ルシフェルくんちゃんの王国日記   作:Revak

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第1話

 

 DMMORPG、ユグドラシル。

 一世を風靡した超有名ゲームで、男、○○もこのゲームをプレイしてた。

 

 そのユグドラシルの九つの世界の内の一つ、ヘルヘイムのある荒野である少女が飛んでいた。

 

 身長は百五十五センチ。紫色の髪と瞳をしている小柄な少女だ。

 黒い何かしらの魔物の皮をなめしたコートを着ている。コートの下は全裸。

 指輪は十個つけているが課金で見得なくしている。

 

 顔つきは可愛い系。背中からは黒い翼が一対生えている。堕天使の翼だ。

 

 少女、名をルシフェルは光系の魔法に特化したエレメンタリストであり速度に特化した者でもあった。

 本気で飛べば逃げきれない相手は居ないという自負がある。例えワールドチャンピオン相手でも逃げ出せる実績を持っていた。流石にワールドエネミーは無理だが。

 

「はー、退屈」

 

 ルシフェルはpkをする側のプレイヤーで、気が向いたらそこらを歩いている初心者を襲いに行く。

 まぁ時折相手の戦力を見誤る時もあり返り討ちに会うこともあるが、勝率は四割と言ったところだろう。勿論タイマンでならというのが着くが。

 

 そんなルシフェルは誰もいない荒野を一人寂しく飛んでいた。

 

 殆どのプレイヤーはミズガルズやアルフヘイムに行きヘルヘイムに居るプレイヤーは殆ど居ない。

 ルシフェルは騒がしいところが苦手なのでこうして荒野に居るのだ。

 

 そしてプレイヤーもいないためルシフェルは一人寂しく飛んでいる訳だ。

 

 そうして世界が終わる時間になり──ルシフェルは己の目に映ったモノを見て己が目を疑った。

 

「星空だ」

 

 目に映るのは眩いばかりに輝く月と星々。時折雲によって隠されている。

 

 ヘルヘイムの空では決してあり得ない景色であり、現実の汚染が進んだ世界でも見れることはない景色だ。

 

 ルシフェルは思わず空に手を伸ばした。

 

 

 そうして空を見上げる事数十分。ルシフェルはようやく正気を取り戻す。

 

「ここは、どこだ?」

 

 そう言いながらルシフェルは己の小さな胸を揉んだ。

 

 胸を揉んでもBANどころか警告すら来ないことにルシフェルはここがユグドラシルとは離れた異郷であることを実感する。

 ならばどうするべきか、とルシフェルは考える。

 

 己一人で楽しくやりたいが、この世界の情勢がそれを許さない可能性もある。

 

 ソロプレイで一人楽しくやれてたのはゲームだからだ。現実で一人生きていく事なんてできるわけがない。

 どこかに属さなければならないが、それは面倒だとも考えつつルシフェルは空を飛んだ。

 

 生まれて初めての生身での空にルシフェルは笑いながら飛ぶのだった。

 

 

 

 

 

 ■

 

 

「もう朝じゃん。受ける」

 

 数時間空を飛び、雲の上まで飛んだりし宇宙ぎりぎりまで行くなどしてたルシフェルはついに夜明けが来たことに気づいた。

 

「近くに都市かなんかないかなー」

 

 ルシフェルはそう思いながら地上に降りて飛んで行く。

 地上が良く見えるが人にぶつかったりはしない程度の高度を保ちながら飛んで行くと村が見えた。

 

 村に行くと丁度何かイベントが行われていた。

 

 騎士の格好をした者たちが無抵抗の村人を殺していたのだ。

 

 よっしゃ混じったろと思いルシフェルは空から騎士の頭を光線の魔法<熱光線>(ヒートレイ)で貫いた。

 本来は赤い魔法だが課金でエフェクトを変え紫色にしている。

 

 そのままルシフェルは無詠唱化した魔法で騎士たちを数人殺した。

 

 すると騎士と村人の両方が光線の発生源であるルシフェルを見上げた。

 

「……天使様……!」

 

 村人の一人がそう呟いた。

 それに対しルシフェルはひらひらと手を振り答えた。

 

「そうだよー、天使だよー、君たちを助けに来たんだー」

 

 ルシフェルはそう笑いをこらえながら言った。

 それに対し騎士側が反乱した。

 

「天使様などではない! ただの翼の生えた亜人だ! 空を飛んでいるのなら矢で打ち殺せ!」

 

 そう叫んだのはロンデスという騎士だ。

 

「うるさい」

 

 ルシフェルはそう言うと熱線でロンデスの頭を貫き殺した。

 

「まぁいいや。全員死ね」

 

 特殊技術(スキル)で騎士全員を対象にし、ルシフェルは空から光線の雨を降らし、バハルス帝国の騎士に扮するスレイン法国の騎士を全員殺した。

 

 ルシフェルは地上に降りる。

 

 降りると村人たちが数人近寄り頭を下げた。

 

