光に溢れた東京も、深夜を過ぎるとさすがに車もまばらだった。
上空三三三メートル、ライトを落としたタクシーを音もなく乗りつけた。
「アストール、行くよ!」
〈はい!〉
扉を開けると、風が吹き込んだ。ネルは"いつもの靴"で床を踏みしめると、思いきり飛んだ。東京タワーのてっぺんが凄まじい速さで迫ってきた。尖った頂上をやり過ごし、突き出た白い屋根部分に音もなく着地する。それからすぐに屋根を引っつかむと、下のガラス部分にぶら下がった。片手で施術を詠唱し、目の前のガラスをくり抜く。円形にくり抜いた穴から入ったそこは、展望台だった。
「な、なんだ!?」
中の兵士がひとり、驚いた様子で銃を構える。その隙を与えず、ネルはその距離から影祓いを打つと、兵士はその衝撃波で転んだ。間髪入れず間合いを詰めて腰につけた短刀を抜き、首を斬る。兵士は声もなく絶命した。
瞬時に壁に背をつけ気配を探る。
三歩歩くと、小さく声が聞こえた。耳をすませる。
「──軍のデータが全部抜き取られてたみたいだぜ」
「でも、まんまと捕まっちゃ世話ねぇな──」
銃を持った兵士がふたり、こちらに気づかず話している。ネルは短刀を握りしめた。
「──だいぶ抵抗されたけどよ」
「エイダン様が来なけりゃ、俺らも危なかったぜ──」
射程距離に近づく。ネルは手前のひとりに短刀を投げた。兜をかぶった頭部と防具を着た胴体に覗いた首わずか一センチ。凄まじい速度で投げた短刀が刺さり、兵士の首から血しぶきが上がる。と同時に、ネルは転がるように躍り出た。
「な、何者だ!?」
もうひとりの兵士が驚きながらすぐさま銃を構える。その時にはもうネルは死んだ兵士から抜き取った短刀を兵士の兜の下の首元に突きつけていた。左手で銃を持った手を絞め上げる。
「……エイダンって誰だい?」
兜の中の兵士の目が見えた。青い目がぐらぐらと震えている。
「し、新生連邦の幹部──」
兵士が言い終わらないうちに首を刺され語尾は溺れるように止まった。兵士の身体から力が抜け、ばたりと倒れた。
ネルは周囲を見回すと、短刀を拭いた。鏡細工のように煌びやかに街の明かりを反射するその部屋は、もう何の気配もしなかった。
「アストール、フェイトはどこにいる?」
〈情報端末を、ハッキングします。私を情報端末に近づけてください〉
見回すと、情報端末は部屋の真ん中にあった。アストールを近づけると、凄まじい速さでいくつもの画面が立ち上がる。そのどれもが、膨大な情報を映し出していた。しばらくして、アストールの動きが止まった。
〈上階に二名、生体反応があります。うち、一名がフェイトさんの遺伝子情報と94%一致しました〉
「……上だね」
ネルは広い展望台を見回した。光あふれるその部屋の角に、ひとつ小部屋があった。中を覗くと、細い階段があった。ネルはふたたび、短刀を握りしめた。
広い展望台よりも数段狭くなった上階の階段を昇りきる前に、ドアの前に立っている兵士を見つけた。こちらに気づいて銃を構えられる前に、サンダーフレアを唱えて動きを封じる。その隙に兵士に近づいて、また絶命させた。
ドアの前の兵士の死体をどかせると、
「フェイト!? そこにいるのかい!?」
ネルは声を上げてドアを叩いた。
「……ネル!?」
ドアの向こうで、くぐもった声がした。それでも紛れもなくフェイトの声だった。
「フェイト!」
ネルは感極まってドアに両手をつけた。ずっと会いたかった人がここにいる。
ドアは横開きの自動ドアだった。鍵がかかっているのだろう。びくともしない。
解錠の施術を唱えようとすると、アストールが光った。
〈まかせてください!〉
