ルシフェルくんちゃんの王国日記   作:Revak

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第5話

 

「ほ、本当に転移した!」

 

 転移後、テオははしゃぎだした。

 単独での転移魔法は第三位階魔法にあるが、それも短距離の転移だしエ・ランテルから王都までの転移となると相当な高位の魔法になる。

 

 ルシフェルとテオが転移したのは王城の離宮の一つだ。

 一つの離宮の一層を丸々魔法省の物になっているのである。

 

「そういや家とかどうする? 一応この離宮に泊るところあるけど」

「る、ルシフェル殿はどこに泊っているので?」

「僕もこの離宮に泊ってるよ。まぁそのうち家買うけど」

「なるほど。でしたら暫くはここに泊って、家でも買おうと思っています。ここを生涯の地に決めたので」

「そっか。じゃあ僕人に相談してくるからまたねー」

 

 そう言って去ろうとするルシフェルをテオは慌てて止めた。

 

「お、お待ちを。今貴女に離れられると私は王城に突如現れた不審者になります。せめて周知させるまでは一緒に居てください」

「あ、それもそっか。めんご」

 

 そうしてルシフェルはテオを連れ離宮のメイドたちにテオの事を周知させてからラナーのいる離宮に向かった。

 

 

 人材を得ることが出来てルシフェルは機嫌が良い。鼻歌でも歌いたいいい気分だが歌なんて歌えないので歌わなかった。

 

 そうしてラナーのいる後宮に行き、ラナーの部屋の前に着く。

 部屋の壁は薄いのか中の話し声が少し聞こえてきた。

 

 気にすることなくルシフェルはノックをする。

 

 話し声が止まり、足音がする。

 

 ドアが開く。開けたのはクライムだ。

 

「よっ。王女様と相談したい事あるんだけどいいかな?」

「ルシフェル様。申し訳ないですが今ラナー殿下はお客人と話している為対応できません」

 

 予想で来ていた返答にルシフェルはちぇと小さく呟いた。

 

「それじゃあ話し終わるのいつぐらいになりそ? 終わったらまた来るからさ」

 

 そう言うとクライムは一瞬嫌そうな顔をしたもののすぐに表情を取り繕った。

 

「クライム、いれていいですよ」

 

 クライムが口を開くより前に部屋のラナーが口をはさんだ。

 

「……ラナー様がそういうのなら、どうぞ」

「さんくす」

 

 そうしてルシフェルが部屋に入る。

 

 奥のテーブルには一人の客が座っていた。

 

 生命の輝きともいえる美貌を持つ女だ。

 金髪緑眼の女で体は鍛えられているとわかる。

 ラキュース・アルベイン・デイル・アインドラ。この国の貴族にしてアダマンタイト級冒険者チーム蒼の薔薇のリーダーだ。

 

「そっちの女の人誰?」

 

 ルシフェルがマナーなど知ったことかと問いかけた。

 それに対しラナーは苦笑しラキュースは微笑みで返した。

 

「初めまして、宮廷魔術師ルシフェル様。私はラキュース・アルベイン・デイル・アインドラ。アダマンタイト級冒険者チーム蒼の薔薇のリーダーを務めています」

「アダマンタイト……あぁ、冒険者のランクの最高峰か。若そうなのに凄いねぇ。冒険者が王女様と何の話してたの? 依頼?」

 

 ルシフェルは当然の疑問を投げかけた。

 それに対しラナーは軽く答えた。

 

「彼女たちには八本指に関して動いて貰っています」

「ちょっとラナー、それ言っていいの?」

「構いません。八本指の魔の手は既に彼女にも向いています」

「そんなに早く八本指が?」

 

 ラナーの言葉にラキュースは驚く。

 

「その八本指って何? 帝国の秘密組織的な奴?」

 

 何も知らないルシフェルは間抜けな問いをした。

 それに対しラナーが答える。

 

「いえ。八本指はこの王国に巣食う犯罪結社の事です。麻薬部門や密輸部門、賭博部門などの合計八つの部門からなる複合組織です。トップは居ませんが八人の長が日々けん制し合い活動しています」

