「やぁ、厄介な相手に遭遇したようだね。コードフォーから話は聞いてるよ」
国に地下迷宮の報告を終えた俺とマリーは宿にて眠りにつきゼッツルームに向かうと、コードフォーから事情は聞いているコードゼロが声をかけてきた。
『まさかコードフォー、仮面ライダーノクスと互角の相手がやってくるとは。こちらも異世界での戦力を調整しなければいけないようだ』
「コードゼロ。異世界で戦える戦力はどれほどいるんですか?」
『ふむ。私も含めたとしても、夢を介して異世界に渡る力を有しているエージェントは8人しかいない。選抜基準はいえないが、その8人の中でも仮面ライダーを名乗る事が許された戦士は今現在は仮面ライダーゼッツである君と仮面ライダーノクスのコードフォーの2人だけだ』
「たった2人・・」
それだけ厳しい基準の戦士になんで俺が選ばれているのかは分からないけれど、もしかしたら俺の覚えてない過去に秘密があるのかもしれない。
「初対面のはずのコードフォーは俺を知っているような反応をしていました。コードゼロはその理由を知っていますか?」
『・・・知っているが、今はまだ話せない。時が来たら話す』
やっぱりコードゼロは知っているんだな。だとするとこれ以上の探りは逆に互いの信頼関係に響くから追求はやめておこう。
「それはそれとして、せっかくだし回すか」
ひとまずは気持ちを切り替えてカプセムドロッパーの前に立つ。敵も本格的になりつつある今、俺は守れる力を欲していた。
「強敵からもマリーを守れる力がほしい」
そうついつい言葉にしながらもガチャを回すと、今回は緑色のカプセムが出てきた。
【Recovery】
リカバリー。復元を司るカプセムか。治したり直すことができるみたいだけど、よく分からないからあとで試してみるか。
「もう1つ」
【Varia】
バリア。防御を司るカプセムで能力はそのままのバリアか。これは使い勝手が良さそうだ。
「ねぇバク。あの時バクがカプセムを生身で使えたように私にもカプセムを使えるのかしら?」
「たぶん使えるんじゃないかな。どうなんですかコードゼロ?」
『使えなくはないが、正しく運用するには1度能力を見てイメージできるようにした方がいい。使うとしたらコードセブンが使うのを見てからのものにすべきだね』
「確かに魔術を使うにもイメージするのは大切だし、使い方をあらかじめ知っておくのは大事よね」
マリーもガチャを回してみると、マリーも同じくバリアカプセムを引き当てた。
「早くも同じのがでたな」
「守られてばかりじゃなく、自分のことは自分でと思っていたらコレだったわ」
次に向こうの世界に行ったら、リカバリーとバリアはマリーに見せておこう。
「朝6時、よね。バク。今日は仕事に行かなくていいの?」
眠りから覚めたマリーは俺が仕事に行かずにゆっくりと起きようてしていた事を気にしていた。
「今日は土曜日だから休みなんだ。せっかくだから2人で出かけようか」
着替えて準備を整えた俺とマリーは歩いて街を散歩し始める。するとマリーは川を気にし始めた。
「こんなに川を整備して、精霊も流石に元気がないわね」
「この辺りは昔水害が酷かったらしくてね。だからしっかりと治水されているんだ。やっぱり精霊の声は聞こえない?」
「えぇ。見えはするけど声は聞こえないわ。精霊とまだ意思疎通出来なかった子供の頃な気分」
精霊の事はよく分からないけれど、国や人種で言語が違うようにこっちにはこっちの精霊達の意思疎通の仕方があるのかもしれないな。
「みゃ~」
「ん。猫か」
鳴き声に振り返ると首輪のついた何処かの飼い猫が草むらから出てきた。かなり人懐っこいようで自分からマリーに近づいている。
「へぇ、猫って言うのね。なんだか獣人族のあの子に似てる気がするわ」
あの子供も猫科だったな。というか言われるまで向こうの世界に猫がいない事を気にしてなかった。
「バク、猫はたくさんいる生き物なの?」
「そうだな。下町のこの辺は放し飼いしている家も多いと思う」
「へぇ〜」
「駄目だマリー。猫は触られたい時に自分から主張するから」
近づいた猫にマリーは手を触れようとしたので、念のため注意しておく。すると猫は触るのを許可したのかマリーの手に顔をスリスリとしてきた。
