サイゼンテが変身した仮面ライダーカリバーはその剣先を俺に向けてくる。
「コイツは・・・ヤバそうだ」
放ってくる殺気が俺の直感スキルに反応する。これまでのワンハンドを名乗る連中は油断していたり、ただデータを取るためで全力とは言えない相手だったけれど、今回のサイゼンテはここで俺を葬るという意思が込もっている。それは敵意ではない純粋な殺意だ。
「だけどやるしかない」
ブレイカムゼッツァーのソードモードを構えてはみたけれど、単純な剣術ではカリバーの方が格上だ。かといって策もなしに銃で勝負しようものなら斬り落とされそうな気がする。
「これでッ!」
【ブレイカムスラッシュ!】
トランスフォームのカプセムをブレイカムゼッツァーにセットすると、その刃が鞭のようにしなり、伸び縮みする刃になる。俺はそれを蛇腹剣のように振るって攻撃しようとするも、俺の剣技は初見から見切られてしまい、何度も振るった刃はすべて紙一重で回避されてしまった。
「あのサイゼンテとかいう人、バク以上に戦い慣れている」
カリバーが素で見切っているのかスキルを発動しているのかは分からないけど、俺よりも場慣れしていることは間違いない。
「格上だと判断できる相手に対処する方法は・・・」
この場には俺だけでなくマリーもいる。2人で戦えば勝てるはず!と期待したい気持ちはなくはないけれど、相手が相手だ。ゼッツに変身している俺はともかくマリーは生身。万が一って事があり得る。ならば勝つよりも再優先は2人で生き延びること。戦略的撤退がベストだ。
「マリー。今の俺達じゃサイゼンテに勝てる見込みがない。撤退しよう」
「そうね。私もそう考えていたわ」
「あら?逃がしてもらえると思っているのかしら?」
「まあ、思ってはいないな」
かと言ってそう安々と見逃してくれるような相手ではないのは殺気から分かってはいた。
「隙を作るには、これだ」
【プロジェクション!】
【メッツァメロ】【メッツァメロ】
【グッドモーニング!ライダー!】
【ゼッツ!ゼッツ!ゼッツ!プロジェクション!】
青いテクノロム系統に左肩に光学迷彩マントのレムプロジェクションを装備したテクノロムプロジェクションになった俺はカプセムを回転させると実体のある投影体が6人生成された。
「Attack」
指をパチンと鳴らして攻撃の合図をすると、投影体達がブレイカムゼッツァーのガンモードで一斉にカリバーを銃撃する。
「ダメージがある。幻影ではなくそれぞれに実体があるということね。・・・斬りごたえがあってイイじゃない!」
流石に本体の俺も含めた7人のゼッツによる銃撃は捌ききれないカリバーはダメージが最小限になる攻撃だけを受けつつも、俺達に接近。1人のゼッツを斬り裂き撃破した。
「残念。それはハズレだ」
投影体の1人が撃破された俺は即座に追加の投影体を生成して、再び7人のゼッツで攻める。
「本体を倒さない限り7人のままなのね。だけどこんな豆鉄砲じゃ私を倒せないわよ」
「確かに、これじゃ攻撃力が足りないな」
だけどさっきブレイカムゼッツァーにトランスフォームカプセムの力を付与出来た事で足りない攻撃力を補う術は覚えた。
「足りないパワーは、こうすればいい」
【ブレイカムバレット!】
ブレイカムゼッツァーにインパクトカプセムをセットした俺はパワフルな拳型に形成したエネルギー弾を放ってカリバーを攻撃すると、流石のカリバーも剣でそれをガードした。
「今がチャンスだな」
【ストリーム!】
【グッドモーニング!ライダー!】
【ゼッツ!ゼッツ!ゼッツ!ストリーム!】
