ルシフェルくんちゃんの王国日記   作:Revak

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第3話

 

 王城、訓練用の庭にて。

 

「あ、いたいた。おーい」

 

 ルシフェルは訓練しているガゼフに話しかけた。

 

「ルシフェル殿。どうかされたので?」

 

 ガゼフは汗をタオルで拭きながら問いかけた。

 

「いやさー、僕魔法省のトップになることになってさ、で新設する部署でしょ? 仕事内容とかどうしたらいいのかなって」

 

 ルシフェルはなんてことないかのように話すが話を聞いていた他の戦士団の者たちは驚愕である。

 宮廷魔術師なんて帝国でしか聞かないような地位だ。つまり王はこの小娘を帝国の二百年以上生きているという大魔法使いと同等とみなしたという事なのだから。

 

「なるほど、魔法省のトップに。ルシフェル殿に相応しい地位だと思う。そして仕事内容だが……私では思いつかないな」

「……僕も王国に仕えることになったんだからさ、敬語辞めない? あ逆に僕が敬語使った方がいい? 一応先輩なんだし」

「……そう言う事なら、気楽に言わせてもらおうか。こういったことに頼れるのは第三王女のラナー殿下だ。今なら部屋にいるだろうし尋ねるのはどうだ?」

「いいね。あの王女様こういうの得意なんだ?」

「こういうの、というよりは智者だ。いくつかの法案を考え通したこともある優れた方だ」

「……あの王女様まだ二十歳にもなってないっぽいけど」

「あぁ。ラナー王女は十六歳だ」

「……その若さで法案を通すって、天才って奴か」

 

 うへーとルシフェルは苦い顔をした。

 

 天才は苦手だ。自分の惨めさをいやというほど思い知らせて来るのだから。

 だが頼らない訳にはいかないのでルシフェルはガゼフに礼を言うと其処らのメイドを捕まえラナーの部屋まで案内させた。

 

 メイドがノックすると中からクライムが出てくる。

 

「よっ。王女様に相談したいことがあるんだけどいいかな?」

 

 ルシフェルがそう作り笑顔で問いかけるとクライムは「少々お待ちください」と部屋に戻った。その間にメイドは帰った。

 すぐにクライムが戻ってくる。

 

「どうぞ中へ。ラナー王女が話したいそうです」

「ん、わかった」

 

 そうして中に入る。

 

 中は王女の獅子綱だけあって豪華な物だった。現実のルシフェルの部屋が霞んで見えるレベルだ。

 

 王女ラナーは座ったまま紅茶を一口飲んでからカップを置くとルシフェルに向かって微笑んだ。

 

「ようこそルシフェル様。どうぞおかけになってください」

「おっけー」

 

 ルシフェルは気軽に返事をすると椅子に座った。

 

「それで早速本題なんだけどさー、魔法省のトップになったんだけど何すればいいかわかる?」

 

 その言葉に一瞬ラナーは鋭い顔をしたがルシフェルにもクライムにも気づかれることはなかった。

 

「魔法省のトップ、ですか……でしたらここはバハルス帝国をまねるのはどうでしょう?」

「帝国を? ……あぁ。帝国にも魔法省あるからそれ模倣すればいいのか」

「はい。ですがまずは何よりも人材です。次に実績。人材の当てはありますか?」

「ないねー、適当にレベル九十以上の奴ら募集とか……いやこの世界平均レベル低いから無理か」

「レベルとはなんでしょうか?」

「あれ、こっちじゃないのか。レベルっていうのは強さの指標の事。最大百で僕も百。ガゼフは三十ぐらいかな」

「なるほど、冒険者が使う難度のようなものですね……話を戻しますと何をするにしても先ずは人がいると思います。募集をかけ、自らの足でスカウトする必要があると思いますわ」

「スカウトか……あんまりやったことないな」

 

 あんまりというかやったことは普通に無い。

 

「恐らく普通に募集をかけても人は来ないと思います。新設の省ですし予算は多くないと思われます。高給取りという訳でないのなら人もあまり来ないでしょう」

 

 これが大金払ってくれるならば兎も角そうでないなら帝国行くわ、と思われるしそうでなくとも魔術師組合があるのだからそっちのが給金いいからそっち行く、と言われるのが目に見えている。

 こんな時に大金を出すような国ではないとラナーは考えておりそれは実際正しかった。

 

「おっけー。まぁ適当に王国飛び回って人を集めるかな」

 

 その後も仕事内容について相談したりし、夕方になってルシフェルは帰っていった。

 

 

 

 

 ■

 

 数日後

 ロ・レンテ城には離宮が幾つかある。

 そのうちの一つの一層を魔法省──ルシフェルに丸々与えられた。

 ルシフェルは適当に貰った予算で調度品を整えるとすぐに外に出て空を飛んだ。

 

