ルシフェルくんちゃんの王国日記   作:Revak

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第2話

 

 翌日。

 ルシフェルは一人村の空き家で目を覚ました。

 

 他の者たち、ガゼフたちは外で野営だ。村の家に空きが無いので泊るところあまりなかった。

 と言っても村に死者が多少は出たので空き家があったので数人は泊まることが出来たがそれだ格差が出るとガゼフが思い辞めたのだ。

 ルシフェルは村長からぜひ家に泊ってくれと言われたので家で寝た。

 

 外に出るとガゼフが声をかけてくる。

 

「ルシフェル殿。先日は感謝する」

「終わったことだからもういいよ。それで今日にはもう出るの?」

「あぁ。朝食を終えたらすぐに出発し、一度エ・ランテルに行く予定だ」

「ふうん。わかった。僕は適当に村長のところで朝飯食べてくる」

「ああ。食べ終えたらこっちに来てくれ」

「はいよー」

 

 そう言うとルシフェルは村長の家まで歩いて行った。

 

 

 恐ろしい人物だ、とガゼフはルシフェルを思う。

 子供のような容姿に子供のような言動をする超越者。

 自分よりも恐らくははるかに強い魔法詠唱者(マジック・キャスター)を前に緊張しないとは嘘でも言えない。

 だからこそ、この者を王国の味方に付けれれば国に未来が生まれるとガゼフは考える。

 どうにかしなければ、とガゼフは気合を入れた。

 

 

 

 ■

 

 朝一にカルネ村を出たことで戦士団はエ・ランテルに夕方には着いた。

 

「ここがエ・ランテルか」

 

 ルシフェルはゴーレムの馬に乗りながら呟いた。

 背中の堕天使の翼は収納している。ガゼフから人目につくと騒ぎになるからと言われたので形態変化の応用で隠したのだ。

 

「これから都市長の館に向かう」

 

 隣に馬に乗っているガゼフが言った。

 

「おけー。お偉いさんとは僕会うの?」

「ああ。出来れば会って欲しい」

「わかった。しかし人間は大変だねぇ。コネとか根回しとか」

「はは、確かに大変だがそれでもしなければならいのだ」

 

 そうガゼフは苦笑した。

 

 そうしてエ・ランテルを進むことで夜の少し前には都市長のガゼフとルシフェルは到着した。

 都市長の家の門番にガゼフが話すとすぐに門が開き、中に入れる。

 

 中に入るとすぐに都市長のパナソレイ・グルーゼ・デイ・レッテンマイアが出てくる。

 少し、いやだいぶ太った男でルシフェルは眉を潜めた。

 だがその外見には見合わぬ目の鋭さを持つ男であった。

 

「ストロノーフ君。よくぞ無事で帰ってきてくれた。それで、そちらのお嬢さんは?」

「パナソレイ殿。こちらの方は私を救ってくれた魔法詠唱者(マジック・キャスター)のルシフェル殿だ」

「よろしく、貴族のおっさん」

 

 ルシフェルがそう言ったことにガゼフは驚き勇めようとするがパナソレイは気にした様子はなかった。

 

「はは、確かに私は歳を取っているからね……それで、詳しい話を聞きたい。夕食はまだだろう? ともにとろうじゃないか」

 

 

 そうしてルシフェルとガゼフ、パナソレイの三人で食事をとりつつ陽光聖典を殺して手に入れたことを話すのだった。

 

 

 

 

 ■

 

 一週間後。

 

 ルシフェルは王城に来ていた。

 一週間馬に乗りっぱなしで流石のルシフェルも疲れてきた。肉体的疲労とは無縁の種族だが精神的な疲れというやつだ。

 

 王城に入るとルシフェルは怪訝な目で見られる。

 なんで平民が、なんだこいつという目線でありルシフェルは思わず魔法でぶち殺しかけたがガゼフが諫める事でどうにか矛を収めた。

 

 そうして客室に入るとそこで暫く待ってくれという事で待つことになりルシフェルは茶菓子を食べながら待っていた。

 

(しかしこの部屋豪華だな)

 

 ユグドラシルのギルド拠点やクエスト上訪れる城の客室などとは比べ物にならないが、リアルの基準で見たら豪華絢爛な部屋である。

 出されている紅茶と茶菓子も美味いし、現実ではありえない美食だ。

 

 ルシフェルは現実の栄養食なんて二度と食いたくねぇと思いつつクッキーを頬張った。

 

 そうしていると部屋にノックがかかる。

 

「どうぞー」

 

 軽い返事を出すとミスリルの鎧を着た者がドアを開け、少女が入ってきた。

 

 その少女のルシフェルの第一印象は綺麗だな、という物だった。

 唇は微笑を浮かべた桜の花の如き、色素は薄いが健康的な色合いをしている。深みのある青の瞳はブルーサファイアを思わせ、柔らかい色を湛えている。

 そして特徴的なのは金の輝きを放つ長い金髪だ。貴族でなければ手入れが面倒な長く綺麗な金髪を有している。

 だが最大の特徴はその美貌だ。

 ゲームでもまれにしか見ない美しさにリアルのアイドルなんかは比べるのもおこがましいだろう。

 

「初めまして、ルシフェル様。私はラナー・ティエール・シャルドロン・ライル・ヴァイセルフ。このリ・エスティーゼ王国の第三王女です」

「王族なんだ、僕に何の用?」

 