「ば、バク」
「たぶんいいと思うけど」
この猫は飼い猫だから判断が難しいんだよな。犬だったら飼い主に了承を得てから触るのがマナーだけど、猫はよく分からない。
「猫ちゃん。触りますよ〜」
マリーは恐る恐る猫を撫でてみると、飼い猫という事もあって人馴れしている猫は喉からゴロゴロと鳴らす。人に甘えたい時に鳴らすらしいけど、本当に人馴れしている猫だな。
「にゃー」
やがて撫でさせるのはここまでというように猫は俺達のもとを去っていくと、マリーは残念そうにしていた。
「さぁマリー。そろそろ今日の目的地に向かおうか」
本日の目的地、歩いていける距離にある図書館へとやってきた。
「ここが図書館なの。それにしては明るい場所なのね。本にとって日光は敵なのに。本は貴重じゃないの?」
「こっちでは向こうほど本は高価なものではないんだ。えっと、児童文学はこの奥か」
「子供も本を読むの?」
「読み聞かせって文化もあるくらいだからな」
「向こうでは文字を読めるのはおそらく3割程度よ。大抵は貴族や魔術師しか読まないもの」
確かに向こうでは文字を読めなくても支障がないからな。俺は語学だけじゃなく向こうの文字も習得はしたけど。
「ちょっと待ってバク。あなたさっき児童文学と言っていたわよね。まさか私に子供向けの本を読ませようと考えているのかしら?」
「文字を覚えて貰うのにはちょうど良さそうだからそのつもりだったけれど」
「いくらなんでも私を子供扱いし過ぎよ」
「まあまあ。そう言わずにとりあえず言ってみよう」
事実子供向けの絵本ならひらがなと絵で読みやすくされているから、いきなり漢字ばかりの本よりならまだ文字をマスターした訳では無いマリーでも大丈夫なはず。
「色鮮やかな本ばかり。これが本当に子供向けの本なの?」
「気に入った本があれば借りてくるよ」
「借りられるの?汚したり盗まれたりする心配はないの?」
「まったくないとは言えないけど、だから大切に借りるんだ」
「この国はそういう考え方の人間性なのね」
意識した事はなかったけれどレンタルという文化が強く根付いた文化圏だからこその考え方だよな。
「すみません。この本を借りたいんですけど」
「はい。確認致しますね」
受付の女性に借りるつもりの本を渡したタイミング。その女性と視線が重なる。
「「あっ」」
そこでようやく知り合いの人に遭遇した事に、互いが気づいた。
「お久しぶりです宮本さん」
「北瀬くんもお元気でしたか?」
「ば、バク。知り合いなの?」
「同じマンションに住んでいる宮本紅葉さん。図書館勤務とは聞いていましたけど、ここで働いていたんですね」
今のマンションに入居したばかりの時に色々とお世話になったな。最近は仕事の時間帯やらであまり会わなかったけれど。
「なるほど。そちらが・・・」
「え?マリーの事をご存知で?」
マリーをまじまじと見つめた宮本さんに一応尋ねてみる。
「ご近所さんから、最近北瀬さんが綺麗な外国の女性と同棲してると噂を聞いていたんですよ。噂通り、綺麗な方ですね」
「ど、同棲」
まぁ、実際世間的にはそうなっちゃうのか。
「こんにちは。お名前を教えて」
「マリー。せっかくだから日本語のあいさつをしてみよう」
「ハジメマシテ。私ノ名前は、マリアーベル、です」
うん。昨日よりも日本語が上達してる。
「よろしくね。マリアーベルさん」
無事に本を借りた俺とマリーは図書館を後にする。
「報告には聞いていたが、まさか本当にエルフがこちらの世界に来ているとは」
口調が変わっていた宮本さんの呟きに、俺達は気付くことは出来なかった。
「さてと、今日のお昼は・・・そこのカフェにでも入ろうか」
お昼ご飯を悩んでいた俺は偶然視界に入ったカフェに決めて、店内へと入る。
「同じお茶屋さんでも向こうとは結構雰囲気が違うわね。強いて言えば、ちょっとオトナな気分」
100歳超えのエルフがこんなことを言ってます。
「ここは珈琲のお店なんだ。とはいえ初めての人に珈琲は苦いだろうからカフェオレにしておこうか。すみません。モカブレンドとカフェオレ。それとパンケーキを2つ」