いっそう野太い声で言うと、アストールは激しく点滅した。カチャ……と鍵の外れる音が聞こえる。
その瞬間、扉が開いた。
そこにフェイトがいた。
「フェイト……!」
腕輪と足輪をされていたが、フェイトは立ち上がってネルを見た。
「ネル……!」
ネルは走り出し、フェイトを抱きしめた。
「バカ……! どれだけ心配したと思ってるんだい!?」
言葉とは裏腹に、フェイトをきつく抱きしめた。フェイトが鼻先を強くネルの耳に押しつけた。
「ネル、会いたかった」
耳元で聴くフェイトの声は魔法のようにネルの身体を震わせた。こんな遠い場所で、また会えるなんて信じられなかった。
ネルはフェイトから腕を離して、
「遅くなって、すまないね」
そう言いながら顔をよく見ると、殴られたのか傷だらけだった。赤く腫れた頬をさする。
「痛むかい?」
「ああ……ちょっとね」
ネルはすぐさま詠唱し、施術をほどこした。
「ヒーリング」
「……ありがとう」
フェイトの傷は、みるみる良くなった。
しかし、腕輪と足輪をされていて満足に動けない。
「鍵は隊長が持ってる」
フェイトは腕を上げて腕輪をさし示した。腕輪は見たこともない物質でできていた。恐らくネルの知らない宇宙の物質なのだろう。
だが構わず解錠の施術をすると、カチャリと音を立てて腕輪と足輪が取れた。
「えっ……!?」
フェイトが驚いてネルを見る。ネルも自分で驚いた。思わずふたりは目を見合わせて喜んだ。
「すごい、すごいよネル……!」
フェイトは手足が自由になると、いきなりネルを抱きしめた。強く引き寄せられて苦しいくらいだった。それでもネルは、フェイトを抱きしめ返した。一ヶ月と少しぶりの抱擁だった。やわらかい温もりが、頬に、胸に、腹に、背中に帰ってくる。全身でフェイトの体温を感じた。心すべてでフェイトを求めていた。
「出会った頃を思い出すよ」
「え?」
「ほら、出会った頃も、こんなふうにネルが助けに来てくれただろ」
言われて胸が熱くなった。私たちは、冬のアーリグリフの地下牢で出会ったのだ。
「でもまさか、今度は花嫁姿とは思わなかったけどね」
フェイトが耳元でつぶやいたのでハッとして我に返る。ネルは、自分がドレス姿なことをしばらく忘れていた。みるみる顔が熱くなる。
「み・る・な……!」
思いきりフェイトの胸を押すと、フェイトは笑って腕をつかんだ。
「それは無理があるだろ? もうたくさん見ちゃったしね」
ネルは恥ずかしくなってそっぽを向いた。こんな格好で助けに来るなんて、これでは完全に頭のおかしいヤツじゃないか。
「本当に綺麗だよ、ネル……」
そんなことを言われても機嫌は直らない。
「一体このドレス、どうしたの?」
「途中のレプリケーターで間違えて買ったんだよ。10万フォルもした」
「ははっ。機械に弱いからなぁ、ネルは」
フェイトが軽く笑うので、ますます腹が立つ。
「ここに花が咲いてるのが可愛いね。あっ、こっちはリボンかい?」
フェイトはネルのドレスをあちこち触りながら褒めてくれるが、ネルはムスッとしたままだった。
「あれ? でも、靴はいつものままなんだね」
フェイトがスカートをめくりながら目を瞬いた。ネルはムスッとしたまま答える。
「靴だけは履き替えたんだよ。ハイヒールでは、あんたのピンチに駆けつけられないだろ?」
そう言ってフェイトを睨みつけると、フェイトはしばらく黙ってネルを見つめていた。
「……何だい?」
ネルが見上げると、フェイトは感激したように、また抱きしめられた。
「ネル……! お前ってやつは!」
「なんだい、痛いってば」
ふたりでじゃれていると、懐からアストールが不気味な声を出した。