「マフィアみたいな物か。それが僕に?」

「はい。先日魔法省に入りたいという男が来たのですがその者は恐らく警備部門の者でしょう。ルシフェル様を色仕掛けてで落とす、そうでなくとも魔法省から情報を抜くつもりでしょう」

「そんなの拒否すればよくない?」

「実はその男、ペスペア候からの推薦でして、断るのは難しいのです」

「貴族が犯罪者推薦ってだいぶヤバくない?」

 

 ルシフェルは素直な感想を言ったがラナーとラキュースは苦笑だけで済ませた。

 

「ですのでこれから来る者、ハンスに気を付けてください。ハンスは平民の出で元冒険者の者です」

「わかった、気を付けとくよ……あぁ、それで僕の話になるんだけど、エ・ランテルの魔術師組合長スカウトしてきたんだけど、何か仕事ないかな?」

 

 その言葉にラキュースが驚きの表情を浮かべた。

 

「魔術師組合長が? それは……凄いですね」

 

 ラキュースはそう言うしかなかった。

 エ・ランテルはホームではないのでエ・ランテルの魔術師組合長と面識がないが、それでもその地位の高さはよくわかる。

 下手な貴族に抱えられるよりも魔術師組合に属した方が良いと考える魔法詠唱者(マジック・キャスター)は多い。

 

「そ、適当に巻物(スクロール)を見せたらこっち来てくれてラッキーだったよ」

 

 巻物(スクロール)、という言葉にラキュースは引っかかった。

 

「……その巻物(スクロール)というのはどんな巻物(スクロール)ですか?」

<最終戦争・悪>(アーマゲドン・イビル)……十位階魔法が込められた巻物(スクロール)だよ。効果は大量に悪魔を召喚できる」

 

「だ、第十位階?!」

 

 ルシフェルのなんてことない台詞にラキュースは驚きの声を上げた。

 ラナーも少し驚いた表情をしている。

 

「そ、そんなものどこで入手したのですか?!」

「市場で買った」

「どこの市場にそんな伝説的な物が売ってるんですか!」

「いや僕の故郷だと割とありふれてたけど……まここからじゃ地続きじゃないぐらい遠い場所だから、文化の違いってやつだね」

「文化の違いで済ましていい規模を超えてる気がしますが……!」

 

 言いたいことはあったが言ってもいい反応は来ないだろうとラキュースは諦め心を落ち着かせた。

 

「それで、仕事の話でしたね」

 

 そうラナーが話題を元に戻した。

 

「でしたら戦士団の方たちと協力するのが良いと思います。最初の内は模擬戦なんてどうでしょう? この国は魔法詠唱者(マジック・キャスター)が少ないですから魔法詠唱者(マジック・キャスター)との戦闘経験はあまりないはずです。その経験不足を補うために訓練するのは悪いことじゃないはずです。戦士団と仲を深めたら戦士団から魔法で解決できそうな案件を受けて解決し、自分でも仕事を探していくというのは」

「……いいね、一からの成り上がりだ、面白くなってきた」

 

 じゃあガゼフに会いに行ってくる、とルシフェルは去っていった。

 

 

 

 

 

 ■

 

 翌日の朝、九時ごろ。

 朝からルシフェルはオフィスの一室で面接をしていた。

 

「それじゃあ志望動機を教えてください」

 

 そうゲンドウポーズをしながら来た者、ハンスをからかう。

 ハンスは二十代前半ほどの男で、ツラが非常に良い。貴公子ともいえるぐらいにはイケメンだった。

 何故イケメンが来たのか、理由は勿論ある。

 つらの言い男で篭絡しルシフェルを都合の良いコマとして飼いならそうとしているのだ。

 と言ってもそれはサブ目標で出来たらいいなでしかない。

 

「自分の能力は今最も勢いのある魔法省でこそ生かせると思いここに来ました」

 

