これは俺が知る由もない話。
何処かの世界にあるワンハンドの拠点。ワンハンドの幹部達はカラメテが集めてきた仮面ライダーゼッツのデータを共有していた。
「あの世界にいる仮面ライダー。ゼッツは胸部のカプセルを交換する事でその能力を変えるね」
「判明してる範囲の能力は確かに強力でこそあるが、お前の戦略を駆使すれば倒せない相手ではなかったはずでは?」
「確かにあの段階の仮面ライダーゼッツを倒すのは可能だったかもしれない。だけどその時の僕のミッションは仮面ライダーゼッツの戦闘データを記録して持ち帰ること。万が一戦って負けて、データも持ち帰れなかったなんてことがあったら大誤算だからね。ミッション最優先さ」
「確かに。情報は力だ。とはいえゼッツの形態が今後も増え続ける可能性は捨ててはならない」
「だからこそ早めに厄介な種は刈り取るべきじゃないかしら?次は私、サイゼンテが出陣するわ」
サイゼンテと名乗った女性幹部は灰色のオーロラを出現させると、それを潜って異世界へと向かうのだった。
「ところでカラメテ。彼女はゼッツの居場所を把握しているのか?」
「分からないだろうね。だけど彼女は最善を引き当てることの幸運においては僕らの中で群を抜いているから大丈夫でしょ」
「あーいーうーえーおー」
ベッドの上に座って日本語の練習をしているマリー、その練習方法は独特でテレビの音に耳を傾けながらノートに文字を書き連ねるというやり方だ。
「あ、おかえりバク」
「ただいまマリー。少し待ってて。今日は挽き肉が安かったから餃子を作ろうと思ってるんだ」
「ギョウザ?」
餃子にはビールが合うとは思うけど、マリーがビールを飲めるとは限らない。一応聞いておこう。
「マリーは麦酒を飲める?」
「正直あまり得意ではないわ。あまり強くないお酒なら少し飲めるけど」
「冷蔵庫にあるのであまり強くないお酒となると、チューハイなんだけど」
マリーは炭酸が大丈夫と断言できないし、今日はアルコール度数が低めなワインにしてみようかな。
「今あるのは白ワインか」
お酒が苦手な彼女でもアルコール度数が9度な白ワインなら大丈夫かな?
「コンニチハ。ワタシ、マリアーベル、デス」
「え?えぇ!?もう日本語の挨拶を覚えたの!?」
「何回も使いそうな言葉だけだけど、重点的に練習したの」
だとしても日本に来て3日目で日本語の挨拶を覚えるのは本当に凄い。俺は魔物の言葉や竜語をほぼ体当たり気味に数年かけて覚えたのに。
「流石マリーだ。さぁ、餃子が焼けたよ」
「これがギョウザ」
1人の時は面倒だから冷凍の成形されている餃子をただ焼くだけだったから、餃子の皮で餡を包むだなんて久しぶりにやったな。そのせいで形が1つ1つ不揃いになったけれど。
「ゴメンね。あまり作らないから形は不揃いになっちゃったんだ」
「いえ、別に気にしないわ。そもそも比較対象を知らないんだし」
「そう言って貰えて助かるよ。さぁ、冷めないうちに」
「「いただきます!」」
マリーは餃子の1つをフォークで刺して口へと運ぶ。
「ん〜!美味しいわ!パリパリとした外側から肉汁あふれるしっかりさが口の中に広がって!」
「それは良かった」
続けてマリーは白ワインも少しづつ味わい、三十分後には餃子とワインはなくなりすっかり出来上がっていた。
「感謝。心から美味しいに感謝よ」
「それは良かった。安上がりな料理だからまた食べたくなったら作れるからいつでも言っていいから」
「これで安上がりなの!?この世界の料理はまだまだ謎だらけだわ。でもそこがいいの。私は幸せだから」
だいぶ酔ってるなぁ。ワイン2杯なのに。
さらに三十分後。酔うのも早ければ酔いから覚めるのも早いマリーは皿洗い中に訪ねてきた。
「ねぇバク。あなたのレベルは77なのよね?」
「ゼッツにならないでのレベルはね。ゼッツに変身しているとレベルの確認が出来なくなるから、変身中はどうなっているか分からないけど。そう言えば聞いた事がなかったけど、マリーのレベルはいくつなの?」
「27」
「・・・」
俺は何も言わずに皿洗いに戻る。
「か、勘違いしないで!私は精霊術と魔術をどっちも習っているから、それと並行してのレベル上げが難しいのよ」
マリーの職業は精霊魔術師。本人曰く一握りのものしかなれない凄い職業らしい。それこそ先代の精霊魔術師は既にこの世にいないほどのレア職業とのことだ。