〈あのぉ〜……〉
フェイトがあからさまにビクッとなる。ネルは手馴れたように懐からアストールを取り出した。
「なんだい?」
〈お取り込み中、申し訳ありませんが、階下から近づいてくる生体反応があります〉
「ありがとう、アストール」
ネルが礼を言うと、フェイトが不思議そうにまばたきした。
「……アストール?」
「ああ、こいつの名前さ。私がつけたんだ。声が似てるだろ?」
手の中の碧色のパネルをぱたぱたさせると、フェイトが首をひねった。
「全然似てないと思うけど……」
話はそれくらいにして、階下に降りることにした。ここでは戦いづらい。しかし、フェイトが剣を奪われていたので、ネルの後ろにつけた。
「頼りなくてごめん。サポートするから」
「いいよ。頼りにしてるよ」
階段を降りて、展望台の小部屋に出る。壁に隠れて足音を忍ばせて、気配を探った。鏡細工の柱が邪魔で奥まで見通せない。だが、煌びやかな街明かりのこちら側に、いきなりぬっと頭部のような影が現れた。
ネルは息でフェイトに合図する。
しかしその瞬間、いきなり大量の銃弾が光った。
小部屋の壁が傷ついていく。ふたりは左右に飛び退いて物陰に隠れた。銃弾がフェイトを追って右に飛び散っていく。
男が叫んだ。
「捕まえるのに一ヶ月もかかったお前を、逃がしはしない!」
ネルはその隙に飛び上がった。銃弾の先は大きな男の影だった。その影を狙い、急角度で勢いをつけて迫っていく。その凄まじいスピードを、避けられた。その瞬間に見た。それは緑髪の眼光鋭く背の高い男だった。
ネルは男の背後の床に着地して、振り向きざま短刀を振るった。男はフェイトの方へ銃弾を向けたまま、長い剣で短刀を止めた。ネルはあっと思った。男の右手に握られていたのはフェイトの剣だった。男はフェイトを追って銃を撃ちながら剣を持ち替え、後ろざまにネルの腹を刺そうとした。ネルは慌てて飛び退く。ネルの避けた軌道すれすれを剣が突っ込んできた。
「……あんた、エイダンってヤツかい!?」
ただものじゃない動きに、思わず声を上げる。
前を向いていた男の顔が、ぎろりとネルを一瞥した。左手の銃を止め、男の身体がこちらを振り向いた。大きく剣を振りかぶり、ネルに叩きつけようとする。ネルは短刀でそれを受け止めた。だが男の力が強く、じりじりと短刀ごと目の前ににじりよってくる。凄まじい力だった。このままでは力負けしそうだ。間近に見る緑髪の男は、笑っていた。
今にも鼻先に短刀が当たると思った次の瞬間、男の横ざまをフェイトが蹴り上げた。男の身体がぐらついて短刀にかかっていた力が解放される。だが男の身体はぐらついただけで両足で何とか持ちこたえた。それを勝機とばかりに、今度はフェイトの首めがけて剣を振るう。ネルはその軌道をかいくぐって足元に衝撃波を放った。
「影祓い!」
よろけた男の身体を、フェイトがしがみついて押し倒した。銃と剣を持って両手が塞がった男は抵抗できずにまともに後ろへ背中を叩きつけられた。
「ぐぇっ……」
フェイトは思いきり男を殴りつけると、男の右手が剣を離してフェイトの首を絞めようとした。その隙をネルは見逃さなかった。
「フェイト!」
フェイトの剣を取り、フェイトに向かって投げる。フェイトは後ろ手に受け取った。
「ありがとう!」
フェイトが振るう剣を男が転がって避けた。男は瞬時に身を翻して体勢を立て直す。銃をふたりに向けて撃った。
「危ない!」
フェイトに押された身体をくるりと回して銃弾を避ける。今度は銃弾がこちらに向かってやって来た。銃弾を避けて走り出すと、後ろで次々に展望台のガラスが割れていく。撃ちながら男がネルに向かって走り出すのを見た。
