眠りにつきゼッツルームでデイリーガチャを回した結果トランスフォームとウイングがダブり、異世界冒険をアリライにて再開した俺とマリーなのだが、現在息切れをしながらも猛ダッシュをしていた。
「大人としてェ゙!遅刻はァ゙!」
本日開かれる迷宮の報告会に、迷宮を発見した者として招待されていたのだが・・・王城の場所が分からずに真逆の方向に進んでしまっていて、全速力で王城に向かっている。バイクに、マシンゼロイダーに乗ればすぐなのだが、こんな人目のつく場所で乗るわけにもいかず走るしかなく。ギリギリに、本当にギリギリで間に合った。
周囲を確認するとレベルが高そうな人も所々にいて、マリーが言うには魔導士のアジャというその界隈では知らない人がいない人も来ているそうだ。
「集まったな諸君。これより先日発見さるた地下迷宮の調査報告を始める。迷宮は広く深く、危険であるという報告が届いている。まだ査定中だが難易度はAAレベル、もしくはそれ以上と判断できる」
AAレベル。その報告に周囲はざわつく。
「ねぇバク。どうして皆難易度が高くて喜んでるの?」
「迷宮規模が大きいからドロップ品が期待できるし、難易度が高ければより良い物を期待できる。ここに集まった人達の大半の目的は宝で、でたもの次第では戦争を超えるほどの収益になるからな」
「まだ鑑定中だが肝心の魔石に関しての報告だ。既にそれらしいものが出土したので現時点を持って遺跡は我々以外の立ち入りが出来ぬよう封鎖する」
皆、報告会が終わったというのに帰る気配がない。周囲の人を見渡してみると、これをチャンスと情報交換を始めていた。
「それじゃ俺達も調査許可証を貰いに行こうか」
「せっかくだし私達も情報を集めましょう」
「構わないけれど誰に声をかけるか決めてる?」
頷いたマリーに俺はついて行くと、そこには細身で長い髭の老人が座っていた。
「は、初めましてアジャ様。私はアレクセイの精霊魔術師マリアーベルと申します」
「俺はバクといいます」
「ふむ、お主。変わった人相をしているな。本当にこの世に、人の世界の存在か?」
このお爺さん。一目俺を見ただけで俺を違う世界の人間だと見抜いたのか。
「なんてな。年寄りの戯言だと思ってくれ。わしの名はアジャ。歓迎するぞ発見者達よ」
「ど、どうも」
これは思っていた以上に食えない爺さんかもしれない。
「それにしてもこの国の人間は魔石がどのようなものかも分からぬうちにはしゃぎすぎではないかの?」
「以前は獣人の猫族が魔石の精製をしていたと聞きました。何故人にはできないのでしょうか?」
「それもまた謎なんじゃ」
たかだか二百年のことなのに文献にはまるで残されてない。意図的に歴史から抹消されたのは間違いな。
「迷宮では顔を合わすじゃろう。準備に余念がないようにな。おいハカム」
アジャさんは先ほど壇上にいた男性を呼んだ。
「この者らにも許可証をはよ渡してやれ」
「・・・迷宮攻略の総司令官のハカムだ。許可証は出すが先走るなよ。出発はまだ先だからな」
「そんな事はしませんよ」
出発タイミングぐらいよほどのことがない限りは守るさ。
「見たところ武器がないように見えるが・・・」
「ありますよ」
ハカムさんは俺が武器を持っていない事を気にしたので、俺はサッとブレイカムゼッツァーを取り出す。
「何処から取り出した?」
「イメージしたら取り出せるんです」
「デザインもそうだが魔導具の類か」
アジャさんは何か言いたげな顔をしているけど、追及されると面倒だから気にしないようにしよう。
その後適当な談話をした俺達ハカムさんに頼まれごとをしたので、指定された場所へと向かってみる。
「流石にあの武器を見せたのは駄目だったと思うわよ」
「そう、だったかもな」
「もし下手に追求されたとして、あなたの2つの力を公には出来ないでしょう?」
「あぁ、そうだな」
2つの力。現実と異世界を渡る力と仮面ライダーゼッツとしての力のことだ。
前者は今のところマリーとアークドラゴンしか知らないが、ゼッツの事は先日の賊達も知っている。今のところ賊の妄言として扱われているみたいだけど、あまり人前での変身は出来ないな。どちらの力も知れ渡ったら利用しかねない。
