもそう思うでしょ?」
「ポチィ!」
間に浮かぶポチタンが笑顔で頷いたのを最後に、三人は手を繋ぎ合わせてファントムに向かって告げた。
「奇跡が必要だって言うのなら―――」
「―――私達で、奇跡を起こす!」
「ポチィーーー!!」
その時、ポチタンの首元から二つの光が飛び出す。光は天高く飛び上がった後、アンサーとミスティックそれぞれの目の前に降りてその姿を露わにする。
「これって……」
「金色の…マコトジュエル?」
この場にいる誰もが知らない事だが、それは名探偵プリキュアとそのオトモ妖精が心を通わせる事で生成される絆の結晶、“黄金のマコトジュエル”そのものであった。
「ミスティック!」
「ええ!」
彼女達は三人の心が発露させた奇跡を手に取り、声高らかに叫んだ。
「「オープン!」」
その呪文に反応し、ミラールーペがスティックの形状からハートの鏡が特徴的な虫眼鏡へと変化する。二人は本来の姿をとったミラールーペを掴み、前へと突き出しその名を謳いあげた。
「「プリキットミラールーペ!」」
そしてポチタンが生み出した黄金のマコトジュエルをコネクタにセットし、鏡に映る自分に向かってウインクする事で、心のマコトジュエルと接続が完了する。続けてカバーを展開し、ミラーモードからルーペモードへと変形させた。
「見て!」
「感じて!」
「「謎を解く!」」
その言葉と共にレンズ下のクリスタルを回転。計三回の回転の後、ミラールーペは二つのマコトジュエルの力を最大限に引き出し、レンズに集束させていく。
「「これが!
プリキュア! 【フライング・スペクトル】!」」
二人は息を合わせてハートを意識したポーズを取り、ルーペを再度突き出すとレンズから紫色とピンク色の二条の光が放出された。
一つに重なった光条は青空の様に輝く鳥へと変化しTハンニンダーへと突き進む。都合四つのマコトジュエルの力を宿した光鳥はそのひび割れた頭部から尻尾までを一気に貫くと、無数の羽根となって消えた。
「「キュアッと解決!」」
二人は光鳥が消えた事を確認すると、振り返って決め台詞を口にする。その背後で、全身に伝播した浄化の光が柱となってTハンニンダーの全身を包み込んだ。
「HAN…NIN…DAAA…」
アンサーは元の姿を取り戻したマコトジュエルを掌に収め、それをポチタンに与えて吸収させた。
「ポチポチ、キュアキュア~!」
彼はジュエルを取り戻した事に加え、二人が無事に勝利を収めた事に声を上げて歓喜した。
ハンニンダーが倒された事でフィールドが消滅を始め、広場が元の姿を取り戻していく。
「な……そ、そんな馬鹿な…!? あのハンニンダーが、殆ど一撃でやられただと…!?」
そんな中、ニジーはTハンニンダーの最後を前に呆然と立ち尽くす。最強だと思っていた存在の呆気ない消滅、そして与えられた最後のチャンスが無に帰したその心情は筆舌に尽くし難い。が、アンサーとミスティックは彼の状況など知りはしない。
「次は貴方の番よ、ニジー!」
(今の私達ならニジーに勝てる! …ううん、勝ってみせる!)
強敵を倒した事で調子付いた二人は、そのままの勢いでミラールーペを構えてニジーに向かって突撃する。
「……良いだろう! ボクが直接、この手で! キミ達を倒し…マコトジュエルを奪ってみせようじゃないか!」
進退窮まった彼は鬼気迫る表情で彼女達の方に振り向くと、決着をつけるべく薔薇を手に走り出す。
「「「はぁぁぁーー!!」」」
程なくして三人の距離が縮まり、第二ラウンドが始まろうとした、その時。
「【アルカナスターレイン】」
黒と見紛う程に濃い紫色の光雨が、ニジーとプリキュア達の間に降り注ぐ。光線は正確に地面を射抜き、着弾地点に土煙を巻き起こした。
「きゃあっ!?」
「な、何なの!?」
「これは……」
土煙の壁により互いの姿が見えなくなる中、突然の事態に戸惑うプリキュアに対し、ニジーは冷静さを取り戻して足を止める。彼は乱入者の方を向き邪魔された事への怒りを口にする。
「……何のつもりだアルカナシャドウ。ボクはまだ…!」
光線の射手の正体は、身の丈程の杖を片手に黒い衣装に身を包んだるるかだった。黙したままの彼女に変わり、傍に浮かんでいたマシュタンがその問いに答える。
「時間切れよ、ニジー。彼女が来るわ」
「…あの二人がやられたのか!?」
「……早く動かないと、わたし達も同じ末路を辿る事になる」
オーロラが向かっている事を知ったニジーは諦める様に顔を顰め、悪態を吐く。
「くそっ……!」
「もう! 助けてあげたんだからお礼くらい言いなさいよ!」
「いいよ、マシュタン。……帰りましょう」
「…………ああ」
土煙が晴れ二人が視界を取り戻した頃には、既にニジーの姿は無かった。