「!?」
背中を強い風が吹きつける。突き落とそうというのか。
ネルは全速力で銃弾から逃げるが、男の足も早く、ネルは男に突き飛ばされた。
ハッとした瞬間、硝子に背中を打ちつけられた。半分割れた硝子に、背中が食い込む。
「くっ……」
食い込んだ背中を硝子からようやく離し、震える手で短刀を構えた。男がニヤニヤと近寄ってくる。男が銃を構えた、その瞬間だった。
「ネル、逃げろ!」
フェイトの声がした。
と思った瞬間、辺りが明るくなった。ネルはあっと思った。男の後ろから、ゆっくりとフェイトの身体が持ち上がっていく。フェイトの額から光があふれていた。ネルは男を突き飛ばし、翼が生えたフェイトの背中側まで全力で倒れ込んだ。
その瞬間、フェイトが叫んだ。
「イセリアル……ブラスト!」
男の身体が太い光線に飲み込まれる。男は叫び声を上げて身をよじった。光線は男の身体を貫き、硝子を突き破った。そのまま男の身体をじりじりと床の際まで追いやっていく。そして光線がいっそう光った瞬間、男の身体が硝子の向こうへなだれ落ちていった。あとには静かな無音が訪れた。
風が吹き抜ける展望台で、フェイトがえぐれた背中を手当してくれた。
「せっかく綺麗な背中なのに……」
そう嘆いていたが、ヒーリングをかければ元通りだ。
ネルは煌びやかな街の明かりを見下ろしながら訊ねた。
「ところで、あれがずっとあんたを追ってた男だったのかい?」
「そう。新生連邦の一派の隊長さ。エイダン・マックイーン。ずっと僕を追いかけてきてた」
「アイツが?」
「そう」
ネルは眉を寄せた。
「アイツがあんたの力──ディストラクションの力を求めて来たのかい?」
「うん、そう」
ネルは笑った。
「さっさと今みたいに追い返せばよかったじゃないか」
だがフェイトは首を振った。
「ううん……この力は、思ったよりいろんな人に迷惑をかけてしまうから」
ネルはフェイトを見た。
「何言ってるんだい。あんたがどんな力を持っていたとしても、迷惑だなんて思ったことは一度もないよ」
「ネル……」
フェイトとネルが見つめ合っていると、またアストールが不気味な声を出した。
〈あのぉ〜……また階下から何人かの反応が近づいています〉
ネルはフェイトに水を向けた。
「どうする? やるかい?」
フェイトは首を振った。
「いや、頭を失った部隊にはもう力はないよ」
「じゃあ──」
〈タクシー!〉
アストールが電子音をピコピコさせてタクシーを呼んだ。タクシーがすぐさま飛んでくる。だがタクシーは上から直下してきたかと思うと、展望台を通り過ぎた。
下を覗くと、もうひとつ下の展望台のそばにつけている。
〈あっ、間違えました……〉
フェイトとネルは目を見合わせて笑った。それから手を繋ぐ。迷いはなかった。ふたりで夜空へ向かって飛び降りた。
タクシーのルーフが凄まじい速さで迫ってくる。その直前、ネルは風の施力を集めて着地の衝撃を相殺した。
ルーフから中に乗り込むと、タクシーが夜空を走り出す。
そこは宝石みたいにまばゆかった。
ラインゴッド邸へ着いて、ふたりはフェイトの母リョウコと共に久しぶりにまともな夕食を食べた。フェイトとリョウコは久々の再会を、ネルとリョウコは初めての対面を喜び合った。ネルは初めて会う服装が花嫁姿で申し訳ないと思ったが、リョウコには案外受けがよく、「素敵なお嫁さん」と何度も写真を撮ってもらって照れくさかった。
そしてお風呂に入って、ようやく花嫁姿を脱ぐことができた。フェイトは「もったいない」と、花嫁姿と裸の合間で揺れていた。
