「やっぱりアークドラゴンの前からスタートになっちゃったね」
アークドラゴンの前からの冒険再開。無事にマリーを連れてこっちの世界に戻ってこられたことをまずは喜びたいところだけど・・・。
「流石にこの状況は喜べないわね」
俺とマリーの目の前には既にアークドラゴンがいた。アークドラゴンは俺達を睨みつけるなり尻尾を振るってきたので、まずはその初撃を躱す。
「あの!勝手に入ってしまいすみませんでした!怪しい侵入者がいるとリザードマンから聞いたので、それを確かめるためにここまで来たのですが心配は杞憂だったようです。どうかこれでお怒りを鎮めていただけませんか?」
竜語でアークドラゴンに語りかけながらも俺はバッグからビール瓶を取り出す。マリーの情報だとかつてアークドラゴンはオッズロイという港の貿易が盛んな場所に訪れても何もせず帰った記録があるとのことだった。オッズロイは大麦麦芽を使った酒で有名な場所。そこから推測すればおそらくアークドラゴンはビール好きと考えられる。
「ふむ。下級のとはいえ竜語を理解し、わしの楽しみも理解しているとは。それに昨日吹き飛ばしたはずだが貴様らはこうして生きている事も不思議でもある。その謎を明かすのなら命は奪わん」
とりあえず、助かったみたいだ。
俺はこの異世界とは別の世界の人間である事と、夢を介して世界を行き来出来ることをアークドラゴンに説明した。流石のアークドラゴンも夢を介しての行き来には驚いていたが、正直に話したからか気に入っていたアークドラゴンの卵を見せて貰えた。
「床が暖かい。地熱で床を温めているのか?」
「この辺りは精霊が活発ね。竜はエルフよりも精霊を自在に扱えるとは聞いてはいたけど。いざ目にするとやっぱり凄いわね」
「人の子よ。何か隠し持っているな?」
まさかゼッツドライバーとカプセムに気づいたりしたのか。
「麦酒だけではない。肉の香りがする」
あぁ、そっちでしたか。
「昨日のあまりのカツ丼?」
「地熱で弁当が温まったから匂いが立ったみたいです。嫌なら置き場を変えますが」
「いや、構わん。しかしこの身体では話しづらいな。その詫び酒もこの身体では舌を濡らす程度。さすれば」
アークドラゴンは何やら喉を光らせ始めた。
「マリー、あれはいったい何を?」
「竜魔法。エルフにすら出来ないほどの高密度で魔力が練られでいるの。まさかこの目で見られるなんて思っでもなかったわ」
なんかとんでもなく凄い魔力操作なのは理解した。だけどアークドラゴンは何をする気なんだ?
そう思っていた矢先、アークドラゴンは練り上げた魔力の塊を吐き出した。その塊は徐々に人の形へと変化していき、黒い長髪で角と尻尾が特徴的な女性となった。
「竜人。竜核の1つで生み出されたアークドラゴンの分身ね。まさか伝説を目の当たりにするなんて」
「久方ぶりにこの姿を生み出したが、人の子から見ておかしいところはないな?」
「はい。お美しいです」
「フム。ならば人の子よ。わしに酒と馳走を寄越すのだ」
「馳走?カツ丼のことですか?」
「もちろんタダでとは言わん。わしの鱗を1枚くれてやろう」
こっちで食べようと思っていた弁当だったけど、竜の鱗はマリーが欲しがっていたし。まぁカツ丼で済むなら安いか。
交渉成立して俺の分のカツ丼を彼女に提供すると、彼女はカツ丼をガツガツと食べすすめて、勢いよくビールで流し込んだ。
「このような美味いものが人里にはあるのか?」
「いえ、これは俺の世界の食べ物なので流通はしてないかと」
「残念。せっかく人里を支配しようかと思うたのに」
そうならなくて良かった。
「しかしこれだけでは些か。ん?まだカツ丼の匂いがするな」
「もう1つありますが」
「くれ!!対価にこれをやる!!」
青い石?