「ところで目的地はそろそろかしら?」
「たしかあの川沿いの先らしいけれど」
もう少しで目的地に到着する。そんな最中、突如として灰色のオーロラが俺達の前に出現する。
「また会ったな。コードセブン。いや、仮面ライダーゼッツ」
「お前は、サルノテ!」
灰色のオーロラから出てきたのはこの異世界で最初に遭遇したワンハンドのサルノテだった。
「今回こそお前を倒す!」
鬼の顔がついた音叉を取り出したサルノテは近くの壁を軽く叩くように音叉を鳴らすと、それを額にかざす。するとサルノテは桜吹雪に包まれ、その体は緑と赤が特徴的な戦士へと変化した。
「歌舞鬼、推参」
あの鬼みたいな仮面ライダーは仮面ライダー歌舞鬼って言うのか。
【ストリーム!】
「マリーは下がっていてくれ。変身」
【メッツァメロ】【メッツァメロ】
【グッドモーニング!ライダー!】
【ゼッツ!ゼッツ!ゼッツ!ストリーム!】
周囲に人気がない事を確認してからゼッツ、テクノロムストリームに直接変身した俺はブレイカムゼッツァーのソードモードを構えると、歌舞鬼は音叉を再び手に取る。
「鳴刀、音叉剣」
すると音叉は刀のような形に変化し、歌舞鬼はその刀を突き出すように構えた。
「報告ではその青い形態の派生には分身能力があるのだったな。ならばこちらも数を用意しよう」
灰色のオーロラから出てきた黒いコートを頭から被るワンハンドの構成員達十数人は一斉にがんきのようなアイテムを取り出すとそのスイッチを押す。すると彼らの姿は水色の怪人へと変化した。
「眼魔スペリオル。コイツらは俺のようなワンハンド幹部ほどではないが中々に強いぞ。お前1人で倒せるか?」
確かに眼魔スペリオルとかいう怪人は1対1なら倒せるレベルだとは思うが、こうも数を用意された上に歌舞鬼とかいうサルノテが変身したライダーまでいるとなるとそう安々となんとかはならなそうだ。
「マズいな」
これだけ異形の亜人と俺も含めた怪しい戦士が争っているとなると騒ぎに気づいた人達が集まってきてもおかしくない。あまりゼッツの姿を見られるのはCode的にもよろしくないだろうし、なにより人を巻き込むのがよくない。
だけどこちらのそんな考えなど知る由もない歌舞鬼や眼魔スペリオルは周囲への被害を気にもしないでこちらを攻撃してくる。
最初は野次馬のようにやってきた人達もすぐに我先にと逃げるようになり、人々が、町が、俺達の戦いに巻き込まれて傷ついていく。
「これ以上、人々や町を傷つけさせない」
この状況を解決するため、俺はリカバリーカプセムをゼッツドライバーにセットした。
【リカバリー!】
【メッツァメロ】【メッツァメロ】
【グッドモーニング!ライダー!】
【ゼッツ!ゼッツ!ゼッツ!リカバリー!】
「この能力なら」
【リカバリー!】
緑色のゼッツ。エスプリムリカバリーに変身した俺は、胸のリカバリーカプセムを回転させてその能力を発動する。するとリカバリーカプセムの能力で傷ついた人々だけでなく、崩れた建築物までもが元通りとなった。
「回復。いや、復元しているのか」
歌舞鬼も流石にこれは驚くよな。俺も内心驚いてる。
「もう壊させない」
更に俺は次なるカプセム、バリアカプセムを取り出してゼッツドライバーにセットする。
【バリア!】
【メッツァメロ】【メッツァメロ】
【グッドモーニング!ライダー!】
【ゼッツ!ゼッツ!ゼッツ!バリア!】
両腕に盾が装備された姿。ゼッツ、エスプリムバリアへと派生変身した俺はその能力で町を守るためのバリアを展開。さらには他の人達をこれ以上巻き込まないために俺達だけをバリアで包み込んで1種のフィールドを作り出す。
「今度はバリアか。よほど周囲の者共を巻き起こせたくないと見える」
歌舞鬼はバリアを破壊しようと刀を振るうも、バリアは傷一つつかない。眼魔スペリオル達も一斉にエネルギー弾で攻撃してもバリアは砕けない。
