ジャポニアンデスヤマト(護衛艦)   作:荒馬艦長

1 / 2
ネタです。
エースコンバット8を見て思いつきました。


前編

中央暦1643年8月

 

 この年、日本国はグラ・バルカス帝国海軍による本土侵攻に直面した。

 陸海空すべての自衛隊を動員した防衛作戦により、日本国はグラ・バルカス帝国海軍の主力を撃退することに成功する。

 しかしその後、もはや通常の軍事的勝利を望めなくなったグラ・バルカス帝国海軍は、せめて日本国に政治的打撃を与えるべく、ナーハート王国へと進路を変更した。

 ここに、ナーハート沖海戦が勃発する。

 海上自衛隊による誘引と、陸上自衛隊による地対艦ミサイル攻撃により、グラ・バルカス帝国が誇る超弩級戦艦〈グレード・アトラスター〉は沈黙。

 同艦は鹵獲され、一連の海戦は日本国の完全勝利に終わった。

 だが、この鹵獲艦を巡り、日本国内では一つの秘密兵器建造計画が浮上する。

 

 それが、ヤマト型護衛艦である。

 

 大口径砲による重武装。

 重厚な装甲。

 それらを支える巨大な船体。

 それは、いわば現代に無理やり甦らせた戦艦であった。

 もちろん、この建造計画は海上自衛隊内で多くの議論を呼んだ。

 

「ミサイルとイージス艦の時代に、わざわざ戦艦を蘇らせるのか?」

「誰か、馬鹿馬鹿しいと思わなかったのか?」

「そもそも、これほど巨大な艦をどこで建造する?」

「大口径砲の製造技術など、失われて久しいぞ」

 

 このように、時代遅れの戦艦復活に反対する声は少なくなかった。

 しかし、ここは異世界である。

 地球とはまったく異なる戦場環境が、この非常識な計画を後押しする面もあった。

 

「数百隻の帆船や旧式艦に、いちいちミサイルを使っていられるか?」

「砲弾一発あたりのコストパフォーマンスは、むしろ優秀ではないか?」

「建造技術については、鹵獲した〈グレード・アトラスター〉を解析すればよい」

 

 これらの意見にも、それなりの説得力はあった。

 かくして議論は議論を呼び、メディアもこの計画をこぞって取り上げた。

 国民の関心も高まり、やがて国会でも議題に上がる。

 賛否はさらに拡大し、日本国内は奇妙な熱気に包まれていった。

 当初、この護衛艦計画は、鹵獲した戦艦〈グレード・アトラスター〉を解析し、その技術を応用して建造するというものだった。

 つまり、内部システムこそ現代化されるものの、外見と基本構造は大和型戦艦のリブートに近い艦になる予定だったのである。

 

【ヤマト型護衛艦・初期計画案】

満載排水量:約7万2000t

全長:約263m

全幅:約38m

武装:

主砲 長砲身460mm三連装大口径砲×3基

副砲 長砲身155mm三連装砲×2基

舷側 5インチ速射砲×6基

Sea RAMミサイル発射器×2基

高性能20mm機関砲×4基

 

 主砲は、鹵獲艦〈グレード・アトラスター〉の構造を解析して生産する計画だった。

 副砲は陸上自衛隊の榴弾砲技術を応用し、舷側には海上自衛隊で運用実績のある5インチ速射砲を配置するなど、各部には既存装備の技術が多く流用されていた。

 

 艦橋を含めた外観は、「威圧感のある見た目」を意識して設計されている。

 これは異世界諸国に対する砲艦外交、すなわち「見せる抑止力」として機能することを期待されたためであった。

 この段階では、ヤマト型護衛艦はあくまで純粋な水上艦として計画されていた。

 

 そう。

 

 この頃はまだ、海の上だけを走る予定だったのである。

 

 計画が狂い始めたのは、この構想が世間に明るみに出てからだった。

 まず、この時点までほぼ外様に近い扱いだった航空自衛隊が、計画に異を唱えた。

 

「海自はこちらが要望している空母計画を放っておいて、宇宙戦艦でも作るつもりなのか」

 

 ある航空自衛隊幕僚が、遅々として進まない正規空母建造計画に痺れを切らし、ヤマト型護衛艦を皮肉ったのである。

 この頃になると、ヤマト型護衛艦の存在意義を疑う声は、自衛隊の内外で多数派を占めつつあった。

 国民やメディアも、当初の物珍しさから一転し、否定的な論調を強めていく。

 

 戦艦を作るより、空母を整備した方がまだ現実的ではないか。

 

 そのような意見が海上自衛隊内にも現れ始めた頃、計画は思わぬ転機を迎える。

 ある日の防衛省会議にて、ヤマト型護衛艦の設計案を巡る議論が白熱した。

 そもそも存在意義そのものを疑う声が多く、建造肯定派は窮地に立たされていた。

 会議は停滞し、誰もが決定打を欠いていた。

 そんな中、会議の進まなさに嫌気が差していた三津木という男が、冗談めかしてこう言ったという。

 

「難儀なものですね。これが単なる海上兵器の枠から飛び出してくれれば、建造も承認されたのでしょうが」

 

 幹部の一人が眉をひそめた。

 

「どういう意味だ?」

 

 三津木は、半ば投げやりに答えた。

 

「いや、例えばですよ? これが陸上も走れる水陸両用戦艦だったら、面白いなと」

 

 その瞬間。

 主に設計案を担当していた幹部の一人が、雷に打たれたように顔を上げた。

 

「それだ」

「は?」

「それだ!!」

「いや、今のは冗談で──」

 

