ジャポニアンデスヤマト(護衛艦) 作:荒馬艦長
エースコンバット8を見て思いつきました。
中央暦1643年8月
この年、日本国はグラ・バルカス帝国海軍による本土侵攻に直面した。
陸海空すべての自衛隊を動員した防衛作戦により、日本国はグラ・バルカス帝国海軍の主力を撃退することに成功する。
しかしその後、もはや通常の軍事的勝利を望めなくなったグラ・バルカス帝国海軍は、せめて日本国に政治的打撃を与えるべく、ナーハート王国へと進路を変更した。
ここに、ナーハート沖海戦が勃発する。
海上自衛隊による誘引と、陸上自衛隊による地対艦ミサイル攻撃により、グラ・バルカス帝国が誇る超弩級戦艦〈グレード・アトラスター〉は沈黙。
同艦は鹵獲され、一連の海戦は日本国の完全勝利に終わった。
だが、この鹵獲艦を巡り、日本国内では一つの秘密兵器建造計画が浮上する。
それが、ヤマト型護衛艦である。
大口径砲による重武装。
重厚な装甲。
それらを支える巨大な船体。
それは、いわば現代に無理やり甦らせた戦艦であった。
もちろん、この建造計画は海上自衛隊内で多くの議論を呼んだ。
「ミサイルとイージス艦の時代に、わざわざ戦艦を蘇らせるのか?」
「誰か、馬鹿馬鹿しいと思わなかったのか?」
「そもそも、これほど巨大な艦をどこで建造する?」
「大口径砲の製造技術など、失われて久しいぞ」
このように、時代遅れの戦艦復活に反対する声は少なくなかった。
しかし、ここは異世界である。
地球とはまったく異なる戦場環境が、この非常識な計画を後押しする面もあった。
「数百隻の帆船や旧式艦に、いちいちミサイルを使っていられるか?」
「砲弾一発あたりのコストパフォーマンスは、むしろ優秀ではないか?」
「建造技術については、鹵獲した〈グレード・アトラスター〉を解析すればよい」
これらの意見にも、それなりの説得力はあった。
かくして議論は議論を呼び、メディアもこの計画をこぞって取り上げた。
国民の関心も高まり、やがて国会でも議題に上がる。
賛否はさらに拡大し、日本国内は奇妙な熱気に包まれていった。
当初、この護衛艦計画は、鹵獲した戦艦〈グレード・アトラスター〉を解析し、その技術を応用して建造するというものだった。
つまり、内部システムこそ現代化されるものの、外見と基本構造は大和型戦艦のリブートに近い艦になる予定だったのである。
【ヤマト型護衛艦・初期計画案】
満載排水量:約7万2000t
全長:約263m
全幅:約38m
武装:
主砲 長砲身460mm三連装大口径砲×3基
副砲 長砲身155mm三連装砲×2基
舷側 5インチ速射砲×6基
Sea RAMミサイル発射器×2基
高性能20mm機関砲×4基
主砲は、鹵獲艦〈グレード・アトラスター〉の構造を解析して生産する計画だった。
副砲は陸上自衛隊の榴弾砲技術を応用し、舷側には海上自衛隊で運用実績のある5インチ速射砲を配置するなど、各部には既存装備の技術が多く流用されていた。
艦橋を含めた外観は、「威圧感のある見た目」を意識して設計されている。
これは異世界諸国に対する砲艦外交、すなわち「見せる抑止力」として機能することを期待されたためであった。
この段階では、ヤマト型護衛艦はあくまで純粋な水上艦として計画されていた。
そう。
この頃はまだ、海の上だけを走る予定だったのである。
計画が狂い始めたのは、この構想が世間に明るみに出てからだった。
まず、この時点までほぼ外様に近い扱いだった航空自衛隊が、計画に異を唱えた。
「海自はこちらが要望している空母計画を放っておいて、宇宙戦艦でも作るつもりなのか」
ある航空自衛隊幕僚が、遅々として進まない正規空母建造計画に痺れを切らし、ヤマト型護衛艦を皮肉ったのである。
この頃になると、ヤマト型護衛艦の存在意義を疑う声は、自衛隊の内外で多数派を占めつつあった。
国民やメディアも、当初の物珍しさから一転し、否定的な論調を強めていく。
戦艦を作るより、空母を整備した方がまだ現実的ではないか。
そのような意見が海上自衛隊内にも現れ始めた頃、計画は思わぬ転機を迎える。
ある日の防衛省会議にて、ヤマト型護衛艦の設計案を巡る議論が白熱した。
そもそも存在意義そのものを疑う声が多く、建造肯定派は窮地に立たされていた。
会議は停滞し、誰もが決定打を欠いていた。
そんな中、会議の進まなさに嫌気が差していた三津木という男が、冗談めかしてこう言ったという。
「難儀なものですね。これが単なる海上兵器の枠から飛び出してくれれば、建造も承認されたのでしょうが」
幹部の一人が眉をひそめた。
「どういう意味だ?」
三津木は、半ば投げやりに答えた。
「いや、例えばですよ? これが陸上も走れる水陸両用戦艦だったら、面白いなと」
その瞬間。
主に設計案を担当していた幹部の一人が、雷に打たれたように顔を上げた。
「それだ」
「は?」
「それだ!!」
「いや、今のは冗談で──」
だが、遅かった。