「だったら俺がレベル40代の相手をギリギリまで削ってマリーがトドメを刺すってやり方で経験値稼ぎをするなんてのは?」
異世界で通用するのか分からないけど、ゲームではよくやる手段の1つだ。
「その発想はなかったわ。本当にできるのかしら?」
「俺もソロが長いから分からないけど、試してみる価値はあると思う」
「ならさっそく試しに向かいましょう!」
マリーはパパっとパジャマに着替えるとベッドへと向かっていく。俺も寝る準備を整えてマリーと共に眠りにつくのだった。
「やっぱりここは経由するのね」
眠りから意識が覚醒すると、やはりと言うべきか。ゼッツルームからのスタートだった。もう流石にゼッツルームには慣れてはきたけど、仮面ライダーゼッツになる前まではここに来ていなかったからどうしてという疑問は残る。
「それはそれとして。せっかくだからデイリーガチャは回そう」
さっそくデイリーガチャのカプセム回しをすると、青いテクノロム系統のカプセムが出てきた。
「これはどんな効果だ?」
【Machinery】
ゼッツフォンでスキャニングして効果を確かめてみる。これはどうやら近未来の技術が宿る機械を作ったり、分解できるカプセムらしい。
「あっちの世界で使えるのか?」
機械技術が発展してない異世界で使えるかは疑問だけど、何かの役には立つはずだ。
「もう1回」
もう1度回してみると、またも青いテクノロム系統のカプセムが出てきた。
【Projection】
投影で分身を作れるカプセムか。これは便利そうだな。
「やっぱり今の俺じゃ2回が限度か。マリーも回す?」
「えぇ、やってみるわ」
マリーも回してみると、赤いカプセムが出てきた。これはインパクトカプセムか?
「ダブる事もあるんだ」
『回す人間の精神状態が影響するとはいえ、これは少なからずランダム性があるからね。同じものが出てくる時もあるさ』
コードゼロの言う通りならマリーの精神状態はインパクトを、つまり強さを求めているという事になる。やっぱり強さを、レベルを上げたいって気持ちが強く出たってことなんだろうな。
「それじゃコードゼロ。俺達はウジャピーク遺跡にレベリングに向かうから」
「え?ウジャピーク遺跡ってたしか」
地図を取り出したマリーは向こうで目覚めるであろうスタート地点とウジャピーク遺跡の位置を確認する。
「ちょっと!ウジャピーク遺跡って2国も離れている距離じゃない!」
「あぁ、そう言えばそうだっけ」
スキルの事もあるけどソロの一人旅が基本だったから気にした事がなかったな。
「そうだっけって。今までどうしていたのよ?」
「長距離移動スキルの旅路の案内者があって、それで一気に」
『ほう、セブンは旅路の案内者のスキルがあるのか』
旅路の案内者は高速移動と言うよりはほぼワープに近いスキルだとマリーに説明しようとすると、コードゼロが口を挟む。
『ならこのルームのシステムと連動できるはずだ。そこのダイヤルにスキルを発動しながら触れてみたまえ』
ゼッツルームのバイク横のダイヤルを操作してみると、窓から見える景色がコロコロと切り替わる。これはまさか出先を選べているのか?
『旅路の案内者は私も持っているスキルでね、他のエージェントも利用してくれると思いこのルームにこのシステムを組み込んだのだが、君が来るまで誰も旅路の案内者を習得しなかったからこの機能が使えなかったんだ』
「まぁ、旅商人でもない限りこのスキルは習得しませんからね」
旅路の案内者は習得までそれなりの年月が必要なスキルだ。こんな物好きは自分以外いないと思っていたけどまさかコードゼロまで習得していたとは。
『これでルームから出たらそこはウジャピーク遺跡の前だ』
「ありがとうございます。それじゃ行こうか!」
「えぇ!」
『GoodTrip』
ゼッツルームの扉を開いたその先は真夏のような暑さの砂漠が、ウジャピーク遺跡手間の光景が広がってきた。
「あ〜つ〜、何よこの暑さは〜」
日差しが肌を刺すような痛みでマリーは砂漠地帯のウジャピーク遺跡に苦言を洩らす。日本にもこれぐらい暑くなる季節、夏があることを伝えたらマリーはどうなることやら。
ウジャピーク遺跡はその昔採掘場であり、魔道具に使う魔石が採れる事から注目された。そして他国から魔石を守るために砦を築きあげたのだが、何らかの理由で魔石採掘は出来なくなり、砦は遺跡と化した。