「魔力が宿っているみたいだけど、なにかしら?」
「わしの血が染み込んだ石じゃ」
「彼女の血が染み込んだ石だってさ」
「す、すぐに交換しなさい!!」
竜語を翻訳してマリーに伝えると、マリーは血相を変えてすぐに弁当と石を交換するように言ってきた。どうやらこの世界であの石は凄い価値があるようだ。
「人の子らよ。また来るがよい」
アークドラゴンに見送られてその場を後にした俺とマリーは『何か』を忘れながらも鱗と石の価値が高すぎることについて話し合う。鱗には一国を動かす価値があり、竜の血は万病を癒す。迂闊に人に話すわけにもいかない代物を俺は弁当2つという対価だけで貰ってしまったようだ。
「にしても、何か忘れているような」
「やぁ、君達がドラゴンのもとから出てくるのを待っていたよ」
思い出した。俺達が急いでこっちに来た理由だ。
「お前は何者だ?」
「始めまして。僕はワンハンド、戦略のカラメテ。仮面ライダーゼッツ、君の敵だ」
カラメテと名乗った男は自身が出てきた灰色のカーテンのようなオーロラに両手を入れると何かアイテムを2つ取り出してそのうちの1つを腰に装着する。
【Set】
そして腰に装着したドライバーにもう1つのアイテムをセットすると、俺がゼッツになる時と同じあの言葉を告げた。
「変身」
【Magnum】
カラメテはパンダ顔の白い銃を持った姿に変身を遂げ、その銃身を展開してライフルのようにする。
「仮面ライダーダパーン。模倣品だけど君の性能を確かめるにはとりあえずこれでいいかな」
ゼッツとは違うシステムの仮面ライダー。模倣品らしいけどライダー経験が少ないこっちが不利になりそうだ。
「さあ、君のデータを取りたいから早く変身してくれないかな?」
「俺が素直にその要求を飲むと?」
「無理にとは言わないけど、早く変身しないとそっちのエルフに銃が向くかもね」
ここは相手の要求に従ったほうがよさそうか。
ゼッツドライバーを装着してインパクトカプセムをそれにセットした俺はカプセムを回転させる。
【メッツァメロ】【メッツァメロ】
「変身」
【グッドモーニング!ライダー!!】
【ゼッツ!ゼッツ!ゼッツ!インパクト!!】
仮面ライダーゼッツ、フィジカムインパクトへと変身した俺は銃で撃たれるよりも先にと殴りかかる。
「ぐっ!?」
だけど銃相手に距離を詰めるのは難しく、ダパーンの銃に肩を撃たれてしまう。幸い生身より筋肉や皮膚も強化されているので血が出るほどのダメージではないけど、痛いものは痛い。
「肉体変化の力、試してみるか」
トランスフォームカプセムを手にとった俺はインパクトカプセムをゼッツドライバーから外してかわりにトランスフォームカプセムをセットする。
【トランスフォーム!】
【グッドモーニング!ライダー!】
【ゼッツ!ゼッツ!ゼッツ!トランスフォーム!!】
トランスフォームカプセムを発動したフィジカムトランスフォームとなった俺は試しに距離を取られているダパーンに対して殴るつもりで動いてみる。
「ッ!?」
すると俺の右腕がまるで某漫画のゴム人間のように伸びてダパーンに一発与えた。
「バクの腕が伸びた!?肉体変化の魔法か何かかしら?」
あながち間違いではないな。カプセムの力はある意味魔法みたいなものだし。
「なるほど。胸のカプセルを交換する事で能力を変化させることができるのか」
二撃目の伸ばしたパンチをガードして、三撃目は回避したダパーンは殴る動作をしたと同時に拳に銃撃をして殴らせないようにしてきた。なんて精密射撃かつ早撃ちだ。
「だったら、これで!」
再び殴る動作をすると、またもダパーンは銃撃で止めようとしてくる。なので俺は伸ばしている右腕を鋭い棘にして銃弾を逆に打ち落としつつ、棘の伸ばしたパンチを浴びせた。
「痛ッ、なるほど。伸ばすだけじゃなく形状は自由自在か」
「次はこいつだ!」
【ウイング!】
【グッドモーニング!ライダー!】
【ゼッツ!ゼッツ!ゼッツ!ウイング!!】
ウィングのカプセムを発動してみると、背中に真っ赤なエネルギーが集まって翼竜のような翼を生やした姿のフィジカムウイングになった。
「Fly High!」
「変幻自在から飛行形態か」
飛翔した俺に対してダパーンは的確に翼を狙って攻撃してくる。インパクトやトランスフォームよりも素早く動けるけど、慣れるために動いている間にダパーンもこちらの動きに慣れてしまったようで3分も経たずに銃撃が翼をかすめるようになってしまった。
「なら!」
「っと!?銃使いから銃を奪うのは確かに定石だ」