そして、フェイトの部屋着を纏って、フェイトの部屋に入る。
今やもうよく知っているフェイトの、知らない部屋。フェイトの部屋の本棚やバスケットボールを不思議な気持ちで見ていた。
「しかし、まさかネルがひとりで宇宙に来るなんてなぁ」
フェイトがしみじみと噛みしめるように言った。部屋の大きな天窓を見上げた。美しい星々がきらめいていた。
「私もびっくりだよ……こんなにあんたに会いたかったなんてね」
そう言って背中に手を回すと、フェイトも肩に手を回した。
「でもあんた、待ってたんだろ? 私のことを」
するとフェイトは頭を掻いた。
「なぜか、ネルが来てくれるような予感がして……」
ネルは、フェイトの化粧水で濡れた頬を撫でると、少しつま先を上げ、唇にキスをした。やわらかい、久しぶりの感触だった。フェイトがスッと息をして、ネルの頬を包む。それは毎夜思い出していた感触に違いなかった。
「ん……」
思わず声が漏れるのも構わず、ふたりは何度も何度も唇を重ねた。
〈あのぉ〜……〉
いきなり不気味な声が聴こえてふたりは飛び上がる。
テーブルの上に、アストールを置いたままだった。
ふたりは我に返って笑った。
「ふたりきりじゃなかったね」
「あんたのこと忘れてたよ、すまないねアストール」
〈いえ、気まずいので電源をオフにしましょうか?〉
機械が気を遣ってくるので、ふたりはまた笑った。
「このコンピュータ、やけにネルと仲良しだね」
フェイトが少しきつい眼差しをしてくるので、ネルはあわてて言った。
「仲良くないってば」
〈仲良く、ありません〉
「ほら」
フェイトが苦笑する。
「コンピュータと意気投合してる人、初めて見たんだけど」
アストールが気を遣って電源オフになると、碧色だったパネルは灰色になった。
それを見届けると、フェイトはふたたび「ふたりきりだね」と笑った。
「音楽でもかけようか。古臭いけど、レコードを持ってるんだ」
とフェイトは背中を向けて、棚の上をいじり出した。
ネルはその背中を見て、さっきの翼が生えたフェイトの背中を思い出した。戦っていた、頼もしい背中。
ネルはフェイトに後ろから抱きついた。
フェイトが不意打ちのように
「どうしたの?」
と驚いたように横を向いた。
「あんたにもお母さんがいるのに」
ネルはフェイトの背中に頬をこすりつけた。
「私が独り占めだね」
すまないね……とネルは謝った。ずっと思ってきたことだ。フェイトがエリクールへ移住して、たまの里帰りもこんなことになって、フェイトはどれだけのあいだ寂しかったことだろう。
しかしフェイトはネルに寄り添うように、腕を重ね合わせた。
「そんなに気を遣ってもらってるところ悪いんだけどさ」
フェイトはネルの頭に脇を潜らせて、ネルの頭を撫でた。
「僕たちの世界では、異星の人と結ばれるのは珍しいことじゃないんだ。さすがに未開惑星の人とってなると僕くらいだと思うけど」
フェイトはちょっと照れたように笑った。
「そのために、電話も発達してるしね。旅の間に立体映像電話、使ったんだろ?」
ネルは頷いた。
「あれは触れば体温まで感じられるんだ。まるでその人がそこにいるみたいに」
「そうなのかい?」
「まぁ、もう僕たちには必要ないけどね」
フェイトはそう言ってネルを抱き寄せた。
「でも、旅のあいだ通信機持ってきただろ。ネルが寂しくないように、電話してくれればよかったのに」
フェイトが言うとネルは少し口を尖らせた。
「だって、あんたに会いたかったから」
そう言うと、フェイトは嬉しそうに笑った。ネルはその腕の中で体温を感じる。立体映像電話なんて必要ない、生身のあたたかい感触が身体を包んだ。