テクノロムストリームとなると同時に投影体は消えてしまったが、カリバーが攻撃を防いでいる隙にストリームの能力で霧を発生させ、それを目眩ましにして俺とマリーはその場を離れて遺跡内に身を隠した。
「あら。逃げられちゃった?まさかこの私から逃げる事ができたなんて・・・。面白いじゃない。このまま追いかけ回して倒すのは最善ではないわね。ここはもう少し楽しむために帰りましょうか」
気配を殺し、身を隠している俺とマリーはカリバーがそのまま帰ってくれることを祈っていると、カリバーは何処からか飛んできた銃撃を剣でガードした。
「コードセブン。あの新人はともかくそのまま帰すほど我々Codeは甘くないぞ」
銃撃の方向からは白いコートに白い大型の銃を構えた男が歩いてきた。
「あなたは?」
「コードナンバー4。コードフォー」
いるとは分かっていたけれど初めてみた。俺以外にこっちの世界に来れるCodeのエージェントを。
「お前はここで消す」
コードフォーはゼッツドライバーとよく似た白いドライバーを胸に装着すると、紫色のカプセムをそれにセットした。
「まさかあなたも」
「そのまさかだ。変身」
【シャドウ!】
ドライバーのトリガム部分を押して、変身の掛け声でドライバーを左に1回転させたコードフォーの身体が足元から広がる霧と影に包まれる。それが装甲になりながら変身音が響く。
【ハッハッハッハッハッハッ!】
【ライダー!ノクス!ノクス!ノクス!】
【シャドウ!】
「仮面ライダーノクス」
白と紫のカラーをした仮面ライダー。仮面ライダーノクス。それがコードフォーが変身したライダーの名前のようだ。
「1日に2人のライダーと戦えるだなんて。嬉しいじゃない!」
「ワンハンド。組織の敵は俺が潰す」
【ブレイカムバスター!】
【カリバーモード!】
ノクスは白い大型の銃を大剣に組み替えるとカリバーと刃を交える。大剣ともいえるノクスの剣はカリバーの持つ聖剣より重いからか、刃の重みに負けたカリバーは片膝をついた。
「私に膝をつかせたのは仮面ライダーレジェンドぶりね」
「膝をつく程度で済むと思うな」
仮面ライダーレジェンドというのが誰かは分からないけど、話の口ぶりからきっとワンハンドと敵対している仮面ライダーなのは間違いないだろう。
「そっちも、そう安々と私を消せると思わないことね」
カリバーは紫色の斬撃波を至近距離からノクスへと飛ばすと、ノクスは斬撃波を剣でガードする。しかし勢いは殺しきれずに後ろに下がらされてしまうと、カリバーは紫色の邪竜を模したエネルギーを飛ばしてきた。
「ッ!!」
【ブレイカムバースト!】
大剣にカプセムをセットしたノクスは白と黒が混ざり合う斬撃波で邪竜を模したエネルギーを打ち消すと、カリバーは剣を下ろした。
「仮面ライダーノクス。あなたとの戦いは中々に楽しめたけれど、あなたの登場でこの世界に干渉してる仮面ライダーがゼッツだけじゃないことが確定して、招集がかかっちゃたみたい。名残惜しいけれど、今回の戦いはここまでね」
灰色のオーロラを展開したカリバーはそれを潜ってこの世界から去っていく。流石にノクスは単身で敵陣に乗り込むような考えはないようでこの場でサイゼンテを倒せなかったことを残念がりながらもカリバーを追いかけることはしなかった。
「おい新人。いや、コードセブン」
「は、はい!」
身を隠していた俺とマリーに気づいていたノクスは俺達に声をかけてきたので反応してしまう。するとノクスが変身を解除したので俺も変身を解除する。
「僅かに面影はある程度だが、懐かしさはあるな」
俺の顔を見てコードフォーはそう呟く。この人と俺、何処かであったことがあるのか?