「……ニジーが居ない?」
「それに…さっきの攻撃は一体……」
「ポチ……?」
彼女達は目の前の相手が忽然と姿を消した事に加え、自分達を襲った謎の攻撃の存在に首を傾げる。とはいえ敵が居なくなったのも事実、そう考えて変身を解いたタイミングで、オーロラが到着した。
「二人共、無事?」
彼女の声を聞いた二人は勢い良く振り返り、笑顔で駆け寄っていく。
「先生!」
「オーロラ!」
「遅れてごめんなさい……って、ああもう、二人共傷だらけじゃないの」
オーロラは申し訳なさそうに謝罪しつつも二人の体に視線を走らせ、全身にある無数の小さな傷を発見する。男なら勲章と言っても良いが、中学生の女の子にはそうもいかない。
そう思案した彼女は直ぐに緑の光を放ち、治療を開始する。全身を包んだ光はあっという間に傷を修復していき、数秒後には傷一つ無い状態に戻した。
「…どう? 痛みはある?」
「わたしは大丈夫です」
「私も平気! これもオーロラの力?」
「ええ、その通り。この緑の光はケガや病気を治したり、壊れた物を修復したり出来るの」
「あんな殿も、何か直したい物があればいつでも言って欲しいのである」
「…じゃあ、その時はお願いしよっかな」
オーロラは治療を終えた所で自身も変身を解除し、改めて二人が持つミラールーペに目を向けた。
昨日までうんともすんとも言わなかったそれを二人が扱えたという事実に、包は満足気に目尻を緩める。
(ジェットを含めた四人の力が奇跡を起こした……って所か。良い感じだ)
「……どうしたの、包さん?」
「何でもない。それより二人共、今日はよく頑張ったな」
「勝てたのは包さんに教えて貰ったお陰だよ!」
「お……あんなは褒め上手だな」
「えへへ……あれ、みくる?」
いつものみくるなら飛び跳ねたりして喜びそうなものだが、今日は随分と静かだ。そうあんなが疑問符を浮かべていると、彼女はそそそ…、とゆっくり包の近くに寄っていく。
「……先生。わたし、今回は凄く頑張りました」
「……? ああ、そうだな」
「……で、ですから、その……」
みくるは両手の人差し指をくっ付けたりしながら、もじもじと話す。少ししてちょこちょこ、と歩いて包の傍まで来た彼女は、おずおずと頭を差し出した。
「…………んっ」
「み、みくる!?」
「……撫でろって…? どうしたんだ突然」
「だ、だって…最近は全然してくれなかったですし……」
「……いや、名探偵になったんだし、子供扱いするのも良くないと思って……」
「……わ、わたしだって、たまには褒められたい時位あります!」
「はいはい……分かったよ」
恥じらいながらそう叫ぶみくるに、包はしょうがないという風に肩を竦めたが、甘えたい年頃なのだろうと納得してその頭を優しく撫でた。
「……えへへ」
「みくる……」
彼の掌を嬉しそうに受け入れる姿を見て、あんなはまた、みくるの知らない一面を垣間見た気がした。少し前なら嫌だったそれも、今は少し嬉しかった。
「ポチタン殿も、今日は大活躍であったな」
「ポチ~……」
「良かったね、ポチタン」
ポチタンの方も、ネオンに褒められて照れる様に頭を掻いている。オトモ妖精の先輩に褒められて、彼も嬉しいのだろう。……そこでふと、彼女の頭に一つの疑問が浮かぶ。
「あっ……そうだ。ねぇ、包さん!」
「ん? 何だ、あんな」
「あっ……」
包はあんなに声を掛けられた事で撫でていた手を離す。みくるは掌の感触が離れた事に気付き、一瞬名残惜しそうな顔をしたが直ぐにハッとなり頭をぶんぶん振って気持ちをリセットし話を聞く姿勢を取る。
「もしかして、包さんには今日の事が分かってたの?」
「まさか。いつか役に立つ時が来るとは思ってたけど、こんなに早くその時が来るとは思っていなかった。そういうのは俺じゃなくて……まぁ、その話は良いか」
包はその疑問に対して未来なんて見えないと語り、少しの間遠くを見つめた後に手を叩いた。
「……さて! 話はこれ位にして。今日は何が食べたい?」
「…じゃあ、ブルーベリータルト!」
「わたしはミルフィーユ!」
「…………チュチュに寄って帰ろうか」
「「やったー!」」
万事解決、大団円を迎えたキュアット探偵事務所とは裏腹に、怪盗団ファントムのアジトの空気は重い。そうなった原因は、怒りを露わにするウソノワールと、ステージ上で彼からの罰を待つニジーの所為に他ならない。
「ニジー。お前は私の命令を無視した挙句、マコトジュエルを奪われた。そのお陰で、私のマコトジュエルを奪われ、アゲセーヌとゴウエモンの健闘も意味を失った」
「……ッ! も、申し訳ありません、ウソノワール様……!」