上空から急降下した俺は右脚でダパーンに蹴り込んで銃を吹き飛ばす。だけどダーパンは武器を手放したというのに大して動揺していなかった。
「僕も武器なら銃は得意だけど、僕が1番得意な戦術は銃撃戦じゃない。戦略を練って戦うことだ」
ダパーンは自分のドライバーを外して変身を解除するとカラメテの背後にまた灰色のオーロラが現われる。そこからは6体の機械の兵隊が出てきた。
「数を相手にどう戦うかを見せてくれよ。いけ、カッシーン」
カッシーンと呼ばれた兵隊達はカラメテの指示で6体同時に槍のような武器で俺に襲いかかってくる。
「ッ!」
俺も剣を、ブレイカムゼッツァーを手に取ってカッシーン達の槍を捌いたけどインパクトより素早く動けるかわりにパワー面ではやや力不足なのか、せば釣り合いとなると押し負けてしまい、転がされてしまう。
「仕方ない」
インパクトカプセムに交換してフィジカムインパクトに戻った俺はブレイカムゼッツァーを構え直す。
「アイテムのお試しタイムは終了かな?それとも出し惜しみでもしているのかい?」
出し惜しみをして何とかなるようならそれでいいけど、残念ながらそんなに簡単な相手じゃないか。
「マリー、あのカプセムをくれ」
「え?でもあれはどんなものかもまだ分かっていないのに」
あのカプセムはまだゼッツフォンで解析していないから完全初見のぶっつけ本番になるけれど、やるだけやってみるか。
【ストリーム!】
【メッツァメロ】【メッツァメロ】
【グッドモーニング!ライダー!】
【ゼッツ!ゼッツ!ゼッツ!ストリーム!】
「青くなった・・・」
青いカプセムをゼッツドライバーにセットして発動してみると、赤かった部分が青く変化した。体感ではインパクトほどのパワーはなさそうだけど、右手に軽く力を入れると掌に小さな竜巻が出来ていた事でこの姿の能力がどんなものかを理解した。いや、知っていたように思い出した。この姿はテクノロムストリーム。大気操作が可能な技巧タイプの形態だ。
「その青い姿はどんな事ができるのかな?」
「今見せてやるよ」
ブレイカムゼッツァーの刃を外して銃形態のガンモードにした俺は接近してきたカッシーンの槍の先端をピンポイントな銃撃で撃ち砕く。
「精密射撃?なら距離を詰めて、撃たせる隙を作らなければ!」
カッシーン達はカラメテの指示で接近して攻撃をしようとしてきたので俺は竜巻の壁でそれを阻んだ。
「風の壁。なるほど、青い姿はそういうタイプか」
風の壁でカッシーンの特攻を阻みつつもブレイカムゼッツァーの射撃で撃破して、残るカッシーンは2体となった。だと言うのにカラメテは動揺せずに俺の、ゼッツの能力を冷静に分析している。たぶんアイツはまだ本気どころかマトモに戦おうともしていない。かといってその隙を狙えるほどジャイアントキリングができるかといえば、たぶん無理だ。なら再優先は残るカッシーンの確実な撃破だな。
「これで眠れ」
【ストリーム!】【バニッシュ!】
【ゼ!ゼ!ゼッツ!】
ゼッツドライバーのトリガムを3回押して、ストリームカプセムを回転させた俺は右脚に旋風を纏わせて3連続の回し蹴りを叩き込む。7が3つ並んで『ZZZ』の文字が浮かびカッシーンが爆発するとカラメテは予定通りとでも言うかのように拍手しながら近づいてくる。
「お見事、仮面ライダーゼッツ。おそらく君を倒すとなればまだ力が増えてないこのタイミングが最も確実なんだろうけど、今回の僕のミッションは君のデータ採取で君を倒す事じゃない。だから今回はこの辺りが引き際と判断させてもらうよ。僕は他の幹部みたく戦うのが好きな戦闘狂じゃないんでね」
予想通りカラメテは俺を倒す事が目的じゃなかったみたいだ。
「バイバイ、仮面ライダーゼッツ。それとエルフのお嬢さん」
灰色のオーロラを潜って去っていくカラメテ。ひとまず状況終了と判断した俺は変身を解除すると、物陰で戦いを見守っていたマリーが声をかけてきた。
「その青いのは風を操れるのかしら?」
「たぶん風だけじゃなく雨を降らせたりも出来ると思う」
「天候を操る力。恐ろしいわね」
確かに天候を自在にとなるとそういう反応になりもするか。
「もう夕方だけど、夜の宿はどうする?」
アークドラゴンとの交渉に遺跡から外に出てからのカラメテとの戦闘。気づけば夕方となってしまった。
「俺は日本に帰るだけだから気にしないけどマリーは・・・」
「私も気にしなくていいわよ。だってあなたの国に一緒に行くから」
「・・・なんとなくそう言うと思っていたよ」
こうして本当の意味でマリーとの日本と異世界を行き来する生活がここから始まったのだった。
次回「覚える」