「仮面ライダーゼッツ。敵勢対象タイプKRか。まったく、遺跡の何処かにいるドラゴンの捕獲または排除という任務だったはずなのに面倒な」
仮面ライダーを知っているような言い回しをしたカマキリの怪人は俺を試すかのように斬撃の衝撃波を飛ばしてきたので、俺は変身した事で強化された肉体、その右手で斬撃の衝撃波を防いで見せる。
「やはり効かないか。なら!」
斬撃を飛ばす程度では俺を倒せないと判断したカマキリの怪人は接近して直接鎌を振るってきたので、右の初撃は回避。二撃目の左はガードをする。鎌を両腕で受け止めたが斬られていない。やっぱり俺の肉体はかなり強化されているようだな。
「今度はこっちの番だ」
鎌を弾いた俺は右ストレートをカマキリの怪人に叩き込む。それなりに重くヒットしたようで殴った箇所を押さえながら後ろに下がったカマキリの怪人は怒りや焦りからか乱雑に鎌を振るってくる。
「この世界に仮面ライダーを作り出す技術はない!貴様も他世界からの干渉者だな!」
「答える義理はない!」
確かに俺もこの世界の住民じゃないが、俺自身仮面ライダーの技術なんて知らないから答えようがない。
「フンッ!」
振るわれる鎌を避けながら接近した俺は回し蹴りで蹴り飛ばすと、バイクから剣が飛んできたのでそれをキャッチする。
「これは?」
『ブレイカムゼッツァーだ。使いたまえ』
「分かった」
ブレイカムゼッツァーを受け取った俺はカマキリの怪人が再び放ってきた斬撃の衝撃波をその刃で両断する。そして地面を強く蹴って一気に距離を詰めた俺はブレイカムゼッツァーで一閃してカマキリの怪人の両腕の鎌を斬り裂いた。
「何ッ!?」
「お休みの時間だ」
俺は地面にブレイカムゼッツァーを突き刺してトリガムを3回押してカプセムを回転させ必殺技を発動する。
「これで眠れ」
【インパクト!】【バニッシュ!】
腰を深く落として右足に重心を乗せた俺は両拳を握ったまま溢れるほどのエネルギーを右足にチャージしてカマキリの怪人に駆け出す。
「ぐっ!?ぐぅ・・・」
「ッ!!」
【ゼ!ゼ!ゼッツ!!】
チャージした右足で2連撃の蹴りを浴びせて体勢を崩し、トドメに渾身の跳び蹴りを叩き込む。キックが当たるたびに『7』の文字が刻まれて、3つの7が揃うとともに下に線が刻まれて『ZZZ』となると、カマキリの怪人は一瞬眠るような挙動をした後に爆発する。
「お、おのれ」
爆炎から出てきた男からカードが分離すると、それは燃えて失くなる。
「コードセブン。仮面ライダーゼッツと言ったな。俺はサルノテ。秘術のサルノテだ!覚えておけ!」
捨て台詞にマンデイと名乗った男は灰色のカーテンのようなオーロラをくぐり抜けると、この遺跡から、いやこの世界から姿を消していた。他の世界から干渉してると言っていたし元いた世界に撤退したんだろうな。
「任務完了」
カプセムをゼッツドライバーから外して変身を解除すると、戦いを見守っていたマリーが恐る恐る声をかけてくる。
「バ、バクよね?それともコードセブンって呼んだほうがいいのかしら?」
「今まで通りバクでいいよ」
コードセブンはあくまでコードネームだ。この世界で言うなら二つ名みたいなものだけど、自分から二つ名を名乗るなんて流石に恥ずかしい。
「その魔道具は何?いえ、そもそも魔力を感じないから魔道具ですらないわよね?」
「ゼッツドライバーとカプセムだよ。分かってはいたけどやっぱり魔力は宿ってないんだな」
どちらかと言えば異世界の技術より現実側の技術だとは思っていたから魔道具ではないのは納得だ。
「そのゼッツドライバーとカプセムでかめんらいだー?というのになっていたのよね?不思議だわ。私も使えるのかしら?」
マリーはゼッツドライバーとカプセムに興味津々なようだが、俺もこれの構造が分かるわけじゃないから説明なんて出来ないし、、マリーが使えるかも分からない。
『この世界の住人である君が使う事はお勧めしないとだけ言っておこう』
「え!?だ、誰!?」
バイクから聞こえてきたコードゼロの声にマリーは驚いていたが、そういえばバイクの事も説明してなかったな。