ニジーはウソノワールから放たれる重圧を受けて冷や汗を流し、謝罪の言葉のみを口にする。言い訳を述べてしまえば、負傷した他の二人に申し訳が立たなかったからだ。特に、アゲセーヌは今も生死の境を彷徨っている状況だった。
「ニジー……」
ステージにただ一人立ち竦む彼を、ゴウエモンは見ているだけしか出来なかった。瀕死のアゲセーヌを抱えて帰還した事をウソノワールが咎めなかったのは、その戦いの様子を全て中継してその激闘を見せたからだ。
だが、ニジーは違う。彼は己のプライドのため、名探偵プリキュアとの戦いを敢えてウソノワールには見せなかった。勝利すればサプライズになったであろうその行為も、ただ無様に敗走して来ただけという事実をウソノワールに示すだけに終わってしまったのである。
ニジーを庇えば、始末されるのはゴウエモンの方だ。
「ニジー……お前の役目は終わった」
最後のチャンスを無駄にした部下を見下して告げたその一言と共に、劇場のスポットライトが全てニジー一人に向けられ、ステージの床が音を立てて沈み始める。
「ひっ……!?」
「行け…奈落の底へ」
ニジーはその端正な顔立ちを恐怖に歪める。奈落に落ちるという事が何を意味するのか、それはファントムの面々にしか分からないが、彼の様子からそれが死よりも恐ろしい事だというのは明らかだった。
「待っ……ウソノワール様……うそっ、ウソノワール様…!?」
彼は必死にウソノワールの名前を呼び助命を乞うがまるで相手にされず、遂に体の半分がステージの下に隠れようとした時。
「お、お待ちください! とびっきりの情報があります! ぷ、プリキュアの一人、キュアアンサーは…『元の時代に帰る』と!」
「「……ッ!?」」
咄嗟に口から出た一言によって、ステージの沈下が停止する。ここが最後の瀬戸際だと内心で確信したニジーは、更に自分の考えを話した。
「お、恐らく…違う時代から来たのです」
「何……?」
「…ニジーの言っている事は本当。わたしも聞いたから」
それに引き続き、るるかもそう口にする。彼を助ける訳ではないが、ここで黙っているのも違うと考えての行動だった。
「
ウソノワールは呟くと、傍に置いた
『次のニュースです。本日怪盗団ファントムに盗まれた恐竜の化石が、無事に戻ってきました。事件を解決に導いたのは、今回もキュアット探偵事務所の名探偵―――』
「このブルーベリータルト、はなまるおいし~!」
「そうでしょ、あんな! パティスリーチュチュのスイーツは絶品なんだから!
う~ん…! ミルフィーユも最高…」
「ポチ~」
事務所に帰ってきた面々は、それぞれ好きなスイーツの味を楽しんでいた。あんなとみくるは先ほど口にした通り、包はティラミス、ネオンは今回プリンアラモードを、ジェットはショートケーキを選んでいた。
……ポチタンだけはミルクだったが、その材料は手に入れた三つのマコトジュエルであったため、彼は全く気にしていなかった。
「……ショートケーキも美味いな…」
「あー美味しい。やっぱティラミスは無限に行けるな」
「むむむ…溶けさえしなければソフトクリームを頼んでいたのであるが……む! 美味である!」
『やはり怪盗団ファントムある所にはキュアット探偵事務所あり! という事ですね。これで子供達も安心して楽しめるでしょう』
『そうですね…。彼らの活躍に今後も期待しましょう。……では、次のニュースです』
「……あ、そうだ。あんな!」
「ん~? 何、包さん?」
ティラミスを早々に平らげた包は、思い出したかの様にあんなに声を掛ける。
「学校、行ってみる気はないか?」
「……学校?」
「そう。そうすれば平日もみくると一緒に居られるし、友達も出来るかもしれないだろ?」
「……!」
「え……でも、お金とか…大丈夫?」
彼の提案に傍で聞いていたみくるは喜びで目を見開くも、あんなは学費の負担を心配する。しかし、それに対して彼は優しく微笑んだ。
「心配無用! 中学生の学費出すくらいわけないって!」
「(包の奴……)僕も、学校には行った方が良いと思う。身分証明になるし……人付き合いは探偵にとっても重要な事だからな」
「うむ。あんな殿の社交性ならば、すぐに友が沢山作れるであろう」
彼女の心配も何のその、と返す包をジェットとネオンがアシストする。……どうやら、あんなの悩みを知って気を利かせてくれた様だ。
「……じゃあ、お言葉に甘えて。学校に行く!」
「やった~! これからは学校でも一緒ね、あんな!」
「うん!」
こうして、あんなは私立まことみらい学園への編入を決めるのだった。
素敵な絵だね!(ポチ~!)
風景画家の彼女がどうして自画像を一枚だけ残したのか…?
早速調査してみよう!
名探偵のわたし達に任せて下さい!
次回、名探偵プリキュア!
『絵の謎を解き明かせ!』
その謎、キュアっと解決!