「かしこまりました」
待つこと数分。まずは俺のモカブレンドが運ばれてきた。
「随分と黒い飲み物ね」
「一口飲んでみる?」
「それじゃあ。・・・むぅ~っ」
マリーは恐る恐るモカブレンドを一口飲んでみると、予想通りにとても苦そうな反応をしてくれた。
「苦い飲み物ね。・・・本当に飲み物?よくこれを平気な顔で飲めるわね」
「マリーのカフェオレはミルクが多めに入って苦味が緩和されているから安心して飲んでいいよ」
「本当に?・・・あら、美味しい」
ブラックの珈琲は流石に無理そうだけれどもカフェオレなら問題なさそうだ。
「お待たせしました。パンケーキです」
2人分のパンケーキが運ばれてきたので温かいうちにとさっそく俺とマリーは一切れを口にいれる。
「うん。評判がいいのは知っていたけど、やっぱり美味しいな」
「凄い。フワフワしてて、口のなかで溶けていくみたい」
どうやらマリーもお気に召したようだ。
俺とマリーは喫茶店での軽食を終えるとマンションへと家路を辿る。
「正直なところ、古代迷宮の探索。私は参加できるか怪しいわ。難易度が高くて私のレベルだとたぶん許可が下りないわ」
「そうなんだ。そうなったら俺も辞退するかも。行くならマリーと一緒に行きたいからね」
「///ッ。あなたは平気な顔で!」
まぁ、あれほどの規模の地下迷宮だ。もしかするとCodeのエージェントが誰かしら調査に動いたりするかもしれないな。
これは俺が知る由もない話。
「ご苦労さん。差出人は、マリアーベルか」
異世界、アレクセイ地方。魔術師ギルド。マリーが送った書文がそこに到着した。
「最近姿を見せなかったと思っていたら2つ国を跨いだところまで行ったとはな」
書文を受け取った役員はそれを長へと渡すべく足を急がせると、1人の男がそれを奪い取った。
「スヴェン様!いったい何を!それはまず長に手渡す決まりです!」
「そうか。ご苦労。なら俺が読んだ後で渡しておいてやろう」
「なりません!」
役員はスヴェンと言う男から書文を取り返そうとするも、魔術で操作された剣が役員の喉仏に突きつけられる。するとスヴェンはその魔術を維持したまま書文の内容を確認しだす。
「差出人はやっぱりあのエルフ女か。・・・何、アリライで古代迷宮を発見だと?上のジジイ共が騒がしいと思えば、マヌケ共め。俺に隠し通せると思うなよ」
双刃の魔術師スヴェン。アレクセイ地方にいる魔術師でその名を知らない者などいないと言われるほどの猛者。迷宮攻略に精通しているが気性が荒いというが有能なこともあり、追放もできない。魔術師ギルドにとっては頭の痛い存在。
「面倒な奴が動いてしまう前に、こちらが動くか」
役員に扮して魔術師ギルドに潜入し、一連の出来事を間近で見ていたコードフォーはスヴェンが動く前に動くことにしていた。
また別の場所。これもまた俺が知る由もない話。
「仮面ライダーゼッツに仮面ライダーノクスか。我々以外にもあの世界に干渉している存在がいたことは把握していたが、同システムの仮面ライダーが2人も我々に接触してきたということは相手は同じ世界、同じ組織である可能性が高いな」
サルノテ達ワンハンドの幹部は異世界で接触した仮面ライダーの事を議題にしていた。
「コードセブンにコードフォー。7と4か。コードセブンを新人扱いしていたらしいし、少なくとも7人は同じ組織の者達が干渉していると考えてよさそうだね」
「お互いまだ本気でなかったとはいえ、私と斬り合えるコードフォーのような相手が他にもいるのね。今度はちゃんと準備して全員斬り刻んであげなきゃ」
「サイゼンテ。戦いを楽しむ戦闘狂であることは把握しているが、我々の目的は『あの方』の悲願であるあの世界の何処かにあるという『秘宝』を我らが手にし、すべての世界を『平和な世界』に書き変えることである事を忘れるな」
サイゼンテはサルノテに戦いを楽しみ過ぎていることを咎められると、サルノテは席から立ち上がる。
「次は俺が出る。・・・これを使うか」
ライダーの装備を模倣したアイテムが収められた武器庫から鬼の顔がついた音叉を手に取ったサルノテは灰色のオーロラを展開して異世界へと出撃していた。
次回「誘う」