「まぁ俺も突然のことだったから全部を分かっている訳じゃないんだ。ところでマリー、1つ気になる事があるんだけど」
「私は1つどころではないのだけれど、何かしら?」
確かにマリーにとっては気になる事だらけだよね。
「さっきの相手、この遺跡にドラゴンがいるみたいな話をしてたよな」
「・・・なんだか無理やり話をそらされた気がしないでもないけど。確かにドラゴンの捕獲か排除をするって言っていたわね」
「彼なら何か知っているかも」
俺は先ほど斬られたリザードマンのもとに戻ると、彼を手当てしつつ話を聞く。数年かけて魔物の言葉を理解出来るようになった俺だからできる。
「何か知っていた?」
「奥に産卵期に入ったドラゴンがいるから注意しろだって」
「産卵期の竜は獰猛で危険なのよ。いくらあなたにその力があるといっても危険すぎるわ」
確かにドラゴンに限らず産卵期の動物は獰猛になる。だけどドラゴンがさっきの奴らに利用される方が危険な気がする。
「やっぱり俺は1回ドラゴンの所にいくべきだと思う」
「はぁ、しょうがないわね。ついていくわよ」
俺とマリーは遺跡の奥へと進むと、奥の間には黒く大きなドラゴンが眠りについていた。
「色が黒くて魔力も凄い。アークドラゴンかもしれないわね。もし本当なら大変なことよ。千年に一度の産卵期に出くわしたことになるもの」
よく分からないけどアークドラゴンがとんでもないドラゴンなのは分かった。
「アークドラゴンならさっきの相手なんかに負けるだなんて有り得ないわ。私達も危ないしそろそろ帰りましょう」
「そうだね」
ここに長居してアークドラゴンに敵と判断されたら危ない。そう判断した俺とマリーはこの場から静かに立ち去ろうとするとアークドラゴンがこのタイミングで目を覚ました。
「き、気づかれてないかしら?心なしかこっちを見ているような気がするのだけれど?」
「だ、大丈夫なはずさ。仮に気づかれていても逃げ道は確保しているし」
万が一に備えてゼッツドライバーもつけたままだ。逃げる用意は・・・。そう考えていた矢先、背後からガシャンと音が響いたので確認してみると退路の道に柵が降りてきていて道が塞がれていた。
「脱出不能イベントかよ」
アークドラゴンのレベルは少なく見ても1000は越えているだろう。俺のレベルが77だから戦闘になれば太刀打ちなんて出来ない。
「ねぇバク。これって絶対絶命ってやつかしら?」
俺とマリーに気づいたアークドラゴンは既に目の前まで迫っていた。
「変し」
変身するよりも早くアークドラゴンはブレスを俺達に浴びせ、俺とマリーの意識はそこで一度途切れた。
「バク。しっかりしてバク!」
マリーに起こされる形で意識が覚醒すると、俺とマリーはゼッツドライバーを受け取ったレトロな部屋にいた。
「ここは何処なの?ブレスの瞬間に転移したと考えていいのかしら?」
「ここは俺達がいた世界と夢の狭間の世界だ。俺達はブレスで瀕死になった事であの世界から弾かれたんだ」
「どう言うこと?つまりここは死後の世界なの?」
『安心したまえ。君達は生きている』
衝撃の展開にマリーは驚きを隠せない中、部屋の奥のバイクが変形してコードゼロが語りかけてきた。
『色々と聞きたい事があるだろう。だがまずは言わせてくれ。Codeへようこそエルフさん』
「信じがたいけど、バクが仮面ライダーゼッツに変身していたのだからあなたの話が本当のことだと言うのは理解したわ」
コードゼロから俺が仮面ライダーゼッツとなったおおよその経緯を聞いたマリーはひとまず納得をする。
「でも私達の住んでいた世界がバクにとっては夢の世界と言うのが1番信じがたいところね」
そりゃそうだよな。マリーにとってはあちらが現実なんだから。
「コードゼロ、ここは狭間の空間なのよね?ということはここから更にバクの本来の世界にも繋がっているということかしら?」
『繋がってはいるが、君が北瀬莫の世界に行けるのかと聞かれると前例がないとしか答えられない』
前例がないだけで不可能ではないと。
「コードゼロ。俺はあの世界にお弁当を頻繁に持ち込む事が出来ています」
『あぁ、観測している』
「この部屋で目を覚ます直前、俺達は密着した状態で意識を失いました。ならば手を繋いだ状態で退室すればマリーも俺達の世界に連れて行く事が出来ると思います」