「遠くからは山のように見えたけれど、中はしっかり遺跡になっているわね」
「炭鉱に近い文化を築きあげたように見えるな。ッ!」
この気配。周囲に10人はいるな。
「どうしたのバク。顔が怖いわよ?」
「あ、うん。大丈夫。それじゃ予定通りレベリングをしよう」
すぐに襲ってくる様子はないけれど、一応警戒はしておくか。
「それじゃマリー、道中説明した通りに」
今回のターゲットは砂漠のオアシスに住む魔物達。推定40〜45レベル。マリーの経験値になるには丁度いいレベルだ。
作戦は単純。魔物達に死なない程度のダメージを与えつつ、マリーの下まで誘き寄せて、トドメはマリーに譲るというものだ。最初は半信半疑だったマリーも実際にチャレンジしてみてレベルが上がってからは何回が繰り返し、あっという間にレベルが40を越えた。
「・・・動いたか」
さっきから俺の直感スキルに反応していた連中が動き出したみたいだ。大方俺が持っている魔導竜の鱗と血に気づいて襲ってこようとしてるんだろうけど、彼らのレベルは正直大したことはないし、不意打ちもこっちが気づいている以上無意味だ。
彼らが襲ってくる。そう考えていたけど、それは違った。おそらくは彼らの仲間の1人が特定の魔物を使役するスキルがあるのだろう。サンドワームが地面から飛び出てきて、俺達を襲ってきた。
「逃げ場がない。相手さんは俺達を倒してから血と鱗を奪うつもりらしいけど」
「それは相手が悪かったわね。バク、アレを使ってサクッと倒しちゃって」
今まではワンハンド相手にしか使った事がなかったけれど、こっちの世界で初めてゼッツの力を問題ないレベルの相手との戦いになりそうだ。
【インパクト!】
【メッツァメロ】【メッツァメロ】
ゼッツドライバーを装着してインパクトカプセムをセットすると、離れたところから見ていた賊の気配が揺らいでいた。まぁ、未知のアイテムに驚くのは当然か。
「変身」
【グッドモーニング!ライダー!】
【ゼッツ!ゼッツ!ゼッツ!インパクト!!】
「そぉれぇっ!!」
仮面ライダーゼッツ、フィジカムインパクトに変身した俺は襲い掛かってきたサンドワームを片手で受け止めると、そのまま両手で掴んで賊の気配が多い場所に投げつけた。その衝撃で遺跡が少しばかり崩れたけれど、これはまあ賊のせいと言えるだろう。
「なんて怪力だよ」
「人間とは思えねぇ」
「情けねえぞテメェら!怪力とはいえヤバいのは1人だ!囲んじまえば!」
賊の何人かは気絶したり戦意を失っているみたいだけど、頭領っぽいのはまだやる気みたいだ。
「あのエルフの女を人質にしろ!あの胸につけた魔道具も奪うぞ!」
「生憎あの仮面ライダーは我々ワンハンドの獲物。貴方達みたいな賊風情が相手をする資格はないわ」
頭領の後ろにいきなり現われた灰色のオーロラから突き出た刃がその腹部を貫くと、刃の持ち主がオーロラから出てくる。
「な、何者だてめえ」
「私はワンハンドが1人、必見のサイゼンテ」
ワンハンドのサイゼンテと名乗った女性は紫と金の色合いをした剣を頭領から引き抜くと、その血を布で拭き取る。
「さぁ仮面ライダーゼッツ。踊りましょう。刃と刃で互いを斬り合うダンスを」
「俺様を無視して話をしてんじゃねぇ!」
「よせ!!」
俺の制止に聞く耳も見せなかった頭領はサイゼンテに斬りかかろうとするも、サイゼンテは靴に仕込んでいた刃を展開し、回し蹴りで頭領の剣を持つ右手を切り落とした。
「模造品とはいえ仮にも聖剣を貴方のような穢らわしい血であまり汚したくはないのよ」
頭領の首を斬り落とそうとするサイゼンテの靴の刃をギリギリのところで俺が止めた。頭領は出血多量と首まで迫った刃への恐怖で気絶したようだ。
「救う価値のない命まで守ろうとする無駄な正義感。やはり仮面ライダーね」
【ジャアクドラゴン!】
【ジャアクリード】
「その正義感。私の刃で斬り裂いてあげる。我が刃に刮目なさい。変身」
【暗黒剣月闇】
【Get go under conquer than get keen】
【ジャアクドラゴン!】
【月闇翻訳!光を奪いし漆黒の剣が、冷酷無情に暗黒竜を支配する!】
サイゼンテは聖剣の模造品らしい剣と本型のアイテムを用いて紫色の戦士に変身。その剣先を俺に向けてくる。
「仮面ライダーカリバー。常在戦場」
次回「斬る」