「その反応、やはり覚えてはいないか。いや、それが当然なのだが」
なんだろう。この人の顔に見覚えがあるような気がしなくもない気がしてならない。
「まぁいい。俺はCodeへと帰還してワンハンドの事を司令官ゼロへと報告する。お前は『冒険者』として賊を壊滅させたことを報告しておけ。あそこの奴もお前に任せる」
コードフォーは俺にこの場の事後処理を指示すると夢から覚めるようにこの場から消えていく。おそらくはゼッツルームのコードゼロに報告しに行ったんだろう。ところで・・・。
「あそこの奴って誰のことだ?」
俺とマリーはコードフォーが見ていた視線の先にあった建造物に向かってみる。
「マリーはここで少し待ってて」
「気をつけてね」
マリーを外で待たせて、俺は建造物の中に入ってみると・・・。
「わ、わわッ!?」
猫タイプの獣人族の子供が鎖に繋がれていた。たぶん何かしらの目的があって賊が生かしたまま捕まえていたんだろう。
「怖がらないでいい。君に危害は加えない」
「獣人語。分かるんデスか?」
「まぁね。ところで捕まっているのは君1人?他に仲間は?」
「はい。独りデス」
この怯えた様子。仲間はいたかもしれないけど、今はもう・・・って事か。
「助けてほしいなら手を貸すけれど、どうする?」
怯えて人間を信用できないかもしれないし、信用できない相手に助けを求めるのは難しいだろうから確認を取る。出来れば素直に助けを求めてほしい。
「助けてくだサイ!もう罪もない旅人を魔物に襲わせるのは嫌デス!」
「分かった。君を助ける」
俺はブレイカムゼッツァーの刃で鎖を斬る。鎖と一緒に賊へと抱いていた『恐れ』も断ち切られた獣人族の子供とともにマリーが待っている外へと出た瞬間。先ほどのサンドワームが俺達の前に再び姿を現した。
「またか!」
ゼッツドライバーを装着しようとすると、獣人族の子供は『倒さないで』と言葉にするよりも先に俺とサンドワームの間に入ってきた。
「待ってクダサイ!この魔物は僕が魔石で喚んでしまっていただけなんデス!だから!」
だから倒さないでほしい。というわけか。
「魔石で喚んでいた。君の手にあるのがその魔石なのかい?」
「はい。僕の祖先は魔石を掘り当てて、追いかけてきた古の怪物はウジャピーク遺跡を滅ぼしたらしいデス」
なるほど。魔石で喚んでいたことも含めてだいたい繋がってきたぞ。
「このサンドワームの目的は君の持つ魔石だ」
「そう、なんデスね。あの、ずっと喚んでごめんなさい!ご先祖様から伝わる魔石デス!アナタにお返しシマス!」
獣人族の子供は魔石をサンドワームに返却し、サンドワームは触手でそれを受け取る。するとサンドワームは地面を掘り進めながらこの場から去っていった。
「さてと、これでひとまず今回のミッションは完了かな」
マリーのレベリングは成功した。サイゼンテからの撤退もコードフォーのおかげもあって逆に撤退させられることができた。賊に捕まっていた獣人の子供も助けられた。まぁそれなりに上出来だろう。
「それはそれとして。何このコ!かわいい〜!」
獣人の子供をマリーはまじまじと見つめる。すると猫のような愛くるしさからマリーは抱きついて愛で始めた。
「マリー。そっちも気になるだろうけど、ちょっとこれを見てくれないかな?」
この地が滅びて遺跡になったのは200年前。長く彷徨っていたサンドワームが開けた穴は遺跡の地下に眠っていた地下迷宮へと繋がる道を開通させていた。
「嘘!?地下迷宮!?大発見じゃないの!!」
「俺も驚いてる。ひとまず賊のことも含めて地下迷宮のことをこの国に報告しよう」
「テメェだけは、逃がさねぇ」
俺達が地下迷宮を報告するためにウジャピーク遺跡を離脱しようとすると、意識を取り戻した頭領が斬られた腕を布で覆って止血したばかりといった状態で俺の前にまたやってきた。
「再戦希望は構わないけれど、きちんと手当てして傷を癒やしてからの方がいいんじゃないのか?」
「うるせえ!テメェだけは確実にここで仕留める!」
さてどうするか。手負いの獣ほど凶暴とはよく聞く話だけど、仮面ライダーゼッツに変身してダウンさせようものならそれこそ頭領のショック死は確定だ。・・・出来ればマリーやこの獣人族の子供の前でそんな光景は見せたくない。ほどよく加減はしつつ、ワンパンでダウンさせるのが望ましいな。
「っ!」
そこで俺は何かを思い出すかのように閃く。カプセムを生身のまま行使する手段を。
「死ねぇっ!」
頭領が俺に剣を振るってくるよりも先に、俺はインパクトカプセムを回転させてその力を発動する。それにより片手で頭領の剣を白刃取りしつつ、握り潰すようにその刃を砕いた。
「なっ!?」
「ちょっと強めに殴るから。気張った方がいいぞ」
「ふざけ・・・ゴボッ!?」
生身とはいえインパクトカプセムの力で殴られた頭領は一発で完全に意識を失って倒れ込む。
「やったわねバク!・・・バク?」
「あ、うん。大丈夫」
ゼッツドライバーもそうだがどうして俺はカプセムの使い方を知っているんだ?思えばコードフォーは昔の俺を知っている素振りをしていた。もしかしたら俺がカプセムの力の使い方を知っているのと、俺が10歳より前のことを思い出せないこと。関係があるのかもしれない。
次回「探る」