 適当な人材いないかなと空を飛び回り探し始めたのだ。

 

 まずはどうやってスカウトするかを考えながら飛ぶ。

 

 ルシフェルが求めるレベルは最低でも第八位階魔法が使える者からだ。

 だがこの世界にはそんなレベルの者はまずいないとガゼフのレベルの低さを見ればわかる。

 だからここは妥協に妥協を重ね、第二位階魔法を使える者を最低限の足切りにしようとルシフェルは考えた。

 次に問題なのはその雇い入れた者たちに何をさせるか、だ。

 利益を出すだけならば適当に新香料を作る魔法でも使わせ続ければ金にはなるが、それだと魔法省ではなく香辛省になってしまうので駄目だとルシフェルは考える。

 

 それに対しラナー王女は答えを用意していた。

 戦争に役立つ魔法の開発、研究をすれば良い、と。

 つまり王国戦士団の魔法バージョンとなればいいという事だ。わかりやすくて助かるとルシフェルは思った。

 

 ならば戦闘力のあるものを採用すればいいか、とルシフェルはぽんと手を叩いた。

 

 ならば適当に冒険者でも誘おうと思いルシフェルは地上に見えた適当な都市──エ・ランテルに降りた。

 

 空から人がやってきたことに周囲の者は驚き動きを止める。

 ルシフェルは翼邪魔だなと思い消し、徒歩で歩く。

 適当な男に冒険者組合の場所を聞き出し徒歩で冒険者組合に向かう。

 

 道中ルシフェルは謎の注目を集めながら組合に着くと中に入る。

 

 ルシフェルは適当にそこらで話している冒険者チームの魔法詠唱者(マジック・キャスター)に話しかけた。

 

「やっはろー。突然だけど君仕官に興味ない?」

 

 そう最悪のスカウト文句と共に話しかけたのはニニャ・ザ・スペルキャスター。

 王国貴族に姉を奪われた過去を持つ悲しき魔法使いだ。

 

 つまりスカウト相手を初手から間違えまくった。

 

 その言葉にニニャは内心というか顔にも青筋を立てた。

 

「仕官ですか? この腐った王国に?」

 

 その言葉に周囲の者たち、ニニャの仲間の漆黒の剣の者たちがいざという時は止めようと動く。

 

「いや腐ってたのは昨日までてきな? 今は僕みたいな強くてかっけぇ宮廷魔術師いるし」

 

 その言葉にさらに青筋を立てる──のではなく一周回って冷静になった。

 

「宮廷魔術師? 王国の?」

「そだよー、ついでに言えば魔法省のトップ兼任してるよ」

 

 その言葉に漆黒の剣の者たちと盗み聞ぎしてた他の冒険者、そしてついに受付嬢も動かした。

 冒険者たちは王国に宮廷魔術師いたっけ、なんて考えだす。

 

「あの、ルシフェル様ですか? つい先日宮廷魔術師の地位についたという」

 

 そう話しかけるのはイシュペンという受付嬢だ。

 

「そうだけど、それが何?」

「申し訳ありませんが現役の冒険者の勧誘は控えていただけると幸いです。冒険者は政治にかかわらないという不文律がありますので……」

「あ、そうなんだ。じゃあこれぐらいで去るとするよ。気が向いたら冒険者辞めて王都来てねー」

 

 そう言うとルシフェルは冒険者組合を去っていった。

 なんだったんだあいつ、と冒険者たちは宮廷魔術師を話題に挙げた。

 

 次にルシフェルが向かったの魔術師組合だ。

 適当な町民に場所を聞き中に入る。

 

 中の作りは豪華絢爛とは言わないが金がかかっている。魔法のウッドゴーレムが二体門番代わりに置いてある。

 

 中に入って受付に進む。

 この魔術師組合は受付も魔法詠唱者(マジック・キャスター)である。最低でも第一位階魔法を使える者だ。

 

「あのさー、ここのトップに話したいことがあるんだけどいいかな」

 

 ルシフェルが気軽にそう言うと受付の男は怪訝な顔をした。

 こんな小娘がトップに何の用だ、と。

 

「あ、僕王国の宮廷魔術師ね。だからさ真面目に対応してね」

 

 魔術師組合の中では<伝言>(メッセージ)による情報交換が盛んにおこなわれている。

 <伝言>(メッセージ)は遠くにいる相手とは会話がしづらくなる特性を持つため信ぴょう性には欠ける。

 

(こんな少女がつい先日宮廷魔術師に着いたという……?)