設計担当の幹部は、まさかの天啓を得たかのように席を立つと、その場にあった資料の裏紙を数枚貼り合わせ、即興で新たな設計案を書き始めた。
その結果、ヤマト型護衛艦を陸上戦艦としても運用するという、とんでもない第二設計案が誕生した。
【ヤマト型護衛艦・第二計画案】
満載排水量:約10万t以上
全長:約400m
全幅:約50m
武装:
主砲 長砲身460mm三連装大口径砲×3基
副砲 長砲身155mm三連装砲×2基
舷側 5インチ速射砲×6基
Sea RAMミサイル発射器×2基
高性能20mm機関砲×4基
機関:
ガスタービンエンジン
水上推進用プロペラ×4軸
超大型履帯ユニット×3基
まるで子供の妄想である。
あるいは、ゲームに登場する突拍子もないビックリドッキリメカと言うべきか。
しかしそれは、大真面目な設計案として会議の場に提出された。
「つまり、これは陸上戦艦だと?」
「馬鹿げている。ふざけているのか!?」
「そもそも、どうやって陸上を走らせる!」
「技術的ハードルが高すぎる!」
「コストも洒落にならんぞ!」
「国民をどうやって納得させるつもりだ!?」
当然、会議の幹部たちは猛反対した。
しかし、半ば言い出しっぺとなってしまった三津木は、即興の設計案を前にしてしばらく沈黙した後、妙に真面目な顔で呟いた。
「……これ、もっと重量を分散させれば、不可能ではないのでは?」
『は?』
会議室の空気が凍った。
だが、その後の検討により、三津木と設計担当幹部らのトンデモ案は、驚くべきことに“説得力のある形で”採用されてしまう。
その後、設計案はさらに改良された。
仮称ヤマト型護衛艦は、陸上走行も可能な水陸両用戦艦として再設計される。
まず最優先されたのは、重量分散機構の整備だった。
主履帯ユニットは前後に4基配置され、単体で方向転換が可能な構造とされた。
さらに副履帯ユニットを左右に8基ずつ搭載し、巨体の重量を広範囲に分散する。
シミュレーションの結果、山岳地帯や軟弱地盤を除けば、現実的な範囲で陸上走行が可能であることが示された。
ただ、問題は山積みだった。
舗装道路は当然のように粉砕される。
橋梁はまず耐えられない。
都市部で運用すれば、戦闘前に都市計画そのものが終わる。
だが、それらはすべて「運用場所を限定する」「基本的には敵地で運用すればいい」という言葉で片づけられた。
次に取りかかったのは、履帯ユニットの試作である。
試験場には、クワ・トイネ公国に設置された自衛隊基地周辺が選ばれた。
主履帯ユニットと副履帯ユニットの走行試験が行われ、少なくとも技術的には大きな問題がないことが確認される。
その間、呉の造船所ではヤマト型護衛艦の船体建造が始まっていた。
ヤマト型護衛艦は、巨大な船体を複数のユニットに分割できるよう設計されていた。
もし作戦地域が上陸に適さない場合は、いったん分解し、輸送艦や特殊輸送車両によって再展開することも想定されていた。
もはや護衛艦なのか、戦艦なのか、陸上兵器なのか、移動要塞なのか、誰にも分からなくなっていた。
ちなみに、国民やメディアは、この兵器が陸上戦艦に変更されたことについて、完全に理解が追いついていなかった。
だがその後、自衛隊の公式チャンネルが大真面目な試験映像を公開したことで、状況は変わる。
巨大な履帯ユニットが地面を踏み締める。
鋼鉄の船体模型が、大地の上をゆっくりと移動する。
その映像を見た国民は、批判するより先に沈黙した。
そして、しばらくしてからこう思った。
──本当に作るのか、これを。
やがて世論は、反対から困惑へ、困惑から興味へと変化していく。
この超兵器は、本当に実現するのか。
国民の関心は、いつしかその一点に集まりつつあった。
そして、二年後。
この頃、グラ・バルカス帝国との戦争は継続していたものの、戦況は事実上の休戦状態に近づいていた。
日本国がレイフォルを奪還した後、大規模な戦闘はほとんど発生していなかったのである。
そんな中、ヤマト型護衛艦はついに完成した。
そして、就役を迎えた。
そう、迎えてしまったのである。
結論から言えば、すべての技術的ハードルは解決されてしまった。
ヤマト型護衛艦一番艦〈ヤマト〉は、処女航海においてロデニウス大陸沿岸部へ上陸。
そのまま大地を踏み荒らしながら二十日にわたって行動し、各種戦闘訓練を完了した。
ちなみに、動力は原子力になっていた。
さらに随伴兵器として、陸上イージス艦〈イブキ〉〈クラマ〉も就役しており、陸上艦隊としての体制は整いつつあった。
かくして、このトンデモおバカ超兵器は、ついに実戦の時を迎える。
それは、グラ・バルカス帝国を全面降伏へ追い込む連合軍の一大作戦。
作戦名──『ヤマト作戦』。
ヤマト型護衛艦〈ヤマト〉は、その要として投入されることになる。
後世の軍事史家は、この兵器についてこう評した。
陸上の怪物。
技術者の悪ノリ。
そして、日本国が異世界に適応しすぎた結果である、と。