ブレイカムゼッツァーを斧型形態のアックスモードに変形させた俺は、それを力強く振るってバリアの強度に苦戦している眼魔スペリオルを攻撃する。やはりこれもフィジカムインパクトほどのパワーはないようだが、ブレイカムゼッツァーを力任せに振るうことでそれは補う事ができた。
「ならばバリアを展開しているお前を先に倒すまでのことだ」
眼魔スペリオルは俺目掛けてエネルギー弾を放ってきたので、両腕の盾でガードする。バリア程の防御面積はないが、それでも盾の防御力はバリア並に硬く眼魔スペリオルには破られなかった。
「このまま一気に!」
【バリア!】【バニッシュ!】
エネルギー弾をガードしながら突撃した俺はブレイクダンスをするように回転して眼魔スペリオル達に連続キックを叩き込む。
【ゼ!ゼ!ゼ!ゼッツ!!】
眠るように爆発した眼魔スペリオル達は元の人間の姿に戻って倒れ込み、残るは歌舞鬼だけになった。
「さぁ、残るはお前だけだ」
「なるほど。防御力、硬度を利用した力押しか。面白い戦法ではあるが、そんなつけ焼き刃のようなやり方は俺には通じないぞ」
刀を収めて腰にある2本の棒を手に取った歌舞鬼はそれを振るって攻撃してくる。
「くっ!」
俺は棒を盾でガードするものの、ガードの隙間を巧みに突いてくる歌舞鬼の攻撃を何発か貰ってしまう。すると歌舞鬼はベルト中央のアイテムを外して俺に押し付けてきた。
「音撃打!豪華絢爛!!」
押し付けられたアイテムはエネルギー波で拡大すると、それに向けて太鼓を叩く動作で歌舞鬼は棒を振るう。奏でられた音は衝撃になって俺の全身を駆け巡り、盾による防御をものともしなかった。
「うわぁぁ!?」
その攻撃で全身にそれなりのダメージを受けた俺はリカバリーカプセムを取り出してゼッツドライバーにセットする。これで回復しないと動けそうにない。
【リカバリー!】
【グッドモーニング!ライダー!】
【ゼッツ!ゼッツ!ゼッツ!リカバリー!】
【リカバリー!】
リカバリーの能力を発動したが俺の身体は回復しない。まさかこれは使用者の回復が出来ない仕組みなのか。
「どうした?自らの回復は出来ないのか?ならばここで散れ!」
「くっ!?」
歌舞鬼のトドメを受けてしまいそうになったその時、マリーが駆け出したのが見えた。
「危ない!」
するとマリーはバリアカプセムを回転させてバリアを展開し、俺を守ってくれた。
「立って!私はレベルが高くないからこれぐらいしか出来ないけれど、それでもあなたと一緒に戦いたいの!」
マリー。俺はマリーを守りたいと思っていたけれど、マリーも守られるだけは嫌だったみたいだな。
「ありがとうマリー」
リカバリーの必殺技を発動しながら立ち上がる。すると必殺技で出力が上がったことで無理やり身体を回復させた俺はそのまま歌舞鬼に特攻し、キックを押し当てた。
「むぅ!」
歌舞鬼はやらせまいと棒で押し当ててる右足を何度も叩くも、必殺技発動中は無理にでも回復させられる。
【リカバリー!】【バニッシュ!】
「これで眠れ!」
【ゼ!ゼ!ゼ!ゼッツ!!】
回復しながら必殺キックを押し込んだ。それをマトモに喰らった歌舞鬼は変身が解除され、サルノテは片膝をつく。
「よもやこの数をゼッツ1人に攻略されてしまうとは。いや1人ではないか。とはいえ確実にゼッツ自身強くかつ戦力も強化されているな。しかし今回でお前の弱点も把握できた」
弱点。それはおそらく周囲の人を巻き込みたくないため、守ろうとする事。それかマリーの事なのだろう。弱点と言われれば否定はできないが、マリーや人々を弱点だと言いたくない気持ちもある。
「弱点を把握したので今回は引くとしよう。オーロラカーテン!」
俺に負けたというのに次は確実に勝てるとでも言うかのような表情をしているサルノテは眼魔スペリオルとなっていた部下達とともに灰色のオーロラ、どうやらオーロラカーテンと呼ばれるものを起動して帰還していく。
「今のままじゃいけないな」
人気のないところに移動してから変身を解除した俺は今回の戦いで周囲の人を巻き込んでしまった事を反省する。
今回はなんとかなったとはいえ、1人で前衛とタンク役をやるには限界がある。やっぱり俺とマリーのパーティーにタンク役をスカウトしなくちゃいけないな。
次回「孵る」