 

 だが話に聞いた容姿と合致している。

 どうしようか、と受付の男が悩んでいると奥から男がやってきた。

 このエ・ランテルの魔術師組合の組合長テオ・ラケシルだ。

 ローブを纏い、非常にやせ細った体付きをした神経質そうな男である。

 

 テオはルシフェルを見るなりすり寄ってきた。

 

「これはこれは、今噂の宮廷魔術師殿ではないですか。こんなところに何の用で?」

「スカウトに来た。引き抜きって奴。君もどう? 給料は下がるけど魔法の最先端に触れさせてあげるよ」

 

 その言葉にテオは少しイラっと来た。

 こんな小娘が魔法の最先端などと言いふらすな、という思いである。

 

「証拠にこれ、第十位階魔法の巻物(スクロール)

 

 ルシフェルはアイテムボックスから一枚の巻物(スクロール)を取り出した。

 込められている魔法は<最終戦争・悪>(アーマゲドン・イビル)。大量の悪魔を召喚する魔法である。

 

「今どこから……<小型空間>(ポケットスペース)? にしては詠唱がなかった……?」

 

 テオは未知の現象を前に興味深そうにする。

 

「ほら、鑑定魔法でも使ってみてよ」

 

 そう言いながらルシフェルは雑に巻物(スクロール)を渡した。

 

「では失礼して……<道具鑑定>(アプレイザル・マジックアイテム)

 

 瞬間テオは興奮した。

 

「すげぇよこれ本当の第十位階の巻物(スクロール)だ?! 嘘だろなんでこんなのあるんだ?!」

 

 豹変したことにルシフェルは驚きつつ勧誘する。

 

「他にも超位魔法が入った魔封じの水晶とか第七位階が入った短杖(ワンド)とかあるよ」

「マジ?! 入ったらそれ見放題触り放題?!」

「使用するのは駄目だけど見たり触ったり研究するのは良いよ」

「マジか今すぐ入るわ! 組合抜けるぜ!」

 

 その言葉に流石の受付の男が待ったをかけた。

 

「落ち着いてください組合長! 興奮するのはわか……らないですけど落ち着いて! 貴方が今抜けたら大変なことになりますから!」

 

 その言葉にテオは嫌そうな顔をした。

 

「けど第十位階魔法の巻物(スクロール)やマジックアイテムなんて今後触れる機会殆ど……いやゼロと言ってもいいぐらいにない! これを逃せば次はないんだ!」

 

 テオはそう主張した。

 それに対し受付の男も黙った。

 実際第十位階の魔法なんて生涯で目にすることなどないだろう。その実物があるのだ。

 

「本物か確認させてもらっても?」

「いいよー」

 

 ルシフェルが軽い口調で返した。

 

「では……<道具鑑定>(アプレイザル・マジックアイテム)

 

 瞬間受付の男も騒ぎ出した。

 

「本物の十位階魔法の巻物(スクロール)?! 実在したのか?!」

「言ったろ言ったろ?! こんなのもう二度と手にすること出来ないぞ!」

「まだあげた訳じゃないよ」

「あっサーセン。けどこんなの二度と目に出来ないぜ!」

 

 そうテオは興奮して捲し立てる。

 

 それに対し受付の男はこういった。

 

「では組合長は組合長としての仕事があるので代わりに私が出向という事で行きます」

「あっお前ずるいぞ! 俺が行く!」

「いいえ私が!」

「最初に勧誘されたのは俺だ!」

「いや誰か一人を勧誘した訳じゃないよ」

「ほら宮廷魔術師様もこう言ってるから私が行っても問題ないですね?!」

「どちらかというと優秀な人間に来て欲しいけど」

「ほら宮廷魔術師様はこう言ってるから組合長の俺が行くべきだ!」

 

 その後も更に他の者たちを合わせての騒ぎになった。

 

 ルシフェルは最初は面白そうに見てたが十分経っても決まらず論争してるのを見てげんなりしてきた。

 

「あのさー、まだ決まらないの?」

 

 ルシフェルがそう問いかけるとテオが返す。

 

「もう少し待っててください。今この場の全員ぶちのめしていくので」

「ぶちのめされるのは貴様だ組合長! マジックアイテムフェチだからと言って私たちに勝てると思うな!」

「こいっここで終わりだ!」

 

「なんか纏まらなさそうだから明日また来るね」

 

 ルシフェルはそう言うとギャグマンガみたいにボコスカやってる連中を尻目に組合を出た。

 巻物(スクロール)を置いて行ったがルシフェルにとってみれば多数持ってる一つなので大した価値はなかった。

 

 

 

 

 明日またこの街まで飛んで行くのは面倒だ、と思いルシフェルはエ・ランテルで一泊することにした。

 適当なそこそこのランクの宿に行き一泊分の泊まりを買い、ルシフェルはチェックインしたのちスカウトを忘れ街を観光した。

 城塞都市なので見どころはあまりなかったが、異世界の街というのはこういうものかとルシフェルを楽しませることは出来た。

 

 そうして夕方になりチェックインした宿に戻って全裸になって就寝した。

 全裸になった理由は寝間着を持ってなかったからである。

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