『ふむ、君の考えは理解した。我々Codeも現実の世界でバックアップはする。試してみたまえ』
コードゼロの許可は得た。それじゃあ早速試してみよう。
「それじゃ行くよマリー」
「ええ!」
部屋の扉を開き外へと出ると、眩い光に俺達は目を閉じてしまう。そして次に目を開けてみると、そこは俺の部屋だった。
「朝か。いつも以上にリアリティのある夢だったな」
ここまでが俺の夢で見た出来事。俺はそう考えようとしていると胸に何かを付けているような違和感を感じた。
「嘘だろ?」
実際に見て確かめると俺の胸にはゼッツドライバーが装着されていた。しかも驚かされたのはそれだけではない。
「マリーまで。って!?」
俺の横にはマリーが眠っていたのだ。それも何も纏わない生まれたままの姿で。
「どうしたのバク。いきなり大声で。ッ!?」
目を覚ましたマリーは自身が何も纏わない姿なことに気がつくと声にならない声をあげる。そして反射的に俺にビンタを振るってきて・・・。
「ご、ごめんなさい。あなたは悪くないのに」
「いや、この可能性を考えてなかった俺も悪いよ」
考えてみれば目を覚ました時に向こうの世界の持ち物を持ち帰った事なんてないんだからそりゃ服も該当するか。とりあえずカーテンを体に巻き付けて落ち着いたマリーは改めて尋ねてくる。
「ところで、ここがバクの本来の世界なのよね?」
「あぁ、そうだよ」
俺はカーテンを開けてマンションから見える外の世界をマリーに見せる。
「わぁ!!」
初めての世界。初めての日本の景色にマリーは感動していた様子だったので、俺はコードゼロの言葉を真似る事にする。
「改めまして、日本へようこそエルフさん」
こうして俺の日常は夢でCodeに出会ったことで仮面ライダーゼッツとなり、マリーまでも現実の世界に現れるという劇的変化を遂げた。
「ここが日本」
日常が変わる。常識が変わる出来事。それはマリーも同じはずだ。
「凄いわ。こんなに発展した都市、初めて見たわよ!下をみたら膝が震えそうになるほどだなんて」
初めて異世界に行った俺みたく、マリーも好奇心や探究心が勝っている様子だ。
「お届けものでーす」
何も注文した記憶はなかったが、荷物を受け取ると段ボールの中には女性ものの衣類が入っていた。おそらくはこの事態を想定したCodeからだろう。マリーは送られてきた服に着替えるとクルリと回りながら俺に見せてくる。
「どうかしらバク?」
「うん。マリーは美人だし凄く似合ってるよ」
どうしてマリーの服のサイズをCodeが把握しているのかはこの際考えないことにしよう。
「マリー、せっかくだし外で食事をしようか。あ!この世界にはエルフはいないから出来れば帽子で耳を隠してくれると助かる」
マリーに帽子を手渡した俺はマリーを連れて外へと出かける。
「大丈夫マリー?」
「何がかしら?」
「急に日本に来て不安なんじゃないかと思ってさ」
「心配いらないわ。あの部屋の扉を開ける時点で覚悟は決めていたし、今、凄くワクワクしてるもの」
「俺もだ」
こうして俺とマリーは高揚感で胸を高鳴らせつつも、新たなる日常へと歩み出した。
これは俺が知り得ない話。
「以上が俺が撤退してきた事の顛末だ」
現実とも異世界とも違う何処かの世界。俺に敗れ撤退してきたサルノテは他の幹部仲間に俺こと仮面ライダーゼッツを報告していた。
「まさかあの世界に仮面ライダーが干渉してくるだなんてね。世界干渉が出来るのはディケイドやディエンド、そしてレジェンドだけだと思っていたよ」
「とはいえアナタが敗北して撤退したのは単純にアナタの準備不足よ」
「悔しいが準備不足だったのは事実だな」
女性幹部から準備不足を指摘されたサルノテはその事実を受け止め、反省していた。
「まずはその仮面ライダーゼッツがどんな性能をしているのか確かめる必要があるね。次はこの僕、戦略のカラメテが行くけどいいかな?」
異論はないと幹部達が頷くと、カラメテは異世界に繋がる灰色のカーテンのようなオーロラを展開し、カラメテはそれを潜り抜ける事で世界を移動したのだった。
次回「味わう」