「天使様、我々を救ってくださりありがとうございます……!」

 

 その言葉にルシフェルは気を良くした。

 

「うんうん、それじゃあご飯ちょうだい? おなかすいてるんだ」

 

 ルシフェルは種族的に飲食不要だが出来ない訳ではない。食べてもバフは得られないが。

 

 そうしてルシフェルは村長の家に行き飯を喰らうのだった。

 

 

 

 

 

 ■

 

 食事を終え、食べながら聞いた情報をルシフェルは村人の家の屋根の上で空を見上げながら整理する。

 

(ユグドラシルとはまるで関係のない世界……この世界でどう生きていくか)

 

 ユグドラシルのようにどこにも属さぬ一匹狼的な立ち回りは出来ないだろう。

 やろうと思えば食事睡眠呼吸疲労無効なので一人で生きていけるが中の人の人間は孤独に耐えられないだろう。

 ならばどこかに属する必要があるが、どこに行くかが問題だ。

 

(名前的に帝国と法国は嫌だな。となると王国かなぁ)

 

 法国は宗教国家という事でルシフェルには忌避間を抱かせるし、帝国はだいたい帝国と名のつく国は悪いことしてる(偏見)ので無し。

 となるとこの国であるリ・エスティーゼ王国ぐらいのものだろうかと思うがどうやって国に属するのかが問題だ。

 一般人、いやどこから現れたかもわからぬ小娘がいきなり国に属せるわけがないのである。

 

 しかし自分は強いのか、という問題が湧いてくる。

 ユグドラシルでは数多いるレベル百プレイヤーに過ぎなかったがこの世界ではどうなのか、と。

 帝国騎士の中にレベル八十以上の者なんていなくてレベル五ぐらいが最大でしかなかった。

 だがここがはじまりの大地的な場所で敵味方のレベルが低いだけかもしれないとも考えられる。

 まぁなるようになれだ、とルシフェルは思考を放棄した。

 

 そうこう考えていると夕方になり、「天使様!」という声によってルシフェルは下に降りた。

 

「何?」

「実は、戦士風の者たちが近づいてきてるようで、どう対処したものかと……」

「ふぅん。僕が蹴散らすからお前らは隠れといて。それでいいよ」

「わかりました。私たちは村の倉庫に避難させていただきます」

 

 そう言うと村長は去っていった。

 

 ルシフェルは村の中央に移動し空に浮いて空を見る。

 

 待つことしばし。馬の音が聞こえてきてルシフェルは大地に立った。

 

 向こう側から戦士団がやってきた。

 

 その頭目、ガゼフ・ストロノーフは剣を抜いてルシフェルに突撃してきた。

 

 突撃に対しルシフェルは空に飛ぶことで回避した。

 

「亜人! 村人をどこへやった!」

 

 ガゼフはそう叫んだ。戦士団の者で弓を持つ者は弓を構え始めた。

 

「さぁねぇ、なんていうとお前は嫌がるかな」

 

 そうルシフェルは不敵にほほ笑んだ。

 

「貴様……!」

 

 それに対しガゼフは怒り剣を強く握る。

 

「戦士長! 落ち着いて周囲を見てください!」

 

 そう副長が叫んだ事でガゼフは少し冷静さを取り戻し周囲を見た。

 見れば──襲撃された村だというのにあまりにも襲撃の跡がなかった。

 

「これは……お前は何者なんだ?」

 

 ガゼフは冷静になって良く頭でそう問いかけた。

 ルシフェルはそれに対し面白くない、とつぶやきつつ地上に降りた。

 

「僕はこの村が襲われてたから助けただけだよ。村人は今倉庫に避難してる」

「なんだと? お前……いや貴女が村を助けたと?」

 

 その言葉にガゼフたちは信じられないと思う。

 亜人種が人間種を助けるなどおとぎ話の中の話だ。ゴブリンの英雄の話ぐらいでしか聞かない。

 

「そうだよー、信じられないなら僕が君たち殺すけど」

 

 そうニヤリとルシフェルは笑みを浮かべた。

 

「……まずは村人の安否確認をさせてもらっていいか?」

「その前にお前ら名乗れよ。何者?」

 

 その言葉に戦士団の者たちは嫌な顔をしながらもガゼフは冷静に答えた。

 

「私はリ・エスティーゼ王国王国戦士長ガゼフ・ストロノーフ。エ・ランテル周辺の村々を襲う帝国の騎士を討伐すべく動く者だ」

「王国所属か。それを示す物は?」

「この鎧が証明となる」

 

 そうガゼフは己の鎧を示した。

 鎧のプレートアーマーには王国の紋章が刻んであったがルシフェルにそんなことはわからない。

 

「ふぅん。まぁいいや。一応それが本当だとして……一人だけね、他の奴らはここで待機」

 

 その言葉に副長がむっとする。

 

「不服? なら村を襲撃した奴らの仲間として僕がお前ら全員殺してもいいけど」

 