 敬語をわないルシフェルを見て護衛の男、クライムが眉を潜めたがラナーは気にした様子はない。

 

「はい。この国の戦士長ガゼフ・ストロノーフ様を救ってくださり感謝します。私からはお礼しか言えませんが、それでもありがとうございます」

 

 そう言うとラナーは小さく頭を下げた。

 それを見てクライムが「お止めください!」と静止、ルシフェルは頭を下げる特権階級って実在したんだと謎の感動をしていた。

 

「別にいいよ、相手が僕より雑魚だったからどうにかしただけだし。あ、敬語とか使えないけどいいかな」

 

 嘘だ。リアルでは働いてたので最低限敬語は使える。

 だが使う気はない。強者としての本能か雑魚相手にへりくだってられるかという思いがあるのだ。体に少し引っ張られてる。あとはロール的に敬語使うのはな、というのがあった。

 

「構いません。立場など気にすることはありませんから……あ、そろそろお時間のようですね。私はこれで。また後でお会いしましょう」

 

 そう言うとラナーはクライムを連れて去っていった。

 何だったんだろうと思いつつルシフェルはクッキーを食べた。

 

 

 遂にルシフェルが呼ばれる事になった。

 部屋に騎士の一人がやって来てルシフェルを案内する。

 騎士は内心なんでこんな小娘を、という思いが隠せておらずイラついていた。それを見てルシフェルも苛ついている。

 所属する国間違えたかなとルシフェルが思っていると会議室に到着する。

 扉を開けて中に入る。

 

 中にはこの国の貴族たちと王が居た。

 

 六大貴族の内全員が来ている。

 ブルムラシュー侯。

 ウロヴァーナ辺境伯。

 レエブン侯。

 ポウロロープ候。

 ベスペア候。

 リットン伯。

 

 これらの六人の大貴族だ。

 ルシフェルはなんかおっさん共が集まってるな、としか思えず気にはしなかった。

 

 会議室の中の奥の最もいい椅子に座っているのは老年の男このリ・エスティーゼ王国の国王ランポッサⅢ世だ。

 

「よく来てくれた、ルシフェル殿。この度は我が忠臣であるストロノーフの危機を救ってくれて感謝する」

 

 そう言うも頭は下げない。貴族派閥の貴族が居るところで軽率に頭を下げようものならそれをネタにどんなことを言われるかわからないからだ。

 

「あの程度何ともないからいーよ。それでさ、僕に何をくれるの?」

 

 ルシフェルは若干興味なさそうに言った。

 王城に来てからの騎士やこの会議での貴族共の視線にうんざりしかけてるのだ。これなら野に出た方が良かったかなと思い始めている。

 

「王の前だというのに不敬だぞ小娘! 不敬罪で裁いてやろうか!」

 

 そう叫ぶのはポウロロープ候だ。

 それにルシフェルはカチンときた。

 

 無詠唱化したレーザーの魔法をポウロロープ候の頬をかすめるように放った。

 会えて殺さないのはまだ理性が勝ったからだ。

 

「あのさー、僕にとってみればお前ら全員殺して全部奪うって選択肢もある訳。それがなんでわからないのかなー?」

 

 ポウロロープ候は己に傷がついたことで怯えたが、すぐに気を取り直して叫び始めた。

 

「貴族である私に傷をつけるとは! 反逆罪で殺してやる!」

 

 その言葉にルシフェルはこいつら駄目だ、と思い全員殺そうと思考を戦闘モードに変えようとする。

 それにより冷たい殺意がばらまかれる。

 背筋がぞわっとするような、薄氷の上に立っていたのに気づかされたような感覚だ。

 それに待ったをかけたのは王だ。

 

「ルシフェル殿。先ほどは申し訳ない。貴女の力を見誤っていたようだ。どうか怒りを鎮めて欲しい」

 

 そう王は頭を下げた。

 それを見てルシフェルは溜飲が下がったのか魔法の発動を辞めた。

 

「ん、いいよ。トップがまだ真面なら価値はあるからね」

「感謝しよう」

「それで、僕に何をくれるのかな? 王様」

「あぁ。ルシフェル殿を新設する王国魔法省のトップとして迎え入れよう。貴族位を渡す事は出来ないが、相応の地位として宮廷魔術師の地位を与えよう」

 

(新しい部署のトップとして迎え入れるか、なかなか大胆なことをするなこの王様)

 

 ルシフェルはそう考える。

 予想では王国軍のエリート部隊に所属かな、と考えていたのにまさかの省のトップに迎え入れだ。予想よりだいぶ上でルシフェルは心躍った。

 

「いいね。それで満足してあげるよ。暫く王城に滞在するからその間にビル……業務するところ作って置いといてね」

「あぁ。すぐにでも取りかかろう」

「それじゃ他に話は? …………ないみたいだね。じゃあ僕は客室に戻るね。あでゅー」

 

 そう言うとルシフェルは去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 何だあの化け物。それがレエブン候の素直な感想だった。

 ガゼフ・ストロノーフの窮地を助けれる存在、つまり王国の最大戦力を優に上回る存在だとは聞いていたが予想以上に強すぎる。

 王国を救う薬となるか、王国の滅びに王手をかける毒薬どちらにもなる存在だとレエブン候は考える。

 そして王に対する評価も少し上方修正する。ただの愚鈍な王だと思っていたら意外とやるときはやるらしい、と。

 

 

 

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