 だが、遅かった。

 設計担当の幹部は、まさかの天啓を得たかのように席を立つと、その場にあった資料の裏紙を数枚貼り合わせ、即興で新たな設計案を書き始めた。

 その結果、ヤマト型護衛艦を陸上戦艦としても運用するという、とんでもない第二設計案が誕生した。

 

【ヤマト型護衛艦・第二計画案】

満載排水量:約10万t以上

全長:約400m

全幅:約50m

武装:

主砲 長砲身460mm三連装大口径砲×3基

副砲 長砲身155mm三連装砲×2基

舷側 5インチ速射砲×6基

Sea RAMミサイル発射器×2基

高性能20mm機関砲×4基

機関:

ガスタービンエンジン

水上推進用プロペラ×4軸

超大型履帯ユニット×3基

 

 まるで子供の妄想である。

 あるいは、ゲームに登場する突拍子もないビックリドッキリメカと言うべきか。

 しかしそれは、大真面目な設計案として会議の場に提出された。

 

「つまり、これは陸上戦艦だと?」

「馬鹿げている。ふざけているのか!?」

「そもそも、どうやって陸上を走らせる!」

「技術的ハードルが高すぎる!」

「コストも洒落にならんぞ!」

「国民をどうやって納得させるつもりだ!?」

 

 当然、会議の幹部たちは猛反対した。

 しかし、半ば言い出しっぺとなってしまった三津木は、即興の設計案を前にしてしばらく沈黙した後、妙に真面目な顔で呟いた。

 

「……これ、もっと重量を分散させれば、不可能ではないのでは?」

『は?』

 

 会議室の空気が凍った。

 だが、その後の検討により、三津木と設計担当幹部らのトンデモ案は、驚くべきことに“説得力のある形で”採用されてしまう。

 

 その後、設計案はさらに改良された。

 

 仮称ヤマト型護衛艦は、陸上走行も可能な水陸両用戦艦として再設計される。

 まず最優先されたのは、重量分散機構の整備だった。

 主履帯ユニットは前後に4基配置され、単体で方向転換が可能な構造とされた。

 さらに副履帯ユニットを左右に8基ずつ搭載し、巨体の重量を広範囲に分散する。

 シミュレーションの結果、山岳地帯や軟弱地盤を除けば、現実的な範囲で陸上走行が可能であることが示された。

 

 ただ、問題は山積みだった。

 

 舗装道路は当然のように粉砕される。

 橋梁はまず耐えられない。

 都市部で運用すれば、戦闘前に都市計画そのものが終わる。

 だが、それらはすべて「運用場所を限定する」「基本的には敵地で運用すればいい」という言葉で片づけられた。

 

 次に取りかかったのは、履帯ユニットの試作である。

 試験場には、クワ・トイネ公国に設置された自衛隊基地周辺が選ばれた。

 主履帯ユニットと副履帯ユニットの走行試験が行われ、少なくとも技術的には大きな問題がないことが確認される。

 

 その間、呉の造船所ではヤマト型護衛艦の船体建造が始まっていた。

 ヤマト型護衛艦は、巨大な船体を複数のユニットに分割できるよう設計されていた。

 もし作戦地域が上陸に適さない場合は、いったん分解し、輸送艦や特殊輸送車両によって再展開することも想定されていた。

 

 もはや護衛艦なのか、戦艦なのか、陸上兵器なのか、移動要塞なのか、誰にも分からなくなっていた。

 

 ちなみに、国民やメディアは、この兵器が陸上戦艦に変更されたことについて、完全に理解が追いついていなかった。

 だがその後、自衛隊の公式チャンネルが大真面目な試験映像を公開したことで、状況は変わる。

 

 巨大な履帯ユニットが地面を踏み締める。

 鋼鉄の船体模型が、大地の上をゆっくりと移動する。

 その映像を見た国民は、批判するより先に沈黙した。

 

 そして、しばらくしてからこう思った。

 

 ──本当に作るのか、これを。

 

 やがて世論は、反対から困惑へ、困惑から興味へと変化していく。

 この超兵器は、本当に実現するのか。

 国民の関心は、いつしかその一点に集まりつつあった。

 

 そして、二年後。

 この頃、グラ・バルカス帝国との戦争は継続していたものの、戦況は事実上の休戦状態に近づいていた。

 日本国がレイフォルを奪還した後、大規模な戦闘はほとんど発生していなかったのである。

 

 そんな中、ヤマト型護衛艦はついに完成した。

 

 そして、就役を迎えた。

 

 そう、迎えてしまったのである。

 

 結論から言えば、すべての技術的ハードルは解決されてしまった。

 

 ヤマト型護衛艦一番艦〈ヤマト〉は、処女航海においてロデニウス大陸沿岸部へ上陸。

 そのまま大地を踏み荒らしながら二十日にわたって行動し、各種戦闘訓練を完了した。

 

 ちなみに、動力は原子力になっていた。

 

 さらに随伴兵器として、陸上イージス艦〈イブキ〉〈クラマ〉も就役しており、陸上艦隊としての体制は整いつつあった。

 かくして、このトンデモおバカ超兵器は、ついに実戦の時を迎える。

 それは、グラ・バルカス帝国を全面降伏へ追い込む連合軍の一大作戦。

 

 作戦名──『ヤマト作戦』。

 

 ヤマト型護衛艦〈ヤマト〉は、その要として投入されることになる。

 後世の軍事史家は、この兵器についてこう評した。

 

 陸上の怪物。

 技術者の悪ノリ。

 

 そして、日本国が異世界に適応しすぎた結果である、と。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。