 そうルシフェルは笑みを浮かべた。むしろバッチこいとばかりに。

 それに対し戦士団は嫌な顔をする。なんで助けに来た村に殺されなければならないんだ、と。

 

「わかった。私が確認しに行こう」

 

 そう言うとガゼフは馬から降り、剣を収めた。

 

「ん、いいよ。ついてきて」

 

 そうしてルシフェル案内の元倉庫に向かう。

 五分も歩けば付き、ルシフェルが声をかけると倉庫から村長が出て来た。

 

「天使様、もう大丈夫なのですか?」

「いや、まだだよ。このストロガノフが村人を見たいっていうから連れてきた」

 

「お初にお目にかかる、村長。私は王国戦士長ガゼフ・ストロノーフだ」

 

 その言葉に村長はあの戦士長、と目を点にして驚いた。

 

「これで満足?」

 

 ルシフェルはつまらなさそうに腕を頭の後ろに組んでいる。

 

「あぁ。村を救ってくれて感謝する」

 

 そうガゼフは頭を下げた。

 

「……ちえ」

 

 戦いになったら面白かったのに、と思いつつルシフェルとガゼフは村の中央に戻っていった。

 念のため村人は倉庫に避難させたままである。

 

 村の広場に戻ると戦士団の一人が駆け寄ってきた。

 

「戦士長! 村を被うように複数の人影が!」

 

 また厄介事かい。ルシフェルは流石にため息を吐いた。

 

 そうして適当な空き家に入り窓から外を見る。

 

「あれは……天使か。面倒だね」

 

 ルシフェルがそう呟くとガゼフが反応する。

 

「貴女はあのモンスターについて知っているので?」

「……簡単な事だけだよ。天使や悪魔系モンスターは魔法効果が着いた武器出ないと攻撃が通り難いとか、それぐらい」

「それだけでも値千金の情報だ。感謝する」

 

 その言葉に背筋がぞわっとくるものをルシフェルは感じた。

 自分はそんな感謝される人間(今は堕天使だが)ではないのだ、と。

 

「貴女の名をお聞きしてもいいだろうか」

「ルシフェルだけど、それが何?」

「そうか。ルシフェル殿。良ければ雇われないか? 報酬は望む額だそう」

 

 その言葉にルシフェルは眼を点にした。

 

 ガゼフも何も考えず言っている訳ではない。

 帝国騎士を村に殆ど損害を与えず殺しきった相当な実力を持つ亜人種。味方に引き入れれば相当心強いだろう。

 

 それに対しルシフェルも考える。カモがネギ背負ってやって来たぞ、と。

 これは好都合だ。ここでじゃあ奴らぶっ殺すから王国に入れてと言えば入れてくれるだろうとうきうきでルシフェルは口を開いた。

 

「いいよ。報酬はお金だけじゃなくてさ、王国に雇われたいから口利きしてよ、凄腕の魔法詠唱者(マジック・キャスター)が居るって」

 

 ルシフェルは自分がどれだけ強いかわからないがそれでもあの程度の名前も知らない天使程度の集団に負ける気はしなかった。

 

「……感謝する! 必ずや王国に置いて相応の地位を持つよう王に進言しよう!」

 

 そう言うとガゼフはルシフェルの手を握って頭を下げた。

 

 それを見たルシフェルは男が頭下げんなよ、と思いつつ適当に相槌を打った。

 

 

 

 ■

 

 作戦は決まった。

 馬鹿正直に戦士団が敵陣に最初に突っ込み、敵の包囲網を縮ませる。

 その後空からルシフェルが強襲するというものだ。

 ルシフェルの戦闘力頼りの作戦だがほかならぬルシフェル本人がそれで問題ないと言った為実行されることになった。

 

 

 そしてルシフェルは空から戦士団が突撃するのを見ていた。

 夕方になりつつあり暗視能力がない種族は視界に問題が生じ始めるだろうが天使系種族は闇視(ダークヴィジョン)という暗視能力を持つ為問題はない。

 

 戦士団が一塊になり防御の陣営で構える。

 そうして包囲が縮まったところで空からルシフェルが強襲した。

 

 地面に着弾と同時に四人の頭を光線で貫き殺害。

 

「新手だと?!」

 

 それにスレイン法国陽光聖典隊長ニグンは驚愕の声を上げる。

 

「死ね──<魔法集団化・(マスターゲティング)<熱光線>(ヒートレイ)

 

 陽光聖典の隊員の数だけ光球が浮かぶ。

 それらがレーザーとなり陽光聖典隊員を一人残らず頭部を貫き殺した。

 

「馬鹿な?! こんなことがあるか?! 亜人一人に我らが負けるなど?!」

 

 だがこれが現実だ。

 レベル百とレベル二十代にも届かぬ雑兵以下だとこうもなろう。

 

「うるさい」

 

 ルシフェルはそう言うとニグンの胸を光線で貫き殺した。

 

 その光景を見てガゼフはこれほどの実力者を味方に引切れれてよかったと、心から安堵した。

 

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