 そうハンスは胸を張って答えた。

 自信満々の回答にルシフェルは舌打ちをした。未来ある若者は未来無き老害には見てて辛い物がある。

 

 ルシフェルは椅子から立ち上がるとハンスに近づいた。

 

「それじゃあ、君に祝福の魔法をかけてあげよう。大丈夫、気を楽にして──」

 

 そう言うとルシフェルはハンスの額に指を置いて魔法を唱えた。

 

<記憶操作>(コントロール・アムネジア)

 

 

 こうして悪い男はルシフェルに忠誠を誓う忠犬に作り替えられた。

 

 

 ■

 

 ルシフェルはハンス、テオを連れて訓練用の庭に行く。

 そこでは戦士団の者たちが汗水流して鍛錬していた。

 

 ガゼフも鍛錬していたがルシフェルが近づくと気づき、木剣を置いて近づいてきた。

 

「おはよう、ルシフェル殿。今日は何用かな?」

「おはよう、ガゼフ。今日はちょっと君たちとしたい事があってね」

「私たちとしたい事? なんだ?」

「君たちって対魔法詠唱者(マジック・キャスター)の戦闘訓練とか殆ど出来てないでしょ? だから訓練相手になろうかなと思って」

 

 その言葉にガゼフは眼を見開いた。

 

「それはありがたいが、いいのか? そちらにとって利益はあまりないのではないか?」

「今は地盤固めの時期だからねー、それに実績だったらこの前エ・ランテル救ったからそれで暫くはいいでしょ」

「……なるほど。ならば喜んで受けさせていただく! ──おい、一旦鍛錬は中止だ! こっちに集まれ!」

 

 ガゼフがそう叫ぶと模擬戦や素振りを辞め戦士団の者たちが集まる。

 

「魔法省の者たちが訓練相手になってくれるそうだ! 胸を借りるつもりで鍛錬するぞ!」

 

 その言葉に戦士団から雄たけびが上がった。

 

 戦士団はつい先日陽光聖典の者たちにコテンパンにやられたばかりだ。

 それによって魔法詠唱者(マジック・キャスター)の脅威というのを実感しておりその模擬戦が出来るというのなら非情に嬉しい事であった。

 

「じゃ、僕は見学するからお前らで好きにやって」

 

 ルシフェルがそう言うとテオは嫌々、ハンスは嬉々として訓練しに行った。

 

 ルシフェルは適当なベンチに座った。

 それにガゼフが近づく。

 

「ルシフェル殿は参加しないので?」

「……僕手加減苦手だから相手殺しそうだし、それに今はMP……魔力だいぶ減って疲れてるんだよね」

 

 ルシフェルはそうため息を吐いた。

 実際ルシフェルは九割のMPを消費している。

 ルシフェルは光系統に特化してエレメンタリストの為その外にある<記憶操作>(コントロール・アムネジア)は規定以上の魔力を消費する。

 更に<記憶操作>(コントロール・アムネジア)自体が燃費の悪い魔法とくれば猶更だ。

 

「ま、特殊技術(スキル)で天使の創造ぐらいは出来るから、天使と模擬戦でもする?」

「なんと、天使を創造? そのようなことが出来るのか!」

「出来るよー、ただレベル八十以下に限るし強いの呼ぶと呼び出せる数も減るけど……ガゼフならこれがいいんじゃないかな」

 

 ルシフェルはそう言うと天使を創造する。

 創造したのは監視の権天使(プリンシパリティ・オブザベイション)だ。

 メイスを持つ天使で防御能力に特化し、自身が動いてない状況に限り視界内の味方の防御力を上げるという能力を持っている。

 

「この天使は……!」

 

 ガゼフはニグンが使役しているところを見た事あったのでそのことを思い出した。

 

「リベンジマッチ、頑張ってねー」

 

 ルシフェルがそうひらひらと手を振るとガゼフは元気よく返事をし、少し離れて戦闘を開始した。

 

(しばらくはこれでいいとして……流石に職場に泊るのもあれだし家買うか)

 

 週末の休みにでも不動産行くか、とルシフェルは決めた。

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